30秒でわかるまとめ
- 福祉用具貸与は、介護保険の居宅サービスの1つです貸与の対象になる用具は厚生労働大臣が定める、と介護保険法の条文に書かれています。
- 入浴と排せつの用具は、貸与ではなく販売の扱いです両方に当たる用具については、どちらを選ぶかを説明するよう省令が求めています。
- 回収した用具は、速やかに消毒すると書かれています消毒が済んだものと済んでいないものを区分して保管する、という定めも並んでいます。
- 取扱種目は、できる限り多くの種類とされています事業所には、品名と品名ごとの利用料を書いた目録の備え付けも求められています。
※この事業所で働く職種の資格要件と配置は福祉用具専門相談員とは、同じ居宅サービスの訪問介護はホームヘルパーとはで扱っています。この記事は「貸与」という仕組みそのものを条文で読みます。

まず条文:法律は「用具」と「貸与」を分けて書いています
介護保険法 第8条第12項です。
「この法律において『福祉用具貸与』とは、居宅要介護者について福祉用具(心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのものをいう。)のうち厚生労働大臣が定めるものの政令で定めるところにより行われる貸与をいう。」
出典:介護保険法(e-Gov法令API 法令ID 409AC0000000123)第8条第12項。括弧内の準用に関する一文を省いたほかは原文どおり
読み分けると、条文は3つのことを言っています。
- 用具の中身=日常生活上の便宜を図るための用具と、機能訓練のための用具。
- その目的=要介護者等の日常生活の自立を助けるためのもの。
- 対象の絞り込み=そのうち厚生労働大臣が定めるもの。
「日常生活の自立を助けるため」という目的が、定義の中に入っています。用具の形ではなく、何のためのものかで線が引かれている書き方です。

介護保険には、用具を借りる・買うのほかに、住まいを改修する給付もあります。施工する業者に資格が求められているかと、理由書を書く人の定めは住宅改修に資格は必要か|省令が求めているのは、施工者の資格ではなく理由書ですで扱っています。
入浴と排せつのものは、貸与ではなく販売です
すぐ次の第13項が、販売のほうを定めています。
「この法律において『特定福祉用具販売』とは、居宅要介護者について福祉用具のうち入浴又は排せつの用に供するものその他の厚生労働大臣が定めるもの(以下『特定福祉用具』という。)の政令で定めるところにより行われる販売をいう。」
出典:同法 第8条第13項(原文どおり)
| 項 | サービス名 | 条文が挙げる対象 |
|---|---|---|
| 第8条第12項 | 福祉用具貸与 | 福祉用具のうち厚生労働大臣が定めるもの |
| 第8条第13項 | 特定福祉用具販売 | 入浴又は排せつの用に供するものその他の厚生労働大臣が定めるもの |
出典:介護保険法 第8条第12項・第13項
条文が名指ししているのは「入浴又は排せつの用に供するもの」だけで、あとは厚生労働大臣が定めるものに委ねられています。肌に直接ふれる使い方をするものが、借りて返す仕組みから外れている、という組み立てです。

ここが本題:両方に当たる用具は、利用者が選びます
貸与の対象にも販売の対象にもなる用具があります。省令はこれを「対象福祉用具」と呼び、事業者がすべきことを定めています。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第199条第2号
「法第八条第十二項に規定する厚生労働大臣が定める福祉用具及び同条第十三項に規定する特定福祉用具のいずれにも該当する福祉用具(以下『対象福祉用具』という。)に係る指定福祉用具貸与の提供に当たっては、利用者が指定福祉用具貸与又は指定特定福祉用具販売のいずれかを選択できることについて十分な説明を行った上で、利用者の当該選択に当たって必要な情報を提供するとともに、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者その他の関係者の意見及び利用者の身体の状況等を踏まえ、提案を行うものとする。」
出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov法令API 法令ID 411M50000100037)第199条第2号。括弧内の法文の言い換えを1か所省いたほかは原文どおり
条文が事業者に求めているのは3つです。
- 説明=借りるか買うかを選べること自体を、十分に説明する。
- 情報提供=選ぶために必要な情報を渡す。
- 提案=医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士や担当者の意見と、身体の状況を踏まえて提案する。
