30秒でわかるまとめ
- 介護施設は管理栄養士を確保できずにいます通所リハビリテーションでは、加算を取っていない理由の5割が「管理栄養士の確保が困難だから」でした。
- 管理栄養士を手厚く置く加算は特養の40.0%です栄養マネジメント強化加算を算定した特別養護老人ホームは3,425事業所にとどまりました。
- 通所介護では栄養の加算がほとんど動いていません栄養アセスメント加算は2.8%、栄養改善加算は0.6%です。厚生労働省が「赤」で色分けした水準です。
- 管理栄養士を置くと加算、置けないと減算です規定の常勤換算数以上を配置すると加算になります。満たせず減算を受けた特養も2.3%ありました。
厚生労働省は2026年9月3日、社会保障審議会介護給付費分科会(第264回)に資料「口腔・栄養、一体的取組」を示した。令和9年度の介護報酬改定に向けた論点整理の一環である。資料には、栄養に関する加算がどれだけ算定されているかと、算定していない事業所がその理由をどう答えたかが載っている。ここでは原典だけを読み、管理栄養士・栄養士として働く人から見て何が起きているのかを整理する。
管理栄養士がいないから加算を取れない
資料には、リハビリテーション・機能訓練、栄養、口腔を組み合わせた「一体的取組」の加算について、算定していない事業所にその理由を聞いた調査が載っている。
介護老人保健施設、介護医療院、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設では「口腔の専門職の確保が困難だから」が3割、通所リハビリテーションでは「管理栄養士の確保が困難だから」「口腔の専門職の確保が困難だから」が5割であった。
厚生労働省 第264回社会保障審議会介護給付費分科会 資料4「口腔・栄養、一体的取組」
制度が用意されていて、報酬も付く。それでも算定していない。その理由として事業所が挙げたのが人が採れないことだった。資料の「現状と課題」にも「一体的取組の加算非算定の理由として、専門職の確保が困難という意見が多かった」と書かれている。
これは事業所に聞いた調査である。求人が何件出ているかを示す数字ではない。
介護施設は、管理栄養士をあまり必要としていないと思っていました。
そう見えるよね。でも国の資料は逆を書いているんだ。欲しいけれど採れない、と。
採れないから、報酬が付く取り組みを見送っているということですか。
栄養の加算は、施設と通所でまったく違う
資料には、栄養に関する加算をどれだけの事業所が算定したかが並んでいる。令和7年10月サービス提供分(令和7年11月審査分)の集計である。
| 加算(介護保険施設) | 算定した事業所の割合 |
|---|---|
| 療養食加算(特養) | 53.0% |
| 栄養マネジメント強化加算(特養) | 40.0% |
| 経口維持加算(Ⅰ)(特養) | 26.0% |
| 退所時栄養情報連携加算(特養) | 1.1% |
| 再入所時栄養連携加算(特養) | 0.7% |
出典:同資料。特養=介護老人福祉施設。割合は請求事業所数に占める算定事業所数
通所系はさらに低い。
| サービス | 栄養アセスメント加算 | 栄養改善加算 |
|---|---|---|
| 通所リハビリテーション | 11.3% | 2.4% |
| 認知症対応型通所介護 | 3.3% | 0.3% |
| 通所介護 | 2.8% | 0.6% |
| 地域密着型通所介護 | 1.1% | 0.3% |
出典:同資料
資料は算定率が3%以下の加算を赤色で色分けしている。通所介護の栄養アセスメント加算2.8%も、地域密着型通所介護の1.1%も、その赤に入る。一方、通所リハビリテーションの11.3%は赤に入らない。
ただし通所リハビリテーションと通所介護を単純に比べることはできない。通所リハビリテーションは医師や理学療法士等の配置が義務づけられており、そもそも専門職を抱えている体制が違う。「通所介護が取り組んでいない」という読み方は、この資料からはできない。
同じ栄養の加算でも、通所介護と通所リハでこんなに違うのですね。
うん。ただ元の体制が違うから、差だけを取り出して優劣にはしないでおこう。
……ということは、職場を選ぶときにこの数字が手がかりになりますか。
なるよ。次に、なぜ手がかりになるのかを見ていこう。
管理栄養士を多く置くと11単位/日の加算
表の中で名前の似た加算が並ぶが、求職者にとって意味が違うものが1つある。栄養マネジメント強化加算である。資料はその中身をこう説明している。
管理栄養士を規定の常勤換算数以上配置し、低栄養状態のリスクが高い入所者への丁寧な栄養ケア(週3回以上の食事観察や退所時の栄養情報連携等)を行う
同資料「全サービスにおける栄養関連の加算等の概要」
単位数は11単位/日。つまり「管理栄養士を人数を満たして置く」ことが、そのまま報酬になる設計である。事業所の側に採用の動機がある。
逆向きの数字もある。栄養管理基準減算である。これは加算ではなく減算で、栄養管理の基準を満たせない場合に報酬が引かれる。特養では2.3%(199事業所)、地域密着型介護老人福祉施設では3.8%が、この減算を受けていた。
置けば加算、置けなければ減算。管理栄養士の配置は、施設の収入に両方向で効く。
なお、栄養マネジメント強化加算を算定した特養は3,425事業所で40.0%、地域密着型介護老人福祉施設では43.0%だった。半分以上の施設が、まだこの加算を取っていない。
