30秒でわかるまとめ
- クリニック看護師の有給も、同じ第39条で決まります取得した第39条と施行規則の該当条に、病院や診療所を別扱いにする文言は見当たりませんでした。
- 年10日以上つく人には、年5日を取らせる義務があります使用者は基準日から1年以内に、5日について労働者ごとに時季を定めて与えなければならない、と第7項にあります。
- 休みの日をずらせるのは、正常な運営を妨げる場合です請求した時季に与えるのが原則です。事業の正常な運営を妨げる場合に限り、他の時季に与えることができます。
- 取らせなかったときの罰則は、30万円以下の罰金です第120条が第39条第7項の違反を挙げています。時季・日数・基準日を書いた管理簿の作成も省令に定めがあります。
※有給休暇が何日つくか(第39条第1項〜第3項)は保育士1年目がつらいとき、クリニックの人員の決まりはクリニック看護師の仕事内容で扱っています。

先に断ります:クリニックだけの例外は、取得した条文にありません
有給休暇(年次有給休暇)は、労働基準法 第39条が定めています。この記事では、取る時季(第5項)、計画的付与(第6項)、年5日の義務(第7項・第8項)を扱います。
本記事が取得した労働基準法 第39条と、労働基準法施行規則 第24条の5〜第24条の7には、病院・診療所・医療の事業を別扱いにする文言はありませんでした。第7項にも、事業所の人数による区切りは書かれていません。
厚生労働省のリーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」も、この義務を「全ての企業において」と説明しています。
調べたのは上の条文とリーフレットの範囲です。「例外は一切ない」とまでは言い切りません。

まず条文:有給は「労働者の請求する時季」に与えるのが原則です
労働基準法 第39条第5項です。
「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」
出典:労働基準法(e-Gov法令API 法令ID 322AC0000000049)第39条第5項(原文どおり)
前半が原則です。いつ休むかを請求するのは労働者の側で、使用者はその時季に与えなければならない、という書き方になっています。
取得した理由で扱いを変えることについては、同じ法律の附則 第136条に定めがあります。
「使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」
出典:労働基準法 附則第136条(原文どおり)

