30秒でわかるまとめ
- 訪問看護師は、利用者の保険で従う基準が変わります事業所は、利用者が介護保険を使うか医療保険を使うかによって、従う省令が変わってきます。
- 訪問看護は、始業や終業の時刻が法令にありません省令が定めているのは運営規程に書くことまでで、具体的な時刻は事業所ごとに違います。
- 1日の長さは、運営規程の3項目に左右されます営業日及び営業時間、通常の事業の実施地域、緊急時等における対応方法が運営規程に書かれています。
- 看護職員の人数は、常勤換算2.5人以上が基準です医療保険の指定訪問看護ステーションでは、そのうち1名は常勤でなければならないとされています。
※一人で訪問することへの不安と、主治医の指示・訪問看護計画書の仕組みは訪問看護で一人が不安なとき|訪問は一人でも、判断は一人ではありませんで扱っています。この記事は、2つの制度の違いと、1日の枠の決まり方を扱います。

先に確認:根拠になる省令が2つあります
訪問看護は、利用者がどちらの保険を使うかで、事業所が従う省令が変わります。
| 項目 | 介護保険の訪問看護 | 医療保険の訪問看護 |
|---|---|---|
| 根拠となる省令 | 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 (平成11年厚生省令第37号)第4章 | 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 (平成12年厚生省令第80号) |
| 事業所の呼び方 | 指定訪問看護事業所 | 指定訪問看護ステーション |
| 基本方針の条 | 第59条 | 第1条 |
| 具体的取扱方針の条 | 第68条 | 第15条 |
| 運営規程の条 | 第73条 | 第21条 |
出典:両省令(e-Gov法令API 法令ID 411M50000100037/412M50000100080)。条の対応は編集部が整理した
条文の中身は、多くの部分がほぼ同じ文言で書かれています。ただし条番号が違うので、事業所の書類も研修資料も、どちらの制度の話をしているかで参照先が変わります。
細かい違いも残っています。たとえば具体的取扱方針の第1号は、介護保険側が「訪問看護計画書に基づき」、医療保険側が「訪問看護計画に基づき」となっています。ほぼ同じ文でありながら、完全な同一文ではありません。

介護保険の訪問看護事業所で働く看護師の給与は、国の調査で職種別に出ています(常勤の看護師は月470,844円)。数字の読み方は訪問看護師の年収|常勤の看護師1人当たり給与費は月470,844円ですで扱っています。
先に断ります:時刻を定めた規定はありません
「訪問看護の1日」を知りたい人が多いので書いておきます。どちらの省令にも、訪問の時刻を定めた規定はありません。何時に出勤する、何時から訪問する、といった決まりは置かれていません。
代わりに置かれているのが、次の運営規程です。

1日の枠を決めているのは、運営規程の8項目です
介護保険側の第73条と医療保険側の第21条は、まったく同じ8項目を運営規程に定めることを求めています。
| 号 | 運営規程に定める事項 |
|---|---|
| 第1号 | 事業の目的及び運営の方針 |
| 第2号 | 従業者の職種、員数及び職務の内容 |
| 第3号 | 営業日及び営業時間 |
| 第4号 | 指定訪問看護の内容及び利用料その他の費用の額 |
| 第5号 | 通常の事業の実施地域 |
| 第6号 | 緊急時等における対応方法 |
| 第7号 | 虐待の防止のための措置に関する事項 |
| 第8号 | その他運営に関する重要事項 |
出典:指定居宅サービス等基準 第73条第1号〜第8号/指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第21条第1号〜第8号。両省令の文言は同一です
ここが「1日」を知るための入口です。読みどころが3つあります。
1つめ。第3号「営業日及び営業時間」。訪問看護の1日が何時から何時までかは、法令ではなく事業所ごとの運営規程に書かれています。見学や面接で確認できる、文書化された事項です。
2つめ。第5号「通常の事業の実施地域」。移動距離と訪問件数を左右します。1日に何件回れるかは、この地域の広さに縛られます。
3つめ。第6号「緊急時等における対応方法」。営業時間外の対応をどうするかが、ここに書かれています。「1日」が営業時間で終わるかどうかは、この号の中身次第です。
