30秒でわかるまとめ
- 訪問介護員の移動時間は、条件つきで労働時間に当たります移動を命じられ、その時間の自由利用が保障されていない場合には労働時間に該当する、と国の通達が書いています。
- 利用者宅から次の利用者宅への移動も、通達が例に挙げた時間です通常の移動に要する時間程度である場合には、労働時間に該当するものと考えられる、とされています。
- 賃金は、移動時間も通算した時間数で算定するとされています賃金はいかなる労働時間についても支払われなければならない、と通達は書いています。水準は労使の話合いで決まります。
- 交通費は、最低賃金との比較に入れません実費弁償として支給される旅費や交通費は、一般的には賃金とは認められないので算入しない、とされています。
※訪問介護員という仕事そのものはホームヘルパーとは、利用者宅で頼まれてもできないことは訪問介護でできないことで扱っています。この記事は、移動時間の扱いを定めた国の通達だけを読みます。

まず出典:訪問介護の働き方には、専用の通達があります
読むのは、厚生労働省労働基準局長が都道府県労働局長にあてて出した通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(平成16年8月27日 基発第0827001号)です。
通達は冒頭で、訪問介護の働き方の特徴をこう書いています。労働者の多くが通常単独で利用者宅を訪問するため、「使用者が労働者を直接に指揮しその勤務状況を把握する機会が限られる」。そのうえで、賃金、労働時間等に係る法定労働条件が適正に確保されていない状況がみられる、としています。
| 項目 | 通達の書き方 |
|---|---|
| 対象になる人 | 介護保険法に定める訪問介護に従事する訪問介護員若しくは介護福祉士など。介護保険法の適用の有無にかかわらない |
| 労働者に当たるか | 介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等は、一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労働基準法第9条の労働者に該当するものと考えられる |
| 委託・委任という呼び方の場合 | 労働者に該当するかどうかは、使用者の指揮監督等の実態に即し総合的に判断する |
| 多数を占める働き方 | 勤務表で所定労働時間が非定型的に特定される「非定型的パートタイムヘルパー」 |
出典:「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」記の1(1)(2)
通達は、非定型的パートタイムヘルパーについて、労働時間の把握や賃金の算定等に関して「労働基準法等関係法令上の問題点が多くみられること」と書いています。移動時間の話は、ここから始まります。

ここが本題:移動時間が労働時間に当たる条件
通達は記の2(2)で、移動時間・業務報告書等の作成時間などが労働時間に該当する場合には「適正にこれを把握する必要があること(法第32条)」としています。その最初が移動時間です。
「移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること。」
出典:「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」記の2(2)ア 第1段落(原文どおり)
続く段落で、具体例が示されています。
「具体的には、使用者の指揮監督の実態により判断するものであり、例えば、訪問介護の業務に従事するため、事業場から利用者宅への移動に要した時間や一の利用者宅から次の利用者宅への移動時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合には労働時間に該当するものと考えられること。」
出典:同 記の2(2)ア 第2段落(原文どおり)
2つの段落を分けて並べると、こうなります。
| 要素 | 通達の言葉 |
|---|---|
| 移動時間の範囲 | 事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間 |
| 条件1 | 使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ |
| 条件2 | 当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる |
| 判断の仕方 | 使用者の指揮監督の実態により判断する |
| 例1 | 事業場から利用者宅への移動に要した時間 |
| 例2 | 一の利用者宅から次の利用者宅への移動時間 |
| 例の限定 | その時間が通常の移動に要する時間程度である場合 |
出典:同 記の2(2)ア。表の区切りは編集部

言い回しを読み分けます:「場合には」と「考えられる」
通達は、移動時間をいつでも労働時間とする書き方はしていません。2つの段落で、語尾が違います。
| 箇所 | 語尾 | 読み方 |
|---|---|---|
| 第1段落(条件) | 労働時間に該当するものであること | 2つの条件を満たすと認められる場合には、という条件つき |
| 第2段落(例) | 労働時間に該当するものと考えられること | 通常の移動に要する時間程度である場合には、という限定つき |
出典:同 記の2(2)ア。右欄は編集部の整理
通達が例に挙げているのは、事業場から利用者宅への移動と、利用者宅から次の利用者宅への移動の2つです。自宅から最初の利用者宅へ向かう時間や、最後の利用者宅から自宅へ帰る時間については、この例の中に書かれていません。
そうした時間がどうなるかは、第1段落の条件(移動を命じられたか、自由利用が保障されていないか)と、使用者の指揮監督の実態で判断されることになります。本記事は、個々の働き方や個別の事業所の取扱いが労働時間に当たるか、法令に反するかを判断できません。
