学校給食の衛生管理基準|「望ましい基準」に数字が並んでいます

目次

30秒でわかるまとめ

  • 学校給食の衛生管理責任者は、栄養教諭です栄養教諭等が現にいない場合に限り、調理師資格を持つ学校給食調理員等が代わりを務めます。
  • 毎日点検する項目は15あり、記録まで残す必要があります毎日の点検は、やったかどうかではなく、記録が残っているかどうかまで対象になっています。
  • 努力義務であっても、校長は見過ごすことができません問題を見つけたら遅滞なく改善し、できなければ設置者に申し出るとされています
  • 加熱は中心部75℃で1分間以上と決められていますノロウイルスの恐れがある二枚貝等は85℃で1分間以上とされ、温度と時間の記録も必要です。

※栄養士・管理栄養士の免許そのものは栄養士になるには、管理栄養士になるにはで扱っています。委託給食の現場の話は給食委託がきついと感じるときをご覧ください。

給食着の小学生(学校栄養職員)

まず根拠:学校給食法 第9条

学校給食衛生管理基準は、法律から委任されて作られた基準です。学校給食法(昭和29年法律第160号)第9条は3つの項に分かれています。

項誰に何を
第1項文部科学大臣施設・設備の整備及び管理、調理の過程における衛生管理その他について、維持されることが望ましい基準を定める
第2項義務教育諸学校の設置者この基準に照らして適切な衛生管理に努めるものとする
第3項校長又は共同調理場の長衛生管理上適正を欠く事項を認めた場合、遅滞なく改善のために必要な措置を講じ、講じられないときは設置者に申し出るものとする

出典:学校給食法 第9条第1項〜第3項(e-Gov法令API 法令ID 329AC0000000160)

ここが読みどころです。第1項も第2項も「望ましい」「努める」という書き方です。ところが第3項だけは、校長や共同調理場の長がとるべき行動を具体的に書いています。

気づいたら遅滞なく直す。自分で直せないなら設置者に申し出る。基準そのものは努力義務でも、気づいた人が何をするかは条文で決まっています。

調理員に教える先輩

学校以外の大規模な給食施設では、厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルが参照されます。対象となる食数と、マニュアルが数字で書いている項目は大量調理施設衛生管理マニュアル|対象は同一メニュー1回300食以上か1日750食以上ですで扱っています。

基準の正体は、平成21年の告示です

学校給食衛生管理基準は、平成21年3月31日 文部科学省告示第64号として定められ、平成21年4月1日から施行されました。冒頭に「学校給食法第九条第一項の規定に基づき」と明記されています。

構成は6つの柱と、2つの付表です。

区分内容
第1総則
第2学校給食施設及び設備の整備及び管理に係る衛生管理基準
第3調理の過程等における衛生管理に係る衛生管理基準
第4衛生管理体制に係る衛生管理基準
第5日常及び臨時の衛生検査
第6雑則
別添学校給食施設の区分(汚染作業区域・非汚染作業区域ほか)
別紙学校給食用食品の原材料、製品等の保存基準

出典:学校給食衛生管理基準(平成21年文部科学省告示第64号)の見出し。区分の整理は編集部

総則にはHACCPへの言及があります。コーデックス委員会(国連食糧農業機関/世界保健機関合同食品規格委員会)総会で採択された「危害分析・重要管理点方式とその適用に関するガイドライン」に規定されたHACCPの考え方に基づく、という書き方です。

調理師製菓衛生師パティシエ

その栄養教諭の免許状は、栄養士か管理栄養士の免許を基礎資格にしています。専修・一種・二種の単位数と、学校栄養職員の在職3年の特例は栄養教諭の免許の取り方|管理栄養士か栄養士の免許が、基礎資格に入っていますで扱っています。

ここが本題:衛生管理責任者は栄養教諭等です

第4の(1)一は、こう定めています。

「学校給食調理場においては、栄養教諭等を衛生管理責任者として定めること。ただし、栄養教諭等が現にいない場合は、調理師資格を有する学校給食調理員等を衛生管理責任者として定めること。」

原則が栄養教諭等で、調理師は「現にいない場合」の受け皿です。順番が条文で決まっています。

そして(1)二が、衛生管理責任者の仕事を書いています。

  • 施設及び設備の衛生、食品の衛生及び学校給食調理員の衛生の日常管理に当たること
  • 下処理・調理・配送等の作業工程を分析すること
  • 各工程で清潔かつ迅速に加熱及び冷却調理が適切に行われているかを確認し、その結果を記録すること

出典:学校給食衛生管理基準 第4の1の(1)一・二

「工程を分析する」という言葉が入っているのが特徴です。目の前の作業を見るだけでなく、工程全体を見る役割が割り当てられています。

学校以外の給食施設では、根拠になる条文が変わります。健康増進法にもとづく栄養管理の基準と、委託の場合に義務を負うのが誰かは給食委託の栄養士の仕事内容|5項目のうち2つは努力義務ですで扱っています。

そもそも学校給食栄養管理者の資格が法律にあります

基準より前に、学校給食法 第7条が職員の資格を定めています。

義務教育諸学校又は共同調理場において学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる職員(=学校給食栄養管理者)は、次のいずれかでなければなりません。

