ベビーシッターの確定申告|「20万円以下なら申告不要」は、給与を受ける人の条文です

目次

30秒でわかるまとめ

  • ベビーシッターの申告は、雇われるか請け負うかで分かれます雇われて受け取るお金は給与所得、個人として請け負う報酬は事業所得か雑所得として条文が書き分けています。
  • 「20万円以下なら不要」は、給与を受ける人の条件です第121条は、給与を1か所から受けて全部が源泉徴収される人で、給与以外の所得金額が20万円以下なら申告を要しないとします。
  • 副業のシッター収入は、雑所得の例に挙がっています給与所得者の副収入の例として、ベビーシッターや家庭教師などの人的役務の提供による所得が並んでいます。
  • 家庭に直接雇われる形では、源泉徴収されないことがあります常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う人は、所得税を徴収して納付することを要しないと第184条にあります。

※認可を受けずに保育の事業を行うときの届出はベビーシッターに資格は必要かで扱っています。雇われて働く場合の年額の目安は保育補助の年収で扱っています。

ベッドで寝転ぶ(ベビーシッター)

先に地図:受け取り方で、所得の区分が3つに分かれます

所得税法は、所得を性質で区分しています。ベビーシッターの仕事で受け取るお金が関係するのは、次の3つです。

働き方所得の区分条文
会社や家庭に雇われて、給料・賃金として受け取る給与所得第28条
マッチングサイト等を通じて個人として請け負い、事業として行う事業所得第27条
個人として請け負うが、事業とまではいえない雑所得第35条

出典:所得税法(e-Gov法令API 法令ID 340AC0000000033)第27条、第28条、第35条をもとに編集部が整理

3つの条文の書き方を、原文で並べます。

「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。」

出典:所得税法 第28条第1項(原文どおり)

「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」

出典:所得税法 第27条第1項(原文どおり)

「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」

出典:所得税法 第35条第1項(原文どおり)

雑所得は「ほかのどれにも当たらない所得」という書き方です。給与でもなく、事業とも認められない報酬が、ここに入ります。

女児を抱きしめる保育士

事業所得か雑所得か:通達は「社会通念上事業と称するに至る程度」で分けます

個人として請け負う場合、事業所得になるか雑所得になるかの線引きを、国税庁の所得税基本通達35-2が書いています。

「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。」

出典:国税庁 所得税基本通達35-2(注)(原文どおり)

同じ(注)は続けて、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、業務に係る雑所得に当たることに留意する、としています。ただし、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合は除く、というかっこ書きがあります。

出典:国税庁 所得税基本通達35-2(注)

そして、会社などに勤めながら副業でシッターをする場合について、国税庁のタックスアンサーはこう書いています。

「給与所得者の副収入としては、様々なものが考えられますが、例えば次のような所得については、一般的には、それぞれ雑所得に該当します。」

出典:国税庁 タックスアンサー No.1906「給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」(原文どおり)

その例の1つに「ベビーシッターや家庭教師などの人的役務の提供による所得」が挙がっています(同ページ、原文どおり)。

「一般的には」という書き方です。どの区分に当たるかは、活動の規模や記録の有無で変わり得るため、本記事は個々のケースを判定しません。

幼稚園に行く子供

ここが本題:「20万円以下なら申告不要」は第121条、給与所得者の条文です

「副業が20万円以下なら確定申告は要らない」という話の元になっているのは、所得税法 第121条第1項です。主語から読みます。

「その年において給与所得を有する居住者で、その年中に支払を受けるべき第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この項において「給与等」という。)の金額が二千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。」

出典:所得税法 第121条第1項 本文(原文どおり。ただし書は省略)

そのうち第1号です。

「一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額」という。)が二十万円以下であるとき。」

出典:所得税法 第121条第1項第1号(原文どおり)

