看護記録の法律と保存期間|名前は医療法の省令にあり、過去2年間の記録として並んでいます

目次

30秒でわかるまとめ

  • 看護師の法律に、看護記録という語はありません保健師助産師看護師法の条文を通して数えても、その語は一度も出てきません。
  • 名前が書かれているのは、医療法の施行規則です病院が備える「診療に関する諸記録」の1つとして、看護記録が並んでいます。
  • 看護記録は、過去2年間の諸記録の1つとして並びます病院日誌や手術記録、入院診療計画書などと同じ列に置かれている書き方です。
  • 助産師には、法律に助産録の定めがあります記載する義務も保存する年数も条文に書かれていて、看護記録の扱いとは対照的です。

※診療所で働く場合の人数の基準はクリニック看護師の仕事内容、訪問看護での根拠の違いは訪問看護の仕事内容と1日で扱っています。

病院で働く若い看護師(病棟看護師)

先に断ります:この記事は書式や書き方の型を扱いません

SOAP、フォーカスチャーティング、経時記録といった書き方の型は、法令には書かれていません。本記事は一次資料として法令だけを取り直したため、書式の解説はしません。

代わりに、看護記録が法令のどこに、どういう言葉で置かれているかを確かめます。ここがわかると、職場ごとに書式が違う理由もわかります。

手術で医師を補佐

まず確かめる:看護師の法律に「看護記録」はありません

保健師助産師看護師法の条文を、e-Gov法令APIから取得して全文を数えました。

語保健師助産師看護師法での出現回数
看護記録0回
助産録5回

出典:保健師助産師看護師法(e-Gov法令API 法令ID 323AC0000000203)の全文をスクリプトで計数

看護師の資格と業務を定めた法律に、記録を義務づける条文はありません。ここが出発点です。

病院夜勤のイメージ

名前が書かれているのは、医療法の施行規則です

医療法施行規則 第20条第10号です。病院が備えるべき記録を定めています。

「診療に関する諸記録は、過去二年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院患者及び外来患者の数を明らかにする帳簿並びに入院診療計画書とする。」

出典:医療法施行規則(e-Gov法令API 法令ID 323M40000100050)第20条第10号(原文どおり)

並んでいるものを分けると、こうなります。

#第20条第10号が挙げるもの
1病院日誌
2各科診療日誌
3処方せん
4手術記録
5看護記録
6検査所見記録
7エックス線写真
8入院患者及び外来患者の数を明らかにする帳簿
9入院診療計画書

出典:同規則 第20条第10号。番号は編集部が付した

「過去二年間の」が、この9つ全体にかかる書き方になっています。そして看護記録は、病院日誌や手術記録と同じ列に、対等に並んでいます。

もとの法律は「記録を備えて置かなければならない」と書いています

この省令が受けているのが、医療法 第21条第1項です。

「病院は、厚生労働省令(中略)の定めるところにより、次に掲げる人員及び施設を有し、かつ、記録を備えて置かなければならない。」

そのうえで各号が並び、第9号が「診療に関する諸記録」です。

出典:医療法(e-Gov法令API 法令ID 323AC0000000205)第21条第1項柱書及び第9号

読み方をまとめると、次の順になります。

  • 医療法 第21条第1項第9号が「診療に関する諸記録」を備えることを義務づける。
  • 医療法施行規則 第20条第10号が、その中身を9つに具体化し、そこに看護記録を置く。

義務は法律にあり、看護記録という名前は省令にある、という二段構えです。

病院の種類で、並ぶものが変わります

同じ「診療に関する諸記録」でも、地域医療支援病院と特定機能病院では中身が違います。

病院根拠挙げられているもの
病院(一般)施行規則 第20条第10号病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、患者数の帳簿、入院診療計画書
地域医療支援病院施行規則 第21条の5第2号上と同じ並びに、紹介状と退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約が加わる(患者数の帳簿は挙がらない)
特定機能病院施行規則 第22条の3第2号地域医療支援病院と同じ並び

出典:医療法施行規則 第20条第10号、第21条の5第2号、第22条の3第2号

どの類型でも、看護記録は必ず並びの中に入っています。加わるのは紹介状と退院時の診療経過の要約で、ここは患者が病院の外へ出ていくときに要るものです。

助産師の側には、法律に「助産録」があります

看護記録との違いがはっきり出るのが、保健師助産師看護師法 第42条です。

「助産師が分べんの介助をしたときは、助産に関する事項を遅滞なく助産録に記載しなければならない。」

出典:保健師助産師看護師法 第42条第1項(原文どおり)

見るところ看護記録助産録
名前が出てくる場所医療法の施行規則(第20条第10号ほか)保健師助産師看護師法(第42条)
誰への義務か病院が記録を備えて置く(医療法 第21条第1項)助産師本人が記載する
記載事項の定め条文になし厚生労働省令で定める(第42条第3項)

