30秒でわかるまとめ
- 介護事業所の今年の賃上げ率は3.93%でした介護の17団体が9月に行った調査の速報です。平均の賃上げ額は月1万114円で、前年度の3.01%から上がりました。
- 全産業の5.01%には届いていません調査は全産業(春闘)を5.01%としています。介護職員の給与は全産業より月8.2万円低いという数字も示されました。
- 職種別では、リハ専門職の賃上げ額がいちばん少ない結果です介護職は1万135円、看護職は8,776円、リハ専門職は8,300円でした。事務職は8,643円です。
- 17団体は基本報酬の十分な引き上げを要望しました10月6日に官房長官へ要望書を出しました。毎年の賃金改善と、物価上昇への対応も求めています。
全国老人保健施設協会など介護関係の17団体は10月6日、木原稔内閣官房長官に「令和9年度介護報酬改定に向けた要望書」を提出し、あわせて9月に行った緊急調査の速報を公表した。介護事業所の正社員の今年度の賃上げ率は3.93%で、全産業(春闘)の5.01%を下回った。介護ニュースJointは10月7日、介護従事者の賃上げが他産業に遅れをとっている実態が浮き彫りになったと報じた。介護の仕事を続ける人、これから介護の職場を選ぶ人に向けて、調査の数字を整理する。
賃上げ率は3.93%、うちベア分2.48%
調査は「介護分野の幅広い職種の賃上げ及び介護事業所の経営状況等調査」で、17団体が2026年9月10日から28日にかけて行った。回答は1,445件で、8,219事業所分にあたる。数字は10月2日時点の速報である。正社員全体の賃上げの状況は次のとおり。
| 項目 | 2025年度 | 2026年度 |
|---|---|---|
| 賃上げ額(平均) | 7,483円 | 10,114円 |
| 賃上げ率 | 3.01% | 3.93% |
| うちベア分(額) | 4,056円 | 6,369円 |
| うちベア分(率) | 1.63% | 2.48% |
| 前年度の所定内給与 | 248,938円 | 257,267円 |
出典:介護関係17団体「【緊急!】介護分野の幅広い職種の賃上げ及び介護事業所の経営状況等調査(速報)」(正社員全体。2026年度は9月の調査時点、2025年度は春の調査)
賃上げ率は、賃上げ額を前年度の所定内給与で割った数字である。前年度の所定内給与には、厚生労働省の賃金構造基本統計調査から、訪問介護従事者と介護職員の所定内給与を加重平均した額が使われている。2026年度の賃上げ額は前年度の1.35倍、ベア分は1.57倍になった。
去年より賃上げは大きくなっているんですね。
3.01%から3.93%、月7,483円から1万114円になったね。
上がってはいるけれど、ほかの業界と比べるのが大事そうです。
全産業の5.01%には届かず
資料は、比べる相手として全産業(春闘)の賃上げ率を2026年度5.01%、2025年度5.25%としている。介護の3.93%は、全産業を1ポイント以上下回る。資料は、2026年度の臨時改定で賃上げは進んだものの、全産業には届いていないとまとめた。
給与の水準の差も示された。資料が厚生労働省の統計をもとに示した2025年の額では、介護職員の給与は月31.4万円で、全産業平均(役職者を除く)の39.6万円より8.2万円低い。2023年は介護職員30.0万円、全産業36.9万円で、差は6.9万円だった。2年で差は1.3万円広がっている。
この調査は業界団体による調査で、国の統計ではない。回答の多くは施設や居住系のサービスで、訪問介護の事業所は全体の2.2%だった。
職種別ではリハ専門職が最も少ない
調査は職種ごとの賃上げ額も出している。2026年度の月の賃上げ額は次のとおり。
| 職種 | 賃上げ額 | うちベア分 |
|---|---|---|
| 介護職 | 10,135円 | 6,458円 |
| 相談員(支援・生活) | 9,300円 | 5,883円 |
| 看護職 | 8,776円 | 5,676円 |
| 事務職 | 8,643円 | 5,443円 |
| 介護支援専門員 | 8,622円 | 5,404円 |
| リハ専門職 | 8,300円 | 5,083円 |
| 全体 | 10,114円 | 6,369円 |
出典:介護関係17団体「【緊急!】介護分野の幅広い職種の賃上げ及び介護事業所の経営状況等調査(速報)」(2026年度、月額)
介護職だけが1万円を超え、ほかの職種は8,300〜9,300円にとどまった。資料は、2026年度の臨時改定で処遇改善加算の対象が介護従事者に広げられた一方、上乗せの措置は介護職員に限られていると記している。
同じ事業所でも、職種で賃上げの額が違うんですね。
介護職は1万135円、リハ専門職は8,300円だったね。
上乗せの措置は、介護職員に限られていると資料にあったね。
介護職以外の人は、職場がどう配っているかで差が出そうです。
事業所の56.0%が赤字
