106万円の壁が撤廃 10月からパートの働き方のルールが4つ変わる

106万円の壁が撤廃 10月からパートのルール変更
目次

30秒でわかるまとめ

  • パートの介護職や保育士に関わる4つの変更が始まりました10月から、社会保険の加入条件、パートの待遇のルール、カスハラ対策、最低賃金の4つが変わりました。
  • いわゆる106万円の壁が撤廃されます月8.8万円以上という賃金の条件がなくなり、週20時間以上働けば社会保険の対象になります。勤め先の規模の条件は残ります。
  • パートにも手当や休暇の考え方が9項目示されました家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇などについて、正社員との不合理な差を認めない考え方が国の指針に加わりました。
  • 待遇差の説明を求められることが明示されますパートや有期契約で雇うとき、正社員との待遇の違いの説明を求められることを、労働条件として示す義務ができました。

厚生労働省は、2026年10月に実施される主な制度変更をまとめて公表している。働く人に関わるものとして、短時間労働者の社会保険の賃金要件の撤廃、パートタイム・有期雇用労働者の「同一労働同一賃金」のルールの改正、カスタマーハラスメント対策の義務化、最低賃金の改定が並ぶ。介護・看護・保育・給食の職場は、パートや契約職員として働く人が多い。そうした人と、これからパートで働く先を探す人に向けて、10月から何が変わったかを整理する。

10月に変わった4つのルール

変わったこと主な対象
社会保険の賃金要件(月8.8万円)の撤廃週20時間以上働く短時間労働者
同一労働同一賃金のルールの改正パート・有期契約で働く人とその事業主
カスハラ対策の義務化すべての事業主
最低賃金の改定すべての働く人と使用者

出典:厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」

なお、6月に成立した社会福祉法などの改正(有料老人ホームの登録制の導入など)は、この10月の一覧には入っていない。10月に始まったのは、雇用と年金のルールの変更である。職種を問わず、パートや契約職員として働く人ほど影響が大きい。

ちはる

10月から、介護の制度が大きく変わったのかと思っていました。

熊先生

10月に始まったのは、働き方と保険のルールのほうなんだ。

ちはる

パートで働いている人ほど、関係がありそうですね。

週20時間以上なら社会保険の対象に

パートなどの短時間労働者が社会保険(厚生年金・健康保険)に入るには、これまで4つの条件があった。①所定内賃金が月8.8万円以上(賃金要件)、②週の所定労働時間が20時間以上、③勤め先の従業員が51人以上(企業規模要件)、④学生ではないこと、である。

このうち①の賃金要件が、10月に撤廃される。月8.8万円は年収に直すと約106万円で、いわゆる「106万円の壁」として意識されてきた線である。厚生労働省によると、すべての都道府県で最低賃金が時給1,016円を超えたため、週20時間以上働けば月8.8万円以上になり、賃金要件は自動的に満たされる。そこで賃金要件そのものをなくすことにした。

時給1,016円で週20時間働くと、月の賃金は約8.8万円になる(1,016円×20時間×52週÷12か月で約88,053円。編集部計算)。

週の所定労働時間が20時間未満であれば、原則として対象にはならない。残業などで一時的に週20時間を超えても加入にはならないが、週20時間以上で働く状態が2か月を超えて続くと、対象になることがある。一方で、年収130万円以上になると、週20時間未満でも配偶者の扶養から外れる「130万円の壁」は残っている。

勤め先の規模の条件は2035年まで残る

③の企業規模要件は、10月に一度になくなるわけではない。10年かけて段階的に縮小・撤廃される。

時期対象になる勤め先の規模
現在従業員51人以上
2027年10月から従業員36人以上
2029年10月から従業員21人以上
2032年10月から従業員11人以上
2035年10月から従業員10人以下も

出典:厚生労働省「短時間労働者の社会保険(厚生年金保険・健康保険)の加入拡大のポイント」(2026年1月作成)。従業員数は厚生年金保険の被保険者数

新しく加入の対象になる人の手取りが急に減らないよう、保険料調整制度も始まった。従業員50人以下の企業などで新たに対象となる短時間労働者のうち、標準報酬月額が12.6万円以下の人について、事業主が保険料の負担割合を増やして本人の負担を軽くできる。期間は3年間で、事業主が追加で負担した分は全額を制度全体で支援する。

パートの手当と休暇に9項目の考え方

パートタイム・有期雇用労働法は、同じ職場の正社員とパート・有期契約の人のあいだで、基本給や手当、福利厚生などに不合理な差を設けることを禁じている(いわゆる同一労働同一賃金)。その考え方と具体例を示した「同一労働同一賃金ガイドライン」が改正され、10月1日から適用された。施行から5年がたったことを踏まえた見直しで、改正の告示は4月28日に公布されていた。

新しく記載が加わったのは、賞与、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞の9項目である。たとえば次のように書かれた。