運営規程とは別に、訪問看護の事業者が都道府県知事に報告し、知事が公表する「介護サービス情報」もあります。転職先を比べるときにどの項目を見るかは 訪問看護ステーションの選び方|従業者の数と経験年数は、省令が定める公表項目ですで扱っています。
訪問の中身を決めるのは、具体的取扱方針です
1件ごとの訪問で何をするかは、具体的取扱方針が定めています。介護保険側の第68条、医療保険側の第15条です。
| 号 | 方針の内容 |
|---|---|
| 第1号 | 主治の医師との密接な連携及び訪問看護計画書(計画)に基づき、利用者の心身の機能の維持回復を図るよう妥当適切に行う |
| 第2号 | 懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者又はその家族に対し、療養上必要な事項について、理解しやすいように指導又は説明を行う |
| 第3号 | 緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない |
| 第4号 | 身体的拘束等を行う場合は、その態様及び時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しなければならない |
出典:指定居宅サービス等基準 第68条第1号〜第4号/指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第15条第1号〜第4号
第1号が示しているのは、訪問の内容が「その場の判断」で決まるのではなく、主治の医師との連携と計画書に基づいて決まるということです。その仕組みは訪問看護で一人が不安なときで扱っています。
第2号の「指導又は説明」に注目してください。処置だけでなく、利用者と家族への説明が方針として条文に書かれています。1回の訪問時間には、この時間が含まれます。
訪問の中身の土台になる訪問看護計画書に、どの欄があり何を書くかは、厚生労働省の記載要領が7つの項目で示しています。欄ごとの書き方は訪問看護計画書の書き方|記載要領が欄ごとに示す項目は7つですで扱っています。
医療保険側にだけある、4つの規定
2つの省令はよく似ていますが、医療保険側にだけ置かれている規定があります。ここが制度の性格の違いを示しています。
| 条 | 見出し | 内容 |
|---|---|---|
| 第5条の2 | 適正な手続の確保 | 厚生労働大臣又は地方厚生局長等に対する申請、届出等の手続及び訪問看護療養費に関する費用の請求の手続を適正に行う |
| 第5条の4 | 経済上の利益の提供による誘引の禁止 | 利用料の額に応じて収益業務の物品を値引きすること等により利用者を誘引してはならない。他の事業者やその従業員に、利用者を紹介する対価として金品を提供することも禁止 |
| 第5条の5 | 特定の主治の医師及び特定の事業者等への誘導の禁止 | 特定の医師を主治の医師とするべき旨、又は特定の事業者等を利用するべき旨の指示等を行うことの対償として、金品その他の財産上の利益を収受してはならない |
| 第13条の2 | 明細書の交付 | 利用料の支払を受けるときは、費用の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を無償で交付しなければならない |
出典:指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第5条の2、第5条の4、第5条の5、第13条の2
4つとも、お金と紹介の流れをめぐる規定です。第5条の3が「健康保険事業及び後期高齢者医療制度の健全な運営の確保」という見出しであることからも、医療保険の財政運営を意識した条文群であることが読み取れます。
これらは介護保険側の第4章には置かれていません。医療保険の訪問看護を提供する事業所は、介護保険側にはない禁止事項を追加で守ることになります。
病院で働く場合の記録は、また別の省令が根拠になります。医療法施行規則が「看護記録」を名指ししている場所は看護記録の書き方|法律ではなく、医療法の省令に名前がありますで扱っています。
どちらの制度でも共通しているもの
違いばかりではありません。次の2つは、両方の省令に同じ趣旨で置かれています。
| 内容 | 介護保険側 | 医療保険側 |
|---|---|---|
| 同居家族への訪問看護の禁止(看護師等に、その同居の家族である利用者への提供をさせてはならない) | 第71条 | —(本記事では対応条を確認していません) |
| 看護職員の員数(常勤換算で2.5以上) | 第60条 | 第2条 |
出典:指定居宅サービス等基準 第60条・第71条/指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第2条
