訪問介護でできないこと|省令の禁止は2つ、あとは保険外で頼めます

目次

30秒でわかるまとめ

  • 訪問介護の「できない」は理由の種類で意味が変わります省令の禁止か介護保険の対象外かで、保険外サービスとして頼めるかどうかが変わります
  • 省令が禁じる行為は2つしかありません身体的拘束等(第23条第3号)と、訪問介護員が自分の同居家族を担当すること(第25条)です
  • 草むしりやペットの世話は保険外で頼めます同居家族の部屋の掃除や買い物も、通知が保険外サービスとして名指しで挙げている例です
  • ただし同時一体的な提供は認められていません本人分と家族分の料理を一緒に作るなどはできず、訪問介護を一旦中断して切り替える必要があります

※訪問介護員の資格と人数の基準は訪問介護員とは|50.0%が介護福祉士、なる方法は3つで最短4か月、サービス提供責任者の業務はサービス提供責任者の仕事内容|省令が定める8業務と、利用者40人に1人で扱っています。この記事は「できないこと」の中身だけを扱います。

タブレット説明(訪問介護)

先に整理:「できない」には2種類あります

訪問介護で「できません」と言われる場面には、根拠がまったく違う2つが混ざっています。

観点①やってはいけないこと②介護保険では出せないこと
根拠省令(運営基準)通知(報酬の算定範囲)
性質行為そのものの禁止介護報酬の対象外という区分
お金を払えば頼めるか頼めない保険外サービスとして頼める
該当するもの身体的拘束等/同居家族へのサービス提供草むしり、ペットの世話、同居家族の部屋の掃除 など

出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)、および「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(平成30年9月28日 老推発0928第1号ほか)

この2つを混同すると、頼めるはずのことまで諦めることになります。順に見ていきます。

カンファレンス

種類①:省令が禁じている2つ

まず、行為そのものが禁じられているものです。訪問介護の運営基準の中で「してはならない」と書かれているのは、次の2か所です。

身体的拘束等(第23条第3号)

「指定訪問介護の提供に当たっては、当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない。」

そして第4号が続きます。「前号の身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。」

出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第23条第3号・第4号(e-Gov法令API 法令ID 411M50000100037)

例外は「緊急やむを得ない場合」だけで、その場合も記録が義務づけられています。家族からの依頼があっても、この線は動きません。

同居家族に対するサービス提供(第25条)

「指定訪問介護事業者は、訪問介護員等に、その同居の家族である利用者に対する訪問介護の提供をさせてはならない。」

出典:同基準 第25条

読み違えやすい条文なので、主語を確認してください。禁じられているのは「訪問介護員が自分の同居家族を担当すること」です。利用者の同居家族に家事をすることではありません。後者は種類②の話で、扱いが違います。

逆方向の規定もあります。第9条は「指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない」と定めています(提供拒否の禁止)。断ること自体にも制約がかかっている構造です。

契約書に押印

種類②:介護保険では出せないもの

次に、介護報酬の対象にならないという意味の「できない」です。根拠は省令ではなく通知にあります。

訪問介護のサービス行為を区分している通知(平成12年3月17日 老計第10号、平成30年3月30日 老振発0330第2号により改正)は、生活援助をこう定義しています。

「生活援助とは、身体介護以外の訪問介護であって、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助(そのために必要な一連の行為を含む)であり、利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものをいう。」

そして、こう続きます。

「※次のような行為は生活援助の内容に含まれないものであるので留意すること。
①商品の販売・農作業等生業の援助的な行為
②直接、本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為」

出典:「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年3月17日 老計第10号)別紙。本記事は平成30年3月30日 老振発0330第2号の新旧対照表(改正後)で確認した

挙がっているのは2つの類型だけです。具体的に何が当たるかは、この通知には書かれていません。

「一覧」を探すと、通知の階層にたどり着きます

ここが、この検索でいちばん分かりにくい部分です。「できないことの一覧」は、法令には存在しません。

介護報酬の算定に関する通知(平成12年3月1日 老企第36号)にも同じ2類型が書かれていますが、そこにはこう添えられています。

「(具体的な取扱いは「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」(平成12年11月16日 老振第76号)を参照すること)」

出典:老企第36号(新旧対照表による)

整理すると、根拠はこの順に並んでいます。

階層文書書かれていること
1省令(運営基準)身体的拘束等の禁止/同居家族へのサービス提供の禁止
2老計第10号(区分の通知)身体介護・生活援助の定義と、生活援助に含まれない2類型
3老企第36号(算定の通知)同じ2類型+「具体的な取扱いは老振第76号を参照」
4老振第76号具体的な取扱い(本記事では原文を入手できていません)

