30秒でわかるまとめ
- 夜勤をする看護師には専用の制度があります深夜業は法律上、午後10時から午前5時までと決められており、看護師にはこの時間帯だけの制度が3つあるのです。
- 深夜の割増賃金は、残業代とは別枠です労働基準法第37条第4項により、午後10時以降の勤務には時間外労働の割増とは別に2割5分以上の割増賃金が加算されます。
- 深夜業をする人の健診は年2回になります労働安全衛生規則は、深夜業に常時従事する人を年1回の対象から外し、6か月ごとに1回受けられる枠に移しています。
- 自分で受けた健診を職場に出せる制度です月平均4回以上の夜勤が6か月続けば、自分で受けた健診の結果を提出でき、総合労働相談コーナーにも相談できます。
※「辞めるかどうか」の判断材料(離職率、働き続けたい人の割合、設置主体による離職率の差)は看護師を辞めたいと思ったら|働き続けたい62.9%、離職率は職場で6.4pt差で扱っています。訪問看護で一人になる不安は訪問看護の一人が不安なとき|制度は「一人で判断する」ことを想定していませんを参照してください。

「夜勤」には、法律上の定義があります
まず用語をそろえます。法律に「夜勤」という言葉はありません。あるのは「深夜業」です。
労働基準法 第37条第4項「使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
労働安全衛生法 第66条の2も同じ時間帯を指して「深夜業」と定義しています。
ここが実務上のポイントです。あなたの勤務が「準夜勤」でも「深夜勤」でも「二交代の夜勤」でも、法律が数えるのは午後10時から午前5時までに実際に働いた時間です。勤務区分の名前ではありません。

制度①:深夜の割増は2割5分以上
第37条は、割増賃金を3種類に分けています。
| 種類 | 割増率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 2割5分以上5割以下(政令で定める率以上) | 第37条第1項 |
| 時間外が月60時間を超えた部分 | 5割以上 | 第37条第1項ただし書 |
| 深夜(午後10時〜午前5時) | 2割5分以上 | 第37条第4項 |
出典:労働基準法(昭和22年法律第49号)第37条
深夜の割増は、時間外労働とは別枠です。所定労働時間の中に収まっている夜勤であっても、午後10時以降に働いた分には2割5分以上の割増がつきます。
もうひとつ、計算の土台についての定めもあります。第37条第5項は「家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」としています。割増の基礎になる賃金からこれらを除く、という意味です。
あなたの給与明細で、深夜割増がどの時間数に対して計算されているか。ここは確かめられる部分です。

