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30秒でわかるまとめ
- 訪問介護員の掛け持ちを禁じる法律は見当たりません国の指針は原則として副業・兼業を認める方向とし、制限できる場合として4つを挙げています。運営基準にも禁止の条はありません。
- 労働時間は、事業主が違っても通算されます労働基準法 第38条第1項の定めです。先に契約した職場の所定労働時間から順に足し、法定労働時間を超えた分が時間外になります。
- まず確かめるのは、今の職場の就業規則の副業の条です国のモデル就業規則は、勤務時間外に他の会社等の業務に従事できると定め、禁止・制限できる場合を4つ挙げています。
- 雇用保険と社会保険は、2か所の合算の扱いが違います雇用保険は65歳以上なら2つの事業所の合算で入れる特例があります。社会保険の加入の要件は事業所ごとに判断します。
※訪問介護の1時間当たりの賃金は訪問介護の時給の相場、1つの事業所の中での移動時間の扱いは訪問介護の移動時間に給料は出るかで扱っています。この記事は、雇われて2つ以上の職場で働く場合のルールだけを読みます。

まず条文:労働時間は「事業場を異にする場合においても」通算します
労働基準法 第38条第1項です。
「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」
出典:労働基準法(e-Gov法令API 法令ID 322AC0000000049)第38条第1項(原文どおり)
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)は、この「事業場を異にする場合」について、事業主を異にする場合をも含むとする労働基準局長通達(昭和23年5月14日付け基発第769号)を引いています。同じガイドラインのQ&Aは、こう説明しています。
「このため、労働者がA事業場でもB事業場でも雇用される場合には、原則として、その労働者を使用する全ての使用者(A事業場の使用者Aと、B事業場の使用者Bの両使用者)が、A事業場における労働時間とB事業場における労働時間を通算して管理する必要があります。」
出典:厚生労働省「『副業・兼業の促進に関するガイドライン』Q&A」(令和4年7月13日改定版)1-1(答)1(原文どおり)
同じ法人の別の事業所でも、別の法人の事業所でも、労働時間は足して数えるのが条文の組み立てです。2026年10月16日に取得したe-Govの改正履歴では、施行予定の改正版(2027年4月1日・2028年12月23日)でも第38条第1項の文言は同じでした。

掛け持ちを禁じる法律はあるか:国の指針は「原則、認める方向」です
ガイドラインは、企業の対応の基本的な考え方として、次のように書いています。
「裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。」
出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)3(1)(原文どおり)
そのうえで、裁判例で副業・兼業を禁止又は制限できるとされた場合として、①労務提供上の支障がある場合、②業務上の秘密が漏洩する場合、③競業により自社の利益が害される場合、④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、の4つを挙げています。あわせて「副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできない。」とも書いています(同 3(1)オ・3(1))。
訪問介護の事業所の側のルールも確かめました。指定居宅サービス等の運営基準(平成11年厚生省令第37号)の訪問介護の章(第4条〜第43条)には、「登録」「兼務」の語がありません。「他の事業所」という語が出てくるのは、管理者の条(第6条など)のただし書きだけでした。本記事が取得した運営基準には、訪問介護員がほかの事業所で働くことを禁じる条は見当たりませんでした。

ここが本題:今の職場の就業規則の副業の条を確かめます
法律が禁じていなくても、勤め先ごとのルールは就業規則に書かれます。ガイドラインは、働く人の側の対応として、こう書いています。
「労働者は、副業・兼業を希望する場合にも、まず、自身が勤めている企業の副業・兼業に関するルール(労働契約、就業規則等)を確認し、そのルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要がある。」
出典:同ガイドライン 4(1)第1文(原文どおり)
厚生労働省が示す「モデル就業規則」(令和7年12月版)は、第14章を副業・兼業にあて、第70条第1項をこう書いています。
「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」
出典:厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)第70条第1項(原文どおり)
第2項は、労働者からの届出に基づき、次のどれかに当たる場合には禁止又は制限することができる、としています。
| 号 | 禁止又は制限できる場合 |
|---|---|
| ① | 労務提供上の支障がある場合 |
| ② | 企業秘密が漏洩する場合 |
| ③ | 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 |
| ④ | 競業により、企業の利益を害する場合 |
出典:同 第70条第2項
モデルは「届出」を前提にした書き方です。実際の勤め先が許可制か届出制か、どの場合に制限するかは、その職場の就業規則を読むまでわかりません。モデル就業規則は国が示す例で、各事業場の就業規則そのものではありません。
