30秒でわかるまとめ
- 看護師の勤務表を組み替えて睡眠が42分延びました愛知県の病院が昼夜の入れ替わりを月8〜10回から4〜5回に減らしたところ、活動量計で測った総睡眠時間が42分延びました。
- 1日2時間・週1回から働ける仕組みもあります大阪の病院は、育児や介護の途中でも、ブランクがあっても働けるように、短い時間だけの勤務を2008年から続けています。
- 夜勤をしていない理由で最も多いのは子どもの世話です国の検討会に出た調査では、夜勤をしていない1,275人のうち27.1%がこの理由を挙げ、30代では64.8%にのぼりました。
- 睡眠が改善しても満足度は下がりました新人看護師の満足度は10点満点で5.8から5.2に下がり、病院は連続する日勤を3日以内にするなどの見直しをしました。
9月14日、厚生労働省の「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」が開かれ、看護職員の勤務環境改善が議題になった。夜勤の負担をどう減らすか、夜勤ができない時期の人にどう働いてもらうかが論点で、2つの病院が自分たちの取り組みを報告している。転職や復職を考える人から見ると、同じ「病棟勤務」でも病院によって勤務の作り方がここまで違うという話でもある。ここでは検討会の資料を読み、面接で確かめられる形に整理する。
夜勤ができない時期は誰にでもある
検討会の資料1には、日本看護協会が2025年10月から11月にかけて行った看護職員実態調査の結果が載っている。有効回答は4,430人で、そのうち職場に夜勤がない、または夜勤はあるが今はしていない(日勤のみ)と答えた1,275人に、その最も大きな理由を1つだけ選んでもらっている。
| 夜勤をしていない最も大きな理由 | 割合 |
|---|---|
| 子どもの世話 | 27.1% |
| 看護管理者の職位にあるため | 17.3% |
| 健康上の理由(身体的なもの) | 10.3% |
| 家族の健康問題・介護 | 3.1% |
出典:日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」(n=1,275・単一回答)
残りは「その他」18.4%と「特になし」15.8%である。理由の上位は、本人の力量ではなく生活の事情だと読める。
夜勤ができない人は、少数派なのだと思っていました。
調査では1,275人が答えている。理由のいちばんは子どもの世話だ。
その時期に働き方の選択肢があるかどうか、ですね。
理由は年代で入れ替わる
同じ表を年代別に見ると、理由の顔ぶれが入れ替わる。30代では64.8%、40代では42.1%が子どもの世話を挙げている。一方で50代は看護管理者の職位にあるためが30.3%で最も多く、次が健康上の理由(身体的なもの)の15.5%である。
夜勤を外れる理由は年代によって移り変わる。子育てを終えれば戻れる人もいれば、今度は自分の体の事情が出てくる人もいる。
看護の職場を離れた人の退職理由も、検討会の資料に載っている。ナースセンターに登録した求職者の回答では、多い順に子育て、結婚、転居で、生活の変わり目と結びついている。夜勤の有無だけで働き続けられるかが決まってしまう職場は、その変わり目のたびに人を手放すことになる。
1日2時間・週1回から働ける病院
資料2は、大阪府済生会吹田病院の超短時間勤務制度の報告である。看護部長が「くわいナース」と呼ばれる仕組みを説明している。働ける時間を申告してもらい、1日2時間以上、週1回から勤務できる。対象は育児や介護の途中の人、いったん退職した人、ブランクがあって復職に不安のある人などである。
始まりは2008年で、資料は当時を「退職届を受け取らない日はない」と書いている。子育てとの両立が難しくて辞める人が続き、師長たちが「自分たちなら、どんな制度があれば働けたか」を問い直したことから制度づくりが始まった。
- 働ける日・時間を本人が申請する(1日2時間以上/週1回から)
- 急な休みも取れる
- eラーニングや院内研修に参加できる
- 院内保育所を利用できる
出典:大阪府済生会吹田病院「働ける時間を看護力に変える 超短時間勤務制度『くわいナース』の取組」
短い時間で終わる仕事を切り出す