割増とは別に、国家公務員の看護師には、深夜の時間の長さに応じて勤務1回ごとに額が決まる夜間看護等手当があります。看護師の夜勤手当の相場|国の統計にはなく、国家公務員は勤務1回7,300円と規則で定めていますで扱っています。
制度②:健康診断が年2回になります
ここは知られていないわりに、はっきりした差があります。
| 一般の労働者 | 深夜業を含む業務に常時従事する人 | |
|---|---|---|
| 健康診断の頻度 | 1年以内ごとに1回 | 配置替えの際、および6月以内ごとに1回 |
| 根拠 | 労働安全衛生規則 第44条 | 労働安全衛生規則 第45条 |
出典:労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第44条・第45条
第45条は「第13条第1項第3号に掲げる業務」に常時従事する労働者を対象としています。その第13条第1項第3号の一覧に、「ヌ 深夜業を含む業務」が挙げられています。多量の高熱物体を扱う業務や坑内業務と同じ列に並んでいる、ということです。
条文の構造も確認しておきます。第44条は対象を「常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)」としています。深夜業をする人は第44条の対象から外れ、第45条のほうに移るという書き方です。年1回に加えてもう1回ではなく、最初から年2回の枠に入っています。
受けていない場合、それは制度が用意されていないのではなく、実施されていないということです。ここは事業者の義務なので、確認する価値があります。
深夜業の健康診断とは別に、介護・看護作業など腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する人について、国の指針は腰痛の健康診断を配置の際と6月以内ごとに1回としています。看護助手がきついとき|国の指針は、人力による人の抱上げを原則として行わせないとしていますで扱っています。
制度③:自分で受けた健康診断の結果を出せます
3つ目は、深夜業をする人にしかない仕組みです。
労働安全衛生法 第66条の2(自発的健康診断の結果の提出)は、深夜業に従事する労働者のうち省令で定める要件に該当する人は、自ら受けた健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出することができると定めています。
その要件が、労働安全衛生規則 第50条の2です。
「常時使用され、同条の自ら受けた健康診断を受けた日前六月間を平均して一月当たり四回以上同条の深夜業に従事したこと」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 常時使用され、健診を受けた日の前6か月間を平均して1か月当たり4回以上深夜業に従事した人 |
| できること | 定期健康診断の項目の全部または一部について、自分で受けた医師の健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出できる |
| 期限 | 健康診断を受けた日から3月を経過したときは提出できない(規則 第50条の3ただし書) |
出典:労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の2、労働安全衛生規則 第50条の2・第50条の3
月4回以上の夜勤が6か月続いていれば、要件を満たします。会社の健診のタイミングを待たずに、自分で受けて結果を出せる。そして出したものは、事業者が受け止めるべきものになります。
ただし3か月の期限があります。受けてから放っておくと、提出できる期間が過ぎます。ここは注意してください。
入職して間もない時期は、研修の体制も同じように確かめられます。到達目標を1年で区切るとは書かれていないことは看護師1年目がつらいとき|研修は法律が病院に求めていますで扱っています。
3つを使うために確認できること
制度を並べたので、実際に確かめられる形にします。
- 給与明細の深夜割増が、午後10時〜午前5時の実労働時間に対応しているか。勤務区分の名前ではなく時間で計算されます
- 時間外の割増と深夜の割増が、別々に計算されているか。第37条は別の項で定めています
- 健康診断が年2回実施されているか。深夜業を含む業務に常時従事しているなら、6月以内ごとに1回が事業者の義務です
- 直近6か月の夜勤回数が、月平均4回以上か。該当すれば自発的健康診断の結果を提出できます
- 自分で健診を受けた場合、受診日から3か月以内か。過ぎると提出できません
- 健診の結果に所見があったとき、その後どう扱われたか。ここから先は事業者の対応の問題になります
なお、夜勤のない働き方として産業保健を考える場合は、法令上の位置づけが病院とは違う点を先に知っておく価値があります。産業看護師の仕事内容|看護師を名指しした条文は省令の2か所だけですで扱っています。
夜勤そのものではなく職場の関係に疲れている場合は、看護師にだけ用意されている法律の側から見る方法もあります。病院に置かれた努力義務と、都道府県の相談援助は看護師の人間関係に疲れたとき|法令が使う言葉は3つありますで扱っています。
一人で抱えないための窓口
制度が実施されていない、あるいは相談しても動かないときに使える公的な窓口です。
- 総合労働相談コーナー(都道府県労働局) — 労働時間、割増賃金、健康診断など職場のトラブル全般。無料・予約不要。https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- 労働基準監督署 — 割増賃金の未払いや健康診断の未実施は、労働基準法・労働安全衛生法に関わる事項です
- こころの耳(厚生労働省) — 働く人のメンタルヘルス。電話・SNS・メールの相談窓口があります。https://kokoro.mhlw.go.jp/
身体の不調が出ているときは、健診を待たずに受診してください。制度③は、そうやって自分で受けた結果を職場に届ける経路として用意されています。
よくある質問
Q. 夜勤手当が出ていれば、深夜割増は不要ですか。
手当の名前と、法律上の割増賃金は別のものです。労働基準法 第37条第4項は、午後10時から午前5時までに労働させた場合に2割5分以上の割増賃金の支払いを義務づけています。夜勤手当がこの割増を満たしているかどうかは、手当の額と実際の深夜労働時間を突き合わせないと分かりません。個別の判断は本記事ではできないため、給与明細を持って労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談してください。
Q. 健康診断が年1回しかありません。問題ですか。
深夜業を含む業務に常時従事しているのであれば、労働安全衛生規則 第45条により配置替えの際と6月以内ごとに1回の健康診断が事業者の義務です。第44条(年1回)は第45条の対象者を明文で除いています。ただし「常時従事」に当たるかどうかは勤務実態によるため、本記事では個別の判断はできません。労働基準監督署が所管です。
Q. 自分で受けた健康診断は、いつまでに出せばいいですか。
労働安全衛生規則 第50条の3のただし書が「当該健康診断を受けた日から三月を経過したときは、この限りでない」としています。受診日から3か月以内です。提出できるのは、常時使用され、受診日の前6か月間を平均して1か月当たり4回以上深夜業に従事した人です(同 第50条の2)。
迷ったらここ
受け取れるはずのものが受け取れているかを数える
深夜業をする人には年2回の健康診断(労働安全衛生規則 第45条)と自発的健康診断(同 第66条の2)が用意されています。夜勤をする人にしかない制度なので、使えているかを先に確かめてください。
- 健康診断が年2回実施されているか(一般は年1回・規則第44条)
- 直近6か月の夜勤が月平均4回以上か(自発的健康診断の要件)
- 深夜割増が午後10時〜午前5時の実労働時間で計算されているか
まとめ
- 法律上の「夜勤」は深夜業=午後10時から午前5時まで。勤務区分の名前ではなく時間で決まる
- 制度① 深夜の割増は2割5分以上(労基法 第37条第4項)。時間外の割増とは別枠
- 制度② 健康診断は6月以内ごとに1回(安衛則 第45条)。一般の年1回(第44条)とは枠が違う
- 制度③ 自発的健康診断の結果を提出できる(安衛法 第66条の2)。要件は月平均4回以上の深夜業、期限は受診日から3か月
- 3つとも夜勤をする人にだけ用意されているもの。使っていないなら、制度が無いのではなく使われていない
- 実施されていないときの窓口は労働基準監督署・総合労働相談コーナー
制度は、夜勤のきつさそのものを消しはしません。割増がついても眠れない時間は戻らないし、健診が年2回になっても勤務は軽くなりません。それでも、いま自分がどれだけ使えていないかを数えておくことには意味があります。「きつい」を我慢の量で測るのをやめて、受け取れるはずのものが受け取れているかで測ってみてください。

