サービス提供責任者がきついとき|省令が義務を負わせている相手は誰か

目次

30秒でわかるまとめ

  • サービス提供責任者の負担は、省令の書き方に表れます業務を列挙した条のほかに、事業者を主語にした義務の条がいくつも置かれているためです。
  • ハラスメントを防ぐ措置は、事業者の義務です性的な言動や優越的な関係を背景とした言動から就業環境を守る措置を求めています。
  • 感染症や虐待の防止も、事業所の側が行います委員会の開催、指針の整備、研修の実施が並び、いずれも主語は事業者になっています。
  • 苦情と事故の対応にも、条文が手順を置いています窓口の設置と記録、市町村や家族への連絡と記録が、それぞれの条に書かれています。

※サ責の業務そのものはサービス提供責任者の仕事内容、月収・勤続年数・労働時間はサービス提供責任者の年収、人間関係の切り分けは介護職の人間関係に疲れたときで扱っています。

訪問先で記録(サ責)

先に断ります:この記事は「きつさ」を測りません

サービス提供責任者(以下サ責)の負担感を測った公的な調査を、本記事では扱いません。労働時間や残業時間の実測値は別記事にまとめてあります。

ここで見るのは、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「省令」)が、訪問介護の事業について誰に何を義務づけているかです。

省令の条文には主語があります。「サービス提供責任者は」で始まる条と、「指定訪問介護事業者は」で始まる条は、別のものです。この線引きが、実際に抱えている仕事の量とずれていることがあります。

寄り添う介護

表の中の管理者について、省令がどう置き方を定めているかは別にまとめています。専ら従事する常勤という原則と、兼務ができる場合は介護の管理者の仕事内容|研修の修了が要る事業と要らない事業で扱っています。

ここが本題:主語で分けると、こうなります

訪問介護の章(第二章)を主語で仕分けると、次のようになります。

主語条中身
サービス提供責任者第24条訪問介護計画の作成、説明と同意、交付、実施状況の把握
サービス提供責任者第28条第3項第24条の業務のほかに行う8つの業務
訪問介護員等第27条利用者に病状の急変が生じた場合等の、主治の医師への連絡
管理者第28条第1項・第2項従業者と業務の一元的な管理、規定を遵守させるための指揮命令
指定訪問介護事業者第30条勤務体制の確保、研修の機会の確保、ハラスメントを防止する措置
指定訪問介護事業者第30条の2業務継続計画の策定、周知、研修と訓練、定期的な見直し
指定訪問介護事業者第31条衛生管理、感染症の予防とまん延の防止
指定訪問介護事業者第36条苦情処理
指定訪問介護事業者第37条事故発生時の対応
指定訪問介護事業者第37条の2虐待の防止

出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov法令API 法令ID 411M50000100037)第二章。各条の第1文の主語で分類

サ責を主語にした条は、第24条と第28条第3項の2つです。それ以外の運営上の義務は、条文の上では事業者に向けられています。

「これも自分がやることになっている」と感じている作業が、条文の上では事業者の義務だった、という場合があります。以下、事業者が主語の条を順に見ます。

相談窓口

第30条:勤務体制とハラスメント

第30条は「勤務体制の確保等」という見出しの条です。4つの項があり、いずれも主語は事業者です。

項条文の内容
1事業所ごとに、訪問介護員等の勤務の体制を定めておかなければならない
2事業所ごとに、当該事業所の訪問介護員等によって指定訪問介護を提供しなければならない
3訪問介護員等の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならない
4職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない

出典:同省令 第30条第1項〜第4項

第3項の研修の機会の確保は事業者の義務です。第28条第3項第七号にある「訪問介護員等に対する研修、技術指導等を実施すること」はサ責の業務なので、機会をつくる側と実施する側が分かれています。

第4項は、いわゆるハラスメントへの措置です。条文は「防止するための方針の明確化等の必要な措置」と書いており、方針を示すところまで含めて事業者に求めています。

第30条の2:業務継続計画

感染症や非常災害が起きたときに、サービスの提供を続けるための計画です。

「指定訪問介護事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。」

第2項は訪問介護員等への周知と、研修及び訓練の定期的な実施。第3項は定期的な見直しです。策定・周知・研修・訓練・見直しのすべてが事業者を主語にしています。

出典:同省令 第30条の2第1項〜第3項

第31条:衛生管理と感染症

第31条は3つの項に分かれます。

項内容語尾
1訪問介護員等の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行うしなければならない
2設備及び備品等について、衛生的な管理を行う努めなければならない
3感染症が発生し、又はまん延しないように、次の措置を講じるしなければならない

第3項の措置は3号あります。

号措置
1感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会を、おおむね6月に1回以上開催し、結果を訪問介護員等に周知徹底する
2感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備する
3訪問介護員等に対し、感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施する

