30秒でわかるまとめ
- 介護報酬改定の視点案で、処遇改善が第1に置かれました厚生労働省が9月30日、2027年度改定に向けた5つの基本的な視点の案を示しました。第1は物価・賃金への対応と処遇改善です。
- 「他職種と遜色のない処遇改善」と書かれています介護の職員の待遇を、ほかの仕事と比べて見劣りしない水準にするという目標です。額や改定率は、まだ示されていません。
- 赤字の事業者は約4割と資料に記されています物価や賃金の上昇で経費が増え、ほかの産業で賃上げが進むなか、介護の現場は厳しい状況にあると国が認めました。
- 前回の改定で、処遇改善は3つ目の視点の中でした2024年度改定の視点は4つで、介護職員の処遇改善は「働きやすい職場づくり」の項目の1つとして扱われていました。
厚生労働省は9月30日、社会保障審議会の介護給付費分科会に、2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた「基本的な視点(案)」を示した。改定の方向を5つの視点にまとめたもので、その第1に物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善を置いた。介護ニュースJointは同日、改定の大きな柱は物価の上昇やほかの産業で進む賃上げへの対応と、介護従事者の処遇改善だと報じた。介護の仕事を続ける人、これから介護の職場を選ぶ人に向けて、案の中身を整理する。
改定の基本的な視点は5つ
介護報酬は、介護サービスを提供した事業者に支払われる報酬で、国が単価を決める公定価格である。次の改定は2027年度で、同じ年度から第10期の介護保険事業計画の期間が始まる。分科会では今年4月以降、計9回にわたって各サービスや横断的な課題を議論し、関係団体との意見交換会も3回開いてきた。今回の案は、その議論を踏まえて改定の方向を整理したものである。
| 順 | 基本的な視点(案) |
|---|---|
| 第1 | 物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善 |
| 第2 | 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築 |
| 第3 | 地域包括ケアシステムの深化 |
| 第4 | 職場環境の改善と生産性の向上を通じたサービスの質の向上及び介護人材の確保 |
| 第5 | 制度の安定性・持続可能性の確保 |
出典:厚生労働省 第268回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」
案はまた、2027年度から始まる第10期の介護保険事業計画の期間を、85歳以上の人口が増える2040年を見据えた取り組みを本格化させる時期と位置づけた。地域によって介護サービスの需要が増えるところと減るところが分かれ、差が大きくなるとしている。
視点が決まったら、給料も上がるということですか。
今回示されたのは方向だけで、額はまだ書かれていないんだ。
それでも、処遇改善が最初に来ている意味はありそうです。
第1は物価・賃金への対応と処遇改善
第1の視点について、案は次のように書いている。事業者の経営状況や介護分野の賃上げの状況を把握したうえで、物価や賃金の上昇を介護報酬に適切に反映し、事業者の経営を安定させる。あわせて「他職種と遜色のない処遇改善」を実現し、人材が定着し、離職を防ぐ環境を整える、というものである。
「遜色のない」は、ほかの仕事と比べて見劣りしないという意味である。案の前文でも、全産業の賃金の動きを踏まえ、介護分野の職員について他職種と遜色のない処遇改善を進めることが重要だとしている。
今回の案に、改定率や処遇改善の額は書かれていない。示されたのは、改定で何を重く見るかという方向である。
赤字の事業者は約4割と明記
案は改定の前提となる認識として、物価や賃金の上昇でさまざまな経費が増え、ほかの産業で賃上げが進むなかで、「介護現場は、厳しい状況に直面している」と書いた。そのうえで、2025年度の介護事業経営概況調査では、全サービスで赤字の事業者の割合が約4割になっていると記している。
介護サービスは国が値段を決める公定価格のため、物価や賃金の上昇によるコストの増加を、事業者が自分でサービスの価格に上乗せすることは難しい。案はこの点を挙げ、経営の安定と、介護人材の確保・定着に向けたさらなる処遇改善が求められているとした。
前回は4つの視点の3番目の中
前回の2024年度改定でも、基本的な視点が示されていた。そのときの視点は4つで、介護職員の処遇改善は独立した視点ではなかった。
| 順 | 2024年度改定の基本的な視点 |
|---|---|
| 1 | 地域包括ケアシステムの深化・推進 |
| 2 | 自立支援・重度化防止に向けた対応 |
| 3 | 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり(この中に「介護職員の処遇改善」) |
| 4 | 制度の安定性・持続可能性の確保 |