報告書・待機・研修の時間も、同じ節にあります
記の2(2)は、移動時間のあとに3つの時間を続けています。通達は、非定型的パートタイムヘルパー等が「訪問介護の業務に直接従事する時間以外の時間を労働時間としていないもの」が認められる、と書いたうえで、次のように整理しています。
| 記号 | 時間 | 労働時間に該当するとされる場合 |
|---|---|---|
| イ | 業務報告書等の作成時間 | 作成が介護保険制度や業務規定等により業務上義務付けられているものであって、使用者の指揮監督に基づき、事業場や利用者宅等において作成している場合 |
| ウ | 待機時間 | 使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合 |
| エ | 研修時間 | 使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合。明示的な指示がなくても、制裁等の不利益な取扱いがある場合や、実質的に使用者から出席の強制があると認められる場合など |
出典:同 記の2(2)イ〜エ
待機時間は、移動時間と同じ「命じ」「自由利用が保障されていない」の2つで組み立てられています。報告書は「業務上義務付けられている」か、研修は「指示」や「出席の強制」があるかが軸です。
記の2(7)には、労働時間数等を労働者が作成する業務報告書等により把握している場合について、使用者は、労働時間の実態を正しく記録し、適正に報告を行うことについて、当該労働者に対し十分な説明を行うこと、ともあります。
賃金は「通算した時間数」で算定するとされています
給料の話は、記の2(4)「賃金の算定」です。通達はまず、移動時間等について「賃金支払の対象としているのかどうかが判然としないもの」が認められる、と書きます。そのうえで、こう続けます。
「賃金はいかなる労働時間についても支払われなければならないものであるので、労働時間に応じた賃金の算定を行う場合は、訪問介護の業務に直接従事する時間のみならず、上記(2)の労働時間を通算した時間数に応じた賃金の算定を行うこと。」
出典:同 記の2(4)ア(原文どおり。前段の「訪問介護事業においては、……認められるところであるが、」は省略)
「上記(2)の労働時間」とは、前の章で見た移動時間・業務報告書等の作成時間・待機時間・研修時間のうち、労働時間に該当するものです。
では、移動時間の単価は、介護をしている時間と同じでなければならないのか。通達は次のように書いています。
「訪問介護の業務に直接従事する時間と、それ以外の業務に従事する時間の賃金水準については、最低賃金額を下回らない範囲で、労使の話合いにより決定されるべきものであること。」
出典:同 記の2(4)イ 第1段落(原文どおり)
同じ単価にしなければならない、とは書かれていません。書かれている下限は最低賃金額で、その範囲で労使の話合いにより決まる、という組み立てです。
国の賃金の統計が示す訪問介護の1時間当たりの額(短時間労働者で1,787円)と、その数字から移動時間の扱いが読み取れない理由は訪問介護の時給の相場|統計の1時間当たりは1,787円で、施設の介護職員より426円高い数字ですで扱っています。
最低賃金と比べるときの計算の仕方
最低賃金法 第4条第1項は、こう定めています。
「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。」
出典:最低賃金法(e-Gov法令API 法令ID 334AC0000000137)第4条第1項(原文どおり)
通達は、訪問介護の賃金が最低賃金額以上かどうかの比べ方を、賃金の決まり方ごとに示しています。
| 賃金の決まり方 | 比べ方 |
|---|---|
| 時間によって定められた賃金(時間給) | その時間給を、最低賃金額(時間額)と比べる |
| 日、週、月によって定められた賃金 | その金額を当該期間における所定労働時間数で除した時間当たりの金額を、最低賃金額(時間額)と比べる |
| 基本給が時間給、職務手当等が月によって定められた賃金など、両方で構成される場合 | それぞれの方法で時間当たりの金額を算出し、その合計額を最低賃金額(時間額)と比べる |
出典:同通達 記の2(4)イ(最低賃金法第4条、最低賃金法施行規則第2条を引いている)
そして、交通費の扱いが別に書かれています。
「訪問介護労働者は、利用者宅に移動することを前提に訪問介護の業務に従事するものであり、通常その移動に要する費用については、事業の必要経費との性格を有し、事業場が実費弁償として支給している旅費、交通費等は、一般的には労働の対償ではないことから賃金とは認められないので、最低賃金額との比較に当たっては、比較対象の賃金額には算入しないこと。」
出典:同通達 記の2(4)ウ(原文どおり)
「労働の対償」という言葉は、労働基準法 第11条の賃金の定義から来ています。
「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」
出典:労働基準法(e-Gov法令API 法令ID 322AC0000000049)第11条(原文どおり)
移動時間の分の賃金と、移動にかかる費用(交通費等)は、別のものとして扱われています。通達は、交通費等を賃金に数えない、という整理をしています。
同じ通達にある、キャンセル時の休業手当
通達は、利用者からの利用申込みの撤回(キャンセル)を理由として労働者を休業させた場合に、「休業手当を支払っていないものが認められる」とも書いています。
| 場面 | 通達の書き方 |
|---|---|