「選べること」を説明する義務と、「どちらがよいか」を提案する義務が、別々に書かれています。決めるのは利用者側、という前提で条文が並んでいます。
事業の基本方針は「選定の援助、取付け、調整等」です
章の先頭にある第193条が、この事業が何をするものかを定めています。
「利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえた適切な福祉用具の選定の援助、取付け、調整等を行い、福祉用具を貸与することにより、利用者の日常生活上の便宜を図り、その機能訓練に資するとともに、利用者を介護する者の負担の軽減を図るものでなければならない。」
出典:同基準 第193条(基本方針)。括弧内にある法第8条第12項の言い換えを省いたほかは原文どおり
用具を届けることではなく、選定の援助・取付け・調整までが事業の内容として書かれています。そして目的に介護する者の負担の軽減が入っている点は、この事業の基本方針に固有の書き方です。
提供のときにすることが、9つ並んでいます
第199条(指定福祉用具貸与の具体的取扱方針)は、9つの号でできています。
| 号 | 定められていること |
|---|---|
| 1 | 計画に基づき、専門的知識に基づいて相談に応じ、目録等の文書を示して機能・使用方法・利用料・全国平均貸与価格等を情報提供し、同意を得る |
| 2 | 対象福祉用具は、貸与と販売のいずれかを選択できることを十分に説明し、情報提供と提案を行う |
| 3 | 貸与する福祉用具の機能、安全性、衛生状態等に関し、点検を行う |
| 4 | 身体の状況等に応じて調整を行い、使用方法・留意事項・故障時の対応を書いた文書を交付し、実際に使用させながら指導する |
| 5 | 要請等に応じて使用状況を確認し、必要な場合は使用方法の指導、修理等を行う |
| 6 | 緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない |
| 7 | 身体的拘束等を行う場合は、態様・時間・心身の状況・理由を記録する |
| 8 | 居宅サービス計画に位置づけられる場合、必要な理由が記載され、随時その必要性が検討されるよう措置を講じる |
| 9 | 同一種目における機能又は価格帯の異なる複数の福祉用具に関する情報を提供する |
出典:同基準 第199条第1号〜第9号。表現は編集部が要約した
第1号の「全国平均貸与価格」と、第9号の「同一種目における機能又は価格帯の異なる複数の福祉用具」が、価格に関する定めです。1つだけ見せて決めさせる形にならないよう、条文の側で複数の提示が求められています。
第1号にある福祉用具貸与計画については、別の条(第199条の2)が作成と記録を定めています。計画の作り方と、その後に行う確認については福祉用具専門相談員とはで扱っています。
ケアマネジャーが居宅サービス計画書の第2表に福祉用具を位置付けるときは、必要とする理由が明らかになるように書きます。様式の書き方は居宅サービス計画書の書き方|国の様式は「標準例」。7つの表は、省令第13条の手順に沿って埋まっていきますで扱っています。
借りたものが戻ってくるので、消毒の定めがあります
貸与という仕組みの特徴が、いちばんはっきり出ているのが第203条(衛生管理等)です。
| 項 | 定められていること |
|---|---|
| 第2項 | 回収した福祉用具を、その種類、材質等からみて適切な消毒効果を有する方法により速やかに消毒するとともに、既に消毒が行われた福祉用具と消毒が行われていない福祉用具とを区分して保管する |
| 第3項 | 保管又は消毒を委託等により他の事業者に行わせることができる。この場合、契約の内容において適切な方法により行われることを担保しなければならない |
| 第4項 | 委託等により行わせる場合は、当該事業者の業務の実施状況について定期的に確認し、その結果等を記録する |
出典:同基準 第203条第2項〜第4項
「速やかに」と書かれているのは消毒で、保管については消毒済みかどうかで分けることが求められています。外に出してよい、とも書かれていますが、外に出した場合は担保と定期確認・記録がそのまま事業者の義務として残ります。
この第4項の記録は、第204条の2が保存の対象に挙げている7つのうちの1つです。訪問介護など他の居宅サービスで並ぶ記録は6つで、委託先の確認結果の記録が加わっているのが福祉用具貸与の側です。記録を保存する仕組みそのものは介護事務の仕事内容で扱っています。
取扱種目と目録:「できる限り多くの種類」
第202条(福祉用具の取扱種目)は、短い1文です。
「指定福祉用具貸与事業者は、利用者の身体の状態の多様性、変化等に対応することができるよう、できる限り多くの種類の福祉用具を取り扱うようにしなければならない。」
出典:同基準 第202条(原文どおり)
