30秒でわかるまとめ
- 訪問看護師の転職先は、公表される情報で比べられます訪問看護は、事業者が都道府県知事に報告し、知事が公表する介護サービスに入っています。
- 従業者の数と経験年数は、省令が定める報告項目です別表第一は、職種別の従業者の数、勤務形態、経験年数等、健康診断や研修の実施状況を挙げています。
- 訪問看護向けの運営の項目は、11のうち9つが当てはまります病状の急変への対応や在宅でのターミナルケア、家族への助言などが、別表第二に並んでいます。
- 賃金は、報告が義務の項目に入っていません事業者が提供を希望した情報について、都道府県知事が公表を行うよう配慮する、という別の条で扱われます。
※訪問看護の仕事の枠組みは訪問看護の仕事内容と1日、一人で訪問することへの不安は訪問看護が一人で不安なあなたへで扱っています。

まず条文:事業者は報告し、都道府県知事は公表します
根拠は介護保険法 第115条の35です。見出しは「介護サービス情報の報告及び公表」です。
第1項は、介護サービス事業者が、提供する介護サービスに係る介護サービス情報を都道府県知事に報告しなければならないと定めています。報告する「介護サービス情報」は、条文の中でこう定義されています。
「介護サービスの内容及び介護サービスを提供する事業者又は施設の運営状況に関する情報であって、介護サービスを利用し、又は利用しようとする要介護者等が適切かつ円滑に当該介護サービスを利用する機会を確保するために公表されることが必要なものとして厚生労働省令で定めるものをいう。」
出典:介護保険法(e-Gov法令API 法令ID 409AC0000000123)第115条の35第1項の括弧書きの一部(原文どおり)
続く第2項です。
「都道府県知事は、前項の規定による報告を受けた後、厚生労働省令で定めるところにより、当該報告の内容を公表しなければならない。」
出典:介護保険法 第115条の35第2項(原文どおり)
制度の目的は利用する人の選択で、転職者のための制度ではありません。それでも中身に「運営状況」が入っているので、職場を比べる材料にもなります。

訪問看護は、公表の対象のサービスに入っています
対象のサービスは、介護保険法施行規則 第140条の43第1項が並べています。訪問介護、訪問入浴介護に続いて、訪問看護が3番目に出てきます。介護予防訪問看護も入っています。
ただし、同じ条の第2項に例外があります。
- 病院等や介護老人保健施設・介護医療院が、法律の規定で指定があったものとみなされた場合
- そのみなされた日から起算して1年を経過しない者が行う訪問看護等
出典:介護保険法施行規則(e-Gov法令API 法令ID 411M50000100036)第140条の43第2項
この場合は、公表の対象のサービスとしない、とされています。
報告の時期も決まっています。介護保険法施行令 第37条の2の3第1項は、報告は「都道府県知事が毎年定める報告に関する計画に従い、行うものとする」としています。第3項で、知事はその計画を公表しなければならないとされています。
出典:介護保険法施行令(e-Gov法令API 法令ID 410CO0000000412)第37条の2の3第1項・第3項
毎年の計画での報告から外れる事業所もあります。施行規則 第140条の44は、次の2つを挙げています。
| 号 | 毎年の計画での報告から外れる事業所 |
|---|---|
| 第1号 | 計画の基準日前の1年間に、介護サービスの対価として支払いを受けた金額が100万円以下であるもの |
| 第2号 | 災害その他、報告を行うことができないことにつき正当な理由があるもの |
出典:介護保険法施行規則 第140条の44第1号・第2号

要介護者の訪問看護は原則として介護保険ですが、特別訪問看護指示書や別表第七の疾病等では医療保険になります。その決まりは訪問看護の医療保険と介護保険|要介護者は介護保険が先。医療保険になる場合は告示に3つですで扱っています。
ここが本題:従業者について報告する事項は6つです
