看護管理者の労務管理|法律が求めるのは労働時間の状況の把握。師長が管理監督者かは実態で判断されます

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目次

30秒でわかるまとめ

  • 看護師長が管理監督者かは、役職名では決まりません国のパンフレットは、肩書や職位ではなく、立場や権限を踏まえて実態から判断する必要があるとしています。
  • 労働時間の状況の把握は、管理監督者も対象です労働安全衛生法 第66条の8の3の把握について、国の解説は管理監督者等を含めた全ての労働者としています。
  • 把握は客観的な方法が原則で、記録は3年間保存します施行規則は、タイムカードによる記録やパソコン等の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法としています。
  • 病院の管理者には、勤務環境改善の努力義務があります医療法 第30条の19です。都道府県には相談などの事務があり、医療勤務環境改善支援センターが置かれています。

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※看護師長の給与の数字は看護師長の年収はいくらか、職場の悩みを相談先につなぐ話は看護師の人間関係に疲れたときで扱っています。

病院で打ち合わせ(看護管理者)

先に整理:法律に「看護管理者」という言葉はありません

本記事が取得した労働基準法、労働安全衛生法、医療法の本則には、「看護管理者」「看護師長」という言葉が出てきません。労働基準法には「管理監督者」という言葉もなく、条文は「監督若しくは管理の地位にある者」と書いています。

そこで、法律の言葉に置き換えて読みます。

場面条文の主語・対象本記事で読む条文
自分も働く人として労働者(監督若しくは管理の地位にある者に当たるか)労働基準法 第41条第2号
部下の勤務を見る側として事業者(労働時間の状況の把握)労働安全衛生法 第66条の8の3、同規則 第52条の7の3
病院の取組として病院又は診療所の管理者/都道府県医療法 第30条の19、第30条の21

出典:各法令の条文より編集部が整理

義務を負うのは「事業者」「病院又は診療所の管理者」で、看護師長個人に向けた条文ではありません。

病院夜勤のイメージ

まず条文:管理監督者には、労働時間・休憩・休日の規定が適用されません

「この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。」

出典:労働基準法(e-Gov法令API 法令ID 322AC0000000049)第41条 柱書き(原文どおり)

「二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」

出典:労働基準法 第41条第2号(原文どおり)

適用されないのは「労働時間、休憩及び休日に関する規定」です。第41条に深夜の言葉はありません。

厚生労働省のパンフレットは、管理監督者であっても深夜業の割増賃金は支払う必要があり、年次有給休暇も一般労働者と同様に与える必要があるとしています。深夜の割増は看護師の夜勤手当の相場、有給はクリニック看護師は有給を取れるかで扱っています。

診察室でパソコン入力

ここが本題:管理監督者かは、役職名ではなく実態で判断されます

判断の物差しは、厚生労働省のパンフレット「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」にあります。

「「管理監督者」については、肩書や職位ではなく、その労働者の立場や権限を踏まえて実態から判断する必要があります。」

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」1ページ(原文どおり)

「労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していなければ、管理監督者とは言えません。」

出典:同パンフレット 2ページ(原文どおり)

観点パンフレットの書き方(要約)
職務内容労務管理について経営者と一体的な立場にあり、重要な職務内容を有していること
責任と権限経営者から重要な責任と権限を委ねられていること
勤務態様時を選ばず経営上の判断や対応が要請されること。労働時間について厳格な管理をされているような場合は管理監督者とは言えない
賃金等の待遇定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていること

出典:同パンフレット 2ページの要約

「「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような者は、管理監督者とは言えません。」

出典:同パンフレット 2ページ(原文どおり)

本記事は、看護師長が管理監督者に当たるかどうかを判断しません。国の資料の書き方どおり、役職名ではなく実態で判断されるものです。人事院の調査で看護師長にも時間外手当の平均額が出ていることは、看護師長の年収はいくらかで扱っています。

人事院の調査では、部下に看護師長5人以上の総看護師長にも、平均で月20,008円の時間外手当が出ています。看護部長の年収はいくらか|国の表にあるのは「総看護師長」の月額551,806円ですで扱っています。

通達の「否定する要素」には、勤務割表の権限があります

パンフレットは、平成20年9月9日基発第0909001号の通達が示した判断の要素を載せています。対象は、小売業、飲食業等で多店舗展開する企業の、比較的小規模の店舗の店長等です。病院の看護師長について示されたものではありません。

区分管理監督者性を否定する重要な要素(要約)
採用アルバイト・パート等の採用に関する責任と権限が実質的にない
人事考課部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない
労働時間の管理勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない

