30秒でわかるまとめ
- 看護師が1割少ない病棟でも算定できます令和8年度の診療報酬改定で決まりました。急性期一般入院料1〜6や7対1入院基本料などが対象です。
- ICTを入れる道には残業10時間の歯止めがあります常勤の看護要員1人1か月あたりの超過勤務が平均10時間以下で、導入前より増えていないことが条件です。
- もう1つの道の歯止めは「努めること」だけです人が採れない場合の特例で、過度な負担にならないよう努めるとしか書かれていません。3か月まで年1回です。
- 求人を出していることが特例の条件になりましたハローワークや都道府県ナースセンターを使って、平時から確保に取り組んでいることが求められます。
令和8年度の診療報酬改定で、病棟の看護配置に2つの緩和が入った。看護職員の数が基準より1割少なくても、それまでと同じ入院料を算定できるというものである。4月から動いているが、解説はどれも病院の経営に向けたもので、そこで働く看護師に向けたものが見当たらない。ここでは厚生労働省の資料を読み、病棟で働く人・これから移る人から見て何が変わったのかを整理する。
1割少なくても同じ入院料になる
入院料には、看護職員を何人置くかの基準がある。7対1なら患者7人に看護職員1人という形で、この基準を満たさないと入院料が下がる。
今回の改定で、1日に勤務する看護要員の数、看護要員と入院患者の比率、看護職員に対する看護師の比率について「1割以内の減少」なら、基準を満たすものとして所定の点数を算定できるようになった。
対象になる入院料は次のとおりである。
- 急性期一般入院料1〜6、急性期病院一般入院料A・B
- 7対1入院基本料、10対1入院基本料
- 地域包括医療病棟入院料1・2
- 小児入院医療管理料1〜4
- 特殊疾患病棟入院料1・2、緩和ケア病棟入院料1・2
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【入院(共通事項)】」令和8年3月10日版
急性期の病棟がほぼ入っている。いま一般病棟で働いている人の多くが、この対象の中にいる。
人数の基準は、絶対に守るものだと思っていました。
そこが4月から変わったんだ。ただ、無条件ではないよ。
どういう条件が付いているんでしょうか。
ICTの道は3種類すべてが必要
1つ目は、ICTを入れて業務を効率化する道である。資料は3種類の機器を挙げ、そのすべてを導入していることを条件にしている。
| 種類 | どんな機器か |
|---|---|
| 見守り | 病室のカメラや病床のセンサーで、遠隔で複数の患者の行動や体動を把握できるもの |
| 記録 | 音声入力での看護記録や、電子カルテからのサマリーの自動生成 |
| 情報共有 | 手に持たずに複数人と同時に通話できる機器や、医師とリアルタイムに共有できる端末 |
出典:同上。3種類を「全て導入しており、当該病棟の看護職員等が広く使用していること」と書かれている
1つでも欠けていれば、この道は使えない。持っているだけでも足りず、病棟の看護職員が広く使っていることが求められる。
では、どれくらい使えば「広く使用している」ことになるのか。この説明資料には書かれていない。GemMedは、その後に出された疑義解釈で、機器ごとに使用の目安が示されたと報じている。目安の具体的な数値は原典で確認できていないため、本記事では書いていない。
言い換えると、この緩和は「機器を買えば使える」ものではない。3種類そろえたうえで、実際に病棟で使われている状態を保たなければならない。
歯止めは残業が平均10時間以下
ICTの道には、働く側から見て重要な条件が付いている。
ICT機器等を導入した病棟の看護要員(常勤職員に限る。)の1人1月当たりの超過勤務時間の状況について、平均10時間以下であるとともに、非常勤職員を含めて導入前と比較して増加する傾向にないこと。
残業が増えたら、この道は使えなくなる。平均10時間以下という数値の線が引かれていて、しかも導入前より増える傾向にないことまで求められている。
確認の手順も決まっている。導入の前後で業務内容・業務量・業務時間・事務作業時間・業務負担を年1回程度評価し、その結果を職員に周知したうえで、労働安全衛生法にもとづく衛生委員会などで確認することになっている。厚生労働省が行う随時調査への参加も条件である。
評価の結果は職員に周知される決まりである。自分の病棟がこの道を使っているなら、数字を見られる立場にある。
もう1つの道には数値の線がない
2つ目は「やむを得ない事情」の道である。こちらはICTと関係なく、人が採れなかった場合の特例にあたる。
もともと、1か月を超えない期間で1割以内の変動なら届出は不要だった。今回の改定で、1か月を超える変動でも、3か月までは届出をしなくてよいことになった。ただし使えるのは1年に1回に限られる。
| 2つの道 | 働く人への歯止め |
|---|---|
| ICTを入れる | 残業が平均10時間以下。増加傾向にないこと。年1回の評価と衛生委員会での確認 |
| やむを得ない事情 | 過度な負担にならないよう労働時間管理を行い、体制の整備を図るよう努めること |
出典:同資料から編集部が作成
同じ「1割少なくてよい」でも、歯止めの強さが違う。ICTの道には時間の数値が書かれているが、やむを得ない事情の道には数値がない。書かれているのは努力義務の形である。
同じ1割でも、条件がずいぶん違うんですね。
うん。片方には時間の数字があって、片方にはないんだ。
どちらを使っている病棟なのかで、見え方が変わるね。
それは、入る前に聞けることなんでしょうか。
