看護師の人間関係に疲れたとき|法令が使う言葉は3つあります

目次

30秒でわかるまとめ

  • 看護師の人間関係は勤務環境という言葉で扱われます看護師等の人材確保の促進に関する法律・医療法・保助看法のいずれにも「人間関係」の語はなく、別の言葉で制度があります。
  • 勤務環境の改善は病院の管理者の努力義務です医療法第30条の19は、病院や診療所の管理者に医療従事者の勤務環境の改善に努めることを求めています。
  • 人手不足の病院には専任の担当者を置く義務があります人材確保法第12条は、著しい人員不足の病院に看護師等確保推進者を置くことを義務としています。
  • 都道府県やナースセンターにも相談窓口があります都道府県は医療法に基づき勤務環境の相談に応じ、eナースセンターやいきサポ、総合労働相談コーナーも無料で使えます。

※調査データから離職の全体像を見る記事は看護師を辞めたいと思ったら|働き続けたい62.9%、離職率は職場で6.4pt差、夜勤の負担については看護師の夜勤がきついとき|深夜業をする人だけの3つの制度で扱っています。この記事は統計を使わず、看護師にだけ用意されている法律を見ます。

病院で働く若い看護師(病棟看護師)

先に確認:法令に「人間関係」という言葉はありません

看護師の働き方に関わる主な法律は3つあります。それぞれの全文を機械的に検索した結果がこれです。

法律「人間関係」を含む条
看護師等の人材確保の促進に関する法律(平成4年法律第86号)0件
医療法(昭和23年法律第205号)0件
保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)0件

出典:e-Gov法令APIで各法令の全文を取得し、編集部が検索。この結果は verify_id82.py が毎回数え直しています

これは「制度がない」という意味ではありません。法令が別の言葉で書いている、というだけです。

言葉が違うと、探しても見つかりません。見つからないと、「制度は無いのだから自分で何とかするしかない」という結論になります。この記事の目的は、その置き換えを示すことです。

仕事に悩む男女

休みの取りにくさも、職場で起きる悩みの1つです。有給休暇を請求する時季と、使用者が時季を変えられる場合の条文はクリニック看護師は有給を取れるか|年5日は、使用者が時季を定めて与える義務ですで扱っています。

置き換える言葉①「勤務環境」— 医療法 第30条の19

1つめの言葉は勤務環境です。医療法にこの一文があります。

「病院又は診療所の管理者は、当該病院又は診療所に勤務する医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に資する措置を講ずるよう努めなければならない。」

出典:医療法 第30条の19(e-Gov法令API 法令ID 323AC0000000205)

読みどころが3つあります。

条文の言葉読み方
管理者は義務を負うのは病院・診療所の管理者。同僚でも師長個人でもない
医療従事者の看護師に限らない。医師も含む「医療従事者」全体が対象
努めなければならない努力義務。違反に罰則はない

出典:同条の文言を編集部が分解

努力義務なので「やっていないから違法」とは言えません。ただし、勤務環境の改善が病院の側の課題として法律に書かれている、という事実は変わりません。「個人の相性の問題」で終わらせない根拠が、ここにあります。

悩む看護師

この第5条は、新人研修の根拠にもなっています。厚生労働省のガイドラインが支える側の役割をどう分けているかは看護師1年目がつらいとき|研修は法律が病院に求めていますで扱っています。

置き換える言葉②「処遇」と「研修」— 人材確保法 第5条

2つめは処遇です。看護師にだけある法律、看護師等の人材確保の促進に関する法律の第5条第1項がこう書いています。

「病院等の開設者等は、病院等に勤務する看護師等が適切な処遇の下で、その専門知識と技能を向上させ、かつ、これを看護業務に十分に発揮できるよう、病院等に勤務する看護師等の処遇の改善、新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施、看護師等が自ら研修を受ける機会を確保できるようにするために必要な配慮その他の措置を講ずるよう努めなければならない。」

出典:看護師等の人材確保の促進に関する法律 第5条第1項(e-Gov法令API 法令ID 404AC0000000086)

1つの条文の中に、病院に求められている措置が3つ並んでいます。

  • 処遇の改善
  • 新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施
  • 自ら研修を受ける機会を確保できるようにするために必要な配慮

