助産師になるには|実習で分べんを10回程度、取り扱います

目次

30秒でわかるまとめ

  • 助産師学校に入るには、看護師免許を持っている必要はありません指定規則が求めるのは看護師国家試験を受けられる状態で、看護師課程を修了していれば要件を満たします
  • 実習では、分べんを学生1人につき10回程度扱います正期産・経膣分べん・頭位単胎を対象に、助産師または医師の監督のもとで行うと定められています
  • 免許を取ったあとは、助産師だけの5つの義務が加わります医師へ委ねる義務や証明書交付の制限、異常死産の24時間以内の届出など、5つの条文に書かれています
  • 助産師の秘密保持だけ、法律の置き場所が別です看護師・保健師は保助看法で定められますが、助産師は刑法第134条第1項で医師や弁護士と同じ扱いです

※助産師の年収と分布は助産師の年収は566.7万円|統計に「男」の欄がありませんで、国家試験を2つ通す仕組みそのものは保健師になるには|国家試験を2つ通す必要がありますで扱っています。この記事は、養成課程の中身と、免許の後に課される義務を扱います。

母子の健康を支える(助産師)

入口の条件は「看護師になれる状態であること」です

助産師学校養成所の指定基準は、保健師助産師看護師学校養成所指定規則(昭和26年文部省・厚生省令第1号)第3条にあります。その第1号がこう書いています。

「法第二十一条各号のいずれかに該当する者であることを入学又は入所の資格とするものであること。」

法第21条は、看護師国家試験の受験資格を定めた条文です。つまり助産師課程に入るための条件は、看護師国家試験を受けられる状態になっていることだと、条文が指定しています。

ここは正確に読む価値があります。条文が求めているのは「第21条各号に該当する者」であって、「看護師免許を持つ者」ではありません。看護師課程を修了していれば、免許を取る前でも要件そのものは満たします。

そのうえで、免許は別に定められています。同法 第7条第2項です。

「助産師になろうとする者は、助産師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。」

2つの国家試験に合格する必要があるという構造は、保健師(第7条第1項)と同じです。この仕組みは保健師になるにはで扱っているので、本記事では繰り返しません。

医療関連の資格取得

修業年限1年以上、31単位。内訳は条文の表にあります

指定規則 第3条第2号は「修業年限は、一年以上であること。」と定めています。第3号が「教育の内容は、別表二に定めるもの以上であること」としており、その別表二がこれです。

教育内容単位数
基礎助産学6(5)
助産診断・技術学10
地域母子保健2
助産管理2
臨地実習11(うち助産学実習11)
合計31(30)

出典:保健師助産師看護師学校養成所指定規則 別表二(e-Gov法令API 法令ID 326M50000180001)。括弧内は、看護師学校養成所と併せて指定を受け、一の教育課程で教授する場合の数字(同表 備考二)

31単位のうち11単位、およそ3分の1が臨地実習です。そして臨地実習11単位の中身は、すべて「助産学実習」と書かれています。

別表二の備考三には、もう1つ読みどころがあります。複数の教育内容を併せて教授する場合、「臨地実習十一単位以上及び臨地実習以外の教育内容二十単位以上」であれば、教育内容ごとの単位数によらなくてもよいという規定です。

表の数字を足すと、臨地実習以外は6+10+2+2=20単位。備考三の下限とちょうど一致します。単位の割り振りには自由度がありますが、実習11単位という下限は動きません。

色鉛筆と資格取得

ここが本題:実習で扱う分べんの回数と条件が、条文に書いてあります

別表二の備考欄には、助産学実習について次の文が置かれています。

「実習中分べんの取扱いについては、助産師又は医師の監督の下に学生一人につき十回程度行わせること。この場合において、原則として、取り扱う分べんは、正期産・経膣分べん・頭位単胎とし、分べん第一期から第三期終了より二時間までとする。」

3つのことが指定されています。

指定されている事項条文の内容
回数学生1人につき10回程度
監督助産師又は医師の監督の下で行わせる
対象原則として正期産・経膣分べん・頭位単胎
範囲分べん第一期から、第三期終了より2時間まで

出典:同規則 別表二 備考(助産学実習の欄)

他の課程の指定規則に、これに当たる記述はありません。保健師の別表一にも、看護師の別表三にも、扱う件数を数で示した備考は置かれていません。助産師の課程だけが、実習で何を何回扱うかまで省令に書き込まれています。

「助産師になるには」という問いへの実務的な答えは、ここにあります。1年以上の課程のあいだに、監督のもとで分べんを10回程度、第一期から第三期終了2時間後まで通して受け持つ。それが省令の想定している姿です。