何を報告するかは、施行規則 第140条の45が決めています。提供を開始しようとするときは別表第一、毎年の計画で定められたときは別表第一及び別表第二に掲げる項目です。
別表第一は6つの号でできています。
| 号 | 別表第一の事項 |
|---|---|
| 一 | 事業所等を運営する法人等に関する事項 |
| 二 | 事業所等に関する事項 |
| 三 | 事業所等において介護サービスに従事する従業者に関する事項 |
| 四 | 介護サービスの内容に関する事項 |
| 五 | 利用するに当たっての利用料等に関する事項 |
| 六 | その他都道府県知事が必要と認める事項 |
出典:介護保険法施行規則 別表第一 第一号〜第六号
働く側にとっての中心は、第三号です。中身を原文で並べます。
| 記号 | 別表第一 第三号の項目(原文どおり) |
|---|---|
| イ | 職種別の従業者の数 |
| ロ | 従業者の勤務形態、労働時間、従業者一人当たりの利用者、入所者又は入院患者数等 |
| ハ | 従業者の当該報告に係る介護サービスの業務に従事した経験年数等 |
| ニ | 従業者の健康診断の実施状況 |
| ホ | 従業者の教育訓練、研修その他の従業者の資質向上に向けた取組の実施状況 |
| ヘ | その他介護サービスの種類に応じて必要な事項 |
出典:介護保険法施行規則 別表第一 第三号イ〜ヘ(原文どおり)
人数、勤務形態、経験年数、健康診断、研修。求人票だけではわかりにくいことが、報告の項目として並んでいます。
一方で、別表第一と別表第二の文言に「退職」という語は出てきません。辞めた人の数を報告させる項目があるかどうかは、省令の別表の文言からは読み取れませんでした。第三号ヘの「その他介護サービスの種類に応じて必要な事項」の中身は、本記事では取得していません。
訪問看護向けの運営の項目は、11のうち9つです
別表第二は、定期的な報告で加わる項目です。第一「介護サービスの内容に関する事項」の二に、サービスの種類ごとの項目があります。訪問看護はニです。
見出しは「訪問看護、複合型サービス及び介護予防訪問看護((3)及び(4)については複合型サービスに限る。)」です。11項目のうち(3)と(4)は複合型サービスだけなので、訪問看護に当てはまるのは9つです。
| 番号 | 別表第二 第一 二 ニの項目(原文どおり) |
|---|---|
| (1) | 機能訓練の実施及び質の確保のための取組の状況 |
| (2) | 利用者の家族の心身の状況の把握及び看護方法、介護方法等に関する助言等の実施の状況 |
| (5) | 療養生活の支援の実施の状況 |
| (6) | 服薬の管理についての指導等の実施の状況 |
| (7) | 利用者等の悩み、不安等に対する看護の質の確保のための取組の状況 |
| (8) | 医療処置のための質の確保の取組の状況 |
| (9) | 病状の悪化の予防のための取組の状況 |
| (10) | 病状の急変に対応するための取組の状況 |
| (11) | 在宅におけるターミナルケアの質の確保のための取組の状況 |
出典:介護保険法施行規則 別表第二 第一 二 ニ(1)(2)(5)〜(11)(原文どおり)
この9項目は、その事業所がどんな看護に力を入れているかを見る手がかりです。ターミナルケアや医療処置の経験を積みたい人は(8)と(11)、急変時の体制が気になる人は(10)が該当します。
働く人の目で見るなら、第二の「運営状況」です
別表第二の第二は「介護サービスを提供する事業所又は施設の運営状況に関する事項」です。共通事項のうち、職場選びに関係が深いものを抜き出します。
| 箇所 | 項目(原文どおり) |
|---|---|
| 第二 一 イ(4) | 事業所等の財務状況 |
| 第二 二(1) | 事業所又は施設における役割分担等の明確化のための取組の状況 |
| 第二 二(2) | 介護サービスの提供のために必要な情報について従業者間で共有するための取組の状況 |
| 第二 二(3) | 従業者からの相談に対する対応及び従業者に対する指導の実施の状況 |
| 第二 五(1) | 従業者等の計画的な教育、研修等の実施の状況 |
