30秒でわかるまとめ
- 企業主導型保育は、職場の中身と経営の安定性が別問題です保育士比率100%の施設が99.2%を占める一方、定員充足率は69.4%で経営面には課題があります
- 保育士だけの職場が、施設のほぼ全体を占めています令和6年度の助成決定では保育士比率100%の施設が99.2%で、資格者中心の職場が大半です
- 定員充足率は、時期によって大きく変わる数字です令和7年1月は81.5%まで上がり、4月には69.4%に下がるなど季節で大きく変動します
- 施設の存続が、設置企業の業績に左右されることがあります令和6年度は48施設が取りやめ、40施設が休止となり、理由に本業の不振も含まれます
※認可の小規模保育(地域型保育給付)で働く場合の仕事内容は小規模保育の仕事内容|配置基準は保育所より「+1人」ですで扱っています。制度も財源も別なので、混同しないでください。保育士以外の職員として働く場合は保育補助の年収は、国の統計に存在しませんも参照してください。

認可保育所や認定こども園とは、そもそも根拠にしている制度が違います。認可保育所と幼保連携型認定こども園を条文で比べたものは認定こども園と保育園の違い|基準に「学級」があるかで分かれますにあります。
まず位置づけ:法律上は「届出をした認可外保育施設」です
企業主導型保育という名前の施設類型が児童福祉法にあるわけではありません。助成事業の名前です。
子ども・子育て支援法 第59条の2第1項は、政府が「仕事と子育てとの両立に資する子ども・子育て支援の提供体制の充実を図るため、仕事・子育て両立支援事業として」助成および援助を行う事業を行うことができる、と定めています。その対象が、
「児童福祉法第59条の2第1項に規定する施設(同項の規定による届出がされたものに限る。)のうち同法第6条の3第12項に規定する業務を目的とするものその他事業主と連携して当該事業主が雇用する労働者の監護する乳児又は幼児の保育を行う業務に係るものの設置者」
です。ここで引かれている児童福祉法 第59条の2第1項は、認可を受けていない施設に届出を義務づける条文です。条文はこう書かれています。「……認可を受けていないもの……については、その施設の設置者は、その事業の開始の日から一月以内に、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない」。
| 認可保育所・小規模保育 | 企業主導型保育 | |
|---|---|---|
| 児童福祉法上の位置づけ | 認可を受けた施設・事業 | 認可を受けていない施設(届出義務あり) |
| お金の出どころ | 子どものための教育・保育給付、地域型保育給付 | 仕事・子育て両立支援事業(助成) |
| 根拠 | 児童福祉法・子ども・子育て支援法 | 子ども・子育て支援法 第59条の2第1項 |
出典:子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第59条の2、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第59条の2第1項・第6条の3第12項
なお条文が引く児童福祉法 第6条の3第12項の事業所内保育事業は、「満三歳未満」の乳児・幼児の保育を対象としています。この記事の後半で見る年齢構成が0〜2歳に偏っているのは、この設計と対応しています。

同じ児童福祉法第59条の2の届出の仕組みでも、子どもの家に行って保育をする業務については、届出事項に資格ではなく研修の受講状況が並んでいます。その条文はベビーシッターに資格は必要か|法律が求めているのは、資格ではなく届出ですで扱っています。
メリット①:保育士だけの職場が99.2%です
「認可外」と聞くと資格者が少ない職場を想像しますが、データは違います。
| 保育士比率 | 施設の割合 |
|---|---|
| 100%の施設 | 99.2% |
| 75%の施設 | 0.6% |
| 50%の施設 | 0.3% |
出典:こども家庭庁「令和6年度企業主導型保育事業について(1)補助事業の実施結果について ③助成決定」(令和7年3月31日時点。これまでの継続分を含む)
助成決定を受けた4,361施設のうち、99.2%が保育士比率100%の区分です。保育士として働くうえで、周りが有資格者かどうかは働き方に直結します。この点については懸念が当たらない施設が大半だと言えます。
正確に書いておきます。この「保育士比率」は資料上の区分名であり、制度上どういう定義でこの3区分が置かれているのか(区分ごとに助成額が変わるのかなど)は、本記事では一次資料を確認できていないため書いていません。資料が示しているのは、施設がどの区分に該当するかの分布までです。

メリット②:小規模で、0〜2歳が中心です
| 定員 | 施設の割合 |
|---|---|
| 6〜12人 | 32.1% |
| 13〜19人 | 36.5% |
| 20〜30人 | 14.6% |
| 31〜40人 | 6.2% |
| 41〜50人 | 4.4% |
| 51〜60人 | 2.7% |
