30秒でわかるまとめ
- 保健師になるには、看護師の国家試験にも合格する必要があります保健師助産師看護師法 第7条が、保健師国家試験と看護師国家試験の両方の合格を求めています
- 受験資格の中心は、学校で1年以上学ぶことです文部科学大臣が指定した学校で1年以上の学科を修めるか、都道府県知事指定の養成所を卒業する必要があります
- 保健師になると、看護師の資格も同時に持つことになります両方の国家試験に合格するため、保健師として働く人は看護師の業務を行う資格もあわせて持っています
- 保健師の合格率は87.1%で、看護師とほぼ同じです第112回試験は合格率87.1%、同時期の看護師試験は88.3%で、難易度に大きな差はありません

まず定義:保健師は「保健指導に従事する」職種です
保健師助産師看護師法 第2条は、こう定めています。
「この法律において『保健師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。」
看護師の定義(第5条「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助」)と並べると、違いがはっきりします。
| 保健師(第2条) | 看護師(第5条) | |
|---|---|---|
| 免許 | 厚生労働大臣 | 厚生労働大臣 |
| 業とすること | 保健指導 | 療養上の世話、診療の補助 |
| 名称の扱い | 「保健師の名称を用いて」が定義に入っている | 名称の要件は定義に入っていない |
定義に「保健師の名称を用いて」が含まれている点が特徴です。あわせて第29条が「保健師でない者は、保健師又はこれに類似する名称を用いて、第2条に規定する業をしてはならない」と定め、第42条の3第1項が「保健師でない者は、保健師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない」としています。
もう1点、重要なことがあります。保健師は看護師免許も併せて持ちます。次の章のとおり両方の国家試験に合格する必要があるため、保健師として働く人は看護師の業(療養上の世話・診療の補助)を行う資格も持っていることになります。

ここが本題:国家試験は2つ通さなければなりません
保健師助産師看護師法 第7条は、3つの職種の免許要件を並べて書いています。
| 職種 | 合格が必要な国家試験 | 根拠 |
|---|---|---|
| 保健師 | 保健師国家試験 + 看護師国家試験 | 第7条第1項 |
| 助産師 | 助産師国家試験 + 看護師国家試験 | 第7条第2項 |
| 看護師 | 看護師国家試験 | 第7条第3項 |
条文はこうです。「保健師になろうとする者は、保健師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。」
「及び」です。どちらか一方ではありません。保健師国家試験に合格しても、看護師国家試験に落ちれば保健師免許は受けられません。逆に看護師国家試験だけ合格した場合は、看護師として働くことになります。
試験は同じ時期に実施されます。第112回保健師国家試験と第115回看護師国家試験は、いずれも令和8年2月12日(木)、13日(金)及び15日(日)に実施されました。この日程を1回で通す必要があるという点が、保健師課程の負荷を決めています。

受験資格は3ルート。中心は「1年以上の学科」です
保健師国家試験の受験資格は、第19条に3つ並んでいます。
| 号 | 受験資格 |
|---|---|
| 第1号 | 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の指定した学校において1年以上保健師になるのに必要な学科を修めた者 |
| 第2号 | 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、都道府県知事の指定した保健師養成所を卒業した者 |
| 第3号 | 外国の第2条に規定する業務に関する学校若しくは養成所を卒業し、又は外国において保健師免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が前2号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたもの |
出典:保健師助産師看護師法 第19条
実務上の入口は第1号と第2号です。条文が求めているのは「1年以上」の学科です(第1号)。看護師課程に上乗せして保健師課程を履修する形になるため、進路の選び方は大きく2つに分かれます。
- 4年制大学で看護師課程と保健師課程を併せて履修する(在学中に両方の受験資格を得る形)
- 看護師の資格を得たあとに、保健師の学校・養成所へ進む(第1号の「1年以上」または第2号)