通算の順番:所定労働時間は、契約した順に足します
ガイドラインは、通算のしかたを次の順番で示しています。
| 順 | 足すもの | 法定労働時間を超えた部分の扱い |
|---|---|---|
| 1 | 先に労働契約を結んだ職場の所定労働時間 | 副業・兼業の開始前に通算。超える部分は時間的に後から契約した使用者の時間外労働 |
| 2 | 後から労働契約を結んだ職場の所定労働時間 | |
| 3 | 両方の所定外労働時間 | 所定外労働が行われる順に通算。超える部分は、その時間を働かせた側の時間外労働 |
出典:同ガイドライン 3(2)ウ(イ)(ウ)、同Q&A 1-1(答)4(要約)
Q&Aは、法定労働時間を「通常の労働時間制度の場合は1週40時間、1日8時間」としています。編集部の例で、先に契約したA事業所で所定5時間、後から契約したB事業所で所定4時間働く日を考えます。5+4=9時間で、1日8時間を9−8=1時間超えます。この1時間は、後から契約したB事業所の時間外労働になります(編集部の例。所定外労働がない日の場合)。
割増賃金を払う側について、Q&Aはこう書いています。
「これらの労働基準法上の義務を負うのは、当該労働者を使用することにより、法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った(すなわち、それぞれの法定外労働時間を発生させた)使用者です。」
出典:同Q&A 1-1(答)2(原文どおり)
他の職場での時間は、働く人からの申告などで把握されます。ガイドラインは、所定労働時間や所定外労働の見込みなどを確認し、それぞれの使用者と労働者との間で合意しておくことが望ましいとしています(同 3(2)イ(イ))。
通算されないものと、上限を先に決める「管理モデル」
| 区分 | 規定 |
|---|---|
| 通算される | 法定労働時間(労基法第32条)、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件(第36条第6項第2号・第3号) |
| 通算されない | 36協定で延長できる限度時間・特別条項の1年の上限(第36条第4項・第5項)、休憩(第34条)、休日(第35条)、年次有給休暇(第39条) |
出典:同ガイドライン 3(2)ア(イ)(ウ)
ガイドラインは、手続の負担を軽くする方法として「管理モデル」も示しています。副業・兼業の開始前に、先に契約した使用者Aの法定外労働時間と、後から契約した使用者Bの労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)の合計が単月100時間未満・複数月平均80時間以内となる範囲で、それぞれの上限を決めておく方法です。Aは自らの法定外労働時間の労働について、Bは自らの事業場での労働時間の労働について、それぞれ割増賃金を払います。上限の範囲で働く限り、他の職場の実労働時間を把握しなくても労基法を守れる、という組み立てです(同 3(2)オ)。
割増賃金の率そのものは、本記事では扱っていません。
雇用保険:65歳以上は、2つの事業所の合算で入れる特例があります
ガイドラインによると、雇用保険は、同時に複数の事業主に雇用される人がそれぞれで被保険者の要件を満たす場合、生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてだけ被保険者になります(同 5(2))。そのうえで、65歳以上の人には、雇用保険法 第37条の5の特例があります。
「次に掲げる要件のいずれにも該当する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に申し出て、当該申出を行つた日から高年齢被保険者となることができる。一 二以上の事業主の適用事業に雇用される六十五歳以上の者であること。二 一の事業主の適用事業における一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。三 二の事業主の適用事業(申出を行う労働者の一の事業主の適用事業における一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間数以上であるものに限る。)における一週間の所定労働時間の合計が二十時間以上であること。」
出典:雇用保険法(e-Gov法令API 法令ID 349AC0000000116)第37条の5第1項(原文どおり)
第3号の「厚生労働省令で定める時間数」は、雇用保険法施行規則 第65条の7で5時間です。申出は本人が、届書に契約書や賃金台帳などの証明書類を添えて管轄の公共職業安定所の長に出します(同 第65条の6第1項)。厚生労働省はこの仕組みを「雇用保険マルチジョブホルダー制度」と呼び、令和4年1月1日から始まったとしています。
条文は「二以上の事業主」と書いています。同じ事業主の2つの事業所を合わせる書き方ではありません。なお、2028年10月1日に施行される改正後の条文(e-Govの未施行版)では、第2号・第3号の「二十時間」が「十時間」になっています。
健康保険・厚生年金:要件は事業所ごと、両方で入るなら本人が届け出ます
「社会保険(厚生年金保険及び健康保険)の適用要件は、事業所毎に判断するため、複数の雇用関係に基づき複数の事業所で勤務する者が、いずれの事業所においても適用要件を満たさない場合、労働時間等を合算して適用要件を満たしたとしても、適用されない。」
出典:同ガイドライン 5(2)(原文どおり)
加入の条件そのものは2026年10月に一部変わっています。中身は10月からの社会保険の加入条件の変更で扱っています。
2つの事業所の両方で被保険者になる場合は、手続があります。