出典:同パンフレット 3ページ(多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者について)の要約

同じ通達は、遅刻・早退の扱いについて、こう断っています。

「ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理が行われることから、これらの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはならない。」

出典:同パンフレット 3ページ「勤務態様」についての判断要素(1)遅刻、早退等に関する取扱い(原文どおり)

管理監督者であっても、労働時間の把握や管理は行われるという前提です。

部下も自分も:法律は「労働時間の状況」の把握を求めています

「事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。」

出典:労働安全衛生法(e-Gov法令API 法令ID 347AC0000000057)第66条の8の3(原文どおり)

除かれている「次条第一項に規定する者」は、第66条の8の4第1項の、労働基準法第41条の2第1項の規定により労働する労働者です。条文は、管理監督者を除く書き方をしていません。

「法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。」

出典:労働安全衛生規則(e-Gov法令API 法令ID 347M50002000032)第52条の7の3第1項(原文どおり)

同条第2項は、把握した労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するための必要な措置を事業者に求めています。

対象者について、厚生労働省の解説はこう書いています。

「労働時間の状況の把握は、労働者の健康確保措置を適切に実施するためのものであり、その対象となる労働者は、高度プロフェッショナル制度対象労働者を除き、①研究開発業務従事者、②事業場外労働のみなし労働時間制の適用者、③裁量労働制の適用者、④管理監督者等、⑤派遣労働者、⑥短時間労働者、⑦有期契約労働者を含めた全ての労働者です。」

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「働き方改革関連法解説(労働安全衛生法/産業医・産業保健機能の強化関係)」Point1 労働時間の状況の把握(原文どおり)

同じ解説は、把握の方法の中で「事業者(事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等の客観的な記録」とも書いています。部下の出退勤の確認をどこまで任されているかは、職場で確かめておけることです。

月80時間を超えたら、本人に通知。管理監督者も含みます

把握の目的は、医師による面接指導です。要件と通知は、労働安全衛生規則 第52条の2が定めています。

項定め
第1項休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者(面接指導の要件)
第2項超えた時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行う
第3項算定を行ったときは、速やかに、超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者に、その超えた時間に関する情報を通知する

出典:労働安全衛生規則 第52条の2第1項〜第3項(漢数字を算用数字にした)

「当該通知については、高度プロフェッショナル制度の対象労働者を除き、管理監督者、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者を含めた全ての労働者に適用されます。」

出典:同解説 Point2 労働者への労働時間に関する情報の通知(原文どおり)

「管理監督者についても、長時間にわたる過重な労働にならないようにしてください。長時間労働となった場合には、労働安全衛生法に基づき医師による面接指導等の健康管理に係る措置が必要となる場合があります。」

出典:「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」4ページ(原文どおり)

看護師長は、部下の労働時間の状況を見る立場であると同時に、自分の労働時間の状況も把握される側です。

病院の側:医療法 第30条の19は、管理者の努力義務です

「病院又は診療所の管理者は、当該病院又は診療所に勤務する医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に資する措置を講ずるよう努めなければならない。」

出典:医療法(e-Gov法令API 法令ID 323AC0000000205)第30条の19(原文どおり。令和8年10月1日時点の現行版)

主語は「病院又は診療所の管理者」で、述語は「努めなければならない」です。第30条の20は、この措置について、厚生労働大臣が指針となるべき事項を定めて公表するとしています。

この条は、令和9年4月1日施行の改正(令和8年法律第31号)で、次の文言になります。

「病院又は診療所の管理者は、良質かつ適切な医療を効率的に提供するため、当該病院又は診療所における業務の効率化及びその医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に資する措置を講ずるよう努めなければならない。」

出典:医療法 第30条の19(e-Gov法令API の改正履歴で令和9年4月1日施行の版。未施行。原文どおり)

「業務の効率化」が加わります。努力義務である点は変わりません。

都道府県の側:医療勤務環境改善支援センターがあります

医療法 第30条の21第1項は、都道府県が、勤務環境の改善に関する相談や助言、調査・啓発などの事務を実施するよう努めるとしています(各号の原文は看護師の人間関係に疲れたときで扱っています)。同条第2項はこうです。

「都道府県は、前項各号に掲げる事務の全部又は一部を厚生労働省令で定める者に委託することができる。」

出典:医療法 第30条の21第2項(原文どおり)

この拠点が、医療勤務環境改善支援センターです。

「医療勤務環境改善支援センター(勤改センター)は、医療機関の勤務環境改善を促進する拠点として、医療法第30条の19及び第30条の21に基づき、各都道府県が設置・運営(直営/委託)するものです。」