出典:医療法 第21条第1項、医療法施行規則 第20条第10号、保健師助産師看護師法 第42条

助産録は「本人が記載する」義務で、看護記録は「病院が備えて置く」義務です。主語が違います。看護師個人に記載義務を課す条文は、本記事が取得した法令の中にはありませんでした。

だから、書き方は職場ごとに決まります

ここまでを並べると、書式が職場ごとに違う理由が見えます。

  • 法令が定めているのは、看護記録を備えて置くことと、過去二年間ぶんであることまで。
  • 何をどう書くかは、条文に書かれていません。助産録には記載事項を省令で定める規定(第42条第3項)がありますが、看護記録に対応するものはありません。
  • したがって様式・項目・記載のルールは、各病院が定めることになります。

「前の職場と書き方が違う」は、法令の側から見れば当たり前に起きることです。どちらかが間違っているという話ではありません。

訪問看護の計画書・報告書・記録書については、厚生労働省の通知が標準の様式と記載要領を示しています。その欄の書き方は訪問看護計画書の書き方|記載要領が欄ごとに示す項目は7つですで扱っています。

この記事が扱っていないこと

  • SOAPなどの書式、記載の具体的な型。法令にないため書いていません。
  • 診療報酬の要件として求められる記録。告示・通知の領域で、本記事は取得していません。
  • 電子カルテや保存方法の技術的な要件。別の省令・指針の領域です。
  • 診療所(無床・有床)の記録。第20条は病院の規定です。診療所の人数の基準はクリニック看護師の仕事内容で扱っています。

就職・転職のときに確認できること

  • 記録の様式を誰が決めているか。法令は様式を定めていません。院内の委員会か、部署ごとかで、運用の変わりやすさが違います。
  • 紙か電子か、その混在の有無。第20条第10号は媒体を定めていません。
  • 勤務時間内に書く時間が組まれているか。記録は業務です。時間の扱いは職場ごとに違います。
  • その病院が地域医療支援病院や特定機能病院か。その場合は紹介状と退院時の診療経過の要約が備えるものに加わります。

よくある質問

Q. 看護記録を書くことは法律の義務ですか。
A. 医療法 第21条第1項は、病院に「記録を備えて置かなければならない」と義務づけ、第9号が「診療に関する諸記録」を挙げています。その中身を定めた医療法施行規則 第20条第10号に看護記録が並んでいます。義務の相手は病院です。

Q. 保健師助産師看護師法に看護記録の規定はありますか。
A. 同法の全文を計数したところ、「看護記録」という語は0回でした。

Q. 何年保存するのですか。
A. 第20条第10号は「過去二年間の」と書いています。ほかの根拠による保存期間については、本記事では確認していません。

Q. 決まった書式はありますか。
A. 条文に様式の定めはありません。助産録については記載事項を厚生労働省令で定める規定(保健師助産師看護師法 第42条第3項)がありますが、看護記録に対応する規定は本記事が取得した法令の中にありませんでした。

Q. 助産師が書くものとは違うのですか。
A. 助産録は保健師助産師看護師法 第42条が、助産師本人に「遅滞なく記載しなければならない」と定めています。主語も、根拠となる法令も違います。

Q. 訪問看護でも同じ根拠ですか。
A. 医療法施行規則 第20条は病院についての規定です。訪問看護の根拠となる省令は別にあり、訪問看護の仕事内容と1日で扱っています。

迷ったらここ

記録の様式を、誰が決めているかを聞く

法令が定めているのは看護記録を備えて置くことまでで、書き方の様式はありません。前の職場と違うのは、そこに理由があります。

  • 記録の様式を院内の誰が決めているか
  • 紙か電子か、混在しているか
  • 記録を書く時間が勤務時間に組まれているか
看護師の転職サービスを比較する

まとめ

看護記録という語は、保健師助産師看護師法には0回しか出てきません(全文を計数)。名前が置かれているのは医療法施行規則 第20条第10号です。

そこでは「診療に関する諸記録」の中身として、過去二年間の病院日誌・各科診療日誌・処方せん・手術記録・看護記録・検査所見記録・エックス線写真・患者数の帳簿・入院診療計画書の9つが並びます。もとの義務は医療法 第21条第1項第9号にあります。

地域医療支援病院(第21条の5第2号)と特定機能病院(第22条の3第2号)では、これに紹介状と退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約が加わります。

一方、助産師には助産録があり、こちらは保健師助産師看護師法 第42条が本人の記載義務として定めています。看護記録に、記載事項を定めた条文はありません。様式が職場ごとに違うのは、そこに理由があります。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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