調理師が夏の厨房で暑いとき|令和7年6月から、熱中症の報告体制と手順の整備が事業者の義務になりました

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目次

30秒でわかるまとめ

  • 調理師の夏の厨房の暑さは、職場の体制から確かめられます労働安全衛生規則 第612条の2が、熱中症の報告の体制と、悪化を防ぐ手順を整えることを事業者に定めています。
  • 報告先と対応の手順は、事業者が前もって決めて知らせます作業の前に、報告を受ける人の連絡先や、作業からの離脱・身体の冷却などの手順を定め、働く人に周知します。
  • 対象の目安はWBGT28度以上か、気温31度以上の場所ですそこで継続して1時間以上か、1日4時間を超えて行われる見込みの作業です。当たらない場合も準じた対応に努めます。
  • 業種別の件数に、飲食店や給食の区分はありません職場の熱中症の死傷者は2025年に1,803人でした。業種は建設業・製造業などに分かれ、飲食店の区分はありません。

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※給食の調理場の衛生面のルールは大量調理施設衛生管理マニュアル、給食委託の仕事のきつさの整理は給食委託がきついときで扱っています。

野菜を持つ調理師(調理師調理員)

先に断ります:この記事は熱中症の手当てや治療を書きません

夏の厨房では、火口や釜、食器洗浄機のそばで作業が続きます。「暑いのは仕方がない」と我慢している人もいるかもしれません。

この記事が扱うのは、職場が熱中症に備えて何を整えることになっているかだけです。熱中症の見分け方や手当て、治療は書きません。体調がおかしいと感じたら、我慢せずに周りの人や職場の責任者に伝えてください。

材料は、e-Govで確かめた労働安全衛生規則(現行版)、厚生労働省の施行通達(令和7年5月20日 基発0520第6号)、「職場における熱中症防止対策のためのガイドライン」(令和8年3月18日 基発0318第1号)、厚生労働省の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(2025年・確定値)です。

食品をチェックして困る栄養士

まず条文:第612条の2は「報告の体制」と「悪化を防ぐ手順」の2つです

労働安全衛生規則の第五章「温度及び湿度」に、熱中症の条文が加わりました。改正した省令の附則は「この省令は、令和七年六月一日から施行する。」としています。第1項は報告の体制です。

「事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する作業従事者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する作業従事者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の作業従事者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する作業従事者に対し、当該体制を周知させなければならない。」

出典:労働安全衛生規則(e-Gov法令API 法令ID 347M50002000032)第612条の2第1項(原文どおり)

第2項は、悪化を防ぐための手順です。

「事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する作業従事者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。」

出典:労働安全衛生規則 第612条の2第2項(原文どおり)

どちらも主語は事業者で、「あらかじめ」整えて「周知させなければならない」と書かれています。施行通達は、この条が労働安全衛生法 第22条に基づくもので、「個々の事業者に対し、措置義務が課されるものであること」としています(通達 第3の1(1)カ)。

夏の厨房の暑さは、働く人が一人で耐えるものとしてではなく、事業者が前もって備えるものとして条文に書かれています。

調理員に教える先輩

ここが本題:対象は、WBGT28度以上か気温31度以上の場所での作業です

条文の「暑熱な場所」と「熱中症を生ずるおそれのある作業」が何を指すかは、施行通達が示しています。

「「暑熱な場所」とは、湿球黒球温度(WBGT)が28度以上又は気温が31度以上の場所をいい、必ずしも事業場内外の特定の作業場のみを指すものではなく、出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含む趣旨であること。」

「また、「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、上記の場所において、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業をいうこと。」

出典:労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について(令和7年5月20日 基発0520第6号)第3の1(1)イ(原文どおり)

目安通達の内容(要約)根拠
場所湿球黒球温度(WBGT)が28度以上又は気温が31度以上第3の1(1)イ
時間継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる第3の1(1)イ
判断の仕方原則として作業が行われる場所で湿球黒球温度又は気温を実測して判断する第3の1(1)ウ