始めた事業所は6〜9割が全員に実施
加算を取れていない事業所がある一方で、取り組んでいる事業所の状況も調べられている。
対象者の選び方について、「原則利用者全員に実施している」と答えた事業所・施設は6〜9割だった。介護老人福祉施設で89.6%、地域密着型介護老人福祉施設で84.2%、通所リハビリテーションで65.2%である。始めた事業所は、一部の利用者に限らず全員に広げている。
効果としては、介護老人福祉施設で「誤嚥性肺炎の予防やリスクが高い利用者の早期発見につながった」が5割、介護老人保健施設・介護医療院・地域密着型介護老人福祉施設で「口腔衛生状態の維持・改善につながった」が4〜5割で最も高かった。
一方、専用の一体的様式を使っている事業所は約4割にとどまる。介護老人福祉施設45.7%、介護医療院45.3%、介護老人保健施設34.9%、地域密着型介護老人福祉施設33.5%、通所リハビリテーション32.4%である。
令和9年度の改定に向けては、この一体的取組をどう推進するかに加えて、加算そのものを整理するかが論点に挙がっている。資料は「加算の種類が増加するとともに、加算の取得要件が複雑化しており」と現状を書き、報酬体系の簡素化を引き続き検討すべきだとした令和6年度の審議報告を引いている。
編集部の見方:職場は病院と学校だけではない
ここからは編集部の見方である。ここまでは資料に書かれている事実で、以下は解釈にあたる。
この資料を通して読むと、介護分野の栄養の仕事について、2つのことが同時に起きていると分かる。
1つは制度が管理栄養士を求めていることである。配置すれば加算になり、満たせなければ減算になる。一体的取組も、栄養が3本柱の1つに数えられている。
もう1つはその求めに現場が追いついていないことである。特養の栄養マネジメント強化加算は40.0%、通所介護の栄養アセスメント加算は2.8%。そして取れない理由として事業所が挙げたのが「管理栄養士の確保が困難だから」だった。
そのうえで、この資料から言えないことも書いておく。加算を取っている施設の給与が高いかどうかは、この資料には載っていない。求人件数も、採用のしやすさも分からない。「加算を取っている=待遇がよい」とは言えない。ここは資料の範囲を超える。
言えるのは、面接で確かめられる項目が増えたということである。どの加算を算定しているかは、事業所が自分で届け出ている情報なので、聞けば答えられる。
介護の職場は、栄養士にとって選択肢に入らないと思い込んでいました。
国の資料が「採れない」と書くくらいだからね。加算のことを聞いてみるといいよ。
迷ったらここ
面接で「どの栄養の加算を算定しているか」を聞く
栄養マネジメント強化加算を算定している特養は40.0%で、半分以上はまだ取っていません。取っている施設は管理栄養士を規定の人数以上置いており、取っていない施設はこれから置く余地があります。どちらも届出にもとづく情報なので、事業所は自分の状況を把握しています。
- 栄養マネジメント強化加算を算定しているか。していないなら理由は何か
- 管理栄養士は常勤換算で何人いるか(加算の要件は人数で決まる)
- リハビリテーション・栄養・口腔の一体的取組をしているか
出典
- 厚生労働省「第264回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料」2026年9月3日開催(2026年9月7日参照)
- 同 資料4「口腔・栄養、一体的取組」(PDF)。栄養関連加算の算定状況、一体的取組の実施状況、現状と課題及び論点
- 算定状況は同資料が引く「介護給付費等実態統計(令和7年11月審査分)」および介護保険総合データベースの任意集計(令和7年10月サービス提供分)による
- 実施状況・非算定理由は同資料が引く「令和6年度改定検証調査 リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組に関する調査研究事業」による
編集部メモ
- 記事に載せた数値は、すべて厚生労働省の資料から直接取り、編集部で計算し直して確かめています。この表には合計欄がないため、「加算を算定した事業所の数」を「算定率」で割り戻すと、同じサービスならどの加算から計算しても同じ事業所数になるはずだ、という関係を使って検算しました。特別養護老人ホームでは5つの加算すべてが同じ範囲に収まりました。
- 「管理栄養士の確保が困難」は、事業所に理由をたずねた調査の回答です。求人が何件出ているか、採用がどれだけ難しいかを示す数字ではありません。本文でも言い換えていません。
- 通所リハビリテーションと通所介護の算定率の差には、人員体制の違いが含まれます。通所リハビリテーションには医師や理学療法士等の配置が義務づけられており、単純な比較にはなりません。そのことを本文に書きました。
- 栄養管理基準減算は、加算ではなく減算です。「取れていない施設の割合」として本文に書いています。
- 加算をどれだけ算定しているかと、そこで働く人の給与や求人件数との関係は、この資料には載っていません。本記事では扱っていません。
- 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて原典から取っています。
- 同じ日の分科会には、認知症介護の研修に関する資料も出ています。介護職に向けた記事として、改めて取り上げる予定です。