出典:介護保険法施行規則 別表第二 第二 一イ(4)、二(1)〜(3)、五(1)(原文どおり)
第二 二の(3)には限定がついています。(3)が当てはまるサービスとして、訪問看護と介護予防訪問看護が名指しされています。通所介護などは、この並びに入っていません。
出典:介護保険法施行規則 別表第二 第二 二 共通事項の括弧書き
「従業者からの相談に対する対応」と「従業者に対する指導」。一人で訪問することの多い職場で、相談と指導がどう行われているかが、報告の項目になっています。
夜間・休日の連絡に備える体制が報酬の側でどう評価されるか(24時間対応体制加算の2つの区分と、看護業務の負担軽減の取組)は訪問看護のオンコール手当|国に相場はなく、報酬は「負担軽減の取組」の有無で2区分ですで扱っています。
賃金は、事業者が希望したときの情報です
介護保険法には、第115条の35とは別に、第115条の44という条があります。見出しは「都道府県知事による情報の公表の推進」です。
「都道府県知事は、介護サービスを利用し、又は利用しようとする要介護者等が適切かつ円滑に当該介護サービスを利用する機会の確保に資するため、介護サービスの質及び介護サービスに従事する従業者に関する情報(介護サービス情報に該当するものを除く。)であって厚生労働省令で定めるものの提供を希望する介護サービス事業者から提供を受けた当該情報について、公表を行うよう配慮するものとする。」
出典:介護保険法 第115条の44(原文どおり)
その省令の側、施行規則 第140条の62の2は、中身を「労働時間、賃金その他の介護サービスに従事する従業者に関する情報」として都道府県知事が定めるもの、としています。
出典:介護保険法施行規則 第140条の62の2
整理すると、こうなります。
| 第115条の35(介護サービス情報) | 第115条の44(従業者に関する情報など) | |
|---|---|---|
| 事業者 | 報告しなければならない | 提供を希望する事業者から提供を受ける |
| 都道府県知事 | 公表しなければならない | 公表を行うよう配慮するものとする |
| 主な中身 | 別表第一・別表第二の項目 | 労働時間、賃金その他の従業者に関する情報(介護サービス情報に該当するものを除く) |
ここで気をつけたいのは労働時間です。労働時間は、別表第一 第三号ロ「従業者の勤務形態、労働時間、……」として報告の項目にも入っています。第115条の44は「介護サービス情報に該当するものを除く」としているので、報告の義務と重ならない部分が、この条の対象です。
一方、「賃金」という語は別表第一・別表第二の文言にありません。賃金の情報は、載っていない事業所があっても条文上はおかしくありません。載っていないときは、面接で直接確かめることになります。
報告の中身は、調査で確かめられることがあります
| 項 | 定め |
|---|---|
| 第115条の35第3項 | 都道府県知事は、必要があると認めるときは、報告をした事業者に対し、介護サービス情報のうち厚生労働省令で定めるものについて調査を行うことができる |
| 第115条の35第4項 | 報告をせず、虚偽の報告をし、又は調査を受けないなどのときは、報告や是正、調査を受けることを命ずることができる |
| 第115条の35第6項 | 指定居宅サービス事業者などがその命令に従わないときは、指定を取り消し、又は期間を定めて効力を停止することができる |
出典:介護保険法 第115条の35第3項・第4項・第6項
調査の対象になる情報は、施行規則 第140条の47で別表第一及び別表第二に掲げる項目とされています。さらに第140条の46ただし書は、調査を行ったときはその調査の結果を公表することをもって、報告の内容を公表したものとできる、としています。
出典:介護保険法施行規則 第140条の46・第140条の47
虚偽の報告には命令があり、命令に従わなければ指定の取消しまで条文に書かれています。公表される情報は、事業者が好きに書く宣伝文とは位置づけが違います。
この記事が扱っていないこと
