30秒でわかるまとめ
- 介護福祉士の資格手当を義務づけた法律はありません社会福祉士及び介護福祉士法には「賃金」「報酬」という語が1回も出てきません。資格と手当は別の話になります。
- 法律が求めているのは、賃金の決め方の明示です労働基準法は、賃金の決定・計算・支払の方法を書面で明示することを使用者に求めています。
- 就業規則には、昇給に関する事項まで載ります常時10人以上を使用する職場では、賃金の決定と昇給が就業規則の記載事項とされています。
- だから確かめられるのは、条件が書かれた書面です労働条件通知書と就業規則を見れば、手当の有無ではなく決め方そのものを確かめられます。
※資格そのものの位置づけは介護福祉士になるには、ケアマネジャーとの比較は介護福祉士とケアマネの違いで扱っています。この記事は「いくらもらえるか」を扱いません。手当の根拠がどこにあるかを見ます。

まず事実:資格手当を定めた条文はありません
介護福祉士の資格を定めているのは、社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)です。
この法律の全文を機械的に検索しました。「賃金」という語は0回、「報酬」という語も0回です。
資格の効果としてこの法律が定めているのは、名称に関することと、義務に関することです。給与について定めた条文はありません。
| この法律が定めていること | 定めていないこと |
|---|---|
| 名称の使用制限(第48条第2項) | 賃金・手当の額 資格を持つ人への加算 |
| 誠実義務・信用失墜行為の禁止・秘密保持義務など | |
| 登録と免許に関する手続 |
出典:社会福祉士及び介護福祉士法(e-Gov法令API 法令ID 362AC0000000030)。全文をスクリプトで検索して「賃金」「報酬」の語が無いことを確認
だから「介護福祉士だから資格手当が出る」という決まりは、法律の側にはありません。手当があるかどうかは、その職場が決めていることになります。

では何が決まっているのか
法律が決めているのは、金額ではなく手続です。ここを知っておくと、確認できる場所がはっきりします。
1つめ:労働条件を明示する義務
労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項は、こう定めています。
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」
さらに賃金及び労働時間に関する事項については、厚生労働省令で定める方法によって明示することとされています。
その省令が労働基準法施行規則 第5条です。明示する事項の第3号に、こうあります。
「賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」
そして同条は、この明示を書面の交付によって行うとしています(労働者が希望した場合はファクシミリや電子メール等でも可)。
| 条文 | 定めていること |
|---|---|
| 労働基準法 第15条第1項 | 労働契約の締結に際し、賃金・労働時間その他の労働条件を明示する |
| 同施行規則 第5条第1項第3号 | 賃金の決定・計算・支払の方法、締切り・支払の時期、昇給に関する事項 |
| 同施行規則 第5条第4項 | 書面の交付による(労働者の希望によりFAX・電子メール等も可) |
| 同施行規則 第5条第2項 | 明示する労働条件を事実と異なるものとしてはならない |
出典:労働基準法 第15条第1項(法令ID 322AC0000000049)、労働基準法施行規則 第5条(法令ID 322M40000100023)
「賃金の決定の方法」が明示の対象です。手当があるかないかではなく、どう決まるのかを示すことが求められています。
2つめ:就業規則に書く義務
労働基準法 第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を義務づけています。
その第2号が、これです。
「賃金(臨時の賃金等を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」
この号は「定めをする場合においては」という条件が付いていません。第4号以降の多くは「定めをする場合においては」と条件付きですが、第2号は無条件です。
| 号 | 事項 | 条件 |
|---|---|---|
| 1 | 始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇など | 無条件 |
| 2 | 賃金の決定・計算・支払の方法、締切り・支払の時期、昇給 | 無条件 |
| 3 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) | 無条件 |
| 3の2 | 退職手当 | 定めをする場合 |
| 4 | 臨時の賃金等・最低賃金額 | 定めをする場合 |
出典:労働基準法 第89条第1号〜第4号。条件の欄は条文の書き方を編集部が整理したもの
さらに第106条第1項が、就業規則を「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない」としています。
就業規則は「見せてもらうもの」ではなく、周知されるべきものとして条文に置かれています。

