30秒でわかるまとめ
- 准看護師と正看護師を分けるのは「指示を受けて」です第6条は准看護師の業務を「前条に規定すること」と定め、看護師と同じ範囲だと書いています
- 「正看護師」を名乗る根拠は、実は法律にありません法律上の呼び名は「看護師」と「准看護師」のみで、「正看護師」は現場慣用の呼び方にすぎません
- 免許の発行元も違い、人数は看護師が5.8倍です看護師1,363,142人・准看護師233,022人で、免許は厚生労働大臣と都道府県知事に分かれます
- 看護師を目指すなら、実務年数の要件を先に確認します第21条第4号は免許取得後3年以上の実務、または高校卒業なら実務要件なしで2年以上の修業を条件とします
※両者の年収差(97.2万円)と、それが年齢構成のせいではないことは准看護師の年収427.5万円|看護師との差は「年齢のせい」ではありませんで扱っています。この記事は法律上の違いだけを扱います。看護師と看護補助者の線引きは看護助手の仕事内容は「療養生活上の世話」を参照してください。

試験の側でも、法律は2つを書き分けています。看護師国家試験と准看護師試験で、行う者と科目がどう違うかは准看護師試験の難易度|国家試験ではなく、都道府県知事が行う試験ですで扱っています。
条文を並べます
まず、法律が2つの職種をどう定義しているかを、そのまま並べます。
第5条(看護師)「この法律において『看護師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。」
第6条(准看護師)「この法律において『准看護師』とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。」
ここが本題です。第6条は業務の中身を自分では書いていません。「前条に規定すること」、つまり第5条の「療養上の世話又は診療の補助」をそのまま指しています。
| 看護師(第5条) | 准看護師(第6条) | |
|---|---|---|
| 免許を出す人 | 厚生労働大臣 | 都道府県知事 |
| 業務の内容 | 療養上の世話又は診療の補助 | 同じ(「前条に規定すること」) |
| 指示の要否 | 条文に定めなし | 医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて |
出典:保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第5条・第6条
条文が分けているのは、業務の範囲ではなく「指示を受けるかどうか」です。「准看護師にはできない処置がある」という説明を見かけますが、法律の条文にそういう書き分けはありません。

指示の受け方には、手順書という形もあります。手順書により特定行為を行う看護師に研修の受講を求める条文は特定行為研修とは|法律に書かれた、38行為のための研修ですで扱っています。
いちばん効いてくるのは「看護師の指示を受けて」です
第6条の指示者は3種類あります。医師、歯科医師、そして看護師です。
医師・歯科医師の指示は、看護師にも実質的に及びます。後で見る第37条が、両者に同じ制限をかけているためです。両者を分けているのは「看護師」が指示者に入っている点だけです。
これは実務上の関係に直結します。
- 准看護師は、看護師の指示を受けて業務を行う
- 看護師は、看護師の指示を受けない
- したがって、同じ病棟にいる看護師と准看護師のあいだには、法律上、指示する側と受ける側の関係がある
経験年数が長い准看護師と、新人の看護師が同じ職場にいる場合でも、条文の上ではこの関係は変わりません。資格の年数ではなく、資格の種類で決まっています。
ただし、この条文が現場の運用をどこまで規定しているかは別の問題です。実際にどのような指示体制を取るかは各施設の判断であり、本記事では施設ごとの運用を確認していないため書いていません。