出典:各通知。階層は編集部が整理した

省令から数えて4階層目に、ようやく具体的な取扱いが置かれています。事業所や自治体によって説明が食い違って見えるのは、この構造が理由の一つです。

なお、本記事は老振第76号の原文を確認できていません。そのため、この通知にどこまで具体例が列挙されているかは示しません。代わりに、別の通知が名指しで挙げている例を次に見ます。

記録にも同じような階層があり、省令第19条の「提供した具体的なサービスの内容等」の中身は、解釈通知が示しています。記録に何を書くかは訪問介護の記録の書き方|国の通知は「提供日・具体的なサービスの内容・心身の状況」を挙げていますで扱っています。

草むしりもペットの世話も、保険外なら頼めます

2018年に、厚生労働省が4課室連名で通知を出しています。「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(平成30年9月28日)です。

この通知は、規制改革実施計画を受けて「一覧性や明確性を持たせた通知を発出し、周知を図る」ために出されたものです。つまり、この分かりにくさは国も認識していたということです。

そこに、訪問介護と組み合わせて提供できる保険外サービスの例が挙がっています。

区分通知が挙げている例
①訪問介護の対象とはならないサービスを利用者本人に提供訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、草むしり、ペットの世話のサービスを提供すること
訪問介護として外出支援をした後、引き続き、利用者が趣味や娯楽のために立ち寄る場所に同行すること
通院等乗降介助として受診等の手続を提供した後に、引き続き、介護報酬の算定対象とならない院内介助を提供すること
②同居家族に対するサービスの提供訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、同居家族の部屋の掃除、同居家族のための買い物のサービスを提供すること

出典:「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(平成30年9月28日 老推発0928第1号・老高発0928第1号・老振発0928第1号・老老発0928第1号)第二の2

草むしり、ペットの世話、同居家族の部屋の掃除、同居家族のための買い物。「訪問介護でできないこと」として挙げられがちなものが、そのまま「保険外サービスとして提供できる例」として通知に載っています。

この通知は、同じ扱いが訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・定期巡回随時対応型訪問介護看護・夜間対応型訪問介護にも及ぶとしています。

それでも認められていないこと

ただし、同じ通知の冒頭に、認められないことが明記されています。

「介護保険サービスと保険外サービスを同時一体的に提供することや、特定の介護職員による介護サービスを受けるための指名料や、繁忙期・繁忙時間帯に介護サービスを受けるための時間指定料として利用者の自費負担による上乗せ料金を徴収することについては、(中略)認めていない。」

出典:同通知 なお書き

「同時一体的」の意味は、通知の中に具体例があります。

「※利用者本人分の料理と同居家族分の料理を同時に調理するといった、訪問介護と保険外サービスを同時一体的に提供することは認めない。」

出典:同通知 第二の2②の注記

同居家族の食事を作ること自体は、保険外サービスとして可能です。ただし「ついでに一緒に」は認められていません。訪問介護を一旦中断し、切り替えたうえで行う形になります。

通知は認めない理由も書いています。自立支援・重度化防止という介護保険の目的にそぐわないサービスの提供を助長するおそれ、利用者本人のニーズにかかわらず家族の意向でサービス提供が左右されるおそれ、指名料・時間指定料を支払える利用者へのサービス提供が優先され公平性を確保できなくなるおそれ——の3点です。

保険外を頼むときに、事業者が守ること

同じ通知は、事業者が遵守すべき事項を5つ挙げています。依頼する側が確認できる形になっているので、そのまま並べます。

号遵守事項
①保険外サービスの目的、運営方針、利用料等を、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定める
②契約の締結に当たり、重要事項を記した文書で丁寧に説明し、内容・提供時間・利用料等について利用者の同意を得る。なお保険外サービスの提供時間は、訪問介護の提供時間には含めない
③契約の締結前後に、担当の介護支援専門員に報告する。ケアマネジャーは必要に応じて居宅サービス計画(週間サービス計画表)に記載する
④利用者の認知機能が低下しているおそれを踏まえ、別サービスであることを理解しやすくなるような配慮を行う(切り替えるタイミングを丁寧に説明する等)
⑤訪問介護の利用料とは別に費用請求し、会計を区分する

出典:同通知 第二の3①〜⑤

さらに、利用者保護の観点から苦情を受け付ける窓口の設置等必要な措置を講じることも求められています。

なお、サービス提供責任者については、同通知が「指定居宅サービス等基準 第5条第4項に規定されているとおり、専ら指定訪問介護に従事することが求められているが、業務に支障がない範囲で保険外サービスにも従事することは可能」としています。

