特定保健指導とは|担当できる資格は医師・保健師・管理栄養士。健診を受けた人の16.6%が対象です

特定保健指導を行えるのは医師・保健師・管理栄養士だけ(栄養士)
目次

30秒でわかるまとめ

  • 特定保健指導を担当できる資格は、医師・保健師・管理栄養士です実施できるのは医師・保健師・管理栄養士の3職種だけで、栄養士は省令第5条に含まれません
  • 薬を服用中の人は、対象から除外されます高血圧症・脂質異常症・糖尿病の治療薬を服用していると、健診結果が悪くても対象になりません
  • 実施率28.3%は、目標の45%に届いていません対象524万人のうち終了は148万人で、目標45%まで16.7ポイントの開きがあります
  • 実施率は、加入する保険者で大きく変わります健保組合(単一)の46.1%に対し、全国健康保険協会は19.9%にとどまっています
健康診断の結果(特定保健指導)

制度の骨格:主語は「保険者」です

特定保健指導を理解するうえで最初に押さえるのは、実施主体が医療機関ではなく保険者(医療保険の運営者)であるという点です。条文を追うとこうなります。

条文定めている内容
高確法 第18条第1項厚生労働大臣が特定健康診査等基本指針を定める。特定保健指導=特定健診の結果により健康の保持に努める必要がある者に対し、保健指導に関する専門的知識及び技術を有する者が行う保健指導
高確法 第19条第1項保険者は基本指針に即して、6年ごとに、6年を一期として特定健康診査等実施計画を定める
高確法 第20条保険者は40歳以上の加入者に対し特定健康診査を行う
高確法 第23条保険者は受診した加入者に結果を通知する
高確法 第24条保険者は実施計画に基づき特定保健指導を行う

対象年齢の細かい定めは省令にあります。特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準 第1条は、対象を「当該年度の4月1日における加入者であって、当該年度において40歳以上75歳以下の年齢に達するもの(75歳未満の者に限り、妊産婦その他の厚生労働大臣が定める者を除く。)」と定めています。実務上は40歳から74歳までと考えて差し支えありません。

75歳で切れるのは、そこから後期高齢者医療制度に移るためです。「メタボ健診」という通称で呼ばれますが、法律上の目的は生活習慣病の予防であり、健診と指導がセットで設計されています。

健診結果と血圧計(特定保健指導)

健診の項目と、対象者が決まる仕組み

特定健康診査の項目は省令第1条第1項に列挙されています。

  • 既往歴の調査(服薬歴及び喫煙習慣の状況に係る調査を含む)
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重及び腹囲の検査
  • BMIの測定(体重kg ÷ 身長m の2乗)
  • 血圧の測定
  • 肝機能検査(AST、ALT、γ-GT)
  • 血中脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)
  • 血糖検査
  • 尿検査(尿中の糖及び蛋白)
  • 上記のほか、厚生労働大臣が定める項目のうち医師が必要と認めるもの

このうち腹囲・BMI・血圧・血中脂質・血糖・喫煙習慣の6つが、特定保健指導の対象者を決める材料になります。省令第4条はこう定めています。

ステップ基準
1. 内臓脂肪の判定腹囲が男性85cm以上/女性90cm以上 または 腹囲がその基準未満でBMI25以上
2. 追加リスクの判定次のいずれかに該当(それぞれの具体的数値は厚生労働大臣が定める基準による)
① 血圧の測定の結果 ② 中性脂肪またはHDLコレステロールの量 ③ 血糖検査の結果
3. 除外高血圧症、脂質異常症又は糖尿病の治療に係る薬剤を服用している者は除く

3つめの除外規定は、意外に知られていません。すでに服薬治療に入っている人は、特定保健指導ではなく主治医の管理下にあるべきだという考え方です。健診結果が悪くても対象にならないのは、このためです。

本記事では①〜③の具体的な数値(血圧何mmHg以上など)を書いていません。省令の条文は「厚生労働大臣が定める基準に該当する者」としており、数値そのものは別の告示で定められています。確認していない数値は書かない方針のため、必要な方は保険者または健診機関の資料で確認してください。

生活習慣を改善しよう(特定保健指導)

特定保健指導の支援のうち、動機付けや継続的な働きかけの部分は、告示が定める研修を受けた栄養士等も担えます。研修の中身と時間数は特定保健指導の研修|栄養士が支援を担う条件は、告示が定める計30時間の研修ですで扱っています。

「動機付け支援」と「積極的支援」の分かれ方

対象者は2つのコースに振り分けられます(省令第6条〜第8条)。

動機付け支援(第7条)積極的支援(第8条)
目的生活習慣の改善に係る自主的な取組の実施に資すること自主的な取組の継続的な実施に資すること
行動計画の策定医師、保健師又は管理栄養士の面接による指導の下に策定同左
支援の形取組に係る動機付けに関する支援取組に資する働きかけに関する支援を相当な期間継続して行う
途中評価—行動計画の進捗状況に関する評価
実績評価行動計画の策定日から3月以上経過した日に実績評価同左