短い時間でも働けるようにするために、この病院は看護業務のほうを組み替えている。導入した2008年に任せていたのは、保清、環境整備、患者搬送、記録を伴わない業務だった。そこから経験や習熟に応じて広げ、いまは食事介助、点滴作成、バイタル測定、検査後の観察、新しく登録した人への支援、カンファレンスへの参加まで含まれる。
資料が挙げている運用の決めごとは3つである。何をどこまでいつまでにやるかという終わりを設計すること、勤務終了の30〜60分前に主な役割を終えて余白を確保すること、勤務時間のすべてを1つの役割で埋めないこと。資料はこれを「柔軟な勤務は、善意ではなく運用ルールで支える」とまとめている。
短時間勤務が続く職場かどうかは、制度の有無より定時で終われる設計になっているかで決まる、という整理である。
ただし資料は、うまくいった話だけを書いていない。在籍者は2019年度の年度平均28.0人から、2026年度は11.8人(4〜8月の平均)まで減っている。2019年以降に在籍した16人の内訳は、パート10人、嘱託3人、正規1人、訪問看護2人である。把握できた退職届48件の理由は、家庭・育児・介護・転居が19件で最も多く、転職・勤務条件が13件、健康上の理由が5件だった。資料自身が「制度を置くだけでは確保できない」と書いている。
昼夜の入れ替えを半分に減らす
資料3は、藤田医科大学病院(愛知県豊明市)の報告である。この病院の看護部の職員は2,021人、うち看護師は1,717人で、およそ1,450人(全体の84.4%)が夜勤・交代制勤務に就いている。1983年に三交代制から変則二交代制へ移り、毎月4連休を確保する運用を続けてきた。
そこに残っていた課題が昼夜遷移である。資料は「生活リズムが昼間から夜間、夜間から昼間に切り替わること」と定義し、勤務表の記号の並びから数えられる指標としている。従来の勤務では月8〜10回あった。日勤・長勤・夜勤が1週間のうちに混ざるためである。
見直しでは、1か月を日勤の週、長勤の週、夜勤の週にまとめ、週の切れ目に休みを挟む形にした。結果として次のようになっている。
- 昼夜の入れ替わり 月8〜10回 → 月4〜5回
- 夜勤後の休息 48時間以上
- 休日(有給を含む) 月11〜14日で、従来の4連休以上は維持
出典:藤田医科大学病院「看護師が健康で働き続けられる勤務体制の構築」
導入は一斉ではない。2023年度に2病棟で試し、2024年度は新人全員、2025年度は2年目と複数の病棟へ広げ、2026年4月に全病棟・全職員へ実装した。各段階に調査を紐づけ、その結果を次の年度の判断材料にしている。
夜勤の回数ではなく、並べ方を変えたということですか。
そう。日勤の週、夜勤の週とまとめて、切れ目に休みを置いた。
4連休が減らないようにしたところが、この病院の工夫だね。
それで、体はちゃんと楽になったのでしょうか。
睡眠は改善、満足度は下がった
効果は、本人の感想ではなく活動量計を24時間・1か月つけて測った数値で確かめている。精神科病棟の看護師20人を対象に、見直しの前後を比べた結果である。
| 測った指標 | 前後の変化 |
|---|---|
| 睡眠効率(布団の中で眠れている割合) | +3.8% |
| 総睡眠時間 | +42分 |
| 睡眠潜時(寝つくまでの時間) | −7.8分 |
出典:同上。いずれも統計的に意味のある改善と報告されている
ところが同じ資料に、導入した新人看護師の勤務満足度は下がったと書いてある。224人に聞き、有効回答は184人(82.1%)。10点満点の平均は8月の5.8から翌年2月の5.2になった。自由回答で最も多かったのは連続する日勤が身体的にきついで、4日以上の連続日勤が挙がっていた。
病院はこれを勤務表の作成ルールに落とし込んでいる。日勤は連続3日以内を推奨、夜勤後は48時間以上の休息、4連休以上の確保と勤務希望の反映である。連続勤務日数ごとに睡眠効率を見ると日勤4日目で明確に下がるため、それを根拠にした。
この日の検討会について、医療情報サイトのGemMedは9月14日に報じている。
資料には残った課題も書かれている。勤務表を作る看護管理者の作業は1人あたり月20時間を超え、負担は増えた。
眠れるようになったのに、満足度は下がったのですね。
連続の日勤がきつかった。そこを聞いて上限を決め直したんだ。