数は書かれていません。「できる限り多くの種類」という書き方で、下限の品目数は条文に置かれていません。
第204条(掲示及び目録の備え付け)は、そのうえで見えるようにすることを定めています。
| 項 | 定められていること |
|---|---|
| 第1項 | 事業所の見やすい場所に、運営規程の概要その他の重要事項を掲示する |
| 第2項 | 重要事項を記載した書面を備え付け、いつでも関係者に自由に閲覧させることで掲示に代えることができる |
| 第3項 | 原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない |
| 第4項 | その取り扱う福祉用具の品名及び品名ごとの利用料その他の必要事項が記載された目録等を備え付ける |
出典:同基準 第204条第1項〜第4項
第3項の「原則として、ウェブサイトに掲載」は、事業所の外から確認できる形で置かれた定めです。働く先を探す側からも、応募前に見にいける情報にあたります。
この記事が扱っていないこと
- 厚生労働大臣が定める用具の品目。第8条第12項・第13項は「厚生労働大臣が定めるもの」と書くだけで、品目名は告示の領域です。本記事は告示を取得していないため、個別の品目名は書いていません。
- 全国平均貸与価格の金額と、価格の上限。第199条第1号に語として出てきますが、金額そのものは条文にありません。
- 介護予防福祉用具貸与との違い。別の省令(指定介護予防サービス等基準)の領域で、本記事は取得していません。
働く場所として見るときに確認できること
- 消毒と保管を自社で行うか、外に出しているか。第203条第3項で委託等は認められています。委託の場合は、第4項の定期確認と記録が事業所の仕事になります。
- 取扱種目の幅。第202条は「できる限り多くの種類」とだけ定めています。実際にどれだけ扱うかは事業所ごとに違います。
- 目録と重要事項の出し方。第204条第3項により、重要事項は原則ウェブサイトに掲載されています。応募前に読めます。
- 貸与と販売の両方を行っているか。第199条第2号の説明と提案は、両方を扱う事業所で日々発生する業務です。
よくある質問
Q. 福祉用具貸与で借りられる用具は決まっていますか。
A. 介護保険法 第8条第12項は「厚生労働大臣が定めるもの」と書いています。具体的な品目は告示で定められており、本記事では取得していません。
Q. なぜ入浴や排せつの用具は借りられないのですか。
A. 第8条第13項が、入浴又は排せつの用に供するものを「特定福祉用具」として販売の対象に置いているためです。理由そのものは条文に書かれていません。
Q. 借りるか買うかは、誰が決めますか。
A. 第199条第2号は、両方に該当する用具について「利用者が選択できることについて十分な説明を行った上で」情報提供と提案を行う、と定めています。
Q. 返却された用具は、そのまま次の人に貸されますか。
A. 第203条第2項が、回収した福祉用具を速やかに消毒し、消毒済みのものと未消毒のものを区分して保管することを定めています。
Q. 消毒を外部に任せてもよいのですか。
A. 第203条第3項が委託等を認めています。その場合も契約の内容で適切な方法を担保し、第4項により実施状況を定期的に確認して記録することが求められます。
Q. 事業所で働くのに資格は要りますか。
A. 福祉用具専門相談員の資格要件と員数は別の条にあります。福祉用具専門相談員とはで扱っています。
迷ったらここ
消毒と保管を、どこでやるかを聞く
省令は回収した用具を速やかに消毒し、消毒済みと未消毒を分けて保管することを求めています。自社で行うか外に出すかで、日々の仕事の形が変わります。
- 消毒と保管を自社で行うか、委託しているか
- 貸与と販売の両方を扱っているか(選べることの説明と提案が要る)
- 重要事項がウェブサイトに出ているか(原則として掲載)
まとめ
福祉用具貸与は、介護保険法 第8条第12項が定める居宅サービスです。用具は日常生活上の便宜を図るための用具と機能訓練のための用具で、日常生活の自立を助けるためのものという目的が定義に入っています。
入浴又は排せつの用に供するものは、第13項により特定福祉用具販売のほうに置かれています。両方に該当する用具については、省令 第199条第2号が選べることの説明・情報提供・提案を事業者に求めています。
貸与という仕組みのため、第203条は回収した用具を速やかに消毒し、消毒済みと未消毒を区分して保管することを定めています。委託等は認められていますが、担保と定期確認・記録は残ります。
取扱種目は第202条が「できる限り多くの種類」とし、第204条が重要事項の掲示・原則ウェブサイト掲載・目録の備え付けを定めています。数の下限は、条文には置かれていません。