#要件
1教育職員免許法 第4条第2項に規定する栄養教諭の免許状を有する者
2栄養士法 第2条第1項の栄養士又は同条第3項の管理栄養士の免許を有する者で、学校給食の実施に必要な知識若しくは経験を有するもの

出典:学校給食法 第7条

2番目には「知識若しくは経験」という条件が付いています。免許だけでは条文の要件を満たしません。

同じ学校給食法の第10条は、栄養教諭が学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行い、校長が食に関する指導の全体的な計画を作成するなどの措置を講ずると定めています。指導の進め方は食に関する指導の進め方|全体計画は校長の措置、給食の時間の指導は主として学級担任ですで扱っています。

「望ましい基準」に並んでいる数字

努力義務の基準ですが、書かれている中身は具体的です。主なものを拾います。

場面基準が定める内容箇所
加熱中心部が75℃で1分間以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品は85℃で1分間以上)又はこれと同等以上の温度まで加熱されていることを確認し、その温度と時間を記録する第3
配送調理した食品を調理後2時間以内に給食できるようにするための配送車を必要台数確保する第2
提供調理後2時間以内に給食できるよう努める第3
検食あらかじめ責任者を定めて、児童生徒の摂食開始時間の30分前までに行う第3
保存食専用冷凍庫に−20℃以下で2週間以上保存する。使用した水も1Lを同様に保存する第3
使用水調理開始前に十分流水した後及び調理終了後に、遊離残留塩素が0.1mg/L以上であること第5
健康診断学校給食従事者について年1回健康診断を行う。当該健康診断を含め年3回定期に健康状態を把握することが望ましい第4
検便赤痢菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌血清型O157その他必要な細菌等について毎月2回以上実施する第4
記録の保存本基準に基づく記録は1年間保存する第6

出典:学校給食衛生管理基準 第2・第3・第4・第5・第6の各該当箇所

温度も時間も回数も、幅ではなく数字で書かれています。「望ましい基準」という言葉から想像するより、はるかに具体的です。

毎日点検する項目が15あります

第5の1は、毎日点検を行う項目を(1)から(15)まで挙げています。15項目です。

内訳を大づかみにすると、こうなります。

項目点検の対象
(1)施設・設備の清潔、調理室と保管室の温度・湿度、冷蔵庫・冷凍庫内部の温度
(2)食器具・容器・調理用器具の洗浄、損傷の有無、保管、機械の分解洗浄消毒乾燥
(3)使用水の遊離残留塩素と水質検査
(4)調理室に不必要な物品を置いていないこと
(5)食品の検収(品質、鮮度、包装の状況、異物・異臭、期限)
(6)食品等の分類ごとの区分保管
(7)下処理・調理・配食が作業区分ごとに行われていること
(8)生食する野菜類・果実類の流水洗浄と必要に応じた消毒
(9)加熱・冷却の適切さと温度・時間の記録
(10)廃棄物の分別と衛生的な処理
(11)給食当番等の健康状態と服装
(12)調理終了後速やかな配送・配食、その時刻の記録、給食前の検食
(13)保存食が2週間以上保存され、記録されていること
(14)学校給食従事者の服装・身体の清潔、手指の洗浄消毒
(15)学校給食従事者の健康状態の毎日の把握と記録

出典:学校給食衛生管理基準 第5の1の(1)〜(15)。要約は編集部

「記録されていること」という言葉が繰り返し出てきます。やったかどうかではなく、記録が残っているかどうかが点検の対象です。

このほか第5の2は、臨時衛生検査を行う場合を3つ挙げています。感染症・食中毒の発生のおそれがあり又は発生したとき、風水害等により環境が不潔になり又は汚染され感染症の発生のおそれがあるとき、その他必要なときです。

食物アレルギーの事故を防ぐための確認の方法(ダブルチェックや声出し指差し確認など)は、文部科学省の別の指針が示しています。学校給食のアレルギー事故防止|指針は、調理指示書を普通食と対応食で1枚にするとしていますで扱っています。

定期の検査は「毎学年」で数えます

第4の2は、検査の頻度を項目ごとに分けています。

対象頻度
第4の1の(1) 衛生管理体制毎学年1回
第4の1の(2) 学校給食従事者の衛生管理毎学年3回
第4の1の(3) 学校給食従事者の健康管理毎学年3回

出典:学校給食衛生管理基準 第4の2。いずれも「定期に検査を行い、その実施記録を保管すること」とされています

年度ではなく「毎学年」です。学校の暦で数えることが基準に書かれています。

作業区域は「汚染」と「非汚染」で分かれます

別添の「学校給食施設の区分」は、調理場を区域で分けています。

区域入るもの
汚染作業区域検収室、食品の保管室、下処理室
返却された食器・食缶等の搬入場、洗浄室(機械・食器具類の洗浄・消毒前)
非汚染作業区域調理室(切裁、加熱調理、加熱調理した食品の冷却、食缶への配食)
配膳室、食品・食缶の搬出場、洗浄室(機械・食器具類の洗浄・消毒後)
その他更衣室、休憩室、調理員専用便所、前室等
調理場以外事務室等(学校給食調理員が通常、出入りしない区域)