「被保険者は、同時に二以上の事業所に使用されるに至ったときは、十日以内に、次に掲げる事項を記載した届書を厚生労働大臣又は健康保険組合に提出しなければならない。」
出典:健康保険法施行規則(e-Gov法令API 法令ID 215M10000008036)第37条第1項 第1文(原文どおり。ただし書と各号は省略)
| 項目 | 定め | 出典 |
|---|---|---|
| 届け出る人 | 被保険者本人。事実発生から10日以内に「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を出す | 健康保険法施行規則 第1条の3・第2条・第37条、厚生年金保険法施行規則 第1条・第2条、日本年金機構の案内 |
| 報酬月額 | 各事業所について算定した額の合算額 | 健康保険法 第44条第3項、厚生年金保険法 第24条第2項 |
| 保険料 | 決まった標準報酬月額による保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分 | 日本年金機構の案内 |
出典:各法令(e-Gov法令API)、日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」(要約)
雇用保険と違い、社会保険は2か所の時間を合算して加入する仕組みではありません。両方で加入した場合に、報酬を合算して保険料を決めます。
職場から職場への移動中の事故は、通勤災害です
「2つの就業先で働く労働者が、1つ目の就業の場所で勤務を終え、2つ目の就業の場所へ向かう途中に災害に遭った場合、通勤災害となります。」
出典:同Q&A 3-3(答)1 第1文(原文どおり)
Q&Aは、この場合は2つ目の就業先の通勤災害として給付を受け、両方の就業先の賃金額を合算して給付額を算定するとしています。令和2年9月1日以降に発生した傷病等についての扱いです。
この記事が扱っていないこと
- 副業の収入の税金と確定申告。ベビーシッターの確定申告で、給与所得者の申告の条文を扱っています。
- 派遣や、日々・短期の雇用で働く場合。介護福祉士の派遣と時給で扱っています。
- 個人で請け負う(雇われない)働き方。ガイドラインは労基法が適用されない場合は通算しないとしていますが、本記事は扱っていません。
- 運営基準の解釈通知の記述。本記事は省令の条文だけを読み、通知は取得していません。
- 割増賃金の率、社会保険の加入条件の中身。本記事は取得・確認していません。
- 個別の事業所の就業規則。事業所ごとに違うため、本記事は判断しません。
訪問介護で掛け持ちするときに確認できること
- 就業規則の副業・兼業の条。届出制か許可制か、どんな場合に制限するか。
- どちらと先に契約したか。所定労働時間を通算して超える分は、後から契約した側の時間外労働になります。
- もう一方の職場の所定労働時間と、残業の見込み。申告の方法と頻度を両方の職場と決めておけるか。
- 管理モデルを使うか。使うなら、それぞれの職場の上限時間がいくつか。
- 社会保険・雇用保険にどちらで入るか。両方で社会保険に入るなら、本人の届出が10日以内に要ります。
よくある質問
Q. 訪問介護の仕事を2つの事業所で掛け持ちできますか。
A. 本記事が取得した労働基準法・運営基準に、掛け持ちを禁じる条は見当たりませんでした。国のガイドラインは原則、副業・兼業を認める方向が適当としています。ただし勤め先の就業規則に定めがあれば、それに従うことになります。
Q. 同じ法人の別の事業所で働く場合も、労働時間は通算されますか。
A. 労働基準法 第38条第1項は「事業場を異にする場合においても」通算すると書いています。事業主が違う場合も含むとされているので、同じ法人でも別の法人でも足して数えます。
Q. 2か所合わせて1日8時間を超えたら、時間外の割増賃金はどちらが払いますか。
A. 所定労働時間どうしを足して超える部分は、時間的に後から契約した使用者の時間外労働です。所定外労働は行われた順に足し、法定外労働時間を発生させた使用者が払います。
Q. 2か所の時間を合わせれば、社会保険に入れますか。
A. ガイドラインは、社会保険の適用要件は事業所ごとに判断し、合算して要件を満たしても適用されないとしています。雇用保険は、65歳以上で2つの事業主に雇われる人について、合算で入れる特例(第37条の5)があります。
Q. 副業を届け出ると、不利に扱われますか。
A. ガイドラインは「副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできない。」と書いています。
迷ったらここ
掛け持ちは就業規則の副業の条から
訪問介護の掛け持ちを禁じる条は見当たりませんが、労働時間は事業主が違っても通算されます(労働基準法 第38条第1項)。国の指針は原則、副業・兼業を認める方向が適当としています。
- 就業規則の副業・兼業の条が届出制か許可制か、どんな場合に制限するか
- どちらの職場と先に契約したか、もう一方の所定労働時間と残業の見込み
- 社会保険・雇用保険にどちらの職場で入るか
まとめ
訪問介護の掛け持ちについて、本記事が取得した法令と運営基準に禁じる条は見当たりませんでした。国のガイドラインは原則、副業・兼業を認める方向が適当とし、制限できる場合として4つを挙げています。実際に働けるかは、今の職場の就業規則の副業の条で決まります。
働く時間は、労働基準法 第38条第1項により事業主が違っても通算されます。所定労働時間は契約した順に足し、超えた分は後から契約した側の時間外労働です。
雇用保険は65歳以上なら2つの事業所の合算で入れる特例があり、社会保険は事業所ごとに判断します。両方で社会保険に入るなら、本人が10日以内に届け出ます。