出典:基発0520第6号 第3の1(1)イ・ウ

厨房が目安に当たるかどうかは、その厨房で測ってみないとわかりません。通達は、屋外で天気予報などを使ってよい場合を挙げていますが、原則は実測としています。

目安に当たらない場合について、通達は次のように書いています。

「なお、熱中症を生ずるおそれのある作業に該当しない場合であっても、作業強度や着衣の状況によっては、熱中症のリスクが高まることから、事業者は、改正省令に準じた対応を行うよう努めること。」

出典:基発0520第6号 第3の1(1)ウ(原文どおり)

調理着や帽子、前掛けを着けて火の前に立つ仕事は、まさに「着衣の状況」が関わる作業です。数字が目安に届かない日も、準じた対応に努めることとされています。

体制と手順は、どこまで整えることになっているか

施行通達は、報告の体制と手順の中身を次のように説明しています。

項目通達の内容(要約)根拠
報告の体制作業場の責任者等報告を受ける者の連絡先及び当該者への連絡方法を定め、明示し、作業の間、随時報告を受けられる状態を保つ第3の1(2)ア
早く見つける方法責任者等による巡視、2人以上の作業者が互いの健康状態を確認するバディ制、定期連絡などが推奨される方法として挙げられている第3の1(2)ア
周知の方法見やすい箇所への掲示、メールの送付、文書の配布、朝礼での口頭の伝達など。必要に応じて複数の手段を組み合わせる第3の1(2)ウ
手順事業場の体制や作業実態を踏まえて合理的に実施可能な内容とする。手順例によらず、事業場独自の手順を定めてもよい第3の1(3)エ
連絡先緊急連絡網や、搬送先となる医療機関の連絡先(所在地を含む)を定めた場合は、手順に記載することが望ましい第3の1(3)オ

出典:基発0520第6号 第3の1(2)ア・ウ、(3)エ・オ

通達は、条文の「作業従事者」に当たる「当該作業に従事する者」について、「労働者だけでなく、労働者と同一の場所において当該作業に従事する労働者以外の者を含むものであること」としています(第3の1(1)エ)。

また、周知した結果の記録の保存までは「法令では求めていない」とも書いています(第3の1(2)ウ)。働く側から見て確かめやすいのは、記録よりも、報告先が掲示などで実際に知らされているかどうかです。

厨房の暑さそのものには、第606条と第617条があります

第612条の2は、熱中症が起きたときに備える条文です。暑さそのものを和らげる定めは、同じ第五章に前からあります。

「事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない。」

出典:労働安全衛生規則 第606条(原文どおり)

施行通達は、この第606条の「有害のおそれがあるもの」には、屋内作業場であって「熱中症を生ずるおそれのある作業」が行われるものが含まれるとしています(通達 第3の2(1))。

「事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。」

出典:労働安全衛生規則 第617条(原文どおり)

厨房は屋内の作業場です。冷房や通風による温湿度の調節と、塩と飲料水の備え付けは、熱中症の条文ができる前から規則に書かれていた事業者の措置です。

国のガイドラインが挙げる対策:調理場の排気も名指しされています

職場の熱中症対策は、以前は「職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年4月20日 基発0420第3号)に沿って進められてきました。この要綱は、令和8年3月18日の通達(基発0318第1号)で廃止され、「職場における熱中症防止対策のためのガイドライン」に置き換わっています。

ガイドラインは、安衛則に定められた措置は「実施しなければならない」としたうえで、それ以外の対策を、事業者が業種・業態に応じて選ぶ形にしています(第1の1・3)。厨房に当てはまりそうな項目を並べます。