施設の種類によっても、業務の範囲そのものは変わりません。診療所で人数の基準が働く場合と働かない場合の分かれ目はクリニック看護師の仕事内容|人数の基準がある診療所とない診療所で扱っています。
「してはいけないこと」は両者で同じです
医行為との境界について、法律は看護師と准看護師を区別していません。
第37条「保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。」
4職種が同じ条文に並べて書かれています。准看護師だけに追加の制限があるわけではありません。
業務独占についても、それぞれに規定があります。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第31条 | 看護師でない者は、第5条に規定する業をしてはならない(医師法・歯科医師法に基づく場合を除く)。保健師及び助産師は行うことができる |
| 第32条 | 准看護師でない者は、第6条に規定する業をしてはならない(同上) |
出典:保健師助産師看護師法 第31条・第32条
どちらも業務独占です。名称独占だけの資格とは性質が違います。
入口の条件は、省令が具体的な数字で書いています。入学資格が学校教育法第57条であることと、教育の内容が時間数で定められていることは准看護師になるには|入学は中学卒業から、教育は1,890時間で扱っています。
資格を取る道が違います
| 看護師 | 准看護師 | |
|---|---|---|
| 試験 | 看護師国家試験 | 准看護師試験 |
| 免許 | 厚生労働大臣(第7条第3項) | 都道府県知事(第8条) |
| 養成期間の例 | 大学、または指定した学校で3年以上、養成所の卒業(第21条第1〜3号) | 指定した学校で2年の看護に関する学科、または准看護師養成所の卒業(第22条第1〜2号) |
出典:保健師助産師看護師法 第7条第3項、第8条、第21条、第22条
准看護師から看護師になる道も、条文に置かれています。
第21条第4号「免許を得た後三年以上業務に従事している准看護師又は学校教育法に基づく高等学校若しくは中等教育学校を卒業している准看護師で前三号に規定する大学、学校又は養成所において二年以上修業したもの」
読み解くと2通りあります。
- 免許を得た後3年以上業務に従事している准看護師 → 2年以上修業して看護師国家試験の受験資格
- 高等学校または中等教育学校を卒業している准看護師 → 実務年数の要件なしで2年以上修業
高卒であれば実務3年を待たずに進める、という書き方になっています。ただし条文が定めているのは受験資格までで、実際に通える課程があるかは別の問題です。本記事では養成課程の設置状況を確認していないため書いていません。
給与を扱った資料では、この2つが「看護職員」として合算されていることがあります。一般診療所の看護職員の金額と、その合算の中身はクリニック看護師の年収|開設者で38.4万円変わりますで扱っています。
人数では、准看護師は14.6%です
| 職種 | 就業者数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 看護師 | 1,363,142人 | 85.4% |
| 准看護師 | 233,022人 | 14.6% |
| 合計 | 1,596,164人 | 100.0% |
出典:厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」。構成比は編集部算出
看護師は准看護師の5.8倍います。「准看護師」という資格は現在も存在しますが、人数の上では少数です。
この数字から将来の見通しを述べることはしません。准看護師の養成が今後どうなるかについては、本記事では一次資料を確認していないため書いていません。
「正看護師」と同じで、「産業看護師」も法令上の職名ではありません。条文が看護師をどこで名指ししているかは産業看護師の仕事内容|看護師を名指しした条文は省令の2か所だけですで扱っています。
看護師・准看護師はどちらも、ケアマネジャーの受験資格を定めた省令に名前が挙がっています。ただし数えるのは免許の年数ではなく、その資格の業務に従事した期間です。条文の読み方はケアマネの受験資格|省令が挙げる22資格と、通算5年の中身ですで扱っています。
進路を決める前に確認できること
- 「できる処置が違う」という説明を鵜呑みにしない。条文の上では業務の範囲は同じで、違うのは指示を受けるかどうかです
- 職場で誰の指示を受けるのかを確認する。准看護師は医師・歯科医師に加えて看護師の指示も受ける立場です。これは経験年数では変わりません
- 免許の発行元が違うことを踏まえる。准看護師は都道府県知事の免許です
- 看護師を目指すなら第21条第4号のルートを確認する。免許取得後3年以上の実務、または高等学校・中等教育学校の卒業が入口になります
- 年収差は別の記事で確認する。この記事は法的な違いだけを扱っています
よくある質問
Q. 准看護師にはできない医療行為がありますか。
保健師助産師看護師法の条文には、准看護師だけを対象にした業務範囲の制限はありません。第6条は准看護師の業務を「前条に規定すること」、つまり第5条の看護師の業務と同じものとしています。また第37条(医師・歯科医師の指示がなければ診療機械の使用等をしてはならない)は、保健師・助産師・看護師・准看護師の4職種に同じく適用されます。違うのは業務を行うにあたって指示を受けるかどうかです。
Q. 准看護師は看護師の指示に従う義務がありますか。
第6条が准看護師を「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて」業務を行う者と定義しています。看護師の側にはこうした定めがありません。ただし具体的にどのような指示体制を取るかは施設ごとの運用であり、条文から個別の場面を判断することはできません。
Q. 准看護師から看護師になるには何年かかりますか。
第21条第4号は、免許を得た後3年以上業務に従事している准看護師、または高等学校・中等教育学校を卒業している准看護師が、大学・学校・養成所で2年以上修業した場合に看護師国家試験の受験資格を認めています。条文が定めているのは受験資格までで、通える課程の有無や修業形態については本記事では確認していません。
迷ったらここ
求人を見るときは「誰の指示を受ける立場か」を確認する
条文が分けているのは業務の範囲ではなく指示です。准看護師は医師・歯科医師に加えて看護師の指示も受ける立場で、これは経験年数では変わりません。募集要項がどちらの資格を指しているかを先に見てください。
- 募集しているのは看護師か准看護師か(免許は厚生労働大臣か都道府県知事か)
- 准看護師として入る場合、日々の指示は誰から出る体制か
- 看護師を目指すなら第21条第4号の要件を満たすか(免許取得後3年以上の実務、または高等学校・中等教育学校の卒業)
まとめ
- 「正看護師」は法律用語ではない。保助看法にあるのは「看護師」と「准看護師」
- 第6条は准看護師の業務を「前条に規定すること」としており、業務の範囲は看護師と同じと書かれている
- 分けているのは「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて」の一句。とくに看護師の指示が入る点が決定的
- 第37条(医行為の制限)は4職種に共通。准看護師だけの追加制限はない
- 免許は看護師=厚生労働大臣、准看護師=都道府県知事。どちらも業務独占(第31条・第32条)
- 就業者数は看護師1,363,142人/准看護師233,022人で、准看護師は14.6%
2つの資格の違いを「できることの差」で理解しようとすると、条文と合わなくなります。法律が書いているのは、同じ業務を、誰の指示のもとで行うかという一点です。そこを押さえてから、年収や求人の条件を比べてください。