出典:同省令 第31条第1項〜第3項。委員会はテレビ電話装置等を活用して行うことができると条文に書かれています

第2項だけが「努めなければならない」で、ほかは「しなければならない」です。同じ条の中で書き分けられています。

第36条・第37条・第37条の2:苦情、事故、虐待

この3つも、条文の主語は事業者です。

条置かれている手順
第36条(苦情処理)苦情に迅速かつ適切に対応するために窓口を設置する等の必要な措置/受け付けた場合は内容等を記録/市町村の調査への協力と、指導・助言に従った改善/求めがあった場合の市町村への報告
第37条(事故発生時の対応)事故が発生した場合の市町村・利用者の家族・居宅介護支援事業者等への連絡と必要な措置/状況と処置の記録/賠償すべき事故のときの損害賠償
第37条の2(虐待の防止)委員会の定期的な開催と周知徹底/指針の整備/研修の定期的な実施/これらを適切に実施するための担当者を置く

出典:同省令 第36条、第37条、第37条の2

第37条の2は、委員会・指針・研修・担当者の4つを号で並べています。担当者を置くことまで条文に書かれているので、誰が担当かは事業所の中で決まっているはずのことです。

運営規程に書かれているはずのこと

第29条は、事業所ごとに運営規程を定めておくことを事業者に求めています。定める項目は8つです。

号項目
1事業の目的及び運営の方針
2従業者の職種、員数及び職務の内容
3営業日及び営業時間
4指定訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額
5通常の事業の実施地域
6緊急時等における対応方法
7虐待の防止のための措置に関する事項
8その他運営に関する重要事項

出典:同省令 第29条第1号〜第8号

第2号に「職務の内容」があります。自分の職務がどこまでと書かれているかは、この規程で確認できます。第6号の緊急時等における対応方法も同じです。

緊急時の連絡は「訪問介護員等」が主語です

第27条は次のように書かれています。

「訪問介護員等は、現に指定訪問介護の提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、速やかに主治の医師への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。」

主語は訪問介護員等です。訪問先で急変に出会った人が連絡します。サ責がすべての急変を一人で受ける、という書き方にはなっていません。ただし第29条第6号のとおり、対応方法は運営規程に定められているはずのものです。

出典:同省令 第27条(原文どおり)

一方、訪問のあとに残す記録を定めた第19条は、指定訪問介護事業者を主語にしています。記録する事項を示した解釈通知の文言は訪問介護の記録の書き方|国の通知は「提供日・具体的なサービスの内容・心身の状況」を挙げていますで扱っています。

つらいときに、事業所の外にある窓口

ここまでは条文の話です。実際にしんどい状態が続いているときは、事業所の中だけで抱えないでください。

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内)。労働条件、いじめ・嫌がらせなど、労働問題全般の相談を無料で受け付けています。総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
  • こころの耳(厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)。電話・SNS・メールの相談窓口が案内されています。こころの耳

眠れない、食べられない、気分の落ち込みが続くといった状態があるときは、医療機関を受診してください。制度の話より先に確かめることがあります。

よくある質問

Q. 事業者が主語の義務は、サ責がやらなくてよいという意味ですか。
A. そうは書かれていません。条文が定めているのは義務を負う相手で、事業所内の分担までは決めていません。分担は第29条第2号の運営規程で確認できます。

Q. サ責の業務は何条にありますか。
A. 第24条と第28条第3項です。第28条第3項は8つの業務を号で挙げています。サービス提供責任者の仕事内容で扱っています。

Q. ハラスメントの措置は努力義務ですか。
A. 第30条第4項は「講じなければならない」です。同じ省令の中でも、第31条第2項のように「努めなければならない」と書かれている項があります。

Q. 感染症の委員会は何か月ごとですか。
A. 第31条第3項第1号が「おおむね6月に1回以上」と定めています。

Q. 訪問介護でできない仕事を頼まれたときは。
A. 省令が禁じている行為と、介護保険の対象外という区分は別のものです。訪問介護でできないことで扱っています。

Q. 辞めるかどうかを決めたいのですが。
A. 本記事は良し悪しを決める記事ではありません。介護職が職場を離れる理由の分布は「介護職を辞めたい」と思ったらで扱っています。

迷ったらここ

運営規程の「職務の内容」を見せてもらう

省令は運営規程に従業者の職種、員数及び職務の内容を定めるよう求めています。どこまでが自分の職務かは、記憶ではなくこの書面で確かめられます。

  • 運営規程に自分の職務の内容がどう書かれているか
  • 感染症と虐待の防止の担当者が誰か(省令は担当者を置くと定めている)
  • ハラスメント防止の方針が明確化されているか
介護職の転職サービスを比較する

まとめ

訪問介護の運営基準は、条文ごとに主語が違います。サービス提供責任者を主語にした条は、第24条と第28条第3項の2つです。

勤務体制と研修の機会、ハラスメントの防止(第30条)、業務継続計画(第30条の2)、衛生管理と感染症(第31条)、苦情処理(第36条)、事故発生時の対応(第37条)、虐待の防止(第37条の2)。これらの主語は指定訪問介護事業者です。

条文の上で誰の義務かがはっきりしている項目については、事業所の中でどう分担されているかを、運営規程で確かめられます。第29条第2号は「従業者の職種、員数及び職務の内容」を運営規程に定めるよう求めています。

抱えているものが多いと感じるとき、その一つひとつが条文のどこに書かれているかを見ておくと、話をする相手が変わります。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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