特定保健指導の研修|栄養士が支援を担う条件は、告示が定める計30時間の研修です

目次

30秒でわかるまとめ

  • 栄養士は、研修を受講した者として告示に名指しされています平成20年厚生労働省告示第10号が、看護師、栄養士等で食生活改善指導担当者研修を受講した者を定めています。
  • 食生活改善指導担当者研修は、6分野で計30時間です告示の別表第1が、生活指導及びメンタルヘルスケア10.5時間、栄養指導6.0時間などを定めています。
  • 支援計画を作るのは、医師・保健師・管理栄養士の側です通知は、研修を受けた栄養士等が、医師等の作る特定保健指導支援計画に基づき、その統括の下で指導するとしています。
  • 研修ガイドラインの研修を受けても、実践的指導者にはなれません国の手引きは、ガイドラインに準拠した研修を受講すれば実践的指導者となれる訳ではない、と注意しています。

※特定保健指導の制度の骨格と、実施者の中心になる職種は特定保健指導とは、栄養士と管理栄養士の業務の書き分けは管理栄養士と栄養士の違いで扱っています。

健診結果と血圧計(特定保健指導)

まず条文:支援の号にだけ「厚生労働大臣が定めるもの」が入っています

特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成19年厚生労働省令第157号。以下「実施基準」)は、動機付け支援の要件を第7条第1項に3つの号で並べています。栄養士が関わる入口は、第2号です。

「医師、保健師、管理栄養士又は食生活の改善指導若しくは運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者として厚生労働大臣が定めるものが、動機付け支援対象者に対し、生活習慣の改善のための取組に係る動機付けに関する支援を行うこと。」

出典:特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(e-Gov法令API 法令ID 419M60000100157)第7条第1項第2号(原文どおり)

積極的支援の第8条第1項第2号も同じ書き方で、担い手に「厚生労働大臣が定めるもの」が入り、行うことは生活習慣の改善のための取組に資する働きかけに関する支援を相当な期間継続して行うことです(出典:実施基準 第8条第1項第2号)。

同じ条の第1号(行動計画を策定するときの面接による指導)には、医師、保健師又は管理栄養士の名前しか書かれていません。「厚生労働大臣が定めるもの」が入っているのは、支援の号だけです。その中身は告示に委ねられています。

調理員に教える先輩

告示の中身:栄養士は「研修を受講した者」として書かれています

委ねられた先が、平成20年厚生労働省告示第10号です。通知や国の手引きは、これを「実践的指導実施者告示」と呼んでいます。食生活の側を定めた第1は、次のとおりです。

「食生活の改善指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者は、歯科医師又は次のいずれかに該当する者とする。
1 看護師、栄養士等であって、内容が別表第1に定めるもの以上である食生活改善指導担当者研修を受講した者
2 1に定める者と同等以上の能力を有すると認められる者」

出典:特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準第七条第一項第二号及び第八条第一項第二号の規定に基づき厚生労働大臣が定める食生活の改善指導又は運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者(平成20年厚生労働省告示第10号)第1(原文どおり)

  • 栄養士は、告示の文中に職種名で出てきます。ただし条件付きで、「食生活改善指導担当者研修を受講した者」であることが要件です。
  • 研修の中身は「別表第1に定めるもの以上」です。別表が下限を決めています。
  • 歯科医師は、研修の条件なしで並んでいます。歯科医師を加えたのは平成29年厚生労働省告示第268号による改正で、平成30年4月1日から適用されています。

運動の側を定めた第2も同じ組み立てで、「看護師、栄養士等であって、内容が別表第2に定めるもの以上である運動指導担当者研修を受講した者」などとしています。

出典:同告示 第2、同告示の改正文(平成29年厚生労働省告示第268号)

調理師製菓衛生師パティシエ

「栄養士等」の「等」は、通知が書いています

告示は「看護師、栄養士等」とだけ書いています。「等」に誰が入るかは、厚生労働省の通知「令和6年度以降における特定健康診査及び特定保健指導の実施並びに健診実施機関等により作成された記録の取扱いについて」(令和5年3月31日付け健発0331第4号・保発0331第6号。令和5年7月31日一部改正。以下「通知」)が示しています。

