30秒でわかるまとめ
- 保育士の働き先は、東京と地方で逆を向いています東京では待機児童が増える一方、過疎地域の定員充足率は72.7%まで下がっています。
- 全国では約37万人ぶんの席が空いたままです定員は3,016,417人、利用する子どもは2,646,756人でした。定員充足率は87.7%です。
- 増えた分の68.5%が東京都に集まりました待機児童が増えたのは98市区町村です。うち28が東京都で、増えた分1,167人のうち799人を占めます。
- 保育士を確保できず定員が減った園がありますこども家庭庁の聞き取りに「保育士不足により定員通りの受入れができない施設」との回答がありました。
こども家庭庁は2026年8月25日、「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」を公表した。待機児童が9年ぶりに増えたことが広く報じられている。ただし同じ資料には、見出しには収まらない数字がいくつも載っている。ここでは原典だけを読み、保育士として働く人から見て何が起きているのかを整理する。
待機児童は2,435人。9年ぶりに増えた
2026年4月1日時点の待機児童数は2,435人。前年から181人の増加である。前年を上回るのは2017(平成29)年以来、9年ぶりになる。
ただし水準そのものは低い。待機児童が最も多かったのは2017年の26,081人で、今回はその10分の1を下回る。全国1,741市区町村のうち1,552自治体(89.1%)は待機児童ゼロである。待機児童のいる自治体は189で、前年より22減った。
年齢の偏りも大きい。2,435人のうち1・2歳児が2,117人(86.9%)、3歳未満児で見ると2,337人(96.0%)を占める。3歳以上児は98人しかいない。
待機児童は「保育所そのものが足りない」という話ではなく、ほぼ1・2歳児の枠の話である。
全国では37万人ぶんの席が空いている
同じ資料には、待機児童以外の数字も載っている。
| 項目 | 令和8年4月1日 | 前年から |
|---|---|---|
| 保育所等の利用定員 | 3,016,417人 | 12,865人の減少 |
| 利用する子どもの数 | 2,646,756人 | 31,661人の減少 |
| 保育所等の数 | 40,046か所 | 71か所の増加 |
| 定員充足率 | 87.7% | 0.7%の減少 |
出典:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」全体版
定員から利用児童数を引くと369,661人。全国で約37万人ぶんの席が埋まっていない計算になる。しかも子どもの減り方(31,661人の減少)は、定員の減り方(12,865人の減少)より大きい。席は余る方向に動いている。施設の数はむしろ71か所増えた。
待機児童が増えたということは、保育士がまた足りなくなっているのでしょうか。
そう読みたくなるよね。でも同じ資料に、席のほうは余ってきているという数字も出ているんだ。
足りないのと余っているのが、同時に起きているということですか。
増えた分の68.5%が東京都に集中
「181人の増加」は差し引きの数字である。資料6を市区町村ごとに積み上げると、中身が見えてくる。
| 区分 | 市区町村数 | 人数 |
|---|---|---|
| 待機児童が減った | 143 | 986人の減少 |
| 待機児童が増えた | 98 | 1,167人の増加 |
| 前年と同数 | 13 | — |
| 差し引き | — | 181人の増加 |
出典:同資料 資料6-1・6-2から編集部が集計
増えた1,167人のうち、799人が東京都の28市区町村で生じている。増えた分の68.5%にあたる。増加数の上位9自治体は、すべて東京都だった。
| 自治体 | 令和8年4月 | 令和7年4月 | 増加数 |
|---|---|---|---|
| 東京都 世田谷区 | 166人 | 47人 | 119人 |
| 東京都 足立区 | 106人 | 7人 | 99人 |
| 東京都 北区 | 103人 | 18人 | 85人 |
出典:同資料 資料6-2
この68.5%の分母は「増えた分の1,167人」である。差し引きの181人ではない。市区町村の数でいえば、減ったところのほうが多い。
国の資料が「保育士不足」と書いている
こども家庭庁は、待機児童の多い自治体と増加数の大きい自治体、計13自治体に聞き取りを行っている。全体版13ページに、その回答が要因ごとにまとめられている。
「保育人材の確保が困難」の欄には、次の記述がある。
保育士不足により定員通りの受入れができない施設や弾力化による対応ができない施設が生じたため。
保育士の離職や短時間勤務等の希望が増加し、保育体制の確保が困難になったため。
こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」全体版13ページ
建物も認可もあり、定員も決まっている。それでも人が採れないので、定員まで受け入れられない。国の資料が、その状態をそのまま書いている。