ここで正確に書いておきます。大学の保健師課程が選抜制かどうか、定員が何人か、どの大学が該当するかについては、本記事では確認していないため書いていません。指定を受けた学校・養成所の一覧や履修の条件は、進学先ごとに異なります。志望校の募集要項で確認してください。
合格率は87.1%。看護師試験とほぼ同じです
第112回保健師国家試験の結果です。同じ日程で実施された助産師・看護師の試験と並べます。
| 試験 | 出願者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 第112回 保健師 | 7,527人 | 7,467人 | 6,502人 | 87.1% |
| うち新卒者 | 7,135人 | 7,109人 | 6,392人 | 89.9% |
| 第109回 助産師 | 2,057人 | 2,046人 | 2,040人 | 99.7% |
| 第115回 看護師 | 60,311人 | 59,614人 | 52,666人 | 88.3% |
| うち新卒者 | 54,401人 | 54,036人 | 50,862人 | 94.1% |
出典:厚生労働省「第112回保健師国家試験、第109回助産師国家試験及び第115回看護師国家試験の合格発表」。令和8年2月12日(木)、13日(金)及び15日(日)実施
保健師87.1%、看護師88.3%。合格率だけを見れば、難易度に大きな差はありません。「保健師は難関」というイメージがあるとすれば、それは試験そのものより受験資格を得るまでの過程にあります。
合格基準も公表されています。第112回保健師国家試験は一般問題を1問1点(75点満点)、状況設定問題を1問2点(70点満点)とし、総得点87点以上/145点が合格でした。単純な得点率にすると60.0%です(編集部算出)。
新卒と全体の差にも注目してください。保健師は新卒89.9%に対し全体87.1%で2.8ポイントの差。看護師は新卒94.1%に対し全体88.3%で5.8ポイントの差があります(編集部算出)。
働く場所の7割は行政です
資格を取ったあとの就業先が、この職種の性格をよく表しています。
| 就業場所 | 実人員 | 構成割合 |
|---|---|---|
| 市区町村 | 33,217人 | 52.3% |
| 保健所 | 9,623人 | 15.1% |
| 事業所 | 5,045人 | 7.9% |
| 病院 | 3,987人 | 6.3% |
| 診療所 | 2,990人 | 4.7% |
| 介護保険施設等 | 2,183人 | 3.4% |
| 都道府県 | 1,985人 | 3.1% |
| 社会福祉施設 | 521人 | 0.8% |
| 訪問看護ステーション | 451人 | 0.7% |
| 助産所 | 9人 | 0.0% |
| 総数 | 63,536人 | — |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」令和7年7月29日公表。令和6年末現在。構成割合は総数に対する比率(表に挙げていない就業場所があるため合計は100%になりません)
市区町村・保健所・都道府県を合わせると44,825人。全体の70.6%です(編集部算出)。看護師の就業先が病院65.7%であるのと対照的で、保健師は行政職として働くのが標準だと分かります。
人数は増えています。令和6年末の就業保健師は63,536人で、前回(令和4年)から3,237人・5.4%増。男2,076人・女61,460人で、女性が96.7%を占めます。
行政で働く保健師の採用は、地方公務員法の「職員」の採用の条文で決まります。競争試験が原則で、選考によることもできる仕組みと、試験を行う機関は 保健師の公務員試験|地方公務員法の原則は競争試験。選考も条文に書かれていますで扱っています。
年収の統計は「行政以外」の数字である可能性が高い
ここは慎重に読む必要があります。賃金構造基本統計調査には「保健師」の職種区分があります。
| 項目 | 保健師 | (参考)看護師 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均年齢 | 42.4歳 | 42.1歳 | +0.3歳 |
| 平均勤続年数 | 9.6年 | 9.8年 | −0.2年 |
| 所定内実労働時間数 | 157時間/月 | 156時間/月 | +1時間 |
| 超過実労働時間数 | 6時間/月 | 6時間/月 | — |
| きまって支給する現金給与額 | 361,000円 | 365,900円 | −4,900円 |
| 所定内給与額 | 340,400円 | 333,200円 | +7,200円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 1,181,800円 | 856,400円 | +325,400円 |
| 労働者数 | 15,060人 | 903,060人 | — |
