保育士キャリアアップ研修が見直しの対象に 月4万円の手当の条件

保育士の月4万円は研修が条件 その研修が見直しへ
目次

30秒でわかるまとめ

  • 保育士の月4万円の手当は研修が条件です経験年数がおおむね7年以上あり、マネジメントと3つ以上の分野の研修を修了して、副主任保育士として発令されると対象になります。
  • その研修の仕組みが見直しの対象になりましたこども家庭庁の検討会が2026年9月10日に開かれ、研修を段階に分ける案や、数年後の再受講を求める案が論点として示されました。
  • 幼稚園から保育所へ移ると研修が引き継げません資料は「引き継げるよう制度の整合性を向上させる」ことを論点に挙げています。保育所どうしの転職なら、いまも引き継げます。
  • 研修を修了しても手当がつくとは限りません園に入る加算額は、園の枠と研修修了者の数の少ないほうで決まります。定員90人の園なら4万円の枠は5人です。

こども家庭庁は2026年9月10日、保育士養成課程等検討会の第5回を開いた。議題は保育士等キャリアアップ研修である。研修を修了すると月額4万円または5千円の処遇改善につながる仕組みで、保育士の給与に直接効く。その仕組みを見直す論点が示された。ここでは原典の資料だけを読み、保育士として働く人・これから移る人から見て何が変わりうるのかを整理する。

研修を修了すると月4万円がつく

民間の保育所には、研修の修了と結びついた処遇改善の仕組みがある。副主任保育士と専門リーダーが月額4万円、職務分野別リーダーが月額5千円である。

役割処遇改善
副主任保育士月額4万円
専門リーダー月額4万円
職務分野別リーダー月額5千円

出典:こども家庭庁「保育士等キャリアアップ研修等について」(保育士養成課程等検討会 第5回 資料1)。経験年数はいずれも「おおむね」と書かれている

それぞれの要件は次のとおりで、3つ目にその役割としての発令が入っている。

  • 副主任保育士/経験年数おおむね7年以上/マネジメント+3つ以上の分野の専門研修を修了/副主任保育士としての発令
  • 専門リーダー/経験年数おおむね7年以上/4つ以上の分野の専門研修を修了/専門リーダーとしての発令
  • 職務分野別リーダー/経験年数おおむね3年以上/担当する職務分野の研修を修了/職務分野別リーダーとしての発令

研修は8つの分野に分かれている。専門研修が乳児保育・幼児教育・障害児保育・食育・アレルギー対応・保健衛生・安全対策・保護者支援・子育て支援の6分野で、そこにマネジメント研修と保育実践研修が加わる。1分野あたり15時間以上である。

発令は園がするものである。研修を修了しただけでは要件を満たさず、園がその役割に就けて初めて対象になる。

ちはる

研修を受ければ、そのぶん手当がつくという理解でいました。

熊先生

受けることは条件のひとつだね。それだけでは決まらないんだ。

ちはる

ほかに何が要るんでしょうか。

定員90人の園なら対象は5人

対象になる人数には枠がある。原典は標準規模の保育園として定員90人の園を挙げ、公定価格上の職員数を次のように示している。

定員90人の園の職員
(公定価格上)
人数
園長1人
主任保育士1人
保育士12人
調理員等3人
合計17人

出典:同上

4万円の対象は「園長・主任保育士を除く保育士等全体のおおむね3分の1」、5千円の対象は「おおむね5分の1」と定められている。園長と主任を除いた15人で計算すると、4万円が5人、5千円が3人になる。原典に書かれている「標準規模の園で5人」「3人」と一致する。

この枠は園に入る加算額を決めるためのものである。誰にいくら配るかは、園の人員配置や賃金体系に応じて柔軟な運用が認められている。

枠と修了者数の少ないほうで決まる

園に入る加算額の計算方法が、原典にはっきり書かれている。

4万円×人数A((基礎職員数×1/3)と研修修了者数の少ない方の数)
5千円×人数B((基礎職員数×1/5)と研修修了者数の少ない方の数)