| 61人以上 | 3.5% |
出典:同資料。6〜19人だけで68.6%(編集部算出)
7割近くが定員19人以下です。大規模園のような学年ごとのクラス運営にはなりません。
年齢構成も偏っています。
| 年齢 | 割合 |
|---|---|
| 0歳 | 21.2% |
| 1・2歳 | 54.5% |
| 3歳 | 9.8% |
| 4歳以上 | 14.5% |
出典:同資料。0〜2歳で75.7%(編集部算出)
4分の3が0〜2歳です。乳児保育の比重が高く、行事や就学準備の比重は相対的に小さくなります。ここは好みが分かれるところです。乳児保育を続けたい人には合い、幅広い年齢を見たい人には物足りない可能性があります。
設置する企業の側も、大企業ばかりではありません。中小企業が77.0%(うち小規模事業者16.0%)、大企業23.0%です。運営形態は共同設置・共同利用が49.5%、保育事業者設置が40.7%、単独設置が9.9%となっています。
デメリット①:定員充足率は69.4%。3割が空いています
| 項目 | 令和7年4月1日時点 |
|---|---|
| 現員数 | 69,464人 |
| 開所定員数 | 100,070人 |
| 定員充足率 | 69.4% |
| 対象施設数 | 4,204施設 |
出典:同資料「⑤定員充足状況」。定員充足率=現員数/開所定員数。協会が定めた期限までに報告のあった施設の結果で、全施設を網羅したものではありません
枠別に見ると、従業員枠70.0%、地域枠68.4%で、どちらも7割前後です(従業員枠43,325人/61,872人、地域枠26,139人/38,198人)。従業員枠だから埋まる、という構造にはなっていません。
ここは読み方に注意が必要です。充足率には強い季節変動があります。
| 時点 | 定員充足率 |
|---|---|
| 令和5年4月 | 69.7% |
| 令和6年4月 | 71.2% |
| 令和7年1月 | 81.5% |
| 令和7年4月 | 69.4% |
出典:同資料。各時点とも初日時点
1月に81.5%まで上がったものが、4月に69.4%へ12.1ポイント落ちます。年度替わりで在籍児が抜け、年度が進むにつれて埋まっていく形です。4月時点で見れば3年連続して7割前後で、年度当初は定員の3割が空いている状態が常態だと読めます。
働く側にとって、これは収入の安定性に関わる話です。運営費の助成は在籍する児童数に応じた部分があるため、充足率が低い施設は経営が苦しくなります。ただし、助成の算定方法そのものは本記事では一次資料を確認していないため、具体的な計算式は書いていません。
デメリット②:設置企業の本業に連動します
認可保育所にはなく、企業主導型保育にあるリスクがこれです。施設の存続が、設置した企業の業績に左右されます。
令和6年度に事業を取りやめた施設の理由を見ると、それが数字に出ています。
| 取りやめの理由(令和6年度・48施設) | 施設数 |
|---|---|
| 今後の利用が見込めず閉園するため | 28施設 |
| 認可以外の保育施設に転用のため | 7施設 |
| 保育施設以外の用途に転用のため | 4施設 |
| 本業の不振により運営困難となったため | 3施設 |
| 認可施設に移行のため | 2施設 |
| 職員確保が困難のため | 1施設 |
出典:同資料「④助成決定の取消し・取りやめ・休止」(令和7年3月末現在)。主な理由の抜粋で、複数理由の施設があります
「本業の不振により運営困難となったため」という項目は、認可保育所の閉園理由には出てこないものです。令和5年度は9施設ありました。保育の質や利用者数と関係のないところで職場がなくなる可能性がある、ということです。
令和6年度に48施設が取りやめ、40施設が休止しました
取りやめとは別に、1か月以上の休止も起きています。
| 休止の理由(令和6年度・40施設) | 施設数 |
|---|---|
| 利用を希望する児童がいないため | 23施設 |
| 保育士を確保できなくなったため | 8施設 |
| 本業の不振により運営困難となったため | 3施設 |
| 区画整備による立ち退きで運営が困難になったため | 2施設 |
| 委託業者が撤退したため | 1施設 |
出典:同資料。令和7年3月末時点
休止した40施設のその後は、再開済み6施設/再開予定21施設/再開時期未定11施設/閉園2施設です。13施設は再開の見通しが立っていないか、閉園しています。
「保育士を確保できなくなったため」が8施設あるのは、働く側から見ると両面があります。採用されやすいということでもあり、少人数体制なので1人抜けると施設が止まるということでもあります。定員19人以下が68.6%という規模を考えると、後者の意味は小さくありません。
全体の増減も見ておきます。
| 年度 | 助成決定の施設数 | 定員 |
|---|---|---|
| 令和5年度 | 4,423施設 | 104,888人 |
| 令和6年度 | 4,361施設 | 103,763人 |
| 差 | −62施設 | −1,125人 |