| 推計年収(編集部試算) | 551.4万円 | 524.7万円 | +26.7万円 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表/企業規模計(10人以上)/男女計/産業計。推計年収の計算式:361,000円 × 12か月 + 1,181,800円 = 5,513,800円。この調査は年収を直接公表していないため編集部の試算です
読み方が2つあります。
1つめ。看護師との差26.7万円は、ほぼ賞与の差です。きまって支給する現金給与額はむしろ保健師のほうが4,900円低く、所定内給与額でも7,200円上回るだけ。一方で年間賞与は325,400円多い。月給ではなく賞与で差がついています。
2つめ。この15,060人は、就業保健師63,536人の4分の1以下です。ここが重要です。衛生行政報告例で行政以外の場所(病院・診療所・訪問看護ステーション・介護保険施設等・社会福祉施設・事業所)で働く保健師を合計すると15,177人(編集部算出)。賃金統計の15,060人とほぼ同じ規模です。
賃金構造基本統計調査は民営事業所と公営事業所を対象とする調査で、公務は含まれていません。市区町村・保健所・都道府県で働く保健師(全体の70.6%)は、この賃金統計にほとんど入っていないと考えられます。数字の一致から見て整合的ですが、これは編集部の推論であり、調査側が明示している対応関係ではありません。
したがって「保健師の平均年収は551.4万円」と単純に言うことはできません。行政の保健師を志望するなら、参照すべきは自治体の給与条例・給料表です。事業所(産業保健)や病院を志望するなら、この551.4万円が参考になります。
参考までに、事業所規模による差は大きく出ています。
| 企業規模 | 推計年収 | 年間賞与 | 労働者数 |
|---|---|---|---|
| 1,000人以上 | 599.3万円 | 1,373,100円 | 5,680人 |
| 100〜999人 | 527.9万円 | 1,095,300円 | 8,460人 |
| 10〜99人 | 470.9万円 | 793,100円 | 910人 |
出典:同調査 第1表/男女計。推計年収は同じ式で試算。規模による差は128.4万円(編集部算出)
同じ「看護師国家試験とあわせて通す」構造をもつ助産師については、年収の側を助産師の年収566.7万円|看護師より42.0万円高く、規模が小さいほど月給は上がりますで扱っています。
なお、同じ事業所で働く看護師は、産業保健の条文でまったく別の位置に置かれています。労働安全衛生法が名指ししているのが「医師」と「保健師」である点は産業看護師の仕事内容|看護師を名指しした条文は省令の2か所だけですで扱っています。
なお、ここで示した平均値のほかに、年齢階級別・経験年数階級別・分布特性値からも読めます。年齢でも経験年数でも途中で下がる区間があることは保健師の年収は一直線に上がりません|30代前半で9,300円下がりますで扱っています。
助産師も第7条第2項で同じく国家試験を2つ通す構造ですが、養成課程の中身と、免許の後に課される義務は保健師と大きく違います。その違いは助産師になるには|実習で分べんを10回程度、取り扱いますで扱っています。
免許を取ったあと、実際に何を担当するのかは別の法律に書かれています。保健所の事業を14号にわたって挙げた地域保健法 第6条と、母子保健法が「保健師」を名指しした5か条は保健師の仕事内容|地域保健法の14事業と、母子保健法の5か条ですで扱っています。
進路を決める前に確認できること
1. 「両方の試験を1回で通す」前提で計画する
第7条第1項が求めているのは保健師国家試験および看護師国家試験の両方への合格です。同じ時期に実施されるため、片方だけ準備するという選択肢はありません。
2. 志望先が行政か民間かを先に決める
就業保健師の70.6%は行政です。行政なら採用は自治体の職員採用試験になり、給与は給与条例で決まります。民間(事業所・病院など)なら求人ベースです。この2つは採用の流れも給与の決まり方も別物です。
3. 産業保健を狙うなら、事業所5,045人という規模を知っておく
事業所で働く保健師は5,045人(7.9%)。数としては市区町村の6分の1以下です。なお産業保健の周辺では、労働安全衛生法 第66条の10のストレスチェックを実施する「医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者」に保健師が含まれています。
4. 看護師として働いてから進む道もある
第19条第1号は「1年以上」の学科としており、看護師資格を得たあとに保健師課程へ進むことは制度上可能です。ただし在学中の収入減と学費を、取得後の条件と並べて判断する必要があります。看護師のまま働き続ける場合の水準は准看護師の年収は427.5万円|看護師との差97.2万円で、看護師・准看護師の統計を整理しています。