医療保険側の第2条は、看護職員を「保健師、助産師、看護師又は准看護師」と定義したうえで、常勤換算で2.5以上、うち1名は常勤でなければならないとしています。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は「実情に応じた適当数」です。
介護保険側の人員基準は訪問看護で一人が不安なときで扱っています。
勤務先の種類で給与の統計も変わります。医療法上の診療所で働く看護職員の金額と、開設者による差はクリニック看護師の年収|開設者で38.4万円変わりますで扱っています。
就職前に確認できること
1. どちらの制度の利用者が多いかを聞く
介護保険と医療保険では、事業所が従う省令が違います。利用者の構成比は、日々の書類と手続きの中身に直結します。
2. 運営規程を見せてもらう
営業日及び営業時間(第3号)、通常の事業の実施地域(第5号)、緊急時等における対応方法(第6号)。この3つは文書に書かれています。口頭の説明ではなく、規程で確認してください。
3. 通常の事業の実施地域の広さを聞く
1日の訪問件数は移動時間に左右されます。実施地域が広いほど、同じ件数でも1日は長くなります。
4. 緊急時等における対応方法の中身を聞く
営業時間外の連絡をどう受けるか、当番制か、何人で回すか。「1日」が終わる時刻を実質的に決めているのは、この規定です。
5. 看護職員の人数と常勤の内訳を数字で聞く
基準は常勤換算2.5以上で、医療保険側ではうち1名は常勤と定められています。基準ぎりぎりか、余裕があるかで、1人あたりの件数が変わります。
よくある質問
Q. 訪問看護の1日のスケジュールを教えてください。
A. 時刻を定めた規定が両省令にないため、本記事では具体的な時刻を示しません。制度から言えるのは、営業日及び営業時間・通常の事業の実施地域・緊急時等における対応方法が運営規程に定められていること(第73条/第21条)、訪問の内容は主治の医師との連携と訪問看護計画書に基づくこと(第68条/第15条)までです。実際の1日は事業所ごとに違うので、運営規程で確認してください。
Q. 介護保険と医療保険で、仕事の中身は変わりますか。
A. 具体的取扱方針の第1号から第4号は、両省令でほぼ同じ文言です。看護そのものの方針に大きな違いは条文上ありません。違いが出るのは、医療保険側にだけある手続・誘引の禁止・明細書の交付の規定です。報酬の算定方法や訪問回数の制限については、本記事では確認していません。
Q. 1日に何件くらい訪問しますか。
A. 件数を定めた規定は、確認した範囲の両省令にありません。したがって本記事では件数を示しません。運営規程の「通常の事業の実施地域」と人員の数から、事業所ごとに決まる部分です。
迷ったらここ
求人票より先に、運営規程を見せてもらう
省令が「定めておかなければならない」としている8項目のうち、営業日及び営業時間・通常の事業の実施地域・緊急時等における対応方法の3つが1日の長さを決めます。省令が「定めておかなければならない」としているので、文書として存在します。
- 営業日及び営業時間はどう定められているか(運営規程 第3号)
- 通常の事業の実施地域はどこまでか(同 第5号。移動時間が件数を左右する)
- 緊急時等における対応方法は何人で回すか(同 第6号)
まとめ
- 訪問看護の根拠省令は2つ。介護保険=指定居宅サービス等基準 第4章、医療保険=指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準
- 医療保険側の事業所は指定訪問看護ステーションと呼ばれる(同基準 第2条)
- 時刻を定めた規定はどちらにもない。1日の枠は運営規程の8項目(第73条/第21条・文言は同一)で決まる。うち営業日及び営業時間・通常の事業の実施地域・緊急時等における対応方法の3つが直接効く
- 訪問の中身は具体的取扱方針(第68条/第15条)。主治の医師との密接な連携と訪問看護計画書に基づき、療養上必要な事項の指導又は説明も方針に含まれる
- 医療保険側にだけ4つの規定がある。適正な手続の確保/経済上の利益の提供による誘引の禁止/特定の主治の医師・事業者等への誘導の禁止/明細書の交付
- 看護職員の員数は常勤換算2.5以上。医療保険側ではうち1名は常勤(第2条)
この仕事の1日を知りたいなら、求人票より先に運営規程を見せてもらってください。営業日と営業時間、実施地域、緊急時の対応方法。この3つは省令が「定めておかなければならない」としている事項なので、文書として存在するはずのものです。