区分ガイドラインの内容(要約)根拠
作業環境管理発熱体と作業従事者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設ける第3の2(1)ア
適度な通風又は冷房を行うための設備などを設け、既にある冷房設備等はその機能を点検する。屋内では除湿機能があることが望ましい第3の2(1)ウ
作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所を確保する。足を伸ばして横になれる広さを確保する第3の2(2)・イ
作業管理作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での作業を連続して行う時間を短縮するよう努める第3の3(1)ア
暑さに慣れる暑熱順化の期間を計画的に設ける。新規入職者などが新たに作業を行う場合は、通常、暑熱順化していないことに留意する第3の3(2)
多量の発汗を伴う作業場では、飲料水、スポーツドリンク、経口補水液、塩飴等を備え付けなければならない(安衛則第617条)第3の3(4)
健康管理当日の作業開始前に、朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良等の健康状態を確認する第3の4(3)

出典:職場における熱中症防止対策のためのガイドライン(令和8年3月18日 基発0318第1号 別紙)第1の1・3、第3の2〜4

ガイドラインは、業種・作業別の対応例の中で、調理場を名指ししています。

「調理場では、グリスフィルターの清掃により排気機能を確保し、温度上昇を抑制する。」

出典:同ガイドライン 第3の3(7)オ(原文どおり)

レンジフードの油汚れを落とすことが、衛生だけでなく、暑さの対策として国の文書に書かれています。ガイドラインの対策の多くは「望ましい」「努める」の書き方で、第612条の2のような「しなければならない」とは強さが違います。この2つは分けて読む必要があります。

数字で見る:2025年の死傷者は1,803人。飲食店・給食の区分はありません

厚生労働省の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)は、死亡者と休業4日以上の業務上疾病者をあわせて「死傷者数」として数えています。2025年の業種別は次のとおりです。

業種死傷者数うち死亡者数
建設業292人5人
製造業365人2人
運送業220人1人
警備業199人3人
商業237人2人
清掃・と畜業121人1人
農業34人2人
林業9人0人
その他326人3人
計1,803人19人

出典:厚生労働省「2025年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」2 業種別発生状況の表。出典は労働者死傷病報告

この表に、飲食店や給食、調理の業務に当たる区分はありません。飲食店や給食施設がどの区分に数えられているかも、資料には書かれていません。厨房で働く人だけの件数は、この資料からは出せません。

資料は、2025年の死傷者数1,803人を、統計を取り始めた2005年以降で最多としています。死亡者19人の事例については、被災場所が屋内だったのが4件、屋外が15件でした。

また、19件のうち、第612条の2第1項の報告体制の整備・周知の実施を確認できなかったことが明らかな事例が2件、第2項の措置手順の作成・周知の実施を確認できなかったことが明らかな事例が3件あった、としています。

衛生管理マニュアルの「25℃以下」は、食品衛生の目安です

給食の調理場では、厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」にも温度と湿度の記述があります。

「施設は十分な換気を行い、高温多湿を避けること。調理場は湿度80%以下、温度は25℃以下に保つことが望ましい。」

出典:大量調理施設衛生管理マニュアル(平成9年3月24日付け衛食第85号別添、最終改正:平成29年6月16日付け生食発0616第1号)Ⅱ5(2)⑤(原文どおり)

この記述は、食中毒を防ぐためのマニュアルの「施設設備の管理」の中にあり、書き方は「望ましい」です。働く人の熱中症を防ぐための基準とは、根拠も目的も別のものです。マニュアル全体の位置づけは大量調理施設衛生管理マニュアルで扱っています。

この記事が扱っていないこと

  • 熱中症の症状の見分け方、手当て、治療。医学的な内容は扱っていません。
  • 厨房のWBGTや気温の実測値。厨房の暑さを全国で測った国の資料は取得していません。
  • 飲食店・給食施設・調理の仕事だけの熱中症の件数。業種別の資料に区分がなく、取得していません。
  • ガイドラインの表にあるWBGT基準値や着衣補正値の数字。作業の強さや服装で変わる表で、本記事では扱っていません。
  • 個々の職場が規則に違反しているかどうかの判断や、労働基準監督署への相談の手続。
  • 民間の調査による厨房の暑さの数字。一次資料ではないため使っていません。

