30秒でわかるまとめ
- クリニックの看護師の年収は413.2万円です医療法人が開設した一般診療所で働く常勤の看護職員について、給料年額と賞与を合わせた額です。
- 同じ診療所でも、個人立だと374.8万円です医療法人立との差は38.4万円あります。開設者が違うだけで、これだけ動く数字です。
- 病院と比べるときは開設者をそろえる必要があります医療法人立どうしなら病院は476.6万円で、差は63.5万円にとどまります。
- その差の大半は、賞与ではなく給料です63.5万円のうち55.8万円が給料年額の差で、賞与の差は7.7万円しかありません。
※病院側の職種別の数字は病院の管理栄養士の年収で同じ資料を扱っています。看護師全体の分布は准看護師の年収、訪問看護の働き方は訪問看護の仕事内容と1日をご覧ください。

先に断ります:「クリニック看護師」という統計区分はありません
看護師の給与でよく引かれる賃金構造基本統計調査には、勤務先を診療所に限った区分がありません。あるのは「看護師」という職種の区分だけで、病院で働く人とクリニックで働く人が混ざっています。
勤務先を分けた数字を出している国の資料は別にあります。中央社会保険医療協議会の医療経済実態調査です。この調査は一般病院と一般診療所を分けて集計し、さらに開設者ごとの内訳まで公表しています。
この記事は、その一般診療所の数字だけを読みます。

勤務先を分けない「看護師」全体では、推計年収の76.2%を所定内給与が占めます。年齢や経験年数による違いは看護師の平均年収は524.7万円|30代前半で一度下がり、山は50代前半の577.7万円ですで扱っています。
まず数字:一般診療所の看護職員
第25回医療経済実態調査(令和7年11月26日公表)の「職種別常勤職員1人平均給料年(度)額等」から、一般診療所の看護職員を抜き出します。
| 開設者 | 平均給料年(度)額 | 賞与 | 合計 | 前年からの伸び率 |
|---|---|---|---|---|
| 医療法人 | 3,470,194円 | 661,523円 | 4,131,716円 | 1.2% |
| 個人 | 3,131,510円 | 616,033円 | 3,747,543円 | 0.3% |
出典:中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年11月26日公表)の概要 ②一般診療所(報告書p331・p682)。前年(度)の値
「看護職員」とは、保健師、助産師、看護師、准看護師です(同資料の注記)。看護師だけの数字ではありません。
差は384,173円。およそ38.4万円です。
同じ「クリニック」という言葉で呼ばれていても、医療法人が開設したところと個人が開設したところで、これだけ違います。

