30秒でわかるまとめ
- 看護師1年目の研修は、法律が病院側に求めています新たに業務に従事する看護師等への臨床研修その他の研修の実施が、責務として書かれています。
- 本人の側に置かれているのも、努力義務の条文です研修を受けて資質の向上を図るよう努める、という形で2つの法律に書かれています。
- 支える役割は、3つに分けて示されています国のガイドラインが研修責任者、教育担当者、実地指導者という役割を挙げています。
- 到達目標は、1年ですべてではありません1年以内に目指す項目には印が付き、それ以外の時期は各施設が決めるとされています。
※辞めるかどうかの判断材料は「看護師を辞めたい」と思ったら、人間関係は看護師の人間関係に疲れたとき、夜勤は看護師の夜勤がきついときで扱っています。

先に断ります:この記事はつらさを数字にしません
1年目の看護職がどれだけ離職しているかという統計は、本記事では扱いません。数字は別記事にまとめてあります。
ここで見るのは、1年目の研修について、法律とガイドラインが誰に何を求めているかです。「自分の努力が足りない」という話として書かれているのかどうかを、条文で確かめます。

ここが本題:求められているのは病院の側です
看護師等の人材確保の促進に関する法律(平成4年法律第86号)の第5条は、見出しが「病院等の開設者等の責務」です。
「病院等の開設者等は、病院等に勤務する看護師等が適切な処遇の下で、その専門知識と技能を向上させ、かつ、これを看護業務に十分に発揮できるよう、病院等に勤務する看護師等の処遇の改善、新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施、看護師等が自ら研修を受ける機会を確保できるようにするために必要な配慮その他の措置を講ずるよう努めなければならない。」
出典:看護師等の人材確保の促進に関する法律(e-Gov法令API 法令ID 404AC0000000086)第5条第1項(原文どおり)
長い一文ですが、並んでいるのは3つです。
| # | 条文が挙げている措置 |
|---|---|
| 1 | 病院等に勤務する看護師等の処遇の改善 |
| 2 | 新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施 |
| 3 | 看護師等が自ら研修を受ける機会を確保できるようにするために必要な配慮 |
2つめが、1年目の研修に当たります。「新たに業務に従事する看護師等に対する」と名指しされています。

