30秒でわかるまとめ
- 病児保育のきつさの多くは、預かる前に保育士へ積まれています受け入れまでには、受診・連絡票の確認・保護者との協議・受け入れの決定という4つの段階があります
- 預かるかどうかを、施設だけで決めることはできません連絡票には、医師の署名とともに症状・経過・治療・保育上の留意点までの記載欄がある様式です
- 緊急時の対応は、その場で決めない仕組みです協力医療機関と指導医をあらかじめ選定し、緊急時の対応は文書によって取り決めておくことになっています
- 判断を一人で背負う制度にはなっていません相談の相手として、指導医・協力医療機関・保護者・かかりつけ医が国の要綱に書かれています
※職員配置と看護師等の配置、事業類型の違いは病児保育の仕事内容|保育士1人が見るのは3人まで、看護師等は常駐が原則で扱っています。この記事は、そこで扱わなかった「手続きの層」を扱います。

「きつい」の中身を、要綱の順に置き直します
病児保育がきついと言われるとき、その中身は一つではありません。体調の悪い子どもを預かること自体の緊張と、その周りに積まれた手続きは、別のものです。
病児保育事業実施要綱は、後者をかなり細かく定めています。要綱の順に並べ直すと、業務の形が見えます。
| 層 | 要綱の該当箇所 | 中身 |
|---|---|---|
| 保育の前 | 7 実施方法 | 受診・連絡票・協議・受け入れの決定 |
| 日常の外側 | 8 留意事項(1) 医療機関との連携等 | 協力医療機関・指導医・緊急時の文書取り決め・一定の目安の作成 |
| 保育の最中 | 8 留意事項(2) 感染の防止 | 体温の管理・設備・間仕切り・予防接種の確認 |
| 働く人の側 | 9 研修 | 病児・病後児保育研修 |
出典:厚生労働省「病児保育事業の実施について」の一部改正について(平成30年7月30日 子発0730第5号)別紙。層の整理は編集部が行った
この4層のうち、求人票に書かれるのは3つめだけです。だから入ってみて重さを感じることになります。順に見ていきます。

受け入れの前に、4つの手続きがあります
要綱の「7 実施方法」(1)は、こう書いています。
「病児対応型及び病後児対応型並びに非施設型(訪問型)については、対象児童をかかりつけ医に受診させた後、保護者と協議のうえ、受け入れ、訪問の決定を行うこと。」
さらに(3)が、医療機関でない施設について追加の手順を置いています。
「医療機関でない施設が病児対応型及び非施設型(訪問型)を実施する場合は、保護者が児童の症状、処方内容等を記載した連絡票(別紙2様式例。児童を診察した医師が入院の必要性はない旨を署名したもの。)により、症状を確認し、受け入れ、訪問の決定を行うこと。」
出典:同要綱 7 実施方法(1)・(3)
並べると、こうなります。
| 順 | 手続き | 誰が関わるか |
|---|---|---|
| 1 | かかりつけ医への受診 | 保護者・かかりつけ医 |
| 2 | 連絡票による症状の確認(医療機関でない施設の場合) | 保護者・診察した医師・施設 |
| 3 | 保護者との協議 | 保護者・施設 |
| 4 | 受け入れ・訪問の決定 | 施設 |
出典:同要綱 7 実施方法(1)・(3)を編集部が順に整理した
ここが、この仕事の負荷の入口です。4つのうち3つに、施設の外の人が関わります。当日の朝に、受診の有無を確認し、連絡票を読み、保護者と話し、そのうえで受け入れるかどうかを決める。保育が始まる前に、これだけの工程が置かれています。
なお(4)は、保育所等に登所する前から体調不良の子どもについて、体調不良児対応型や送迎対応ではなく、地域の病児対応型・病後児対応型を優先的に利用することとし、地域における連携体制の確保に努めるよう求めています。

連絡票に書かれること
別紙2の様式例には、何を書くかが具体的に並んでいます。
| 区分 | 記載事項 |
|---|---|
| 医師が記入・署名 | 「診断の結果、現時点での入院の必要性は認められません」/診断医療機関名及び電話番号/診断医師署名 |
| 症状 | 症状(病名等)/経過(検査内容等)/治療(処方内容)/食前・食後・時間の別 |
| 保育上の留意点 | 安静(特に制限なし・ベッド安静・その他)/食べ物(特に制限なし・絶食・その他)/薬(特になし・処方の通り・その他)/その他留意事項 |
| 保護者が記入 | 保護者名/保護者の勤務場所(所在地)/緊急連絡先(第一・第二)/お迎え予定者 |
