30秒でわかるまとめ
- 特定行為研修は、看護師の研修として法律に書かれています特定行為を手順書により行う看護師は、指定研修機関で研修を受けなければならないとされています。
- 対象の行為は、省令の別表に38並んでいます行為は21の特定行為区分にまとめられ、研修は区分ごとに受ける形になっています。
- 共通科目は7科目で、合計が250時間以上です臨床推論やフィジカルアセスメントなどが並び、区分別科目にはこれとは別に時間数が定められています。
- 研修機関を指定するのは、厚生労働大臣です修了すると指定研修機関から修了証が交付され、機関は1月以内に厚生労働大臣へ報告します。
※看護師にしかできない行為の線引きは看護助手の仕事内容は「療養生活上の世話」、准看護師との違いは准看護師と正看護師の違い、1年目の研修は看護師1年目がつらいときで扱っています。

まず条文:保健師助産師看護師法 第37条の2
特定行為研修は、法律の条文に名前が出てくる研修です。第37条の2第1項はこう書かれています。
「特定行為を手順書により行う看護師は、指定研修機関において、当該特定行為の特定行為区分に係る特定行為研修を受けなければならない。」
出典:保健師助産師看護師法(e-Gov法令API 法令ID 323AC0000000203)第37条の2第1項(原文どおり)
第2項は、この条に出てくる5つの用語を定義しています。
| 号 | 用語 | 条文の定義(要旨) |
|---|---|---|
| 1 | 特定行為 | 診療の補助であって、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされるものとして厚生労働省令で定めるもの |
| 2 | 手順書 | 医師又は歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるために、その指示として作成する文書又は電磁的記録 |
| 3 | 特定行為区分 | 特定行為の区分であって、厚生労働省令で定めるもの |
| 4 | 特定行為研修 | 看護師が手順書により特定行為を行う場合に特に必要とされる能力の向上を図るための研修であって、特定行為区分ごとに厚生労働省令で定める基準に適合するもの |
| 5 | 指定研修機関 | 特定行為研修を行う学校、病院その他の者であって、厚生労働大臣が指定するもの |
出典:同法 第37条の2第2項第1号〜第5号
「特定行為」は診療の補助の一部です。看護師の業務の外にある新しい行為ではなく、診療の補助のうち、手順書で行うときに特別な能力が要るものを取り出した形です。

対象は38行為、21区分です
具体的な行為は、保健師助産師看護師法第三十七条の二第二項第一号に規定する特定行為及び同項第四号に規定する特定行為研修に関する省令(平成27年厚生労働省令第33号。以下「省令」)の別表第一に並んでいます。
数えると38あります。別表第二はこれを21の特定行為区分にまとめています。
| 特定行為区分(抜粋) | 含まれる行為(別表第一の号) |
|---|---|
| 呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 第1号 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
| 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 第2号〜第5号 |
| 循環器関連 | 第7号〜第10号 |
| ろう孔管理関連 | 第15号・第16号(胃ろうカテーテル等の交換、膀胱ろうカテーテルの交換) |
| 創傷管理関連 | 第19号・第20号(壊死組織の除去、創傷に対する陰圧閉鎖療法) |
| 血糖コントロールに係る薬剤投与関連 | 第28号 インスリンの投与量の調整 |
| 循環動態に係る薬剤投与関連 | 第30号〜第34号 |
| 皮膚損傷に係る薬剤投与関連 | 第38号 |
出典:省令(e-Gov法令API 法令ID 427M60000100033)別表第一、別表第二。区分の数・行為の数は編集部が計数
研修は区分ごとに受けます。第37条の2第1項が「当該特定行為の特定行為区分に係る特定行為研修」と書いているためです。