この条文から読み取れることを3つに分けます。

  • 主語は「給与所得を有する居住者」です。雇われて給与を受けている人のための条文で、給与の金額が2,000万円以下であることが前提です。
  • 給与は源泉徴収か年末調整の対象であることが条件です。第183条・第190条による徴収を「された又はされるべき」場合に限られています。
  • 20万円は「所得金額」です。事業所得の金額は総収入金額から必要経費を控除した金額(第27条第2項)、業務に係る雑所得も総収入金額から必要経費を控除した金額(第35条第2項第2号)です。受け取った報酬の合計そのものではありません。

シッターの仕事だけで収入を得ている人は、この条文の主語に入りません。その場合は、原則どおり第120条の確定申告の規定を見ることになります。

雇われていても、確定申告が要る人がいます

国税庁のタックスアンサー No.1900 は、給与所得者であっても確定申告をしなければならない人を7つ挙げています(確定申告をすれば税金が還付される人は除く、としたうえでの列挙です)。シッターの働き方に関係しそうなものを抜き出します。

番号確定申告が必要な人(No.1900の記載)
1給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人
6源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人

出典:国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(令和8年4月1日現在法令等。第3号〜第5号・第7号と(注)は省略)

6番目の「源泉徴収義務のない者」に関係するのが、所得税法 第184条です。

「常時二人以下の家事使用人のみに対し給与等の支払をする者は、前条の規定にかかわらず、その給与等について所得税を徴収して納付することを要しない。」

出典:所得税法 第184条(原文どおり)

給与を支払う者は、支払の際に所得税を徴収し、翌月10日までに国に納付するのが原則です(第183条第1項)。第184条はその例外で、家事使用人だけを常時2人以下雇っている人には、この源泉徴収の義務がありません。

家庭に直接雇われて給与を受ける形では、この書き分けが関係してきます。源泉徴収がされない給与は、第121条第1項第1号の「所得税の徴収をされた又はされるべき」という条件の外にあるためです。自分の契約がこれに当たるかどうかは、本記事では判定しません。

個人で請け負うときの申告の決まり

申告書を出す期間は、所得税法 第120条第1項が定めています。

「第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。」

出典:所得税法 第120条第1項(該当部分を原文どおり。前半の要件部分を省略)

つまり、その年の翌年2月16日から3月15日までです。個人として請け負う人には、記録と保存の決まりもあります。

条定め
第232条第1項事業所得を生ずべき業務を行う居住者(青色申告の承認を受けている者を除く)は、帳簿を備え付け、総収入金額及び必要経費に関する事項を簡易な方法により記録し、保存しなければならない
第232条第2項雑所得を生ずべき業務を行う居住者で、前々年分の業務に係る収入金額が300万円を超えるものは、総収入金額及び必要経費に関する事項を記載した書類を保存しなければならない

出典:所得税法 第232条第1項・第2項

国税庁のタックスアンサー No.1500 は、業務に係る雑所得の「業務に係るもの」を「副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの」と説明しています(原文どおり)。

請け負った仕事の記録と、経費の領収書を残しておくことが、どの区分でも申告の土台になります。通達35-2の(注)が、帳簿書類の保存の有無を区分の判断に使っていることとも、つながっています。

住民税の申告:地方税法の書き方

市町村民税(住民税)の申告は、地方税法(e-Gov法令API 法令ID 325AC0000000226)第317条の2第1項が定めています。3月15日までに、賦課期日現在の住所所在地の市町村長に申告書を出す、という定めです。

同項のただし書は、申告書を出さなくてよい人として、給与支払報告書を出す義務がある者から給与の支払を受けている者で、前年中において給与所得以外の所得を有しなかつたものなどを挙げています(一定の控除を受けようとする者は除く)。

出典:地方税法 第317条の2第1項

所得税の第121条は「20万円以下」という金額で線を引いていますが、地方税法のただし書は「給与所得以外の所得を有しなかつた」かどうかという書き方です。ただし書には市町村の条例で定める者を除く定めもあるため、具体的には住所地の市町村に確認が必要です。

