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30秒でわかるまとめ
- 千葉の保育士の約6割が、都内で働きたいと考えたことがあります千葉県の調査で、回答3,989件のうち2,459件でした。理由の約7割は給与・待遇です。
- 保育所の人件費の単価は、地域区分で変わる仕組みです公定価格の人件費部分は公務員の給与に合わせ、地域手当の割合に準拠した地域区分ごとに決まります。
- 国は、地域区分の差を縮める方向で検討していますこども家庭庁が8月の会議で基本方針として示しました。2027年4月の施行を目指すスケジュール案です。
- 埼玉・千葉など5県は、公務員準拠からの脱却を求めました7月1日の要望書で、隣り合う自治体の間で公定価格に大きな差が出ないよう求めています。
沖縄タイムス(共同通信プレミアム)は10月8日、東京や大阪などの大都市に隣接する自治体が、処遇の差による保育士の流出に危機感を募らせており、国も対応に乗り出したと報じた。国が見直しを進めているのは、保育所の運営費(公定価格)に地域ごとの差をつける「地域区分」である。こども家庭庁は8月の会議で、全国の地域区分の差を縮める方向で検討する方針を示した。保育士として働く人、これから職場を選ぶ人に向けて、仕組みと検討の中身を整理する。
千葉の保育士、約6割が都内就労に関心
千葉県は2025年11〜12月、県内の保育士登録者6万2,676人にアンケートを送り、9,599人から回答を得た(回収率21.99%)。いま保育士として働いている6,632人のうち、県外で勤務している人は941人いた。
保育士登録後に東京都内で働きたいと思ったことがあるかを自由記述で聞き、「ある」「ない」に分けたところ、「ある」が3,989件のうち2,459件で、約6割を占めた。「ある」と答えた人の理由で最も多かったのは「給与・待遇」の1,663件で、約7割だった。次いで「通勤・居住/利便性」が421件だった。
| 都内で働きたいと思った理由 | 件数 |
|---|---|
| 給与・待遇(賃金/手当/福利厚生) | 1,663件 |
| 通勤・居住/利便性 | 421件 |
| 都内勤務(勤務中・経験あり) | 148件 |
| キャリア・保育環境 | 115件 |
| 働きやすさ・体制 | 112件 |
出典:千葉県「千葉県保育士登録者の就業状況に関するWEBアンケート結果報告書」(「ある」と答えた2,459件の理由。自由記述を分類した参考値)
東京で働きたいと思ったことがある人が、6割もいるんですね。
2,459件で、理由の約7割が給与・待遇だったね。
県境をこえるだけで、給料が変わるということでしょうか。
人件費の単価は地域区分で変わる
保育所の運営費は、国が決める公定価格で支払われる。こども家庭庁の資料によると、民間の保育所でも公立と同じ水準の保育ができるよう、公定価格の人件費部分は公務員の給与水準に準拠して積算されている。具体的には、毎年の人事院勧告にもとづいて公定価格を改定し、人事院が定める地域手当の支給割合に準拠して、地域区分ごとの単価を設定している。
つまり、同じ規模の保育所でも、地域区分が高い市町村ほど人件費の単価が高くなる。隣り合う地域との差が大きい場合には、「囲まれルール」と呼ばれる補正のルールで調整してきた。地域区分は、介護や障害福祉のサービスでも使われている。
人事院勧告で区分が都道府県単位に
見直しのきっかけは、2024年の人事院勧告である。国家公務員の地域手当の区分が、これまでの市町村単位から都道府県単位に大くくり化された。これをそのまま保育所の地域区分に当てはめると、県内の隣り合う市町村の不均衡は解消される一方で、県外の隣り合う市町村との差は、いまより広がるところが出てくる。
このため国は、2026年4月からの見直しは見送り、検討を続けてきた。こども家庭庁が5月に全国の自治体に行った調査では、ある県の自治体から「現行15%の地域区分が、改正した場合4%と大幅に下がる」との声も寄せられている。
地域区分は公定価格の単価を決める仕組みで、保育士一人ひとりの給与額を直接決めるものではない。実際の給与は、施設がどう配分するかによる。
国は「地域区分の差を縮小する方向」
こども家庭庁は8月19日の子ども・子育て支援等分科会で、自治体への調査結果と今後の対応を示した。都道府県では、47のうち21(44.7%)が「2024年の人事院勧告に準拠しつつ、新たな補正ルールを設けることが適当」と答えた。市町村では約6割の1,015が「意見なし」だった。