手順書に書く事項は6つです
特定行為は手順書により行います。省令 第3条第2項は、手順書に定める事項を挙げています。
| 号 | 手順書に定める事項 |
|---|---|
| 1 | 看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲 |
| 2 | 診療の補助の内容 |
| 3 | 当該手順書に係る特定行為の対象となる患者 |
| 4 | 特定行為を行うときに確認すべき事項 |
| 5 | 医療の安全を確保するために医師又は歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制 |
| 6 | 特定行為を行った後の医師又は歯科医師に対する報告の方法 |
出典:省令 第3条第2項第1号〜第6号
第3条第1項は、手順書を「医師又は歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるためにその指示として作成するもの」としています。作るのは医師・歯科医師の側です。
研修は、共通科目と区分別科目の2本立てです
省令 第5条は研修の基準です。共通科目と区分別科目で構成するとされています。
| 共通科目(別表第三) | 時間数 |
|---|---|
| 臨床病態生理学 | 30 |
| 臨床推論 | 45 |
| フィジカルアセスメント | 45 |
| 臨床薬理学 | 45 |
| 疾病・臨床病態概論 | 40 |
| 医療安全学/特定行為実践 | 45(2科目で1つの時間数) |
| 合計 | 250 |
出典:省令 別表第三。医療安全学と特定行為実践は、表の上で時間数の欄が1つにまとめられています
共通科目の内容は別表第三に定めるもの以上、区分別科目の講義又は演習は別表第四の時間数以上とされています(第5条第2号・第3号)。
区分別科目の時間数は、区分によって違います。
| 特定行為区分(別表第四から抜粋) | 時間数 |
|---|---|
| 創部ドレーン管理関連 | 5 |
| 呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 9 |
| 血糖コントロールに係る薬剤投与関連 | 16 |
| 循環器関連 | 20 |
| 感染に係る薬剤投与関連 | 29 |
| 創傷管理関連 | 34 |
出典:省令 別表第四。21区分のうち、最小(5)と最大(34)を含めて抜粋
別表第三・第四の備考には、講義又は演習は大学通信教育設置基準に定める方法により行うことができること、既に履修した科目は全部又は一部を免除できることが書かれています。
修了すると、修了証が交付されます
省令 第15条が修了の手続です。
- 特定行為研修管理委員会が看護師の評価を行い、指定研修機関に報告する(第1項)
- 指定研修機関は、修了したと認めるときは特定行為研修修了証を交付する(第2項)
- 修了証には、氏名・看護師籍の登録番号・生年月日、修了した特定行為区分の名称、修了年月日、指定研修機関の名称を記載する(第2項各号)
- 指定研修機関は、交付の日から1月以内に厚生労働大臣へ報告書を提出する(第3項)
出典:省令 第15条第1項〜第3項
修了証には、修了した区分の名称が書かれます。「特定行為研修を修了した」だけでなく、どの区分を修了したかが記録に残る形です。
研修機関の側にも、決まりがあります
| 条 | 指定研修機関に求められていること |
|---|---|
| 第7条第1項 | 研修の内容が適切であること、責任者の配置、指導体制、医療に関する安全管理のための体制、実習時の患者への説明の手順を記載した文書、特定行為研修管理委員会の設置 |
| 第11条 | 毎年6月30日までに、前年度の受講者数・修了者数などを厚生労働大臣に報告 |
| 第13条第2号 | 2年以上受講者がない場合は、指定の取消しができる場合に当たる |
| 第16条 | 受講した看護師の記録を、指定の取消しを受けるまで保存 |
出典:省令 第7条、第11条、第13条、第16条
勤務先を選ぶときに確認できること
- 勤務先が指定研修機関か、連携しているか。指定は厚生労働大臣が行います。
- どの特定行為区分を受けられるか。研修は区分ごとで、機関によって実施する区分が違います。
- 手順書が整備されているか。特定行為は手順書により行うもので、作成するのは医師・歯科医師です。
- 共通科目の250時間をどう確保するか。講義・演習は通信教育の方法で行えると備考に書かれています。
よくある質問
Q. 特定行為研修を受けないと、特定行為はできませんか。
A. 第37条の2第1項は「特定行為を手順書により行う看護師は」研修を受けなければならない、と定めています。手順書によらずに医師の具体的な指示で行う診療の補助は、この条の対象として書かれていません。
Q. 認定看護師とは違いますか。
A. 保健師助産師看護師法には「認定看護師」という語がありません。特定行為研修は法律と省令に定めのある研修です。
Q. 准看護師も受けられますか。
A. 第37条の2第1項の主語は「看護師」です。准看護師については、この条は書いていません。
Q. 全部の区分を受ける必要がありますか。
A. 研修は特定行為区分ごとに受ける形です。自分が行う特定行為の区分について受けることになっています。
Q. 研修は何時間ですか。
A. 共通科目が合計250時間以上、区分別科目の講義又は演習は区分ごとに5時間から34時間以上です。区分別科目には別に実習があります。
Q. 修了すると給料は上がりますか。
A. 法令は処遇について定めていません。本記事では扱っていません。
迷ったらここ
受けられる区分を、先に確かめる
研修は特定行為区分ごとに受ける形です。勤務先で実施している区分と、自分が担う行為が合っているかが出発点になります。
- 勤務先が指定研修機関か、連携しているか
- どの特定行為区分を受けられるか
- 手順書が整備されているか
まとめ
特定行為研修は、保健師助産師看護師法 第37条の2に書かれた研修です。特定行為を手順書により行う看護師は、指定研修機関で、その特定行為区分の研修を受けなければならないとされています。
対象の行為は省令の別表第一に38、区分は別表第二に21。研修は共通科目(合計250時間以上)と、区分ごとに時間数が違う区分別科目で構成されます。
手順書を作るのは医師・歯科医師で、書く事項は6つ。研修機関を指定するのは厚生労働大臣で、修了すると区分の名称が書かれた修了証が交付されます。