「少ない方の数」である。園の枠が5人のところで6人が研修を修了しても、園に入る額は5人分のままになる。逆に枠が5人あっても修了者が2人なら2人分である。

つまり研修の修了は、自分の手当が増える条件であると同時に、園の加算額が増える条件でもある。どちらに効くかは、その園にすでに何人の修了者がいるかで変わる。

数年ごとの再受講が論点になった

9月10日の検討会に示された検討事項には、研修の仕組みを変える案が並んでいる。

  • 経験年数に応じて「基礎、応用、発展といったステップを設け」る
  • 「最初に研修を受講してから数年後に学び直し(研修の再受講)が必要な仕組みとすることについて、どう考えるか」
  • 全分野15時間としている研修時間を、分野ごとに変えられるようにする
  • オンライン研修や、公開保育・園内研修を研修の一部として認める範囲

出典:こども家庭庁「保育士等キャリアアップ研修等の検討事項(案)」(同 資料4)

再受講の案は、加算を受け続けるために研修を取り直すという形で書かれている。まだ論点として示された段階で、決まったものではない。

資料は、保育士のキャリアが行き詰まる理由にも触れている。「園長や主任保育士等のポストが埋まっている場合、施設内での昇格が実質的に難しい場合があること」という一文がそれである。国の資料が、園の中で上がれない場合があると書いている。

幼稚園から移ると引き継げない

転職したときに研修がどうなるかは、2つに分かれる。

保育所どうしなら引き継げる。原典に「研修修了の効力:全国で有効」「研修修了者が離職後再就職する場合:以前の研修修了の効力は引き続き有効」と明記されている。県をまたいでも、いったん保育の仕事を離れても、修了した事実は残る。

一方、幼稚園と保育所のあいだは別である。検討事項には次のように書かれている。

保育士等が幼稚園から保育所に転職等した場合でも研修の受講実績を引き継げるよう、幼稚園教諭と保育士の研修制度の整合性を向上させることについて、どのように考えるか。

「引き継げるよう」と書かれているのは、いま引き継げていないからである。幼稚園側にも同じ形の仕組みがあり、中核リーダーと専門リーダーが月額4万円、若手リーダーが月額5千円である。ただし要件は研修60時間・15時間という時間数で定められており、保育所側の「分野の数」とは数え方が違う。

幼稚園は定員160人の園で職員12人を標準規模としている。4万円の対象は3人、5千円は2人である。保育所とは園の規模も枠も違う。

ちはる

幼稚園で受けた研修が、保育所では数えてもらえないんですね。

熊先生

そこを直そうという話が、いま出ているところだね。

熊先生

保育所から保育所なら、いまでも持っていけるよ。

ちはる

同じ保育でも、どこから移るかで変わってくるんですね。

現場の声を9,786件集めている

検討の材料として、アンケートの速報値も示された。2026年7月24日から8月7日まで、47都道府県と全国の幼児教育・保育施設に対して行われたもので、43都道府県と9,786件の施設から回答があった。

都道府県からは、いまの8分野に加えたほうがよい内容として次のものが挙がっている。

  • 保育士による虐待や性被害の防止
  • 医療的ケア
  • 宗教食への対応
  • カスタマーハラスメント対策

出典:こども家庭庁「保育士等キャリアアップ研修に関する都道府県及び保育所等へのアンケート調査結果(速報値)」(同 資料3)

逆に減らしたほうがよい分野として挙がったのは保育実践だけで、それ以外の回答はなかったと書かれている。

編集部の見方:枠が空くかは園次第

ここからは編集部の見方である。

この仕組みは「研修を受ければ月4万円」と説明されがちだが、原典を読むとそうは書かれていない。要件は3つあり、最後の1つは園による発令である。そして園に入る額は、枠と修了者数の少ないほうで決まる。定員90人の園で4万円の枠は5人しかない。

だから同じ研修を修了していても、すでに枠が埋まっている園では手当につながらない可能性がある。求人票を見るときに効いてくるのはここである。「キャリアアップ研修の費用を負担します」と書いてあっても、園の枠が空いているかどうかは別の話になる。

そのうえで、転職を考えるなら知っておく価値があるのは引き継ぎのほうである。保育所から保育所なら、県をまたいでも、いったん現場を離れても、修了した研修は残る。資料に明記されている。幼稚園から保育所へ移る場合はいまのところ引き継げず、そこを直す議論が始まったところである。