整理すると、こうなります
| 問い | 法律の答え |
|---|---|
| 介護福祉士に資格手当を出す義務はあるか | そう定めた条文は無い |
| 賃金の決め方を示す義務はあるか | ある(労基法 第15条第1項・施行規則第5条) |
| 就業規則に賃金の決め方を書く義務はあるか | ある(常時10人以上・労基法 第89条第2号) |
| 就業規則を知らせる義務はあるか | ある(労基法 第106条第1項) |
出典:本文中に挙げた各条文
「資格手当が無い」ことそのものは、条文に反しません。ただし「どう決まっているのか分からない」という状態は、条文が想定しているものとは違います。
手当とは別に、国の加算で事業所に入るお金もあります。加算の率と配り方のルール(訪問介護なら区分によって28.7%から17.0%)は、介護の処遇改善加算はいくらもらえるか|国が決めるのは事業所に入る率まで。1年の増加は月13,960円でしたで扱っています。
処遇改善の加算は、事業所に入るお金です
介護の分野には、職員の処遇改善のための加算があります。ただしこれは介護報酬として事業所に支払われるもので、個人の資格手当を定めた仕組みではありません。
配分の方法は事業所が決めます。介護福祉士だから自動的にいくら、という形にはなっていません。
本記事では加算の要件や金額を扱いません。算定している加算の種類と、その配分の考え方は、事業所に確認できます。
資格ごとの平均給与額が統計でどう出ているか(介護福祉士は月給・常勤で月額350,050円)は、介護福祉士の年収を月額で読む|平均給与額は350,050円、職場の種類で68,380円開きますで扱っています。
確認できることが4つあります
1. 労働条件通知書の「賃金」の欄を読み直す
第15条第1項と施行規則第5条第1項第3号により、賃金の決定・計算・支払の方法と昇給に関する事項が明示されているはずのものです。入職時に受け取った書面が手元にあれば、そこに書かれています。
2. 就業規則の賃金の章を確認する
常時10人以上の職場なら、第89条第2号により作成と届出の義務があります。第106条第1項の周知の対象でもあります。掲示・備付け・書面の交付のいずれかで見られる状態になっているのが条文の姿です。
3. 手当ではなく「基本給に含む」形になっていないかを見る
資格の評価が基本給に組み込まれている場合、資格手当という項目そのものが存在しません。明示されているのは決め方なので、内訳の考え方を確認すると見え方が変わります。
4. 事業所が算定している処遇改善の加算を聞く
加算は事業所に入り、配分は事業所が決めます。算定の有無と配分の考え方は、事業所に確認できる事項です。
それでも納得できないときに、使える場所があります
賃金の明示や就業規則の周知は、労働基準法が使用者に課している義務です。説明が得られないときは、職場の外に相談できる窓口があります。
| 窓口 | 扱っていること |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(厚生労働省) | 労働条件をはじめ、あらゆる分野の労働問題の相談。予約不要・無料 |
| こころの耳(厚生労働省) | 働く人のメンタルヘルスに関する情報と相談窓口の案内 |
出典:厚生労働省の各案内ページ
相談したことが職場に伝わるのではないかという不安があるかもしれません。相談の進め方についても、窓口で聞くことができます。
よくある質問
Q. 介護福祉士に資格手当を出さないのは違法ですか。
A. そう定めた条文はないため、手当が無いこと自体は法律に反しません。法律が求めているのは、賃金の決め方を明示することと、就業規則に記載して周知することです。
Q. 同じ職場で、資格を持つ人と持たない人の給与が同じです。
A. 賃金の決定の方法は、明示と就業規則の記載の対象です。どういう基準でその額になっているのかは、書面で確かめられます。
Q. 労働条件通知書をもらっていません。
A. 労働基準法 第15条第1項と施行規則 第5条は、賃金に関する事項を書面の交付により明示することとしています(労働者が希望した場合はFAX・電子メール等も可)。総合労働相談コーナーで相談できます。
Q. 就業規則を見せてもらえません。
A. 第106条第1項は、掲示・備付け・書面の交付その他の方法で労働者に周知させなければならないとしています。
Q. 処遇改善の加算は、資格手当になりますか。
A. 加算は事業所に支払われるもので、配分は事業所が決めます。資格ごとの手当を定めた仕組みではありません。
Q. 介護福祉士の資格には何の意味があるのですか。
A. 給与とは別に、法律が定めている効果があります。名称に関する制限や、配置に関わる場面での扱いは介護福祉士とケアマネの違いで扱っています。ケアマネジャーの受験資格でも、介護福祉士は省令に名前が挙がっています(ケアマネの受験資格)。
迷ったらここ
手当の有無ではなく、決め方が書かれた書面を見る
労働基準法は賃金の決定・計算・支払の方法と昇給を明示するよう求めています。手当が無いこと自体ではなく、決め方が分かるかどうかが確かめられる点です。
- 労働条件通知書の「賃金」欄に、決定と計算の方法が書かれているか
- 就業規則の賃金の章が周知されているか(常時10人以上の職場は作成・届出の義務)
- 資格の評価が基本給に組み込まれていないか
まとめ
介護福祉士の資格手当を義務づけた法律はありません。社会福祉士及び介護福祉士法に「賃金」「報酬」という語は1回も出てきません。
代わりに置かれているのは、賃金の決め方を示す義務です。
労働条件の明示(第15条第1項・施行規則第5条)、就業規則への記載(第89条第2号)、そして周知(第106条第1項)。いずれも「額」ではなく「決め方」と「知らせること」を求めています。
手当が無いこと自体は条文に反しません。ただし、どう決まっているのかを確かめる手がかりは、条文の側に用意されています。
労働条件通知書と就業規則。まずこの2つが、いま手元で確かめられるものになります。