週間サービス計画表(第3表)には、保険給付の内外を問わずサービスを書きます。居宅サービス計画書の各表の書き方は居宅サービス計画書の書き方|国の様式は「標準例」。7つの表は、省令第13条の手順に沿って埋まっていきますで扱っています。

依頼する前に確認できること

1. 断られた理由が①か②かを聞く

「省令で禁止されているのか、介護保険の対象外なのか」を聞いてください。後者なら、保険外サービスとして頼める可能性があります。この質問だけで話が進むことがあります。

2. その事業所が保険外サービスをやっているかを聞く

遵守事項①は、保険外サービスの運営規程を別に定めることを求めています。やっている事業所なら、別の規程と料金表があるはずです。

3. ケアマネジャーに報告される仕組みかを確認する

遵守事項③は、契約の締結前後にケアマネジャーへ報告することを求めています。報告がないまま進む形になっていないかは、確認する価値があります。

4. 訪問介護の時間に含まれていないかを確認する

遵守事項②は、保険外サービスの提供時間を訪問介護の提供時間に含めないとしています。同じ1時間の中で両方をやる形は、通知が認めていない「同時一体的な提供」に近づきます。

5. 身体的拘束等については、記録の有無を確認する

第23条第4号は、緊急やむを得ず身体的拘束等を行った場合に態様・時間・心身の状況・理由の記録を義務づけています。記録がない拘束は、条文が想定していない状態です。

よくある質問

Q. 訪問介護でできないことの一覧はどこにありますか。

A. 法令に一覧はありません。省令が禁じているのは身体的拘束等(第23条第3号)と同居家族へのサービス提供(第25条)の2つで、それ以外の「できない」は介護報酬の対象外という意味です。その区分は老計第10号が2類型を示し、老企第36号が「具体的な取扱いは老振第76号を参照」としています。本記事は老振第76号の原文を確認していないため、そこに載る具体例は示していません。

Q. 医療行為はできますか。

A. 本記事では扱っていません。医行為の範囲を判断する通知を確認していないためです。なお、社会福祉士及び介護福祉士法に基づく登録を受けた事業所が指定訪問介護として行うたんの吸引等について、報酬上「身体介護」として取り扱うことは老企第36号に記載があります。個別の行為が可能かどうかは、本記事では判断していません。

Q. 同居家族がいると生活援助は使えませんか。

A. 老計第10号の生活援助の定義は「利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるもの」としています。同居家族がいるだけで一律に使えないとは書かれていません。ただし個別の判断基準は本記事では確認していないため、実際の可否はケアマネジャーと市町村に確認してください。

迷ったらここ

「できません」と言われたら、理由の種類を聞く

省令が禁じているのは身体的拘束等と訪問介護員が自分の同居家族を担当することの2つだけです。それ以外は介護保険の対象外という意味で、保険外サービスとして頼める場合があります。

  • 断られた理由は省令の禁止か、介護保険の対象外か
  • その事業所は保険外サービスの運営規程を別に定めているか(通知の遵守事項①)
  • 保険外の時間が訪問介護の提供時間に含まれていないか(同②)
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まとめ

  • 「できないこと」は①やってはいけないことと②介護保険では出せないことの2種類。性質が違う
  • 省令が禁じているのは身体的拘束等(第23条第3号。緊急やむを得ない場合を除く/行えば記録が必要)と訪問介護員が自分の同居家族を担当すること(第25条)の2つ
  • 逆に正当な理由なく提供を拒むことも禁じられている(第9条)
  • 生活援助に含まれないのは2類型(①生業の援助的な行為 ②直接、本人の日常生活の援助に属しない行為)。具体例は法令にはなく、通知の4階層目にある
  • 草むしり・ペットの世話・同居家族の部屋の掃除・同居家族のための買い物は、保険外サービスとして提供できる例として通知に名指しで挙がっている(平成30年9月28日通知)
  • ただし同時一体的な提供(本人分と家族分の料理を同時に調理など)と指名料・時間指定料の徴収は認められていない
  • 保険外を組み合わせるときの遵守事項は5つ(別の運営規程/文書での説明と同意/ケアマネへの報告/別サービスと分かる配慮/会計の区分)

覚えておくことを1つに絞るなら、「できません」と言われたら理由の種類を聞くことです。省令の禁止なら動きませんが、介護保険の対象外という意味なら、通知が保険外サービスという道を用意しています。一覧を探すより、この1問のほうが早く答えにたどり着きます。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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