| 勤務表で労働日と勤務時間帯が特定された後に、使用者の責めに帰すべき事由で休業させた場合 | 休業手当としてその平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない(法第26条) |
| 利用申込みの撤回・利用時間帯の変更を理由に休業させる場合 | 他の利用者宅での勤務の可能性などを含めて判断し、使用者として行うべき最善の努力を尽くしたと認められない場合には、休業手当の支払が必要 |
| 他の利用者宅で勤務させる等、代替業務の提供を行った場合 | 休業手当の支払は必要ない |
| 1日の一部だけ休業させた場合 | 現実に就労した時間の賃金が1日分の平均賃金の100分の60に満たないときは、その差額を支払わなければならない |
出典:同通達 記の2(3)
キャンセルが出たら自動的に無給になる、という書き方ではありません。代わりの仕事の提供を含めて、使用者側が何をしたかで判断が分かれる組み立てです。
この記事が扱っていないこと
- 最低賃金の金額。地域別の最低賃金額は取得していません。本記事は比べ方だけを扱っています。
- 移動時間の賃金の相場や、事業所ごとの支払い方の実態。国の統計や調査を取得していないため、数字は書いていません。
- 自宅から最初の利用者宅、最後の利用者宅から自宅への移動の扱い。通達の例に書かれていないため、結論を書いていません。
- 厚生労働省のリーフレット「訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために」の内容。掲載ページとPDFは取得しましたが、PDFの本文が画像で、文字として照合できなかったため引用していません。
- 介護報酬の上で移動時間がどう扱われるか。事業所の収入の話で、働く人の労働時間の話とは別の領域です。本記事は取得していません。
- 通達にある、労働条件の明示・年次有給休暇・就業規則・労働者名簿と賃金台帳の項目。本記事は移動時間と賃金に絞りました。
訪問介護の求人を見るときに確認できること
- 時給が「訪問1件あたり」か「時間あたり」か。時間あたりなら、どの時間が計算に入るのかを聞けます。
- 移動時間を労働時間として扱っているか、その単価はいくらか。通達は、水準は最低賃金額を下回らない範囲で労使の話合いにより決まるとしています。
- 交通費は賃金とは別に出るか。通達は、実費弁償の交通費等を最低賃金との比較に入れないとしています。
- 記録や報告書を書く時間、待機の時間、研修の時間の扱い。通達は、移動時間と同じ節でこの3つを取り上げています。
- 利用者のキャンセルが出たときの扱い。代わりの訪問先が提示されるのか、休業手当の扱いはどうなるのかを聞けます。
よくある質問
Q. 訪問介護の移動時間に給料は出ますか。
A. 通達は、使用者が業務に従事するために必要な移動を命じ、その時間の自由利用が保障されていないと認められる場合には、移動時間は労働時間に該当するとしています。そして、賃金は移動時間等を通算した時間数に応じて算定するとしています。個々の働き方が当たるかどうかは、使用者の指揮監督の実態により判断されます。
Q. 利用者宅から次の利用者宅への移動はどうですか。
A. 通達は、一の利用者宅から次の利用者宅への移動時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合には、労働時間に該当するものと考えられる、としています。
Q. 移動時間の時給が、介護をしている時間より低いのは問題ですか。
A. 通達は、訪問介護の業務に直接従事する時間と、それ以外の業務に従事する時間の賃金水準は、最低賃金額を下回らない範囲で、労使の話合いにより決定されるべきものとしています。同じ単価にすることまでは書かれていません。
Q. 交通費が出ていれば、移動時間の分は払われたことになりますか。
A. 通達は、実費弁償として支給している旅費、交通費等は、一般的には労働の対償ではないことから賃金とは認められない、としています。最低賃金額との比較にも算入しません。
Q. 自分の事業所の扱いがおかしいと感じたら、どこで確かめられますか。
A. この通達は厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長にあてて出され、監督指導時などにこの内容を徹底するよう求めています。個々の事情は、お近くの労働基準監督署などの窓口で確かめられます。本記事は個別の事業所の取扱いが法令に反するかどうかを判断しません。
迷ったらここ
移動時間が時給の計算に入るかを聞く
国の通達は、移動を命じられ自由利用が保障されていない移動時間を労働時間に当たるとし、賃金は移動時間等を通算した時間数で算定するとしています。単価は最低賃金額を下回らない範囲で労使の話合いにより決まります。
- 時給は訪問1件あたりか時間あたりか。移動時間・待機時間・記録の時間は計算に入るか
- 移動時間の単価は介護をしている時間と同じか、別に決まっているか
- 利用者のキャンセルが出たとき、代わりの訪問先や休業手当の扱いはどうなるか
まとめ
訪問介護の移動時間の扱いは、「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(平成16年8月27日 基発第0827001号)に書かれています。
移動時間は、使用者が移動を命じ、その時間の自由利用が保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するとされています。事業場から利用者宅、利用者宅から次の利用者宅への移動は、通常の移動に要する時間程度である場合には労働時間に該当するものと考えられる、という書き方です。
賃金は、移動時間等を通算した時間数に応じて算定するとされています。単価は最低賃金額を下回らない範囲で労使の話合いにより決まり、実費弁償の交通費は最低賃金との比較に入れません。