免許を取った後の職場としては、就業助産師の59.5%が病院、22.4%が診療所で働いています。その違いは助産師の病院とクリニックの違い|生まれる場所の44.8%は診療所、助産師は22.4%で扱っています。

受験資格は3つのルートです

助産師国家試験の受験資格は、保健師助産師看護師法 第20条が定めています。

号受験資格
第1号文部科学大臣の指定した学校において1年以上助産に関する学科を修めた者
第2号都道府県知事の指定した助産師養成所を卒業した者
第3号外国の学校・養成所を卒業し、又は外国で助産師免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が前2号と同等以上と認めたもの

出典:保健師助産師看護師法 第20条第1号〜第3号(e-Gov法令API 法令ID 323AC0000000203)

第1号は文部科学大臣の指定、第2号は都道府県知事の指定で、指定する側が違います。どちらも指定規則 第3条の基準を満たすことが前提です。

助産録の義務は助産師本人にかかりますが、看護記録は病院が備えて置くものとして書かれています。主語の違いと、根拠になる法令の違いは看護記録の書き方|法律ではなく、医療法の省令に名前がありますで扱っています。

免許の後に、助産師にだけ課される義務があります

ここからが、この資格のいちばん特徴的な部分です。保健師助産師看護師法の第四章「業務」には、助産師を名指しした条文が5か条続けて置かれています。

条内容
第38条妊婦・産婦・じよく婦・胎児・新生児に異常があると認めたときは、医師の診療を求めさせることを要し、自ら処置をしてはならない(臨時応急の手当を除く)
第39条第1項助産・保健指導の求めがあった場合、正当な事由がなければ拒んではならない
第39条第2項出生証明書・死産証書・死胎検案書の交付の求めも、正当な事由がなければ拒んではならない
第40条自ら分べんの介助又は死胎の検案をしないで、これらの証明書を交付してはならない
第41条妊娠4月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない
第42条分べんの介助をしたときは助産録に記載し、病院・診療所・助産所のものは管理者が、その他は当該助産師が5年間保存する

出典:保健師助産師看護師法 第38条〜第42条

第39条は、しばしば医師の応招義務として知られる形の規定です。同じ法律のなかで、看護師にも保健師にも、これに当たる条文はありません。

第41条の届出先が警察署である点も、この職種の位置づけを示しています。第42条の助産録は5年間で、保存の責任者が勤務先の有無で分かれます。

さらに第37条には、助産師だけのただし書きがあります。診療機械の使用等を原則として禁じたうえで、「臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない」としています。

秘密保持義務だけ、この法律に書かれていません

もう1つ、条文の配置に目を引く点があります。第42条の2です。

「保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。」

助産師が入っていません。書き落としではありません。助産師の秘密保持は、刑法 第134条第1項に置かれているためです。

「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。」

職種秘密保持を定めた条文
保健師・看護師・准看護師保健師助産師看護師法 第42条の2
助産師刑法 第134条第1項(医師・薬剤師・弁護士等と同じ条)

出典:保健師助産師看護師法 第42条の2、刑法 第134条第1項(e-Gov法令API 法令ID 140AC0000000045)

助産師は、刑法のうえで医師や弁護士と同じ列に並べられています。資格の性格を1か所で示すなら、この条文の並びです。

助産所は、市町村の産後ケア事業を行う施設の例としても条文に名指しされています。出産後1年までの母子を対象にした3つの形と、配置の基準は助産師の仕事内容と1日|分べんのほかに、産後ケアという法律上の事業がありますで扱っています。

助産所を開くことができます

助産師には、看護職のなかで唯一、自分の名前で施設を開く道があります。根拠は医療法です。

医療法 第2条第1項は「この法律において、『助産所』とは、助産師が公衆又は特定多数人のためその業務(病院又は診療所において行うものを除く。)を行う場所をいう」と定めています。

ただし、制約も同じ条文とその先に置かれています。

  • 医療法 第2条第2項:助産所は、妊婦・産婦・じよく婦10人以上の入所施設を有してはならない
  • 医療法 第19条第1項:助産所の開設者は、嘱託する医師及び病院又は診療所を定めておかなければならない
  • 医療法 第19条第2項:出張のみによって業務に従事する助産師も、助産を行うことを約するときは、異常に対応する病院又は診療所を定めなければならない

出典:医療法 第2条、第19条(e-Gov法令API 法令ID 323AC0000000205)

開業できることと、単独で完結できることは別です。第19条は、施設を持つ場合も出張のみの場合も、医師や病院との接続をあらかじめ決めておくことを求めています。保助看法 第38条(異常があれば医師の診療を求めさせる)と、同じ考え方が制度の両側に置かれています。