  • 契約の更新を繰り返すなど、継続して働くことが見込まれるパート・有期契約の人には、正社員と同じ家族手当を支給しなければならない
  • パート・有期契約の人にも、正社員と同じ夏季冬季休暇を与えなければならない
  • 正社員に病気休職中の給与を保障しているなら、継続して働くことが見込まれるパート・有期契約の人にも同じ保障をしなければならない
  • 賞与・退職手当は、目的がパート・有期契約の人にも当てはまるのに、働き方の違いに応じた釣り合いのとれた支給をしない場合、不合理とされる可能性がある

あわせて、差をなくすときに正社員の条件を下げるのではなく、パート・有期契約の人の条件を上げることが求められる、とも明記された。「正社員の人材を確保するため」という目的だけで、待遇の差が不合理でないと当然に認められるわけではない、という考え方も示されている。

ちはる

パートにも家族手当や夏季休暇が出る、ということですか。

熊先生

正社員にある手当なら、出さない理由が問われるんだ。

熊先生

家族手当は、続けて働く見込みがあることが条件だね。

ちはる

正社員との違いを、自分から確かめてもいいんですね。

待遇差の説明を求められると明示

パートや有期契約の人を雇い入れるときに示す労働条件にも、項目が1つ加わった。これまでの「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」に加えて、正社員との待遇の違い(内容・理由)について説明を求めることができる旨を明示しなければならない。違反した場合は10万円以下の過料の対象になる。

説明を求められた事業主は、待遇差の内容や理由を説明しなければならない。説明しても納得できないときや、取り合ってもらえないときの相談先として、厚生労働省は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)を案内している。

カスハラ対策と最低賃金も10月から

10月からは、カスタマーハラスメントと、求職者などへのセクシュアルハラスメントを防ぐための雇用管理上の措置が、すべての事業主に義務づけられた。病院、介護施設、保育所なども対象になる。求められる措置の中身は病院のカスハラ対策の記事で、訪問介護のヘルパーが受けているハラスメントの実態は訪問介護の記事で整理している。

最低賃金は10月1日以降、都道府県ごとに順に改定される。すべての都道府県で時間額54円から65円の引き上げとなり、全国の加重平均は1,177円になる。県ごとの金額と、引き上げが始まる日は最低賃金の記事にまとめている。

ちはる

給料も保険も、10月を境に見直したほうがよさそうです。

熊先生

まずは、労働条件通知書の中身を見てみるといいね。

迷ったらここ

パートの待遇を正社員と比べる

10月から、パートでも週20時間以上なら社会保険の対象になり、手当や休暇の考え方も示されました。パートで働く先を選ぶときは、時給だけでなく、次の点を正社員と比べて確かめておくと安心です。

  • 週の所定労働時間と、社会保険に入るかどうか
  • 家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の扱い
  • 賞与や退職手当があるか、正社員とどう違うか
  • 待遇差の説明を求めるときの窓口
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編集部の見方:パートの条件を比べ直す

ここからは編集部の見方である。10月の変更は、介護・看護・保育・給食の職場で、パートや有期契約で働く人の条件を正社員の側へ寄せていく方向でそろっている。賃金要件の撤廃で、週20時間以上のパートは月収にかかわらず社会保険に入る。ガイドラインの改正で、家族手当や夏季冬季休暇などについて、正社員との差を説明できるかが問われる。

一方で、社会保険に入れば保険料が引かれ、手取りは減りうる。厚生年金が終身で受け取れる、病気やけがで休んだときの給付が手厚くなる、といった利点と合わせて考える必要がある。勤め先の規模の条件はまだ残っており、小さな事業所で働く人が対象になるのは段階的に先になる。

パートで働く先を探す人は、時給の高さだけで比べないほうがよい。週の所定労働時間、社会保険の有無、手当と休暇の扱いまでそろえて比べると、10月からの変化が条件の差としてはっきり見える。

出典

一次資料

編集部メモ

  • この記事は、厚生労働省が公表した10月の制度変更のうち、医療・福祉の職場で働く人に関わるものを選んで整理しました。生活扶助基準の見直しや、育児期間の国民年金保険料の免除など、ほかの変更は扱っていません。
  • 賃金要件の撤廃の時期は、厚生労働省の10月の制度変更の一覧によります。2026年1月作成のリーフレットでは「10月に撤廃する予定」とされていました。
  • 最低賃金法の減額特例の対象となる短時間労働者で、月8.8万円未満の人は、原則として社会保険に加入せず、本人の希望で任意に加入できるとされています。本文では扱っていません。
  • 「月約8.8万円」の計算(1,016円×20時間×52週÷12か月)は編集部によるものです。
  • 6月に成立した社会福祉法などの改正は、10月の制度変更の一覧に入っていないことを確かめました。有料老人ホームの登録制がこの改正に含まれることは、第268回介護給付費分科会の資料で確かめています。
  • 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて厚生労働省の公表資料から取っています。
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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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