出典:厚生労働省 第239回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(2024年1月22日)
前回は「働きやすい職場づくり」の中で、処遇改善と生産性の向上が並べて扱われていた。今回の案では、処遇改善が物価・賃金への対応と組になって第1の視点になり、職場環境の改善と生産性の向上は第4の視点として別に立てられている。
前回は、処遇改善が視点の名前に入っていなかったんですね。
「働きやすい職場づくり」の中の1項目だったね。
今回は物価や賃金とまとめて、いちばん前に置かれたよ。
国が賃金の問題を、いちばん重く見ているということですね。
介護助手へのタスクシフトも柱に
第4の視点は、職場環境の改善と生産性の向上である。案は、施設系だけでなく居宅系サービスも含めて、AIなどの介護テクノロジーの活用や、いわゆる介護助手などへの業務のタスクシフト/シェアを進めるとしている。それによって職員の負担を減らし、生まれた時間を利用者への直接的な介護ケアに充てる、という考え方である。
職場の環境については、2026年6月に成立した社会福祉法等の改正で、人材確保や生産性向上の取り組みが国と都道府県の責務になり、生産性向上を進める協議会の設置が都道府県の義務になった。案はこの改正も踏まえている。
中山間地域と保険料の視点も並ぶ
2026年6月の同じ改正では、中山間・人口減少地域で柔軟にサービスを提供できる「特定地域サービス」が創設され、第2の視点では、その人員配置基準や報酬を検討するとしている。中山間地域の加算のあり方の見直しも挙がった。
一方で第5の視点では、現役世代を中心に保険料負担の増加への懸念があることを挙げ、報酬の評価の適正化・重点化と、報酬体系の整理・簡素化を進めるとした。処遇改善を進めながら、限られた財源の中で報酬を組み直すことになる。
上げる話と、絞る話が一緒に書かれているんですね。
どの加算が残るかは、これからの議論で決まっていくよ。
迷ったらここ
処遇改善の配り方を聞く
改定の方向は示されましたが、処遇改善の額や配り方は事業所ごとに違います。いまの加算がどう配られているかを聞いておくと、次の改定でどう変わりうるかも見えやすくなります。
- 処遇改善加算のどの区分を取っているか
- 加算の分を、月給・手当・賞与のどれで配っているか
- 介護テクノロジーや介護助手の導入の予定
- 前回の改定のあと、給料がどう変わったか
編集部の見方:額が出るまでは方向だけ
ここからは編集部の見方である。今回の案で目を引くのは、処遇改善が視点の名前に入り、第1に置かれたことだ。前回は「働きやすい職場づくり」の中の1項目だった。国が介護の賃金の問題を改定の中心に据えたことは、はっきり読み取れる。
ただし、案に書かれているのは方向であって、額でも改定率でもない。第5の視点では、報酬の適正化・重点化と体系の簡素化も掲げている。処遇改善の上乗せが大きくなる一方で、ほかの報酬が絞られることもありうる。「他職種と遜色ない」がどの水準を指すのかは、この資料からは分からない。
職場を選ぶ側にとっては、国全体の方向よりも、勤め先が処遇改善の加算をどこまで取り、どう配っているかのほうが給料に直結する。加算の取り方で賃上げの幅が変わることは処遇改善加算の記事で、見守り機器による夜勤の負担軽減は夜勤と見守り機器の記事で整理している。
出典
一次資料
- 厚生労働省「第268回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」(2026年9月30日、2026年10月1日参照)。資料1「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」、資料2「同 概要」
- 同「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(PDF、第239回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1、2024年1月22日、2026年10月1日参照)
報道
- 介護ニュースJoint「厚労省「介護現場は厳しい」 来年度改定、目玉に物価高への対応や賃上げ 経営の安定へ財源確保が焦点」2026年9月30日(2026年10月1日参照)
編集部メモ
- 今回の資料は「案」で、分科会での議論を経て変わることがあります。
- 改定率、処遇改善の額、改定の時期は、今回の資料には書かれていません。本文でも書いていません。
- 「赤字の事業者は約4割」は、案の本文が2025年度の介護事業経営概況調査の結果として記しているものです。調査そのものの数字はこの記事では扱っていません。
- 視点の数と順番は、資料1の本文の見出しと、資料2の概要の両方で確かめました。前回の視点が4つで、処遇改善が3つ目の中にあったことは、前回の資料の構成で確かめています。
- 介護ニュースJointの報道は、この案が示された日と、報道での受け止めを示すために参照しました。案の中身はすべて厚生労働省の資料から取っています。