そのうえで国は、人事院勧告の地域手当の率に準拠しつつ新たな補正ルールを設ける方向を維持し、「現状の地域区分より、全国的な地域区分の差が縮小する方向で検討することを基本方針とする」とした。補正ルールには、他の自治体へ通勤する人の割合の高さなどを考慮するルールを新たに加えることが検討されている。スケジュール案は、12月ごろに改定案をまとめ、2027年4月に施行するとしている。
国も、地域の差を小さくする方向なんですね。
8月の会議で、基本方針として書かれていたね。
改定案は12月ごろ、施行は2027年4月のスケジュール案だったよ。
どこまで差が縮まるかは、年末の案を見ないと分からないですね。
5県は「公務員準拠からの脱却」を要望
自治体の側からは、さらに踏み込んだ要望も出ている。埼玉、千葉、奈良、和歌山、佐賀の5県の知事は7月1日、こども政策担当大臣に「保育士の処遇改善に関する要望書」を提出した。5県は、地域区分が東京都や大阪府、福岡県といった給与水準の高い地域より低く設定されているため、保育士の流出が続いていると訴えている。
要望書は、隣り合う自治体の間で公定価格に大きな差が生じないよう、国家公務員の地域手当に準拠するという考え方から脱却することを求めた。あわせて、保育士の給与が他業種と比べて適切な水準になるよう、勤務の実態に即した公定価格を定めることや、公定価格の人件費部分を明確にすることも求めている。
県の側は、仕組みそのものを変えてほしいと言っているんですね。
県境の近くで働く保育士は、年末の案に注目しておきたいです。
迷ったらここ
隣の市と給与を比べる
公定価格の単価は地域で違っても、実際の給与は施設の配り方や自治体の独自の上乗せでも変わります。県境の近くで職場を探すときは、次の点を比べておくと判断しやすくなります。
- 基本給と処遇改善の手当の内訳
- 市町村独自の保育士向けの補助や手当があるか
- 通勤時間と、交通費・借り上げ社宅の支援
- 賞与の月数と、ここ数年の昇給の実績
編集部の見方:単価の差と手取りの差は別
ここからは編集部の見方である。国が「差を縮小する方向」を基本方針として書いたことは、県境の地域で働く保育士にとって意味のある変化だ。ただし、縮小の幅も、どの市町村の区分が上がり、どこが下がるのかも、まだ示されていない。国は見直しの財源の確保にも留意するとしており、すべての地域の単価が上がるとは限らない。
もう1つ押さえておきたいのは、地域区分はあくまで施設に入る運営費の単価だという点だ。千葉県の調査で都内就労に関心を持つ理由の約7割が給与・待遇だったように、保育士が見ているのは自分の手取りである。単価の差がそのまま給与の差になるわけではなく、施設の配分や自治体独自の上乗せで、隣り合う職場の給与は逆転することもありうる。県境をこえて職場を探すときは、地域の名前より、求人ごとの給与の内訳を比べたい。保育士の処遇改善の手当の条件はキャリアアップ研修の記事で、潜在保育士の復帰支援は木更津市の給付金の記事で整理している。
出典
一次資料
- こども家庭庁「第15回 子ども・子育て支援等分科会」(2026年8月19日、2026年10月9日参照)。資料4「保育所等の公定価格における地域区分の検討に係る調査結果及び今後の対応について」、参考資料5「同 調査結果」
- 同「第14回 子ども・子育て支援等分科会」(2026年3月18日、2026年10月9日参照)。資料2「公定価格における地域区分の現状と今後の検討の方向性について」
- 千葉県「令和7年度千葉県保育士登録者の就業状況に関するWEBアンケートについて」(2026年7月13日更新、2026年10月9日参照)。結果報告書(PDF)
- 埼玉県・千葉県・奈良県・和歌山県・佐賀県「保育士の処遇改善に関する要望書」(PDF、2026年7月1日、2026年10月9日参照)
報道
- 沖縄タイムス(共同通信プレミアム)「大都市へ保育士流出危惧 給与差背景に周辺自治体 国も対応乗り出す」2026年10月8日(2026年10月9日参照)
編集部メモ
- 千葉県の「約6割」は、自由記述の回答を「ある」「ない」に分けた件数(3,989件)に占める割合です。報告書は参考値として集計しています。アンケート全体の回答者9,599人に占める割合ではありません。
- 「現行15%が4%に下がる」は、こども家庭庁の調査結果に載っている、ある県の自治体の意見です。どの自治体かは資料に書かれていません。
- 地域区分の見直しの中身(どの地域がどの区分になるか、差がどれだけ縮まるか)は、まだ決まっていません。本文の施行時期は、こども家庭庁が3月に示したスケジュール案です。
- 沖縄タイムスの記事は有料部分を確認していません。報道は話題になった時期を示すために参照し、仕組みと検討の中身はこども家庭庁と県の資料から取りました。
- 5県の要望書は、千葉県と埼玉県のサイトに同じ文面が掲載されています。千葉県のものを出典にしました。