同じ法律には、行う行為によって受講そのものを求める研修も置かれています。特定行為研修の共通科目と区分別科目の時間数は特定行為研修とは|法律に書かれた、38行為のための研修ですで扱っています。
本人の側の条文も、あります
同じ法律の第6条は「看護師等の責務」です。
「看護師等は、保健医療の重要な担い手としての自覚の下に、高度化し、かつ、多様化する国民の保健医療サービスへの需要に対応し、研修を受ける等自ら進んでその能力の開発及び向上を図るとともに、自信と誇りを持ってこれを看護業務に発揮するよう努めなければならない。」
保健師助産師看護師法にも、同じ向きの条があります。
「保健師、助産師、看護師及び准看護師は、免許を受けた後も、臨床研修その他の研修(保健師等再教育研修及び准看護師再教育研修を除く。)を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」(第28条の2)
出典:同法 第6条、保健師助産師看護師法(e-Gov法令API 法令ID 323AC0000000203)第28条の2(いずれも原文どおり)
どちらも努力義務です。そして、本人だけに向けられた条ではありません。第4条では国と地方公共団体の責務も定められています。
| 条 | 誰の責務か | 研修についての書き方 |
|---|---|---|
| 第4条 | 国及び地方公共団体 | 看護師等の養成、研修等による資質の向上のために必要な措置を講ずるよう努める |
| 第5条 | 病院等の開設者等 | 新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施 |
| 第6条 | 看護師等 | 研修を受ける等自ら進んで能力の開発及び向上を図る |
出典:看護師等の人材確保の促進に関する法律 第4条第1項、第5条第1項、第6条
ガイドラインは、支える役割を3つに分けています
厚生労働省の新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】(平成26年2月)は、研修体制における役割を挙げています。
| 役割 | ガイドラインの説明 |
|---|---|
| 実地指導者 | 新人看護職員に対して、臨床実践に関する実地指導、評価等を行う者 |
| 教育担当者 | 各部署で実施される研修の企画、運営を中心となって行い、実地指導者への助言及び指導、新人看護職員への指導、評価を行う者 |
| 研修責任者 | 施設の規模によっては教育担当者の役割も担う。組織内で誰がどの役割かを互いに認識できる体制にすることが必要とされています |
出典:新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】「研修における組織の体制」
ガイドラインは、体制の構築について「病院管理者、看護管理者は、自施設の理念や基本方針に基づいた新人看護研修が実施できる体制の構築に責任を持つことが必要である」と書いています。
さらに、こうも書かれています。
「新人看護職員研修は、所属部署の直接の指導者だけではなく、部署スタッフ全員が新人を見守り、幾重ものサポート体制を組織として構築することが望ましい。」
「新人看護職員の不安を緩和するために、職場適応のサポートやメンタルサポート等の体制づくりが必要である。」
出典:同ガイドライン「新人看護職員を支える体制の構築」(いずれも原文どおり)
役職としての看護師長の給与の水準は看護師長の年収はいくらか|国の調査にあるのは月額455,988円、看護師との差は76,280円ですで扱っています。
1年ですべてに到達する、とは書かれていません
ガイドラインは到達目標を4つのまとまりで示しています。
| まとまり | 項目数 |
|---|---|
| 看護職員として必要な基本姿勢と態度 | 16項目 |
| 技術的側面:看護技術 | 70項目 |
| 技術的側面:助産技術 | 28項目 |
| 管理的側面 | 18項目 |
出典:同ガイドライン「到達目標」
そして、次のように書かれています。
「各項目の到達の目安を4段階で示し、1年以内に到達を目指す項目には「★」を付した。ただし、1年の間のいつの時点で到達すべきなのか、あるいは1年以内に到達を目指す項目ではない項目(「★」を付していない項目)についていつまでに到達することを目標とするのかは、各施設が決めていくものとしている。」
前段にも、こうあります。
「到達目標の項目によっては、施設又は所属部署で経験する機会が少ないものもあるため、優先度の高いものから修得する。状況によっては到達期間を2年目以降に設定しなければならないこともあり得る。」
出典:同ガイドライン「到達目標」(いずれも原文どおり)
2年目以降に設定することもあり得ると、ガイドラインの側が書いています。
臨床実践能力は、3つの側面に分けられています
ガイドラインは臨床実践能力の構造をⅠ基本姿勢と態度/Ⅱ技術的側面/Ⅲ管理的側面の3つとしています。そして、こう書かれています。
「新人看護職員研修は、看護基礎教育では学習することが困難な、医療チームの中で複数の患者を受け持ち、多重課題を抱えながら、看護を安全に提供するための臨床実践能力を強化することに主眼を置くことが重要である。」
出典:同ガイドライン「基本方針」の②(原文どおり)
「看護基礎教育では学習することが困難な」と書かれています。学生のときに身につけているはずのもの、という前提では組み立てられていません。
職場の外にある窓口
ここまでは条文とガイドラインの話です。しんどい状態が続いているときは、部署の中だけで抱えないでください。
- 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内)。労働条件、いじめ・嫌がらせなど、労働問題全般の相談を無料で受け付けています。総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- こころの耳(厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)。電話・SNS・メールの相談窓口が案内されています。こころの耳
- ナースセンター(各都道府県)。看護職の就業に関する相談を受け付けています。都道府県ナースセンター(ナースセンター インターネットサービス)
眠れない、食べられない、気分の落ち込みが続くといった状態があるときは、医療機関を受診してください。制度の話より先に確かめることがあります。
有給休暇が取れないと感じるときに条文で確かめられること(年5日の義務や時季変更権の条件)は、クリニック看護師は有給を取れるか|年5日は、使用者が時季を定めて与える義務ですで扱っています。
よくある質問
Q. 新人研修は病院の義務ですか。
A. 看護師等の人材確保の促進に関する法律 第5条は「講ずるよう努めなければならない」という書き方です。努力義務として置かれています。
Q. 研修がほとんどないのですが、法令違反ですか。
A. 本記事は個々の事業所について判断しません。条文が努力義務であることと、ガイドラインが体制の構築を求めていることまでを示しています。
Q. 1年以内にすべてできるようになる必要がありますか。
A. ガイドラインは1年以内に到達を目指す項目に印を付けたうえで、それ以外の時期は各施設が決めるとしています。到達期間を2年目以降に設定することもあり得ると書かれています。
Q. 指導してくれる人は決まっているはずですか。
A. ガイドラインは、組織内で誰がどの役割を担うのかを互いに認識できる体制とし、それを明確に示すことが必要だとしています。
Q. つらいのは自分の適性の問題ですか。
A. 本記事は適性を判断する記事ではありません。ガイドラインは、看護基礎教育では学習することが困難な能力を研修で強化する、という組み立てになっています。
Q. 辞めるかどうかを決めたいです。
A. 本記事は良し悪しを決める記事ではありません。判断の材料は「看護師を辞めたい」と思ったらで扱っています。
迷ったらここ
研修の体制を、面接で聞く
法律は病院等の開設者等の責務として新人研修の実施を挙げています。だから体制の有無は、個人の頑張りとは別に確かめられます。
- 実地指導者や教育担当者が決まっているか
- 到達目標をいつまでに置いているか(1年以内とは限らない)
- 相談できる先が部署の外にもあるか
まとめ
1年目の研修について、法律は病院等の開設者等の責務として書いています。「新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施」が、処遇の改善と並んで挙げられています。
本人の側の条文もありますが、そちらだけということはありません。国と地方公共団体(第4条)、病院等の開設者等(第5条)、看護師等(第6条)の3段で置かれています。
厚生労働省のガイドラインは、支える役割を研修責任者・教育担当者・実地指導者に分け、部署スタッフ全員で見守る体制が望ましいとしています。
到達目標は16・70・28・18項目。1年以内に目指す項目には印が付き、それ以外をいつまでにするかは各施設が決めるとされています。到達期間を2年目以降に設定することもあり得ると、ガイドラインが書いています。