なお、この検討会はまだ論点を並べた段階で、何も決まっていない。再受講が必要になるのか、研修時間が分野ごとに変わるのかは、今後の議論による。

ちはる

いま自分の園に枠が空いているかは、聞いてもいいことなんでしょうか。

熊先生

加算の使い方は職員に周知することになっているから、答えの出る問いだよ。

迷ったらここ

研修の費用ではなく、園に枠が空いているかを聞く

4万円の対象は定員90人の園で5人までです。研修を修了しても、枠が埋まっていれば手当にはつながりません。費用負担の有無より、いま何人が受け取っているかのほうが効きます。

  • いま副主任保育士・専門リーダーは何人いるか(枠は職員数のおおむね3分の1)
  • 職務分野別リーダーは何人いるか(おおむね5分の1)
  • 研修の受講は勤務時間として扱われるか、代替の職員は立つか
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出典

  • こども家庭庁「保育士養成課程等検討会(第5回)」2026年9月10日開催(2026年9月10日参照)
  • 同 資料1「保育士等キャリアアップ研修等について」。研修の分野・時間・要件、処遇改善の額と対象人数、加算額の計算方法、研修修了の効力はここにある
  • 同 資料3「保育士等キャリアアップ研修に関する都道府県及び保育所等へのアンケート調査結果(速報値)」。実施期間と回答数、追加・削減の要望はここにある
  • 同 資料4「保育士等キャリアアップ研修等の検討事項(案)」。再受講・研修時間・幼稚園との引き継ぎの論点はここにある
  • こども家庭庁「保育士養成課程等検討会」第1回から第5回までの開催日と資料

編集部メモ

  • 記事に載せた数値は、すべてこども家庭庁の資料から直接取り、編集部で計算し直して確かめています。この資料には合計を検算できる表がないため、職員の内訳と「おおむね3分の1」「おおむね5分の1」という割合から、対象人数を計算し直しました。保育所は園長1人・主任保育士1人・保育士12人・調理員等3人で合計17人、園長と主任を除いた15人の3分の1が5人、5分の1が3人になり、資料に書かれた人数と一致します。幼稚園も合計12人から同じように計算して、3人と2人が出ました。内訳・合計・割合・人数が互いに矛盾しないことを確かめています。
  • ⚠ アンケートの割合は本記事では使っていません。資料に載っているのは棒グラフだけで、どの割合がどの項目のものかを原本から確実に読み取れませんでした。アンケートからは、実施期間・回答数と、文章で書かれている要望の内容だけを使っています。
  • ⚠ 「いま引き継げていない」は、資料の書きぶりから読み取ったものです。資料は「引き継げるよう…整合性を向上させることについて、どのように考えるか」と論点の形で書いており、現状を明言してはいません。引き継げないと断定した記述は原本にありません。
  • ⚠ 検討会は論点を並べた段階で、何も決まっていません。再受講・研修時間・引き継ぎは、いずれも「どう考えるか」という問いの形で示されています。本文でも決定として書いていません。
  • 月4万円・月5千円は、園に入る加算額を計算するための単価です。本人にその額がそのまま渡るとは資料に書かれていません。資料には、一人当たりの改善額と対象者数は各園の人員配置や賃金体系の実情を踏まえて柔軟な運用が認められている、と注記があります。
  • 研修を修了する予定の人も対象になる場合があります。年度内に研修を修了する予定で、研修計画にその人が受けることが明示され、本人に周知されていて、副主任保育士等に準ずる職位や職務命令を受けていることが条件です。
  • 「標準規模の園」は公定価格上の職員数です。実際にその園に何人いるかとは別のもので、定員90人の保育所と定員160人の幼稚園という前提で示された例です。
  • 公立の保育所については、この資料では扱われていません。本記事も民間の保育所と幼稚園に限って書いています。
  • 研修を修了した人が実際に何人いるか、そのうち何人が手当を受け取っているかは、この資料では分かりません。本記事では扱っていません。
  • 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて原典から取っています。
  • この検討会は今後も続きます。再受講や研修時間の扱いがどう決まったかを、改めて取り上げる予定です。
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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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