時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます
第5項のただし書が、いわゆる時季変更権です。条文から読み取れることを3つに分けます。
| 条文の言葉 | 読み方 |
|---|---|
| 事業の正常な運営を妨げる場合においては | 使えるのはこの場合に限られます。「忙しい」「人が少ない」と書いてあるわけではありません |
| 他の時季に | 変えられるのは時季です |
| これを与えることができる | 与えないのではなく、別の時季に与えるという書き方です |
出典:労働基準法 第39条第5項の文言を編集部が分解
どんな場合が「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかについて、厚生労働省のリーフレットは例を1つ挙げています。
「使用者は、労働者から年次有給休暇を請求された時季に、年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合(同一期間に多数の労働者が休暇を希望したため、その全員に休暇を付与し難い場合等)には、他の時季に年次有給休暇の時季を変更することができます。」
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(2023.02)(原文どおり)
条文は、職場の人数が少ないかどうかで一律に決める書き方になっていません。少人数のクリニックで、ある日の休みがこれに当たるかどうかは、その日の事情によって変わります。本記事は、個別のクリニックの扱いが適法かどうかを判断していません。
ここが本題:年10日以上つく人には、年5日を取らせる義務があります
2つめの柱が、第39条第7項です。
「使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(中略)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。」
出典:労働基準法 第39条第7項本文(原文どおり。基準日の定義を述べた括弧書きを中略)
- 対象は、与えなければならない有給休暇が十労働日以上の労働者です。
- 義務を負うのは使用者です。「請求があれば与える」ではなく、時季を定めて与えるところまでが条文に書かれています。
- 期間は、基準日(リーフレットの言い方では、年次有給休暇を付与した日)から1年以内です。
対象について、リーフレットはこう書いています。
「対象労働者には管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。」
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(原文どおり)
時季を指定するだけで済むかについて、リーフレットのQ&Aはこう答えています。
「使用者が5日分の年次有給休暇の時季指定をしただけでは足りず、実際に基準日から1年以内に年次有給休暇を5日取得していなければ、法違反として取り扱うことになります。」
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」Q&A(原文どおり)
自分で取った日数は、5日から差し引かれます
第39条第8項です。
「前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。」
出典:労働基準法 第39条第8項(原文どおり)
第5項は本人の請求による取得、第6項は計画的付与です。この2つで取った日数の分は、使用者が時季を定めなくてよいことになります。
「既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません。」
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(原文どおり)
時季を決めるときは、先に本人の意見を聴きます
使用者が時季を定めるときの手順は、労働基準法施行規則 第24条の6が定めています。
「使用者は、法第三十九条第七項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たつては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない。」
出典:労働基準法施行規則(e-Gov法令API 法令ID 322M40000100023)第24条の6第1項(原文どおり)
「使用者は、前項の規定により聴取した意見を尊重するよう努めなければならない。」
出典:同 第24条の6第2項(原文どおり)
聴くことは義務、尊重は努力義務という書き分けです。
入職と同時に有給休暇をつける職場もあります。この場合について、第24条の5第1項は、十労働日以上の有給休暇を与えることとした日(第一基準日)から一年以内の期間に、5日の時季を定めて与えなければならないとしています。
出典:労働基準法施行規則 第24条の5第1項
計画的付与は、労使協定で「5日を超える部分」だけです
職場で休む日を前もって割り振る仕組みが、第39条第6項の計画的付与です。
「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。」
出典:労働基準法 第39条第6項(原文どおり)
| ポイント | 条文の言葉 |
|---|---|
| 決め方 | 労働組合、または労働者の過半数を代表する者との書面による協定 |
| 割り振れる日数 | 有給休暇の日数のうち五日を超える部分 |
| 第5項との関係 | 前項(本人の請求)の規定にかかわらず、その定めにより与えることができる |
出典:労働基準法 第39条第6項
計画的付与を使っても、5日は本人が自由に時季を決められる分として残る組み立てです。リーフレットは、この労使協定について「なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。」と書いています。
記録と罰則:管理簿と、30万円以下の罰金
有給休暇を与えたときの記録は、労働基準法施行規則 第24条の7が定めています。
「使用者は、法第三十九条第五項から第七項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第五十五条の二及び第五十六条第三項において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない。」
出典:労働基準法施行規則 第24条の7(原文どおり)
保存期間は、同じ規則の附則 第71条が、当分の間「五年間」を「三年間」と読み替えています。リーフレットも「3年間保存しなければなりません」と書いています。
罰則は、労働基準法の2つの条にあります。
| 条 | 挙げている違反 | 罰則 |
|---|---|---|
| 第120条第1号 | 第39条第7項(年5日の時季指定) | 三十万円以下の罰金 |
| 第119条第1号 | 第39条(第7項を除く。) | 六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金 |
出典:労働基準法 第119条第1号・第120条第1号
年5日を取らせなかった違反は、第120条の30万円以下の罰金です。請求した時季に与えなかった場合など、第7項以外の第39条の違反は、第119条の側に入っています。
リーフレットは、年5日の違反について「対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われますが」と書いたうえで、労働基準監督署の監督指導では、原則として是正に向けて丁寧に指導する、としています。
取らなかった有給休暇の扱いについて、第115条は、賃金以外の「災害補償その他の請求権」を二年間で時効によつて消滅すると定めています。リーフレットは年次有給休暇について、次のように書いています。
「年次有給休暇の請求権の時効は2年であり、前年度に取得されなかった年次有給休暇は翌年度に与える必要があります。」
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(原文どおり)/労働基準法 第115条
この記事が扱っていないこと
- 有給休暇が何日つくか(第39条第1項〜第3項)。冒頭のリンク先の記事で扱っています。
- 有給休暇中に支払われる賃金の計算(第39条第9項)と、時間単位の有給休暇の手続(第4項)。本記事では扱っていません。
- 時季変更権がどこまで認められるかを示した通達や裁判例。本記事は取得していません。
- クリニックや看護師の有給休暇の取得率などの統計。本記事は取得していません。
- 個別のクリニックの扱いが違法かどうか。本記事は判断していません。
看護師が職場で確認できること
- 自分の基準日はいつか。年5日の期間は、基準日から1年以内で数えます。
- 年5日を、どの方法で取らせる運用か。本人の請求、計画的付与、使用者の時季指定のどれを使っているかです。
- 計画的付与の労使協定があるか。あるなら何日分が割り振られ、自由に選べる日が何日残るかを確認できます。
- 休みが重なったときの調整の手順。時季を変えるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。
- 年次有給休暇管理簿に、自分の時季・日数・基準日が載っているか。作成は施行規則 第24条の7の定めです。
個別の事情で迷うときについて、リーフレットは「個別の事案についてのご質問は、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局にお問い合わせください。」と案内しています。
よくある質問
Q. 少人数のクリニックでも、年5日の義務はありますか。
A. 第39条第7項は、与えなければならない有給休暇が十労働日以上の労働者について、5日を時季を定めて与えなければならないとしています。取得した条文に、人数や診療所による区切りは見当たりませんでした。リーフレットも「全ての企業において」と説明しています。
Q. 「人がいないから」と有給を断られることはありますか。
A. 第39条第5項が認めているのは、事業の正常な運営を妨げる場合に他の時季に与えることです。条文は「与えない」とは書いていません。ある日の休みがその場合に当たるかどうかは個別の事情によるため、本記事は判断していません。
Q. 自分で5日取っていれば、使用者から日を決められることはありますか。
A. リーフレットは、既に5日以上を請求・取得している労働者には、使用者による時季指定を「することもできません」と書いています(第39条第8項)。
Q. 使わなかった有給休暇は、翌年に持ち越せますか。
A. リーフレットは、請求権の時効は2年で、前年度に取得されなかった分は翌年度に与える必要がある、と書いています。
迷ったらここ
年5日の有給の取らせ方を聞く
年10日以上の有給休暇がつく人には、使用者が年5日を時季を定めて与える義務があります(労働基準法 第39条第7項)。取得した条文に、診療所を別扱いにする文言はありません。
- 年5日を、本人の請求・計画的付与・使用者の時季指定のどれで取らせているか
- 計画的付与の労使協定があるか。あるなら何日分で、自由に選べる日が何日残るか
- 休みが重なったときに時季をずらす場合の、調整の手順が決まっているか
まとめ
クリニック看護師の有給休暇も、労働基準法 第39条で決まります。本記事が取得した条文には、病院や診療所を別扱いにする文言はありませんでした。
原則は労働者の請求する時季に与えることで、使用者が時季を変えられるのは事業の正常な運営を妨げる場合に限られます(第5項)。その場合も、条文の言葉は「他の時季にこれを与えることができる」です。
年10日以上つく人には、使用者が基準日から1年以内に5日を時季を定めて与える義務があります(第7項)。本人が取った日数や計画的付与の日数は差し引かれ(第8項)、時季を定めるときは本人の意見を聴きます(施行規則 第24条の6)。取らせなかった違反は、第120条の30万円以下の罰金の対象です。