同じページには「申込者数の想定以上の増加、又は計画していた利用定員数の不足」も要因として挙がっている。都内の申込者増については「保育料第一子無償化(令和7年9月~)による保育需要増加の影響」「地価・家賃の高騰等により、子育て世帯の転入増加が影響している」との回答も記載されている。要因は一つではない。
園はあるのに、人がいないから枠を開けられない。そういうことが起きているのですね。
うん。しかもそう書いているのが国の資料そのものなんだ。現場の事情が、そのまま残っている。
それなら、待機児童が増えた地域は、保育士を探している地域でもあるということですか。
そこに気づけたなら十分だよ。ただ、逆側の地域では別のことが起きている。
過疎地域は定員の3割近くが空いている
全体版18ページには、都市部と過疎地域を分けた集計がある。
| 区分 | 利用定員 | 利用児童 | 待機児童 | 定員充足率 |
|---|---|---|---|---|
| 都市部 | 1,854,099人 | 1,684,504人 | 1,818人 | 90.9% |
| 過疎地域 | 207,300人 | 150,733人 | 0人 | 72.7% |
出典:同資料 全体版18ページ。都市部は首都圏・近畿圏の7都府県とその他の指定都市・中核市(334自治体)、過疎地域は過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法にもとづく全部過疎市町村(713自治体)を指す
過疎地域の待機児童は0人。一方で定員充足率は72.7%にとどまり、定員の3割近くが空いている。5年間の推移では、都市部が2.1%の低下であるのに対し、過疎地域は8.6%の低下と下がり方が速い。
こども家庭庁は、今後の取組方針にこう書いている。過疎地域などでは「地域における統廃合や規模の縮小、多機能化等の計画的な取組を促進し、人口減少地域等における持続可能な保育機能の確保を進めていく」。
統廃合と規模の縮小は、そこで働く人にとっては勤務先の統合や配置転換として表れうる。国の方針として明記されている。
編集部の見方:東京と地方で意味が逆になる
ここからは編集部の見方である。ここまでは資料に書かれている事実で、以下は解釈にあたる。
この資料を通して読むと、「保育士が足りない」という一つの言葉が、地域によって別のことを指していると分かる。
東京では、申込みが増え、人が採れず、定員まで受け入れられない園がある。ここでの人手不足は採用を続ける理由になる。待機児童が増えた上位9自治体は、すべて東京都だった。
過疎地域では、待機児童は0人で、定員の3割近くが空いている。ここで働き手が減っても、待機児童という形では表に出ない。そして国の方針は統廃合と規模の縮小である。同じ人手不足でも、採用ではなく縮小の話につながりうる。
そのうえで、この資料から言えないことも書いておく。定員充足率が低い園の給与や労働条件がどうなっているかは、この資料には載っていない。充足率と求人数の関係も確認していない。「充足率が低い=働きにくい」とは言えない。ここは資料の範囲を超える。
言えるのは、園を選ぶときに見る数字が一つ増えた、ということである。定員に対して何人が通っているか。それは見学の場で聞ける。
見出しだけだと、全国で保育が足りなくなったように読んでいました。
同じ資料でも、どのページを開くかで見え方が変わるからね。次に園を見るとき、定員と実際の人数を聞いてみるといいよ。
迷ったらここ
見学のときは「定員と、いま通っている人数」を聞く
全国の定員充足率は87.7%ですが、都市部は90.9%、過疎地域は72.7%と差があります。園ごとの数字は求人票には載りません。聞けば答えてもらえる数字なので、見学の場で確かめるのがいちばん早い方法です。
- 定員は何人で、いま何人通っているか(園ごとの充足率が分かる)
- 1・2歳児のクラスに空きがあるか(待機児童の86.9%はこの年齢)
- 定員まで受け入れられているか。できていないなら理由は何か
出典
- こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」2026年8月25日公表(2026年9月4日参照)
- 同 全体版(PDF)。ポイント、待機児童数の推移、年齢別の内訳、自治体への聞き取り結果、都市部と過疎地域の比較
- 同 (参考)資料1から6(Excel)。市区町村別の利用定員・利用児童数・待機児童数の増減
編集部メモ
- この取りまとめは暫定値である。原典に「令和8年熊本地震の影響により熊本県内各自治体のデータが未確定のため、本取りまとめにおける各種データは暫定値となっており、今後、修正が生じる場合がございます」と明記されている。数値は今後修正されうる
- 市区町村ごとの集計は編集部が行った。資料6-1・6-2から積み上げ、差し引きが公表値の181人増と一致することを確認している
- 「68.5%」の分母は増えた分の1,167人である。差し引きの181人と比べると意味が変わるため、本文では分母を明示した
- 定員充足率と、園の給与・労働条件・求人数との関係はこの資料では確認できない。本記事では扱っていない
- 報道各社の記事は参照していない。数値と記述はすべて原典から取った