進路を決める前に確認できること

1. 入学資格の条文を自分の状況に当てはめる

指定規則 第3条第1号が指しているのは法第21条各号です。看護系大学の課程か、3年以上の看護師学科か、看護師養成所か、准看護師からの2年課程か。自分がどの号に当たるかで、助産師課程に進める時期が変わります。

2. 「1年以上」がどう組まれているかを見る

指定規則が定めているのは下限だけです。大学の専攻科、大学院、専修学校のいずれで31単位を組むかは学校側の設計で、年限も1年とは限りません。本記事では個別の学校の課程を確認していません。

3. 実習施設を数字で聞く

備考は分べんの取扱いを10回程度としています。その回数を確保できる実習施設が確保されているかは、学校を選ぶときの実務的な確認事項です。指定規則 第3条第9号も、実習を行うのに適当な施設を利用できることと、適当な実習指導者の指導が行われることを基準に挙げています。

4. 専任教員の人数を確認する

第3条第4号は、教員のうち3人以上を助産師の資格を有する専任教員とし、そのうち1人を教務に関する主任者とすることを求めています。第5号は1科目の同時授業を40人以下としています(教育上の条件を考慮して十分な効果を挙げられる場合を除く)。

5. 免許の後の義務を、就職先の体制と重ねて見る

第38条と医療法 第19条は、いずれも医師・医療機関との接続を前提にしています。異常を認めたときに誰へどう引き継ぐ体制になっているかは、勤務先を選ぶときの確認項目になります。

学費について国の資料で分かるのは、国立の授業料の標準額(年額535,800円)や、専門実践教育訓練・修学資金といった制度の枠までです。助産師の学校の学費|国立の授業料は、学部も大学院も専攻科も標準額535,800円ですで扱っています。

よくある質問

Q. 看護師免許を持っていないと助産師学校に入れませんか。

A. 指定規則 第3条第1号が求めているのは「法第21条各号のいずれかに該当する者」であり、免許の取得そのものではありません。第21条は看護師国家試験の受験資格を定めた条文なので、看護師課程を修了していれば要件には当たります。ただし助産師免許を受けるには、第7条第2項により助産師国家試験と看護師国家試験の両方に合格する必要があります。個別の学校が出願要件をどう定めているかは、本記事では確認していません。

Q. 男性は助産師になれますか。

A. 保健師助産師看護師法 第3条は、助産師を「助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定義しています。保健師(第2条)にも看護師(第5条)にも、性別の限定はありません。この定義が統計にどう表れているかは助産師の年収は566.7万円で扱っています。

Q. 助産師の国家試験は難しいですか。

A. 本記事では合格率を扱っていません。直近の回次の出願者数・受験者数・合格者数と合格率は助産師の年収は566.7万円で扱っています。なお、養成課程の定員や倍率については一次資料を確認していないため、本記事でも数字を示していません。

迷ったらここ

学校を選ぶときは、実習で分べんを何件扱える体制かを聞く

別表二の備考は分べんの取扱いを学生1人につき10回程度としています。31単位のうち11単位が臨地実習で、その回数を確保できるかは実習施設の状況で変わります。課程の名前ではなく、この2つを数字で確かめてください。

  • 実習施設は何か所あり、分べんを10回程度扱える体制か(別表二 備考)
  • 助産師の資格を持つ専任教員は3人以上いるか(指定規則 第3条第4号)
  • 自分は法第21条のどの号に当たるか(助産師課程に進める時期が変わる)
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まとめ

  • 入学の条件は「法第21条各号のいずれかに該当する者」=看護師国家試験を受けられる状態であること(指定規則 第3条第1号)
  • 修業年限は1年以上、教育内容は31単位(同 第3条第2号・別表二)。うち臨地実習が11単位で、臨地実習以外の20単位は備考三の下限と一致する
  • 実習中の分べんの取扱いは学生1人につき10回程度。助産師又は医師の監督の下、正期産・経膣分べん・頭位単胎で、第一期から第三期終了より2時間まで(別表二 備考)
  • 免許の後に第38条〜第42条の5か条が課される。応招義務(第39条)、証明書の交付制限(第40条)、24時間以内の警察署への届出(第41条)、助産録の5年保存(第42条)
  • 秘密保持義務は保助看法になく、刑法 第134条第1項(六月以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金)。医師・薬剤師・弁護士と同じ条に置かれている
  • 助産所を開設できる(医療法 第2条)。ただし入所は10人未満、嘱託する医師と病院・診療所を定めることが必要(同 第19条)

この資格を一言で表すなら、「1年以上の課程で分べんを10回程度受け持ち、その後は刑法で医師と同じ列に並ぶ」という道筋です。学校を選ぶときは、カリキュラムの名前ではなく実習施設・専任教員3人・分べん10回程度の3つを数字で確かめてください。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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