求人を出していることが条件に
やむを得ない事情の道を使うには、平時から看護職員の確保に取り組んでいることが求められる。資料が挙げているのは次の点である。
- ハローワークや都道府県ナースセンターなどの無料職業紹介事業を使って確保に取り組んでいること
- 民間の紹介会社を使う場合は、医療・介護・保育分野の適正認定事業者を含むこと
- 病院が自ら採用情報をウェブサイトで公表するなど、確保に積極的に取り組んでいることが望ましい
出典:同上。届出を出さずにいるには、有効な求人票を添えた報告が必要になる
求人を出していること自体が制度の条件になったということである。人が足りない病棟ほど、求人が出続ける形になる。
民間の紹介会社を使う場合に「適正認定事業者」を含むことが求められている点も、働く側から見ると意味がある。これは医療・介護・保育の分野で、国が定めた基準を満たした有料職業紹介事業者を認定する仕組みである。どの経路で募集しているかが、制度の側から問われるようになった。
届出を出さずにいるためには、有効な求人票を添えた報告も必要になる。「探したが採れなかった」ことを示す書類が要る、という形である。
特例が使えるのは3か月まで、年1回だけである。それを超えて人が戻らなければ、病院は入院料の変更を届け出ることになる。
編集部の見方:求人の裏に2つの道がある
ここからは編集部の見方である。
この改定は、読み方で見え方が反転する。ICTの道は「機器を入れて残業を減らしたなら、人数の線を少し緩めてよい」という取引で、残業10時間という数値が付いている以上、働く側に不利とは言い切れない。評価の結果が職員に周知される決まりも入っている。
一方、やむを得ない事情の道には数値がない。人が採れないまま3か月、同じ人数で回すことが制度として認められている。その間の負担をどう抑えるかは、努力義務としか書かれていない。
だから求人票を見るときは、その病棟がどちらの状態にあるかを分けて考えたほうがよい。同じ「看護師募集」でも、ICTを入れて余裕を作ったうえでの募集と、人が採れずに特例を使いながらの募集は、中身が違う。そして後者は、制度上「求人を出していること」が条件になっているので、募集が続くこと自体はその病棟が埋まった証拠にならない。
なお、この記事は制度の内容を整理したものである。実際に何割の病院がどちらの道を使っているかは、公表された資料からは分からない。
募集が続いていること自体は、良い印でも悪い印でもないんですね。
そう。何を聞けば中身が分かるかを、持っていけばいいよ。
迷ったらここ
病棟が2つの道のどちらにいるかを聞く
看護配置は1割以内なら少なくても同じ入院料になりました。ICTを入れた道には残業が平均10時間以下という条件が付きますが、人が採れない場合の特例には数値の条件がありません。どちらなのかで働き方が変わります。
- 見守り・記録・情報共有の機器は、3つとも入っているか
- 常勤の看護要員の残業は、1人1か月あたり何時間か
- 導入前後の評価は行われたか。その結果は職員に知らされたか
出典
一次資料
- 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【入院(共通事項)】」(PDF)令和8年3月10日版(2026年9月11日参照)。「ICT等の活用による看護業務効率化の推進」と「やむを得ない事情における施設基準等に関する取扱いの見直し」はここにある
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等について」2026年9月11日参照
報道
- GemMed「ICT活用による看護配置等の柔軟化、「院内でのICT活用度合い」の具体的基準示す―疑義解釈2【2026年度診療報酬改定】(3)」2026年(2026年9月11日参照)。機器をどれだけ使えば「広く使用」にあたるかの目安を報じている
編集部メモ
- 制度の記述は、すべて厚生労働省の説明資料から直接取っています。この資料には合計を検算できる表がないため、2つの緩和それぞれについて、条件が原文どおりに拾えているかを1文ずつ照合しました。対象になる入院料も、資料に挙がっている7つすべてが記事と一致することを確かめています。
- ⚠ 「歯止めの強さが違う」は編集部の見方です。資料が2つを比べてそう書いているわけではありません。ただし、やむを得ない事情の側に残業時間の数値基準が書かれていないことは、編集部で本文を機械的に探して確認しました。
- ⚠ 「広く使用している」の具体的な目安は、この説明資料には書かれていません。機器をどの程度使えばよいかは、その後に出た疑義解釈で示されており、本記事ではGemMedの報道でその存在に触れるにとどめました。目安の数値そのものは、原典を確認できていないため書いていません。
- 実際にどれだけの病院がこの緩和を使っているかは、公表資料からは分かりません。本記事では制度の内容だけを扱っています。
- 「1割」は資料の表記です。本文では10%と書き換えていません。
- この改定は令和8年4月から動いています。本記事は新しく決まったことを伝えるものではなく、いま効いている制度を看護師の側から整理したものです。
- 看護補助者の配置についても同じ緩和がかかりますが、本記事では看護職員に絞って書きました。
- 入院料そのものの点数や、病院の収入がどう変わるかは扱っていません。働く人から見て何が変わるかに絞っています。
- 報道はGemMedの1件だけを参照しました。数値と制度の記述は、すべて厚生労働省の資料から取っています。