調理師として職場で確認できること

  • 熱中症が疑われるときの報告先が知らされているか。責任者の名前と連絡方法が、掲示や朝礼などで伝えられているかを見ます。
  • 作業からの離脱、身体の冷却、受診などの手順が決まっているか。第612条の2第2項は、作業場ごとに手順を定めて周知することとしています。
  • 厨房のWBGTや気温を測っているか。通達は、原則として作業場所での実測で判断するとしています。
  • 塩と飲料水が備えられているか、冷房のある休憩場所があるか。第617条とガイドラインの作業環境管理に当たる点です。
  • 排気の設備や冷房が点検・清掃されているか。ガイドラインは、調理場のグリスフィルターの清掃と、冷房設備の機能の点検を挙げています。

暑さとは別に、厨房の腰の負担についても国の指針があり、台車の使用や、肘の曲げ角度がおよそ90度になる作業台の高さなどを事業者の対策として挙げています。調理師の腰痛対策|国の指針は、男性が人力で持つ重さを体重のおおむね40%以下としていますで扱っています。

よくある質問

Q. 厨房がWBGT28度・気温31度を下回っていれば、何も対策はいりませんか。
A. 施行通達は、目安に該当しない場合であっても、作業強度や着衣の状況によっては熱中症のリスクが高まるとして、事業者は改正省令に準じた対応を行うよう努めることとしています。また、第606条の温湿度調節や第617条の塩と飲料水の備え付けは、別の条文として定められています。

Q. パートやアルバイトにも、報告先や手順は知らされますか。
A. 第612条の2は、周知の相手を「当該作業に従事する作業従事者」としています。施行通達は、当該作業に従事する者には労働者だけでなく、同じ場所で作業する労働者以外の者も含むとしています。雇用の形で分けた書き方にはなっていません。

Q. 報告先や手順が決まっていない職場は、規則に反していますか。
A. 第612条の2は「周知させなければならない」と定め、施行通達は個々の事業者に措置義務が課されるとしています。ただし、対象はWBGT28度以上又は気温31度以上の場所での一定時間の作業で、個々の職場が当たるかどうかは、本記事では判断していません。

Q. 作業中に体調がおかしいと感じたら、どうすればいいですか。
A. 本記事は医学的な対応を書いていません。職場で定められた報告先に伝えることが、条文の想定している流れです。施行通達は、判断に迷う場合には#7119等を活用するなど専門機関や医療機関に相談し、速やかに専門家の指示を仰ぐことが望ましいとしています。

Q. 衛生管理マニュアルの「25℃以下」を超えたら、熱中症の規則の対象になりますか。
A. 別のものです。マニュアルの温度・湿度は食品衛生のための「望ましい」目安で、第612条の2の対象の目安は、施行通達が示すWBGT28度以上又は気温31度以上の場所での作業です。

迷ったらここ

夏の厨房の暑さは職場の体制を確かめる

労働安全衛生規則 第612条の2は、熱中症を生ずるおそれのある作業について、報告の体制と悪化を防ぐ手順を前もって整え、働く人に周知することを事業者に定めています。施行は令和7年6月1日です。

  • 熱中症が疑われるときの報告先(責任者と連絡方法)が掲示などで知らされているか
  • 作業からの離脱・身体の冷却・受診などの手順と緊急連絡先が決まっているか
  • 塩と飲料水、冷房のある休憩場所があり、排気や冷房の設備が点検されているか
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まとめ

夏の厨房の暑さについて、労働安全衛生規則 第612条の2は、令和7年6月1日から、熱中症の報告の体制と、悪化を防ぐ手順を前もって整え、働く人に周知することを事業者に定めています。

対象の目安は、施行通達によるとWBGT28度以上又は気温31度以上の場所で、継続して1時間以上か1日4時間を超えて行われる見込みの作業です。当たらない場合も、着衣や作業の強さによっては準じた対応に努めることとされています。

温湿度の調節(第606条)と塩・飲料水の備え付け(第617条)は前からある定めで、国のガイドラインは調理場のグリスフィルターの清掃も対策に挙げています。2025年の職場の熱中症の死傷者は1,803人で、業種別の表に飲食店や給食の区分はありません。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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