なお、第317条の3第1項は、所得税の確定申告書を提出した場合には、「当該確定申告書が提出された日に前条第一項から第四項までの規定による申告書が提出されたものとみなす」としています(原文どおり。政令で定める場合を除く)。

この記事が扱っていないこと

  • 税額の計算例や、所得控除の金額。個々の事情で変わるため、本記事は計算していません。
  • あなたのケースで申告が要るかどうかの判定。条文の書き分けを示すにとどめています。個別の判断は税務署等に確認してください。
  • 業務委託の報酬から所得税が差し引かれるかどうか(報酬の源泉徴収の対象か)。本記事は取得していません。
  • 住民税の申告が不要になる金額の目安。本記事が取得した地方税法の条文には、金額での線引きは書かれていませんでした。市町村の条例は取得していません。
  • 青色申告、開業の届出、消費税、社会保険。本記事は取得していません。

ベビーシッターとして働く前に確認できること

  • 結ぶのは雇用契約か、業務委託契約か。受け取るお金が給与か報酬かで、第28条と第27条・第35条のどちらを見るかが変わります。
  • 給与なら、源泉徴収されているか。源泉徴収票が出るかどうかが目安になります。源泉徴収義務のない者から給与を受けている人は、確定申告が必要な人に挙がっています。
  • ほかに勤め先の給与があるか。第121条の「20万円以下」は、給与を受けている人についての条件です。
  • 報酬なら、収入と経費を記録できるか。帳簿書類の保存の有無が、事業所得か雑所得かの判断にも関わります。

よくある質問

Q. ベビーシッターの収入は、何所得になりますか。
A. 雇われて受け取る給料・賃金は給与所得(所得税法 第28条)です。個人として請け負う報酬は、事業として行っていれば事業所得(第27条)、そうでなければ雑所得(第35条)です。給与所得者の副業としてのシッターの所得は、国税庁が一般的には雑所得の例に挙げています。

Q. 副業のシッター収入が20万円以下なら、確定申告は要りませんか。
A. 第121条第1項第1号の条件は、給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収又は年末調整の対象で、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であることです。20万円は収入ではなく、必要経費を差し引いた後の所得金額です。住民税の申告は別の法律(地方税法)で定められています。

Q. シッターの仕事だけで生活している場合も、20万円の話は当てはまりますか。
A. 第121条の主語は「給与所得を有する居住者」です。給与を受けていない人は、この条文の対象になりません。第120条の確定申告の規定を見ることになります。

Q. 家庭に直接雇われている場合は、どうなりますか。
A. 所得税法 第184条により、常時2人以下の家事使用人のみに給与を払う人は、源泉徴収をしなくてよいとされています。国税庁のタックスアンサー No.1900 は、源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人を、確定申告が必要な人に挙げています。ご自分の契約が当たるかどうかは、税務署等に確認してください。

迷ったらここ

給与か報酬かを契約で確かめる

雇われて受け取る給与と、個人で請け負う報酬とでは、所得の区分が変わります。「20万円以下なら申告不要」は、給与を受けている人についての第121条の条件です。

  • 結ぶのは雇用契約か業務委託契約か(受け取るのは給与か報酬か)
  • 給与なら、支払う側が源泉徴収をしているか(源泉徴収票が出るか)
  • 報酬なら、収入と経費を記録する帳簿や書類を残せるか
保育士の転職サービスを比較する

まとめ

ベビーシッターとして受け取るお金は、雇われて受け取れば給与所得(所得税法 第28条)、個人として請け負えば事業所得か雑所得(第27条・第35条)です。国税庁は、給与所得者の副収入としてのシッターの所得を、一般的には雑所得の例に挙げています。

「20万円以下なら申告不要」は、第121条第1項第1号の、給与を受けている人についての条件です。20万円は必要経費を差し引いた後の所得金額で、給与の全部が源泉徴収又は年末調整の対象であることが前提です。

家庭に直接雇われる形では、第184条により源泉徴収がされないことがあります。申告の期間は翌年2月16日から3月15日までで、住民税の申告は地方税法が別の書き方で定めています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

目次