「第1の1中「看護師、栄養士等」とあるのは、看護師、栄養士のほかに薬剤師、助産師、准看護師、歯科衛生士を含む趣旨であること。」

出典:通知 第三の3⑴ア(原文どおり。冒頭の告示名の部分は省略)

研修受講して実践的指導を担える職種(告示+通知)
食生活改善指導担当者研修(告示 第1の1)看護師、栄養士、薬剤師、助産師、准看護師、歯科衛生士
運動指導担当者研修(告示 第2の1)看護師、栄養士、歯科医師、薬剤師、助産師、准看護師、理学療法士

出典:通知 第三の3⑴ア、⑵ア

告示第1の2の「同等以上の能力を有すると認められる者」は、令和2年3月31日改正前の旧THP指針に基づく産業栄養指導担当者で、別紙2の追加研修(計12.0時間)を受講した者などです(出典:通知 第三の3⑴イ、別紙2)。

食生活改善指導担当者研修は、6分野で計30時間です

告示の別表第1が、食生活改善指導担当者研修の分野・範囲・時間数を定めています。

分野範囲(主なもの)時間数
1.健康づくり施策概論社会環境の変化と健康課題 など3項目3.0
2.生活指導及びメンタルヘルスケア個人の健康課題への対処行動(保健行動)、個別・集団の接近技法 など5項目10.5
3.栄養指導食行動の変容と栄養教育 など3項目6.0
4.健康教育メタボリックシンドロームに対する健康教育、口腔保健 など4項目6.0
5.運動の基礎科学運動と健康のかかわり1.5
6.研究討議意見交換(メタボリックシンドローム関連)3.0
計30.0

出典:実践的指導実施者告示 別表第1(第1の1関係)

いちばん長いのは「栄養指導」の6.0時間ではなく、「生活指導及びメンタルヘルスケア」の10.5時間です。相手の行動を変える側の内容に時間が割かれています。

通知は、別表の内容を「最低限のもの」とし、必要に応じてカリキュラムを追加して実施することが望ましいとしています(通知 第三の3⑶イ)。30時間は上限ではなく、下限です。

運動の側の運動指導担当者研修(別表第2)は、14分野で計147.0時間です。食生活の側のおよそ5倍の長さになります(編集部算出:147.0÷30.0=4.9)。

研修を実施する機関の条件と、修了の証明

通知は、告示の別表に定める研修を実施する機関の条件を4つ挙げています。

研修を実施する機関の条件
①厚生労働省のホームページ上に設けるデータベースに、研修を実施する機関として所定の登録を行うこと
②研修で用いる教材は、令和2年度厚生労働科学研究で作成された研修教材の内容を最低限含むこと
③講師は、医師、保健師又は管理栄養士としての実務経験があり保健指導の専門的知識及び技術を有する者、又はこれと同等以上の知識経験を有する者であること
④研修修了者に対して、研修を修了したことを証明する書面を交付すること

出典:通知 第三の3⑶ア

受講する時期も書かれています。

「実践的指導実施者告示第1の1、第2の1の看護師、栄養士等は、実践的指導を実施するまでに、当該告示別表第1、別表第2に定める研修を修了していること。」

出典:通知 第三の3⑶ウ(原文どおり)

さらに、特定保健指導を受託する者は、研修を修了した人が受託業務に従事する予定があるとき、委託元の保険者に対し、研修を修了したこと等を証明する文書を提出することになっています(通知 第三の3⑶エ)。

担うのは「実践的指導」。計画は医師・保健師・管理栄養士が作ります

研修を受けた栄養士等が何をどこまで行うかは、通知が書いています。

「食生活の改善指導に関する専門的知識及び技術を有する者は、医師、保健師、管理栄養士又は(中略)が作成する特定保健指導支援計画に基づき、これらの者の統括の下で食生活の改善指導を実施するものであること。」