出典:「医療勤務環境改善支援センターの運営及び活動にあたっての手引き」(令和7年3月。厚生労働省ウェブサイト掲載)2ページ(原文どおり)

手引きの用語の解説は、センターの医療労務管理アドバイザーを、「勤務シフトの見直し・労働時間管理・休暇取得促進・就業規則の作成、変更・賃金制度の設計・安全衛生管理や福利厚生等労務管理に関する専門知識を有するアドバイザー」としています。勤務表や労働時間の管理で行き詰まったとき、病院の外にある相談先の1つです。

この記事が扱っていないこと

  • 看護師長が管理監督者に当たるかどうかの個別の判断。
  • 病院・医療の職場を対象にした管理監督者の通達。本記事が取得したパンフレットに載っているのは、多店舗展開する小売業、飲食業等と、金融機関についての記載です。
  • 入院基本料などで求められる夜勤の時間の基準。診療報酬の告示・通知は取得していません。夜勤をする人の制度は看護師の夜勤がきついときで扱っています。
  • 医師の働き方改革の規定、職能団体などの指針。前者は医師に向けた規定、後者は法令上の要件ではないため扱っていません。
  • 各都道府県のセンターの連絡先。取得していません。

看護管理者が確認できること

  • 自分が管理監督者として扱われているか。就業規則や労働条件通知書にどう書かれているか。
  • 自分の労働時間の状況が、どう把握されているか。タイムカードやパソコンの記録など、客観的な方法か。
  • 部下の労働時間の状況の把握を、どこまで任されているか。記録の3年間保存を担うのは誰か。
  • 勤務表の作成や時間外労働の指示の権限。決めるのは自分か、上司の決裁が要るか。
  • 月80時間を超えたときの通知と面接指導の流れ。自分も通知の対象に入っているか。

よくある質問

Q. 看護師長は残業代が出ないのですか。
A. 役職名だけでは決まりません。労働基準法 第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」に当たるかについて、厚生労働省のパンフレットは、肩書や職位ではなく実態から判断する必要があるとしています。職場での扱いは就業規則などで確認が必要です。

Q. 管理監督者なら、労働時間を記録しなくてよいのですか。
A. 労働安全衛生法 第66条の8の3の「労働時間の状況」の把握は、厚生労働省の解説で管理監督者等を含めた全ての労働者が対象とされています。記録は3年間保存するための措置が求められます(規則 第52条の7の3第2項)。

Q. 部下の労働時間を把握する義務は、看護師長にあるのですか。
A. 条文上の義務者は「事業者」です。厚生労働省の解説は、把握の方法の中で「事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者」を含めて書いています。どこまで任されているかは、職場で確認できます。

Q. 管理監督者でも、深夜の割増や有給はありますか。
A. 厚生労働省のパンフレットは、管理監督者であっても深夜業の割増賃金は支払う必要があり、年次有給休暇も一般労働者と同様に与える必要があるとしています。

Q. 病院には、勤務環境を改善する義務がありますか。
A. 医療法 第30条の19は、病院又は診療所の管理者に「努めなければならない」と定める努力義務です。都道府県には相談などの事務があり、医療勤務環境改善支援センターが拠点になっています。

迷ったらここ

師長の扱いと労働時間の把握を聞く

看護師長が管理監督者に当たるかは、役職名ではなく実態で判断されます。労働時間の状況の把握は、管理監督者も含めた全ての労働者が対象です。

  • 管理職としての扱い(管理監督者かどうか)が就業規則や労働条件通知書にどう書かれているか
  • 自分と部下の労働時間の状況を、タイムカードなど客観的な方法で把握しているか
  • 勤務表の作成や時間外労働の指示を、どこまで任されているか
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まとめ

法律に「看護管理者」という言葉はありません。看護管理者の労務管理で法律が求めているのは、事業者による労働時間の状況の把握(労働安全衛生法 第66条の8の3)と、病院の管理者による勤務環境の改善の取組(医療法 第30条の19。努力義務)です。

看護師長自身が労働基準法 第41条第2号の管理監督者として労働時間・休憩・休日の規定の外に置かれるかは、役職名ではなく、職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇の実態で判断されます。厚生労働省の解説では、管理監督者であっても、労働時間の状況の把握と月80時間超の通知の対象からは外れません。

働く場所を選ぶときは、自分の扱い、労働時間の把握の方法、勤務表と残業の指示の権限を確かめてください。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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