出典:同要綱 別紙2様式例。これは様式例であり、実際に使う様式は施設・市町村ごとに異なる場合があります
読みどころが2つあります。
1つめ。「入院の必要性は認められません」に医師の署名が必要です。受け入れの可否を施設が単独で判断する設計になっていません。医師が一段目の線を引いています。
2つめ。緊急連絡先が第一・第二の2つ、お迎え予定者も別に記入する欄があります。容体が変わったときに誰へ連絡するかが、預かる前に決まっている構造です。
日常の外側に、決めておく事項が5つあります
「8 留意事項」の(1)「医療機関との連携等」は、5つの事項を挙げています。
| 番号 | 内容 | 誰が |
|---|---|---|
| ① | 地方医師会に対する本事業への協力要請と、施設に対する医療機関との連携体制整備の指導 | 市町村長 |
| ② | 緊急時に児童を受け入れてもらうための協力医療機関をあらかじめ選定し、協力関係を構築 | 施設 |
| ③ | 医療機関でない施設は、日常の医療面での指導・助言を行う指導医をあらかじめ選定 | 施設 |
| ④ | 指導医又は協力医療機関との関係で、緊急時の対応についてあらかじめ文書により取り決め | 施設 |
| ⑤ | 指導医・嘱託医と相談のうえ一定の目安(対応可能な症例、開所(訪問)時間等)を作成し、保護者に周知して理解を得る | 施設 |
出典:同要綱 8 留意事項(1)①〜⑤
⑤に注目してください。「対応可能な症例」を目安として作成し、保護者に周知することが求められています。どこまで受け入れるかは、その場の判断ではなく、あらかじめ指導医・嘱託医と相談して決めておく事項です。
断りにくさを感じている場合、確認する価値があるのはここです。目安が作られていて、保護者に周知されているか。要綱は、それを施設の側の宿題として置いています。
感染の防止は、4つの項目で書かれています
同じ「8 留意事項」の(2)です。
| 番号 | 内容 |
|---|---|
| ① | 体温の管理等その他健康状態を適切に把握するとともに、複数の児童を受け入れる場合は他児への感染に配慮 |
| ② | 手洗い等の設備を設置し、衛生面への十分な配慮を施すことで、他児及び職員への感染を防止 |
| ③ | 体調不良児対応型では、事業実施場所と保育室・遊戯室等の間に間仕切り等を設け、職員及び他児の往来を制限 |
| ④ | 児童の受け入れに際して予防接種の状況を確認し、必要に応じて予防接種するよう助言 |
出典:同要綱 8 留意事項(2)①〜④
②と③は、職員への感染を明示的に対象にしています。「他児及び職員への感染を防止」「職員及び他児の往来を制限」。働く人自身が守られる対象として条文に書かれている、という点は押さえておく価値があります。
設備が整っていない、間仕切りがない、といった状態は、個人の努力で埋める話ではありません。要綱が施設に求めている事項です。
研修は18時間と、見学実習2日以上
「9 研修」は、病児保育事業に従事する職員について、病児・病後児保育研修を受講し資質の向上に努めることとしています。その科目が別紙1です。
| 講習 | 内容 | 時間 |
|---|---|---|
| Ⅰ 児童の発達と学び | ①乳幼児期の発達(3時間)②学童期の発達(3時間)③児童にとっての遊び(3時間) | 9時間 |
| Ⅱ 健康管理と緊急対応 | ①児童の病気(3時間)②緊急時の対応と応急措置(3時間)③児童の成長と食生活(3時間) | 9時間 |
| Ⅲ 病児・病後児保育における見学実習 | 実施施設または訪問宅において、児童の様子の観察及び看護師(保育士)の関わりを見学 | 2日以上 |
出典:同要綱 別紙1。合計18時間は編集部が算出(9+9)
Ⅰの考え方には「0歳から10歳くらいまでの児童の発達」とあります。保育所の年齢層より上まで含まれる設計です。Ⅱの②「緊急時の対応と応急措置」は実技指導を交えて学ぶとされています。
研修を受けていない状態で、この範囲を一人で判断するのは要綱の想定ではありません。受講の機会があるかどうかは、事業所に確認できることです。
その判断を、一人で背負う設計にはなっていません
ここまで見てきたとおり、要綱は判断の相手を条文の中に名指ししています。
- 受け入れの可否 → かかりつけ医の受診と連絡票、そして保護者との協議(7 実施方法)
- 対応可能な症例の線引き → 指導医・嘱託医と相談のうえ作成する目安(8 留意事項(1)⑤)
- 容体が変わったとき → あらかじめ文書で取り決めた緊急時の対応と協力医療機関(同④②)