出典:学校給食衛生管理基準 別添「学校給食施設の区分」。表の整理は編集部

同じ「洗浄室」でも、消毒の前か後かで区域が変わります。手指の洗浄・消毒のタイミングにも、「汚染作業区域から非汚染作業区域に移動する前」という条件が基準に書かれています(第4の1の(2)四、第5の1の(14))。

就職先が保育所の場合は、確認する文書が変わります。アレルギー対応の基本原則と、医師が書く生活管理指導表の位置づけは保育園の食物アレルギー対応|原則は完全除去、量は減らしませんで扱っています。

就職・異動の前に確認できること

1. 自分が衛生管理責任者になるのかを確認する

基準は栄養教諭等を衛生管理責任者に定めるとしています。栄養教諭として着任するなら、原則としてこの役割が付いてきます。作業工程の分析と記録が仕事に含まれます。

2. 学校給食栄養管理者の要件のどちらで採用されるのかを見る

栄養教諭免許状のルートか、栄養士・管理栄養士免許+知識経験のルートか。学校給食法 第7条は2つを並べています。後者には「学校給食の実施に必要な知識若しくは経験」という条件が付いています。

3. 単独校か共同調理場かを見る

第9条第3項は「義務教育諸学校の校長又は共同調理場の長」を並べて書いています。基準の適用は同じでも、責任者の立場と配送の条件が変わります。調理後2時間以内という時間の制約は、配送距離に直結します。

4. 記録の仕組みがどうなっているかを聞く

基準は記録を繰り返し求め、第6の1は保存期間を1年間としています。紙か電子か、誰が記入するのか。ここは日々の負担に直結します。

5. クックチル方式かどうかを確認する

第6の2は、クックチル方式で提供する場合に教育委員会等の責任で行うべき措置(専用の施設設備の整備、二次汚染防止のための措置、従事者の研修、衛生管理体制の整備等)を定めています。方式が違えば、求められる体制も違います。

よくある質問

Q. 学校給食衛生管理基準は守らなくてもよいのですか。
A. 学校給食法 第9条第1項は「維持されることが望ましい基準」と定め、第2項は設置者に「努めるものとする」としています。ただし第3項は、校長又は共同調理場の長に、適正を欠く事項を認めた場合の改善措置と設置者への申し出を求めています。

Q. 大量調理施設衛生管理マニュアルとは違うのですか。
A. 別の文書です。本記事が扱っているのは文部科学省の告示である学校給食衛生管理基準で、根拠は学校給食法 第9条第1項です。

Q. 加熱の温度は何℃ですか。
A. 中心部が75℃で1分間以上、二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85℃で1分間以上、又はこれと同等以上の温度です。あわせて温度と時間の記録が求められます。

Q. 保存食はどれくらい取っておきますか。
A. 専用冷凍庫に−20℃以下で2週間以上です。使用した水も1Lを保存食用の冷凍庫に同じ条件で保存することとされています。

Q. 検便の回数は決まっていますか。
A. 毎月2回以上です。対象は赤痢菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌血清型O157その他必要な細菌等とされています。

Q. 栄養教諭がいない学校ではどうなりますか。
A. 基準は、栄養教諭等が現にいない場合は調理師資格を有する学校給食調理員等を衛生管理責任者として定めることとしています。

Q. 病院や保育園の給食とは基準が違いますか。
A. 根拠になる制度が異なります。病院の栄養業務は病院栄養士の仕事内容と1日、保育園は保育園栄養士の仕事内容と1日で扱っています。

迷ったらここ

自分が衛生管理責任者になるのかを確認する

基準は栄養教諭等を衛生管理責任者として定めることとしています。作業工程の分析と記録が仕事に入ります。「望ましい基準」でも、温度・回数・保存期間は数字で書かれています。

  • 着任後、自分が衛生管理責任者になるのか(栄養教諭等が原則、いない場合は調理師資格を有する調理員等)
  • 記録の仕組みは紙か電子か、誰が記入するか(基準に基づく記録の保存は1年間)
  • 単独校か共同調理場か(調理後2時間以内という定めは配送距離に効く)
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まとめ

学校給食衛生管理基準は、学校給食法 第9条第1項に基づく平成21年文部科学省告示第64号です。

法律の書き方は「維持されることが望ましい基準」で、設置者には努力義務。それでも第9条第3項は、校長や共同調理場の長に「遅滞なく改善措置を講じ、できなければ設置者に申し出る」ことを求めています。

そして基準の中身は数字です。加熱は中心部75℃1分間以上(二枚貝等は85℃1分間以上)、検食は摂食開始の30分前まで、保存食は−20℃以下で2週間以上、検便は毎月2回以上、記録の保存は1年間。毎日点検する項目は15あります。

その全体を回す役割として、基準は栄養教諭等を衛生管理責任者に据えています。学校給食の衛生管理は、栄養教諭の仕事の一部ではなく、中心に置かれています。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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