出典:同資料(いずれも令和7年3月31日時点、これまでの継続分を含む)
1年で62施設減りました。なお助成決定の取消しも令和6年度に2施設あり、理由は破産手続開始決定と自治体からの施設閉鎖命令です。
なお、この記事では給与の水準を扱っていません。保育士比率100%の施設が99.2%を占める理由は助成の単価表の側にあり、基本分単価が保育士比率100%/75%/50%の3段階に分かれていることは企業主導型保育の年収|助成の単価が保育士比率で月4万5,970円変わりますで扱っています。
見学・面接で確認できること
ここまでの数字を、実際に聞ける質問に直します。
- いまの在籍児童数と定員は何人か。全国平均は69.4%です。これを大きく下回るなら、運営費の面で厳しい可能性があります
- 従業員枠と地域枠の内訳は何人ずつか。全国では従業員枠70.0%/地域枠68.4%。どちらに依存しているかで、埋まり方の見通しが変わります
- 設置しているのはどの企業で、単独設置か共同利用か。単独設置は9.9%で少数です。設置企業1社の業績に連動する度合いが変わります
- 保育に従事する職員のうち、保育士は何人か。保育士比率100%の区分が99.2%なので、そうでない場合は理由を聞く価値があります
- 過去に休止したことはあるか。令和6年度だけで40施設が1か月以上休止しています
0〜2歳が中心という点では近くても、配置の考え方がまったく違う仕事に病児保育があります。保育士1人が受け持つ人数と、看護師等の常駐が原則とされている点は病児保育の仕事内容と1日|保育士1人が見るのは3人までですで扱っています。
なお、小規模保育の卒園後の受け皿を確保できない場合、企業主導型保育の助成を受けている施設が代わりの連携先になることがあります(家庭的保育事業等基準 第6条第7項)。その仕組みは小規模保育のメリットとデメリット|卒園後の受け皿には4つの例外がありますで扱っています。
よくある質問
Q. 企業主導型保育は認可外ですか。
法律上はそうです。子ども・子育て支援法 第59条の2第1項が助成の対象を「児童福祉法第59条の2第1項に規定する施設(同項の規定による届出がされたものに限る。)」と定めており、この児童福祉法の条文は認可を受けていない施設に対して都道府県知事への届出を義務づけるものです。ただし助成事業として国の制度に位置づけられており、届出をしていない施設とは扱いが異なります。
Q. 保育士の資格がなくても働けますか。
資料では保育士比率100%の区分が99.2%を占めており、実態としては保育士だけの施設が大半です。75%・50%の区分もありますが合わせて0.9%です。無資格で働ける枠があるかは施設ごとに異なるため、個別に確認してください。区分の制度上の定義については本記事では一次資料を確認していないため、断定していません。
Q. 認可保育所と比べて、職場としての安定性はどうですか。
数字で見えるのは3点です。①令和7年4月時点の定員充足率が69.4%で3割空いている、②令和6年度に48施設が取りやめ・40施設が休止した、③取りやめ・休止の理由に「本業の不振により運営困難」が計6施設含まれる。設置企業の業績に連動する要素は、認可保育所にはないものです。一方で保育士比率100%の施設が99.2%である点や、定員19人以下が68.6%という小規模さは、働き方の面ではメリットになり得ます。
迷ったらここ
見学のときに、在籍児童数と定員を数字で聞く
全国の定員充足率は69.4%(令和7年4月1日時点)で、3割が空いています。職場としての中身と、事業としての安定性は別々に見る必要があります。前者は数字が良く、後者は厳しいためです。
- いまの在籍児童数と定員は何人か(全国平均69.4%を大きく下回っていないか)
- 従業員枠と地域枠の内訳は何人ずつか(全国は従業員枠70.0%・地域枠68.4%)
- 設置しているのはどの企業で、単独設置か共同利用か(単独設置は全国で9.9%)
まとめ
- 法律上は「届出をした認可外保育施設」。子ども・子育て支援法 第59条の2第1項の仕事・子育て両立支援事業による助成を受けている
- メリット:保育士比率100%の施設が99.2%。定員19人以下が68.6%、0〜2歳が75.7%で、小規模・乳児中心の職場
- デメリット:定員充足率69.4%(令和7年4月1日)。従業員枠70.0%・地域枠68.4%で、どちらも7割前後
- 充足率は1月81.5%→4月69.4%と季節変動が大きい。4月時点で3年連続して7割前後
- 令和6年度に48施設が取りやめ、40施設が休止。助成決定は前年比62施設減
- 「本業の不振により運営困難」は認可保育所にはない閉園理由。設置企業の業績に連動する
企業主導型保育は「認可外だから質が低い」という言い方では説明できません。保育士だけで回している施設が大半で、規模も小さい。働き方の面では条件がそろっています。分かれるのは経営の側で、定員が3割空いた状態が続いていることと、設置企業の本業に連動することの2点です。職場としての中身と、事業としての安定性を、別々に見てください。