出典:通知 第三の3⑴オ(原文どおり。(中略)は経過措置の対象となる看護師に関する部分を省略)

「食生活の改善指導に関する専門的知識及び技術を有する者においては、3メッツ以下の運動指導を実施することができるものとする。」

出典:通知 第三の3⑴カ(原文どおり)

外部委託の基準を定めた平成25年厚生労働省告示第92号(以下「委託基準告示」)も、受託機関の人員の基準で役割を分けています。

役割委託基準告示が定める担い手
初回の面接、行動目標及び行動計画の作成、実績評価医師、保健師又は管理栄養士(第2の1⑶)
積極的支援で、特定保健指導支援計画の実施に統括的な責任を持つ者医師、保健師又は管理栄養士(第2の1⑷)
食生活に関する実践的指導医師、保健師、管理栄養士又は実践的指導実施者告示の第1に規定する者(第2の1⑸)

出典:委託基準告示(平成25年厚生労働省告示第92号)第2の1⑶〜⑸(経過措置として看護師を加える読み替えの部分は省略)

研修を受けた栄養士が担うのは、計画に沿った食生活の改善指導の部分です。計画を作り、評価し、全体を統括するのは医師・保健師・管理栄養士の側、という組み立てになっています。

もう1つの「研修」:ガイドラインの研修は「望ましい」です

「特定保健指導の研修」には、もう1種類あります。委託基準告示は、特定保健指導実施者の研修について次のように書いています。

「特定保健指導実施者(実施基準第7条第1項第2号の規定に基づき、動機付け支援対象者に対し、生活習慣の改善のための取組に係る動機付けに関する支援を行う者又は実施基準第8条第1項第2号の規定に基づき、積極的支援対象者に対し、生活習慣の改善のための取組に資する働きかけを行う者をいう。以下同じ。)は、国、地方公共団体、医療保険者、日本医師会、日本看護協会、日本栄養士会等が実施する一定の研修を修了していることが望ましいこと。」

出典:委託基準告示 第2の1⑻(原文どおり)

厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」も、保健指導実施者について同じ方向の一文を置いています。

「さらに、保健指導実施者は、健診・保健指導の研修ガイドラインに記載されている研修を修了していることが望ましい。」

出典:標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)第3編第3章 3-7(2)保健指導実施者(原文どおり)

この2つは「望ましい」で、告示第10号の研修のような要件ではありません。国の手引き(第4.3版、2026年3月)は、両者を混同しないよう注意書きを付けています。

「「専門的知識及び技術を有すると認められる者」(実践的指導者)と一定の研修との関係はないことに注意。実践的指導者とは告示等において規定されている者であり、一定の研修(「標準的な健診・保健指導プログラム」内の「健診・保健指導の研修ガイドライン」に準拠した研修)を受講すれば実践的指導者となれる訳ではない。」

出典:特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.3版)2-9-2 実施者への研修 脚注*2(原文どおり。末尾の一文は省略)

研修ガイドラインは、保健指導実施者の初任者(保健指導経験年数1〜2年目)向けに、1回360分のプログラム例を示しています。

研修方法学習内容時間(分)
講義特定健診・特定保健指導の理念・制度・仕組み、特定保健指導の流れ など90
講義エネルギー収支を改善するための保健指導(食生活、身体活動に関する保健指導の実際)90
講義喫煙・飲酒習慣者への保健指導30
演習初回面接(必須)。栄養アセスメント演習などを選択して組み合わせる120
まとめ全体のまとめ(質疑・応答)、自己学習に向けたヒント30
合計時間360

出典:健診・保健指導の研修ガイドライン(令和6年度版)Ⅲの1のa(初任者)。経験者(保健指導経験年数3年以上)向けの例も合計時間360分です

ガイドラインの研修は、管理栄養士を含む保健指導実施者に修了が「望ましい」とされる研修です。栄養士として実践的指導を担う人には告示の食生活改善指導担当者研修が要件で、ガイドラインの研修はその代わりにはなりません。