経営の状況では、2026年6月の時点で赤字の事業所が56.0%、黒字が44.0%だった。物価の上昇について、国の補正予算や2026年度の臨時改定で増えたコストをカバーできているかを聞くと、「カバーが不十分で、収支悪化や赤字化を招いている」が78.9%、「全くカバーできず、事業の一部を縮小・休止せざるを得ない」が10.8%で、「ほぼカバーできている」は10.3%だった。
次の改定で基本報酬の引き上げがない場合の見通しでは、「他事業の補填や借入がなければ3年耐えられない」が58.0%、「1〜2年以内に事業縮小を検討」が10.7%、「1〜2年以内に廃業・撤退、または譲渡を具体的に検討」が3.8%だった。
加算が上がらなければ賃上げは「限界」
介護職員等処遇改善加算の加算率がこれ以上引き上げられない場合に、他産業並みの賃上げを続けられるかも聞いている。「自己資金での賃上げはすでに限界で、これ以上は不可能」が66.3%、「定期昇給や賞与の維持すら極めて困難」が31.0%で、「自己資金で他産業並みの賃上げを続けられる」は2.7%にとどまった。
要望は基本報酬の引き上げなど3項目
要望書が求めているのは次の3つである。
- 経営基盤を確保するため、基本報酬を十分に引き上げること
- 全産業と遜色のない賃金水準の実現に向け、介護従事者の毎年の賃金改善を図ること
- 物価の動向を踏まえて毎年対応し、前回改定以降の物価上昇によるコスト増にも対応・支援すること
PT-OT-ST.NETによると、17団体は翌10月7日に都内で「介護現場を守る集会」を開き、同じ3項目を盛り込んだ決議文を採択した。国は9月30日に示した2027年度改定の基本的な視点の案で、物価・賃金の上昇への対応と処遇改善を第1に置いている。その中身は介護報酬改定の視点案の記事で整理している。
毎年の賃上げを、という要望なんですね。
改定の結果が出るまで、自分の職場の賃上げの中身を見ておきたいです。
迷ったらここ
今年の賃上げの中身を聞く
賃上げの額は、職種や事業所の加算の取り方・配り方で変わります。いまの職場や応募先で、次の点を聞いておくと比べやすくなります。
- 今年度の賃上げ額と、そのうちベースアップの額
- 処遇改善加算のどの区分を取っているか
- 介護職以外(看護・リハ・ケアマネ・相談員)への配り方
- 定期昇給と賞与の、ここ数年の実績
編集部の見方:業界の訴えとして読む
ここからは編集部の見方である。この調査は、報酬の引き上げを求める側の団体がまとめたもので、要望の根拠として示された数字だ。回答した事業所の4分の1強は特定施設で、訪問介護は2.2%、訪問看護は0.5%と少ない。介護の事業所全体の平均とは言い切れない。
それでも、賃上げが前年より大きくなったのに全産業との差が縮まっていないこと、そして介護職とそれ以外の職種で賃上げの額に差があることは、働く側にとって知っておく価値がある。次の改定の改定率は、まだ示されていない。それまでに勤め先の加算の取り方と配り方を確かめておくことが、次の改定を自分の給料で受け取るための近道になる。加算の区分ごとの賃上げの幅は処遇改善加算の記事で整理している。
出典
一次資料
- 公益社団法人全国老人保健施設協会ほか介護関係17団体「令和9年度介護報酬改定に向けた要望書」(PDF、2026年10月6日、2026年10月8日参照)。添付の「【緊急!】介護分野の幅広い職種の賃上げ及び介護事業所の経営状況等調査(速報)」(2026年10月2日現在)を含む
報道
- 介護ニュースJoint「介護の賃上げ率、今年3.93% 他産業に遅れ 17団体緊急調査 賃金格差の拡大懸念」2026年10月7日(2026年10月8日参照)
- PT-OT-ST.NET「【介護報酬改定】介護関係17団体が官房長官に要望書 基本報酬の引き上げ求める|リハ職は賃上げ最低水準」2026年10月8日(2026年10月8日参照)
編集部メモ
- この記事の数字は、業界団体の調査の速報値です。国の統計ではありません。確定値では変わることがあります。
- 回答の内訳は、特定施設入居者生活介護26.2%、特別養護老人ホーム16.2%、通所介護12.6%、介護老人保健施設11.2%などで、訪問介護は2.2%です(事業所数ベース)。
- 全産業(春闘)の5.01%・5.25%は、調査資料に書かれている数字です。資料には春闘の集計元の名前は書かれていません。
- 職種別の賃上げ額は、資料のグラフの数値を読み取ったものです。並び順は資料の職種の順と、リハ専門職が最も低いという報道の両方で確かめました。
- 「1.35倍」「1.57倍」「差が1.3万円広がった」は、資料の数字から編集部が計算しました。給与の差は2023年と2025年の値で比べ、2024年の値は使っていません。
- 集会の開催と決議文の採択は、PT-OT-ST.NETの報道によるものです。
- 介護職員と全産業の給与(31.4万円・39.6万円)は、資料のグラフに示された2025年の値です。賞与を含むかどうかなどの定義は、資料の本文からは確かめられなかったため、本文では書いていません。