2つめが「新たに業務に従事する看護師等」を名指ししている点に注目してください。新人の教育体制は、病院の努力義務として条文に書かれています。「教えてもらえない」という状態は、個人どうしの関係の話であると同時に、この条文が指している領域の話でもあります。

同じ法律の第6条は、看護師の側にも責務を置いています。「看護師等は、(中略)研修を受ける等自ら進んでその能力の開発及び向上を図るとともに、自信と誇りを持ってこれを看護業務に発揮するよう努めなければならない。」

病院と看護師の双方に責務を置く構造です。片方だけの努力を求める書き方にはなっていません。

置き換える言葉③「就業」— 都道府県ナースセンター

3つめは就業です。同じ人材確保法の第三章に、都道府県ナースセンターという仕組みがあります。都道府県知事が指定する法人で(第14条)、その業務は第15条に5つ並んでいます。

号業務
第1号病院等における看護師等の確保の動向及び就業を希望する看護師等の状況に関する調査
第2号訪問看護その他の看護についての知識及び技能に関する研修
第3号看護師等に対し、看護についての知識及び技能に関する情報の提供、相談その他の援助
第4号病院等の開設者、管理者、看護師等確保推進者等に対する情報の提供、相談その他の援助
第5号看護師等について、無料の職業紹介事業

出典:看護師等の人材確保の促進に関する法律 第15条第1号〜第5号

読みどころは2つです。

1つめ。第3号の相談援助は、就業中の看護師も対象です。条文は「看護師等に対し」としか書いておらず、離職者に限っていません。

2つめ。第4号で、病院の側も相談できることになっています。看護師と病院の双方が同じ窓口を使える設計です。

人数が足りない病院には、置くべき人が決まっています

ここまでは努力義務でしたが、1つだけ「置かなければならない」という書き方の条文があります。人材確保法 第12条第1項です。

「次の各号のいずれかに該当する病院の開設者は、当該病院に看護師等確保推進者を置かなければならない。」

号対象となる病院
第1号その有する看護師等の員数が、医療法第21条第1項第1号の規定に基づく都道府県の条例で定められた員数を著しく下回る病院として厚生労働省令で定めるもの
第2号その他看護師等の確保が著しく困難な状況にあると認められる病院として厚生労働省令で定めるもの

出典:同法 第12条第1項第1号・第2号

そして第2項が、その人の仕事を定めています。「看護師等確保推進者は、病院の管理者を補佐し、看護師等の配置及び業務の改善に関する計画の策定その他看護師等の確保に関する事項を処理しなければならない。」

「配置及び業務の改善に関する計画」という言葉が条文に入っています。人手が足りない状態そのものを、計画を作って扱うべき事項として法律が位置づけています。

ただし該当する病院の具体的な範囲は厚生労働省令に委ねられており、本記事ではその省令を確認していません。「うちの病院は該当するはずだ」と断定できる材料は、この条文だけからは出てきません。

言葉を置き換えると、相談先も変わります

ここまでの3語を、実際の窓口に対応させます。「人間関係」で検索して出てくる先と、法令の言葉で辿り着く先は違います。

法令の言葉根拠対応する窓口
勤務環境医療法 第30条の21都道府県が実施する医療従事者の勤務環境の改善に関する相談・情報提供・助言その他の援助
就業人材確保法 第15条第3号都道府県ナースセンターの相談その他の援助
(法令の言葉ではない)—労働問題全般の相談窓口

医療法 第30条の21は、都道府県が行う事務をこう定めています。

「都道府県は、医療従事者の勤務環境の改善を促進するため、次に掲げる事務を実施するよう努めるものとする。一 病院又は診療所に勤務する医療従事者の勤務環境の改善に関する相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うこと。二 病院又は診療所に勤務する医療従事者の勤務環境の改善に関する調査及び啓発活動を行うこと。」

出典:医療法 第30条の21第1号・第2号

実際に使える入口を挙げます。

  • いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)(厚生労働省):医療勤務環境の改善に関する情報と、各都道府県の相談窓口の案内 いきいき働く医療機関サポートWeb
  • eナースセンター(都道府県ナースセンター):人材確保法 第15条第5号に基づく無料の職業紹介と相談。都道府県知事の指定を受けた法人が運営しています eナースセンター
  • 総合労働相談コーナー(厚生労働省):労働条件、いじめ・嫌がらせなど労働問題全般。予約不要・無料 総合労働相談コーナーのご案内
  • こころの耳(厚生労働省):働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳

体調に変化が出ているときは、相談より先に受診してください。この記事は制度の位置を示すもので、症状の相談先ではありません。

動く前に確認できること

1. 新人への研修体制があるかを聞く

人材確保法 第5条第1項は「新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施」を挙げています。あるかないかではなく、期間と担当者を数字と役職で聞いてください。

2. 研修を受ける機会の「配慮」があるかを聞く

同じ条文の3つめは、自ら研修を受ける機会を確保できるようにするための配慮です。勤務シフトの調整や費用の扱いは、条文が求めている配慮の中身に当たります。

3. 看護師等確保推進者がいるかを聞く

第12条に該当する病院には置く義務があります。いる場合、その人の仕事は「配置及び業務の改善に関する計画の策定」です。相談の宛先になり得ます。

4. 都道府県の相談窓口を先に一度使う

医療法 第30条の21の相談援助は、辞めると決めてからでなくても使えます。制度は「改善」を目的に置かれていて、「離職」を前提にしていません。

5. 疲れの中身を、3語のどれかに置き換えてみる

勤務環境か、処遇か、就業か。どれに置き換わるかで、話を持っていく先が変わります。置き換えられないなら、労働問題全般の窓口が入口になります。

よくある質問

Q. 人間関係が理由で辞めたいのですが、法律で守られますか。

A. 本記事が確認した3つの法律に「人間関係」の規定はありません。あるのは、病院の管理者・開設者に置かれた勤務環境の改善と処遇の改善の努力義務(医療法 第30条の19、人材確保法 第5条第1項)と、都道府県が行う相談援助(医療法 第30条の21)です。いずれも個別の事案の解決を保証するものではありません。ハラスメントに当たる行為については別の法律が事業主に措置義務を課しており、その枠組みは保育士の人間関係に悩んだときで扱っています。

Q. 努力義務だと意味がないのではないですか。

A. 努力義務に罰則はありません。ただし、病院の課題として法律に書かれていること自体は、相談や交渉の場で位置づけを示す材料になります。本記事は「努力義務があるから改善される」とは書いていません。制度がどこに置かれているかを示すまでです。

Q. 看護師等確保推進者は、どの病院にもいますか。

A. いません。第12条第1項が対象としているのは、看護師等の員数が都道府県の条例で定められた員数を著しく下回る病院など、厚生労働省令で定めるものに限られます。その省令の具体的な内容は本記事では確認していません。

迷ったらここ

「人間関係」ではなく「勤務環境」で相談先を探す

法令に「人間関係」という言葉はありませんが、勤務環境の改善は医療法 第30条の19が管理者の努力義務として置いています。言い換えると、話を聞く義務が置かれた相手が見つかります。

  • 新人への臨床研修の期間と担当者(人材確保法 第5条第1項が挙げている措置)
  • 研修を受ける機会への配慮があるか(勤務シフトの調整や費用の扱い)
  • 看護師等確保推進者が置かれているか(第12条。仕事は配置及び業務の改善に関する計画の策定)
看護師の転職サービスを比較する

まとめ

  • 看護師に関わる主な法律3つのいずれにも、「人間関係」という言葉はない(人材確保法・医療法・保助看法。全文検索で0件)
  • 法令が使うのは「勤務環境」「処遇」「就業」の3語
  • 勤務環境:医療法 第30条の19が、病院・診療所の管理者に改善の努力義務を置いている
  • 処遇:人材確保法 第5条第1項が、開設者等に処遇の改善・新人への臨床研修の実施・自ら研修を受ける機会への配慮の3つを求めている
  • 就業:都道府県ナースセンターの業務に看護師等への相談その他の援助(第15条第3号)と無料の職業紹介(第5号)がある
  • 1つだけ義務の規定がある。第12条は、員数が著しく下回る病院等に看護師等確保推進者を置くことを求め、その仕事を配置及び業務の改善に関する計画の策定としている
  • 都道府県には勤務環境の改善に関する相談に応じる事務が置かれている(医療法 第30条の21第1号)

疲れの原因が誰にあるかは、条文からは決まりません。ただ、その疲れを持っていく先が病院の中しかない、ということはありません。「人間関係」のままでは制度に届きませんが、3語のどれかに置き換えると、話を聞く義務が置かれた相手が見つかります。まず言い換えてみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

目次