振り分けの考え方は、腹囲基準に該当するかどうかと追加リスクがいくつあるか、そこに喫煙習慣と年齢を掛け合わせたものです。省令第7条第2項・第8条第2項の内容を要約すると、次のようになります。

  • 腹囲が基準以上で、追加リスクが1つだけ(喫煙習慣なし)→ 動機付け支援
  • 腹囲が基準以上で、追加リスクが2つ以上 → 積極的支援
  • 腹囲が基準以上で、追加リスクが1つ+喫煙習慣あり → 積極的支援
  • 腹囲は基準未満だがBMI25以上で、追加リスクが1つ → 動機付け支援
  • 腹囲は基準未満だがBMI25以上で、追加リスクが2つ → 動機付け支援(喫煙習慣があれば積極的支援)
  • 腹囲は基準未満だがBMI25以上で、追加リスクが3つすべて → 積極的支援
  • その年度に65歳以上75歳以下になる人は、積極的支援の対象から外れて動機付け支援になります(第8条第2項柱書、第7条第2項第4号)

最後の1点は制度の性格をよく表しています。高齢期に入った人に強い減量指導をかけることを避ける設計です。年齢によって支援の強度が変わる、という点は覚えておく価値があります。

保健師が担当する保健指導は、この制度に限りません。地域保健法と母子保健法が定めている仕事の広がりは保健師の仕事内容|地域保健法の14事業と、母子保健法の5か条ですで扱っています。

ここが本題:実施できるのは医師・保健師・管理栄養士の3職種だけ

栄養士・管理栄養士としてこの制度に関わるなら、ここが決定的です。省令第5条は一文だけです。

「法第18条第1項に規定する保健指導に関する専門的知識及び技術を有する者は、医師、保健師又は管理栄養士とする。」

職種実施者になれるか根拠
医師○省令 第5条
保健師○省令 第5条
管理栄養士○省令 第5条
看護師△(令和12年3月31日まで)省令 附則第2条。「保健指導に関する一定の実務の経験を有する看護師」に読み替える経過措置
栄養士×(第5条には含まれない)省令 第5条

栄養士と管理栄養士で扱いが分かれる、数少ない制度のひとつです。行動計画の策定に関わる面接指導(第7条第1項第1号、第8条第1項第1号)も、3月以上経過後の実績評価(第7条第1項第3号、第8条第1項第4号)も、担えるのは医師・保健師・管理栄養士(および経過措置期間中の看護師)に限られます。

ただし、省令にはもう一つの入口が書かれています。動機付けに関する支援・働きかけに関する支援(第7条第1項第2号、第8条第1項第2号)については、医師・保健師・管理栄養士に加えて「食生活の改善指導若しくは運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者として厚生労働大臣が定めるもの」も行えるとされています。

この「厚生労働大臣が定めるもの」の具体的な範囲は別の告示で定められており、本記事では確認していないため書きません。栄養士としてこの制度に関わる可能性を検討している方は、保険者や委託先の要件確認と併せて、該当する告示を必ず一次資料で確認してください。

もう1点。看護師の経過措置には期限があります。令和12年3月31日です。それ以降は原則どおり医師・保健師・管理栄養士に戻ります。管理栄養士の位置づけが相対的に強まる方向だということです。

その管理栄養士の免許を取るまでの制度(受験資格の4ルート、必要な実務経験年数、合格率の内訳)は管理栄養士になるには|ルートは4つ。どれも「学校+実務=5年」で揃いますで扱っています。

数字で見る現状:対象は524万人、終わったのは148万人

厚生労働省は保険者からの報告を集計して、毎年度の実施状況を公表しています。以下は2024年度分です。

項目2024年度2023年度2008年度(制度開始年)
特定健診 対象者数51,422,367人52,103,341人51,919,920人
特定健診 受診者数31,607,341人31,230,198人20,192,502人
特定健診 実施率61.5%59.9%38.9%
特定保健指導 対象者数5,243,161人5,190,914人4,010,717人
特定保健指導 対象者割合16.6%16.6%19.9%
特定保健指導 終了者数1,481,627人1,434,051人308,222人
特定保健指導 実施率28.3%27.6%7.7%

出典:厚生労働省「2024年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況について」(集計対象3,357保険者)

読み取れることが3つあります。

1つめ。健診を受けた人の16.6%が保健指導の対象になります。受診者3,160万人に対して対象者524万人。およそ6人に1人です。これは制度開始時の19.9%から下がっていますが、母数(受診者)が1,000万人以上増えているため、対象者の実数は401万人から524万人へ増えています。

2つめ。保健指導の実施率は28.3%にとどまります。健診の61.5%と比べて明らかに低い。対象になった524万人のうち、指導を最後まで終えたのは148万人です。約376万人が対象になりながら終了していません。ここが制度の最大の課題です。

3つめ。伸びてはいます。2008年度の7.7%から28.3%へ、20.6ポイント上昇。終了者数は308,222人から1,481,627人へ、4.81倍になりました(編集部算出)。ただし国が掲げる目標には届いていません。