- 感染への対応 → 設備と間仕切りという施設側の措置(8 留意事項(2))
ひとつも、個人の判断力で埋めることを前提にしていません。それでも一人で抱えている状態になっているなら、原因は制度の側ではなく、その体制が整っていないことにあります。
労働条件や職場の問題として相談できる場所があります。
- 総合労働相談コーナー(厚生労働省):労働条件、いじめ・嫌がらせなど労働問題全般。都道府県労働局・労働基準監督署内に設置され、予約不要・無料で利用できます 総合労働相談コーナーのご案内
- こころの耳(厚生労働省):働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト。電話・SNS・メールの相談窓口がまとまっています こころの耳
体調に変化が出ているときは、相談より先に受診してください。この記事は制度の位置を示すもので、症状の相談先ではありません。
職場で確認できること
1. 「一定の目安」が文書であるかを聞く
留意事項(1)⑤は、対応可能な症例と開所(訪問)時間の目安を作成し、保護者に周知することを求めています。あるかないかで、断るときの負担がまるで違います。
2. 指導医と協力医療機関が誰かを聞く
医療機関でない施設には、指導医の選定(③)と協力医療機関の選定(②)が求められています。名前と連絡方法を知っているかどうかは、緊急時の速さに直結します。
3. 緊急時の取り決めが文書であるかを確認する
④は「あらかじめ文書により取り決めを行うこと」としています。口頭の了解ではなく、文書の有無を確認してください。
4. 感染防止の設備を見る
手洗い等の設備(②)と、体調不良児対応型なら間仕切り等(③)。職員への感染防止も要綱の対象です。
5. 研修を受けられるかを聞く
別紙1の研修は講習18時間と見学実習2日以上です。受講の機会と、その間の勤務の扱いを確認してください。
よくある質問
Q. 受け入れを断ってもいいのですか。
A. 本記事では個別の判断をしていません。示せるのは、要綱が「対応可能な症例」を含む一定の目安を指導医・嘱託医と相談のうえ作成し、保護者に周知することを求めている(8 留意事項(1)⑤)という点までです。その目安に沿った運用になっているかは、事業所に確認する事項です。
Q. 1日の流れを教えてください。
A. 要綱に時刻の定めはないため、本記事では示しません。この点は病児保育の仕事内容でも同じ理由で扱っていません。開所時間は留意事項(1)⑤の「一定の目安」に含まれる事項なので、事業所ごとに決まります。
Q. 給与はどれくらいですか。
A. 本記事では扱っていません。病児保育に限定した給与の統計を本記事では確認していないためです。
迷ったらここ
「一定の目安」が文書であるかを先に確かめる
要綱は、対応可能な症例と開所時間の目安を指導医・嘱託医と相談のうえ作成し、保護者に周知することを求めています(8 留意事項(1)⑤)。この線が引かれていないと、断る判断だけが毎回その場に降りてきます。
- 対応可能な症例の目安は文書になっていて、保護者に周知されているか
- 指導医と協力医療機関は誰か、緊急時の取り決めは文書であるか(同①〜④)
- 病児・病後児保育研修を受ける機会があるか(講習18時間と見学実習2日以上)
まとめ
- 負担は保育の前後に積まれている。要綱は4層(保育の前/日常の外側/保育の最中/働く人の研修)で書かれている
- 受け入れの前に4つの手続き。かかりつけ医への受診 → 連絡票の確認 → 保護者との協議 → 受け入れの決定(7 実施方法(1)(3))
- 連絡票は医師が「入院の必要性は認められません」に署名する様式。緊急連絡先は第一・第二の2つ、お迎え予定者も別欄(別紙2様式例)
- 日常の外側に5つの取り決め。協力医療機関・指導医の選定、緊急時の文書による取り決め、対応可能な症例と開所時間の目安の作成と保護者への周知(8 留意事項(1))
- 感染の防止は4項目。②③は職員への感染防止を明示している(同(2))
- 研修は講習18時間(各9時間)と見学実習2日以上(別紙1)
- 要綱はどの判断も、施設と医師と保護者で分担する形で書いている。一人で背負う設計になっていない
きついと感じたとき、まず確かめてほしいのは「一定の目安が文書であるか」です。対応可能な症例の線が引かれていないと、断る判断だけが毎回その場の個人に降りてきます。要綱はその線を、指導医と相談して先に引いておくものとしています。