この記事が扱っていないこと

  • 研修の実施機関・日程・受講料。国の資料で個別の研修を確かめていないため、取得していません。
  • 運動指導担当者研修(別表第2)の分野ごとの範囲と時間数。本記事では14分野と合計の147.0時間だけを書いています。
  • 旧THP指針そのものと、通知の別紙3・別紙4の追加研修の中身。本記事では取得していません。
  • 研修で用いる教材(令和2年度厚生労働科学研究)の内容。本記事では取得していません。
  • 特定保健指導の実施方法の告示(平成25年厚生労働省告示第91号)が定める支援の時間やポイント。本記事では扱っていません。
  • 制度の骨格や実施状況の数字。特定保健指導とは(ID36)で扱っています。

特定保健指導の仕事を考える栄養士が確認できること

  • 受講する研修が、告示の別表第1の内容以上か。分野と時間数(計30.0時間)を見比べられます。
  • 修了を証明する書面が交付されるか。通知が研修実施機関に求めている条件です。受託機関は、保険者に修了を証明する文書を出します。
  • 担当するのが実践的指導の部分か。初回の面接、行動計画の作成、実績評価は、委託基準告示では医師、保健師又は管理栄養士の役割です。
  • 支援計画を作り、統括する管理栄養士等が誰か。研修を受けた栄養士等は、その統括の下で指導します。

よくある質問

Q. 管理栄養士でない栄養士も、特定保健指導に関われますか。
A. 実施基準 第7条第1項第2号・第8条第1項第2号の支援は、「厚生労働大臣が定めるもの」も行えます。平成20年厚生労働省告示第10号は、その1つとして「看護師、栄養士等であって、内容が別表第1に定めるもの以上である食生活改善指導担当者研修を受講した者」を定めています。

Q. 食生活改善指導担当者研修は何時間ですか。
A. 告示の別表第1は6分野で計30.0時間です。通知は、別表の内容を最低限のものとしています。

Q. 管理栄養士も、食生活改善指導担当者研修を受ける必要がありますか。
A. 実施基準 第7条第1項第2号は、管理栄養士を支援の担い手として直接書いています。告示第10号の研修の対象として書かれているのは「看護師、栄養士等」です。研修ガイドラインに記載されている研修は、保健指導実施者に修了が「望ましい」とされているものです。

Q. 研修ガイドラインの研修を修了すれば、栄養士も実践的指導者になれますか。
A. なれません。国の手引きは、ガイドラインに準拠した研修を受講すれば実践的指導者となれる訳ではない、と注意しています。実践的指導者の要件は告示等に定められています。

Q. 研修はどこで受けられますか。
A. 通知は、研修を実施する機関に厚生労働省のデータベースへの登録を求めており、手引きは受講希望者による検索も可能としています。個別の実施機関・日程・受講料は、本記事では取得していません。

迷ったらここ

特定保健指導の研修を確かめる

特定保健指導で栄養士が食生活の支援を担うには、告示が定める食生活改善指導担当者研修(計30時間)の受講が要件です。

  • 受講する研修で、修了を証明する書面が交付されるか
  • 担当するのが、支援計画に沿った実践的指導の部分か
  • 支援計画を作り統括する管理栄養士等が、誰に決まっているか
栄養士の転職サービスを比較する

まとめ

実施基準は、動機付け支援・積極的支援のうち支援の号(第7条第1項第2号・第8条第1項第2号)に、医師・保健師・管理栄養士のほか「厚生労働大臣が定めるもの」を入れています。

その中身を定めた平成20年厚生労働省告示第10号は、「看護師、栄養士等」で食生活改善指導担当者研修を受講した者を挙げています。研修は告示の別表第1で6分野・計30.0時間が下限です。通知は、実践的指導を実施するまでに修了すること、実施機関が修了を証明する書面を交付することを求めています。

研修を受けた栄養士等は、医師・保健師・管理栄養士等が作る特定保健指導支援計画に基づき、その統括の下で食生活の改善指導を行います。研修ガイドラインの研修は修了が「望ましい」とされるもので、受講しても実践的指導者になれるわけではありません。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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