よくある質問
Q. 保健師国家試験だけ合格したらどうなりますか?
A. 保健師の免許は受けられません。第7条第1項は「保健師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」と定めています。看護師国家試験に合格していない場合、保健師としても看護師としても免許を受けられないことになります。この場合の翌年以降の受験の扱いについては、本記事では確認していないため書いていません。試験実施側の案内を確認してください。
Q. 保健師の年収は看護師より高いのですか?
A. 賃金構造基本統計調査では保健師551.4万円、看護師524.7万円で26.7万円の差があります。ただし差のほとんどは年間賞与(325,400円)で、月給はむしろ保健師のほうが4,900円低いという構造です。さらにこの統計の保健師15,060人は就業保健師63,536人の4分の1以下で、行政の保健師はほとんど含まれていないと考えられます。「保健師になれば年収が上がる」と読むのは正確ではありません。
Q. 保健師は何をする仕事ですか?
A. 法律上は「保健指導に従事することを業とする者」です(第2条)。就業場所の内訳から見ると、市区町村52.3%、保健所15.1%と行政が中心で、地域住民に対する保健活動が主な現場になります。ただし具体的な業務内容の分類について、本記事では一次資料を確認していないため書いていません。志望する自治体の業務説明資料を確認してください。
迷ったらここ
志望先を「行政」と「民間」のどちらかに先に決める
就業保健師の70.6%は行政です。行政は自治体の職員採用試験、民間は求人ベース。採用の入口も給与の決まり方も別の制度なので、先に決めないと調べる先が定まりません。
- 行政志望なら、受ける自治体の採用区分と試験時期を調べたか
- 民間志望なら、事業所(産業保健)か病院か(事業所で働く保健師は5,045人)
- 賞与は年いくらか(民間の統計値は年1,181,800円)
まとめ
- 保健師になるには保健師国家試験と看護師国家試験の両方に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける(保助看法 第7条第1項)
- 受験資格は①文部科学大臣の指定した学校で1年以上 ②都道府県知事の指定した保健師養成所を卒業 ③外国での学修等を大臣が同等以上と認定の3つ(第19条)
- 法律上の定義は「保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」(第2条)。名称の使用にも制限がある(第29条・第42条の3)
- 第112回の合格率は87.1%(新卒89.9%)。同時期の看護師試験88.3%と難易度に大きな差はない
- 就業保健師は63,536人(令和6年末、前回比5.4%増)。市区町村52.3%を含め、行政が70.6%
- 賃金統計の保健師は15,060人で、行政以外で働く保健師の規模に近い。551.4万円を「保健師の平均年収」として一般化できない
- 看護師との差26.7万円はほぼ賞与の差(+325,400円)。月給はむしろ4,900円低い
保健師を目指すかどうかを決める前に、「行政で働くのか、民間で働くのか」を先に置いてください。試験の通し方は同じでも、その先の採用の仕組みと給与の決まり方が、まったく別の制度で動いています。