指標2024年度実績2029年度までの目標差
特定健診 実施率61.5%70%以上8.5ポイント
特定保健指導 実施率28.3%45%以上16.7ポイント
メタボ該当者・予備群の減少率(対2008年度比)17.2%25%以上減少7.8ポイント

出典:同資料。目標値は同資料の注記による

保健指導の実施率は目標まで16.7ポイントの開きがあります。実施率を45%まで押し上げるには、単純に計算しても現在の1.6倍近い実施件数が必要になります。実施者が医師・保健師・管理栄養士に限られている制度で、この数字が求められている——これが管理栄養士の需要につながる構図です。

保険者によって実施率がまったく違う

もう一段掘ると、保険者の種類で状況が大きく異なることが分かります。

保険者の種類2024年度 保健指導対象者数特定健診 実施率特定保健指導 実施率
総数524万人61.5%28.3%
健保組合(全体)182万人83.8%36.0%
 うち健保組合(単一)—85.6%46.1%
 うち健保組合(総合)—80.7%20.0%
共済組合56万人83.3%36.0%
全国健康保険協会209万人60.6%19.9%
市町村国保(全体)64万人38.8%30.0%
 うち市町村国保(小)—44.7%45.3%
 うち市町村国保(大)—30.4%14.7%
国保組合13万人53.0%13.5%
船員保険0.6万人53.4%14.0%

出典:同資料

最も対象者が多いのは全国健康保険協会(協会けんぽ)の209万人ですが、実施率は19.9%と低い水準です。逆に健保組合(単一)は46.1%、市町村国保(小)は45.3%で、すでに国の目標水準に達しています。市町村国保は「大」(対象者10万人以上)が14.7%、「小」(5千人未満)が45.3%と、規模で3倍以上の開きがあります。

この分布は、管理栄養士として働く場所を考えるときの手がかりになります。対象者が多く実施率が低い保険者ほど、外部委託を含めた実施体制の需要が大きいと読めるからです。ただし、これは数字から読める構図であって、求人数との相関を示す統計を確認したわけではありません。推測として受け取ってください。

よくある質問

Q. 栄養士(管理栄養士でない)でも特定保健指導はできますか?

A. 省令第5条が定める実施者は医師、保健師、管理栄養士の3職種で、栄養士は含まれていません。行動計画の策定に関わる面接指導と実績評価は、この3職種(および令和12年3月31日までの経過措置で看護師)に限られます。ただし省令には、動機付けや働きかけに関する支援について「厚生労働大臣が定めるもの」も行えるという規定があります。その範囲は告示で定められており、本記事では確認していないため書いていません。該当する告示を一次資料で確認してください。

Q. 健診結果が悪ければ必ず特定保健指導の対象になりますか?

A. なりません。高血圧症、脂質異常症又は糖尿病の治療に係る薬剤を服用している人は、省令第4条第1項により対象から除かれます。また、腹囲が基準未満でBMIが25未満なら、血圧や血糖に所見があっても特定保健指導の対象にはなりません。この制度が見ているのは内臓脂肪の蓄積を起点とした状態だからです。

Q. 特定保健指導は何か月かかりますか?

A. 省令は「行動計画の策定の日から3月以上経過した日において、当該行動計画の実績に関する評価を行うこと」と定めています(動機付け支援は第7条第1項第3号、積極的支援は第8条第1項第4号)。したがって最短でも3か月以上かかります。積極的支援ではその間に「相当な期間継続して」働きかけを行い、進捗状況の評価も行うことになっています。

迷ったらここ

管理栄養士なら、特定保健指導を業務に含む求人かどうかを条件に入れる

実施できるのは医師・保健師・管理栄養士の3職種だけ。実施率28.3%は、国が掲げる2029年度の目標45%と16.7ポイント開いたままです。

  • 特定保健指導が業務に含まれるか(面接による指導まで担当するか)
  • 委託先として受託する側か、保険者側の職員か
  • 年間の実施件数はどのくらいか(経験として積める量か)
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まとめ

  • 特定保健指導は高齢者の医療の確保に関する法律に基づく制度。実施主体は保険者で、対象は40歳以上75歳未満の加入者
  • 対象者は腹囲(男85cm/女90cm)またはBMI25以上に、血圧・脂質・血糖のリスクを重ねて判定。治療薬を服用中の人は除外
  • 支援は動機付け支援と積極的支援の2種類。65歳以上75歳以下は動機付け支援になる
  • 実施できるのは医師・保健師・管理栄養士の3職種のみ(省令第5条)。看護師は令和12年3月31日までの経過措置。栄養士は含まれない
  • 2024年度は健診受診者3,160万人のうち524万人(16.6%)が対象、終了は148万人・実施率28.3%
  • 国の目標は2029年度までに健診70%以上・保健指導45%以上。保健指導は16.7ポイントの開きがある
  • 保険者の種類で実施率が大きく異なる。健保組合(単一)46.1%に対し協会けんぽ19.9%、市町村国保(大)14.7%

この制度で管理栄養士が名指しされているのは、省令第5条というたった一文です。裏を返せば、栄養士から管理栄養士へ進むかどうかを金額以外の理由で考えるとき、この一文は具体的な判断材料になります。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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