- 個別の事業所の公表データ。本記事は条文だけを扱い、実際に公表されている数字は取得していません。
- 報告の様式や記入要領など、項目の細目。別表第一 第三号ヘ「その他介護サービスの種類に応じて必要な事項」の中身を含め、取得していません。
- 退職者の数が報告の項目に入っているかどうか。省令の別表の文言には「退職」という語がありません。細目は取得していません。
- 第115条の44で都道府県知事が定める情報の中身。都道府県ごとの定めで、取得していません。
- 医療保険だけで訪問看護を行う場合の扱い。この公表制度は介護保険法の仕組みで、本記事は医療保険側の法令を取得していません。
訪問看護師が転職前に確認できること
- 職種別の従業者の数と勤務形態。別表第一 第三号イ・ロの項目です。
- 従業者の経験年数等。同ハです。自分と同じくらいの経験の人がいるかの手がかりになります。
- 研修の実施状況。別表第一 第三号ホと、別表第二 第二 五(1)の両方に項目があります。
- 従業者からの相談への対応と、指導の実施の状況。別表第二 第二 二(3)で、訪問看護が名指しされている項目です。
- 力を入れている看護。別表第二 第一 二 ニの9項目のうち、ターミナルケアや急変時の対応など、自分が経験したいものを見ます。
- 賃金。報告の項目ではなく、第115条の44の情報です。載っていない事業所もあるので、面接で確かめてください。
厚生労働省のサイトに「介護サービス情報公表システム」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)があります。本記事の取得時はシステムメンテナンス中で、画面の中身は確認していません。
よくある質問
Q. 訪問看護ステーションの従業者の数は、転職前に見られますか。
A. 職種別の従業者の数は、施行規則 別表第一 第三号イに掲げられた報告の項目です。介護保険法 第115条の35第2項で、都道府県知事は報告の内容を公表しなければならないとされています。
Q. 退職者の数は公表されますか。
A. 省令の別表第一・別表第二の文言には「退職」という語がありません。報告の細目は本記事では取得していないため、公表の有無は判断していません。
Q. 給料は公表されますか。
A. 賃金は、第115条の44の「従業者に関する情報」に当たり、提供を希望する事業者から提供を受けた情報について、都道府県知事が公表を行うよう配慮するという定めです。報告の義務がある項目とは位置づけが違います。
Q. 新しく開設したステーションでも、同じ項目が見られますか。
A. 施行規則 第140条の45は、提供を開始しようとするときは別表第一、毎年の計画で定められたときは別表第一及び別表第二としています。開設時の報告には、別表第二の運営状況の項目が入らない組み立てです。
迷ったらここ
公表項目で職場の体制を比べる
職種別の従業者の数、勤務形態、経験年数等は、事業者が都道府県知事に報告し、知事が公表する項目です。賃金は報告が義務の項目に入っていないので、面接で確かめてください。
- 職種別の従業者の数と勤務形態(別表第一 第三号イ・ロ)
- 従業者の経験年数等と研修の実施状況(同ハ・ホ)
- 従業者からの相談への対応と指導の実施の状況(別表第二 第二 二(3))
まとめ
訪問看護は、介護保険法 第115条の35の介護サービス情報の報告及び公表の対象です(施行規則 第140条の43)。事業者は都道府県知事に報告し、知事は公表しなければなりません。
報告の項目には、職種別の従業者の数、勤務形態、経験年数等、健康診断、研修の実施状況が並んでいます(別表第一 第三号)。訪問看護向けには、急変時の対応やターミナルケアなど9つの項目があり(別表第二 第一 二 ニ)、従業者からの相談への対応と指導も訪問看護が名指しされた項目です(別表第二 第二 二(3))。
賃金は、事業者が提供を希望した情報について公表に配慮する、という別の条(第115条の44)の話です。訪問看護ステーションを選ぶときは、公表される項目で体制を比べ、載っていないことを面接で確かめる、という順番が使えます。