迷ったらここ
勤務表の組み方を面接で確かめる
同じ二交代でも、勤務の並べ方と休みの置き方で体への負担は変わります。国の検討会に出た事例では、昼夜の入れ替わりを月8〜10回から4〜5回に減らした病院で、総睡眠時間が42分延びました。
- 1週間のうちに日勤と夜勤がどれくらい混ざるか
- 夜勤が明けてから次の勤務まで、何時間空くか
- 日勤は何日まで続くか。連続日勤の上限はあるか
- 夜勤中の休憩と仮眠の場所は、どう用意されているか
- 短時間勤務や日勤のみを選べる時期はあるか
編集部の見方:聞けば分かる差である
2つの病院に共通しているのは、人に勤務を合わせる方向へ動いていることである。片方は働ける時間を起点に仕事を切り出し、もう片方は勤務の並べ方を変えた。どちらも「がんばる」ではなく、業務の範囲や勤務表の作り方というルールの話になっている。
これは求人票には出てこない。二交代か三交代か、夜勤は月に何回かは書かれていても、1週間のうちに昼夜がどれだけ入れ替わるか、日勤が何日続くか、夜勤明けにどれだけ空くかは書かれていない。同じ条件に見える2つの病院で、体の負担が同じとは限らない。上の「迷ったらここ」に並べた5つは、どれも面接で聞けば答えが返ってくる質問である。
もう1つ、短時間勤務について。制度があるかどうかより、その時間で終わる仕事が決まっているかを聞いたほうがよい。終わりが決められていない職場では、短時間勤務が「早く帰る人」になり、続かない。済生会吹田病院の資料が、勤務終了の30〜60分前に主な役割を終える設計だと書いているのは、そういう意味である。
なお、夜勤の手当や夜勤の形そのものについては看護師の夜勤手当に関する記事で、患者や家族からの迷惑行為への備えについては10月1日から義務になるカスハラ対策の記事で整理している。検討会は今後も続くため、この先の議論も追う。
出典
一次資料
- 厚生労働省「第5回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会:資料」2026年9月14日開催(2026年9月16日参照)
- 同 資料1「看護職員の勤務環境改善について」(PDF)。夜勤をしていない理由と退職理由はここにある
- 同 資料2「大阪府済生会吹田病院の取組について」(PDF)。超短時間勤務制度の中身と在籍者数はここにある
- 同 資料3「藤田医科大学病院の取組について」(PDF)。昼夜遷移の回数と睡眠の測定結果はここにある
報道
- GemMed「働き方に人を合わせるのではなく、人が働き続けられる形(多様な働き方の選択肢)を組織が作ることが極めて重要—看護職員養成・確保検討会」2026年9月14日(2026年9月16日参照)
編集部メモ
- 数値はすべて検討会の資料から直接取り、編集部で計算し直して確かめています。夜勤をしていない理由の表は、理由ごとの人数の合計も、年代ごとの人数の合計も1,275人になることを確認しました。割合も実数から割り戻しています。
- ⚠ 2つの病院は、いずれも個別の事例です。全国の病院がこうなっているという意味ではありません。検討会に「こういうやり方がある」として出された報告です。
- ⚠ 睡眠の測定は精神科病棟の看護師20人が対象です。資料自身が探索的な研究で効果の程度は限定的と注記しています。人数が少ないことを承知で、客観的に測った数値として紹介しました。
- 資料の図のうち、数値が読み取れないものは使っていません。睡眠リズムの帯グラフ、睡眠効率のグラフ、年代別に希望する働き方のグラフがそれにあたります。
- 済生会吹田病院の在籍者が減っている点は、資料のとおり書きました。制度が効かなかったという意味ではなく、資料は「制度を置くだけでは確保できない」と書いています。良い面だけを取り出さないため、この数字も載せています。
- 新人の満足度が下がった点も、資料に書かれているとおりです。病院はこれを受けて連続日勤の上限などを決め直しています。
- GemMedの報道は、この検討会が開かれた時期を示すために参照しました。記事中の数値と引用はすべて検討会の資料から取っています。
- この検討会は2026年4月から続いており、今後も開かれます。看護職員の需給推計や確保策の議論を、改めて取り上げる予定です。