ここが本題:病院と比べるなら開設者をそろえる
「クリニックは病院より低い」と言われます。ではいくら低いのか。比べ方で答えが変わります。
| 比べ方 | 診療所 | 病院 | 差 |
|---|---|---|---|
| そのまま比べる | 医療法人 4,131,716円 | 全体 5,407,673円 | 1,275,957円 |
| 開設者をそろえる | 医療法人 4,131,716円 | 医療法人 4,766,323円 | 634,607円 |
出典:同調査 ①一般病院(報告書p314・p313)/②一般診療所(報告書p331)。差は編集部算出
そのまま比べると127.6万円、開設者をそろえると63.5万円。約2倍ちがいます。
一般病院の「全体」には国立・公立が含まれます。公的な病院は給与水準が高く、これが「全体」を押し上げています。医療法人立の診療所と国公立の病院を比べても、働き方の選択には使えません。
差を分解すると、賞与ではありません
医療法人立どうしの63.5万円を、給料と賞与に分けます。
| 内訳 | 診療所(医療法人) | 病院(医療法人) | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均給料年(度)額 | 3,470,194円 | 4,027,737円 | 557,543円 |
| 賞与 | 661,523円 | 738,586円 | 77,063円 |
出典:同調査。差は編集部算出
差の87.9%が給料年額の差です。賞与の差は7.7万円しかありません。
なお、合計欄(①+②)は平均どうしを足した公表値で端数処理が入るため、給料の差と賞与の差を足すと634,606円になり、公表値どうしの差634,607円と1円ずれます。本記事は公表値をそのまま使っています。
「クリニックは賞与が少ないから年収が低い」という説明をときどき見かけますが、この資料の数字では、差を作っているのは月々の給料のほうです。
個人立の診療所は、伸びがほぼ止まっています
伸び率にも差があります。
| 区分 | 前年からの伸び率 |
|---|---|
| 一般病院(全体) | 2.4% |
| 一般病院(医療法人) | 2.3% |
| 一般診療所(医療法人) | 1.2% |
| 一般診療所(個人) | 0.3% |
出典:同調査の各表「金額の伸び率」欄
個人立の診療所だけ0.3%で、ほぼ横ばいです。医療法人立の診療所の1.2%と比べても、さらに低くなっています。
1年の数字なので、これがそのまま続くとは言えません。ただしいまの差が縮まる方向には動いていないことは読み取れます。
同じ診療所の中でも、職種で並びが変わります
医療法人立の一般診療所を職種ごとに並べると、こうなります。
| 職種 | 合計(給料年額+賞与) |
|---|---|
| 院長 | 28,978,974円 |
| 医師 | 10,989,889円 |
| 薬剤師 | 6,610,790円 |
| 医療技術員 | 4,273,294円 |
| 看護職員 | 4,131,716円 |
| 事務職員 | 3,388,640円 |
| 看護補助職員 | 2,916,984円 |
| その他職員 | 2,830,601円 |
出典:同調査 ②一般診療所(医療法人・報告書p331)。「医療技術員」とは診療放射線技師、臨床検査技師、栄養士、理学療法士、作業療法士など
看護職員は医療技術員より14.2万円低い位置にあります。病院では看護職員のほうが医療技術員より高いので、診療所では並びが入れ替わっています。
役職ごとの数字も、この表では分かれていません。人事院の調査にある看護師長の月額455,988円は看護師長の年収はいくらか|国の調査にあるのは月額455,988円、看護師との差は76,280円ですで扱っています。
この数字の限界
使うときに知っておきたいことが3つあります。
| 限界 | 中身 |
|---|---|
| 常勤に限られる | 表題が「職種別常勤職員1人平均」です。パート・非常勤は含まれません |
| 看護師単独ではない | 「看護職員」は保健師・助産師・看護師・准看護師の合算です |
| 診療科・地域で分かれていない | この表に診療科別・都道府県別の内訳はありません |
出典:同調査の表題および注記
「クリニックの看護師の年収」を1つの数字で言い切れる資料は、いまのところありません。この413.2万円も、開設者と常勤という条件が付いた数字です。
金額のほかに、その診療所に何が義務づけられているかも確かめられます。人員の員数を定めているのが療養病床を有する診療所であることと、安全管理の体制が別に置かれていることはクリニック看護師の仕事内容|人数の基準がある診療所とない診療所で扱っています。
求人を見るときに確認できること
1. 開設者を先に見る
医療法人か個人か。この1点で38.4万円動きます。求人票に書かれていなくても、法人名(医療法人社団◯◯会など)から判断できることが多くあります。
2. 月給と賞与を分けて確認する
差の大半は給料年額の差でした。賞与の月数だけを見て判断すると、差の大きいほうを見落とします。月給が提示されているなら、12倍して比べるほうが実態に近づきます。
3. 病院の求人と比べるときは、そちらの開設者も見る
国公立の病院を含む「全体」と比べると、差が2倍に見えます。医療法人立の病院と比べるなら、差は63.5万円です。
4. 常勤かどうかを確認する
この調査の数字は常勤職員のものです。パート・非常勤の求人と直接は比べられません。
5. 診療科での違いは、この資料では確認できない
表に診療科別の内訳はありません。「美容クリニックは高い」といった話は、この資料では裏づけられません。確認したい場合は、求人票を複数並べるしかありません。
パートで働くことも考えるなら、短時間で働く看護師の1時間当たり所定内給与額(1,933円)と、診療所の看護師の1人あたり常勤換算(0.74)はクリニック看護師のパート|統計に診療所だけの時給はなく、看護師1人は平均で常勤0.74人分ですで扱っています。
よくある質問
Q. クリニックの看護師の平均年収はいくらですか。
A. 医療法人が開設した一般診療所の常勤の看護職員で、給料年額と賞与を合わせて4,131,716円です(第25回医療経済実態調査)。個人立では3,747,543円です。
Q. 賃金構造基本統計調査では分からないのですか。
A. 同調査の職種区分は「看護師」で、勤務先を診療所に限った区分はありません。病院とクリニックの数字が混ざります。
Q. 病院よりどれくらい低いのですか。
A. 比べ方によります。一般病院の「全体」と比べると127.6万円、医療法人立どうしで比べると63.5万円です。本文の表をご覧ください。
Q. 「看護職員」には准看護師も入っているのですか。
A. 入っています。同資料の注記で「保健師、助産師、看護師、准看護師である」と定義されています。資格による違いは准看護師と正看護師の違いをご覧ください。
Q. パートの時給は分かりますか。
A. この調査は常勤職員が対象です。パート・非常勤の数字は含まれていません。
Q. 美容クリニックはどうですか。
A. この資料に診療科別の内訳はないため、本記事では扱っていません。
Q. 訪問看護ステーションは診療所に入りますか。
A. 入りません。この調査の「一般診療所」は医療法上の診療所です。訪問看護の制度は訪問看護の仕事内容と1日で扱っています。
迷ったらここ
求人票の金額は、開設者をそろえてから比べる
同じクリニックでも医療法人立と個人立で38.4万円違います。病院と比べるときも、そちらの開設者をそろえないと差が2倍に見えます。
- 応募先は医療法人立か個人立か(法人名から見当がつくことが多い)
- 提示は月給か年収か(病院との差の87.9%は給料年額の差にあたる)
- 常勤かパートか(この統計は常勤職員のもの)
まとめ
クリニックで働く看護職員の年収は、医療法人立で413.2万円、個人立で374.8万円。開設者の違いだけで38.4万円動きます。
病院と比べるときは、そちらの開設者もそろえること。一般病院の「全体」と比べると127.6万円の差に見えますが、医療法人立どうしなら63.5万円です。
そしてその差の87.9%は給料年額の差で、賞与の差は7.7万円しかありません。「賞与が少ないから」では説明がつきません。
ただしこの数字は常勤に限られ、看護職員という合算の値です。診療科別・地域別の内訳もありません。1つの数字で言い切れる資料は、いまのところありません。

