30秒でわかるまとめ
- 給食委託の栄養士が感じるきつさは、契約の中に理由があります医療法施行規則の13項目に人数の下限はなく、管理栄養士の配置義務は施設の設置者にかかります
- 管理栄養士を置く義務があるかどうかは、食数の線によるものです医学的管理を要する場合は1回300食・1日750食以上で、施設が管理栄養士を置く義務を負います
- 受託会社の基準に、人数の下限は出てきません医療法施行規則第9条の10は13項目を定めていますが、人数を求めているものは1つもありません
- 会社に人数を尋ねる根拠は、業務案内書にあります医療法施行規則第9条の10第9号は業務案内書への人員配置の記載を求めており、労働時間は総合労働相談コーナーで相談できます
※病院で働く栄養士の1日の流れと、診療報酬の施設基準が決めている部分は病院栄養士の1日|検食は毎食、夕食の配膳は午後6時以降で扱っています。給与の水準は栄養士の年収|中位数25万9,400円。経験10年で+2,400円を参照してください。

「きつい」の中身は、法律の話と契約の話が混ざっています
給食委託の現場で挙がる「きつい」は、だいたい次のように分かれます。
| 「きつい」の中身 | 決めているのは | 動かせる場所 |
|---|---|---|
| 食数が多い/少ない | 法律(食数で配置義務の線が引かれる) | 施設を変える |
| 栄養士が自分ひとりしかいない | 契約(法令に人数の下限がない) | 契約の内容を確認する/会社に上げる |
| 調理の欠員をそのまま埋めている | 契約(同上) | 同上 |
| 施設側の管理栄養士から直接指示が来る | 契約(業務の分担) | 業務案内書・契約書の分担を確認する |
| 長時間労働・休憩が取れない | 労働法 | 会社/労働基準監督署・総合労働相談コーナー |
法律で決まっている部分は、あなたの職場が特別なのではありません。逆に契約で決まっている部分は、施設ごとに違います。同じ会社でも配属先が変われば変わります。この切り分けができると、「転職すれば解決するのか」「配属を変えれば済むのか」の判断が変わります。

管理栄養士を置かない設置者に都道府県知事が勧告し、従わなければ命令できる定め(健康増進法 第23条)は管理栄養士の仕事内容|健康増進法が名指しする条は4つですで扱っています。
配置の義務は、委託会社ではなく施設にかかっています
まず、給食施設に関する法律の骨格を確認します。
健康増進法 第21条第1項「特定給食施設であって特別の栄養管理が必要なものとして厚生労働省令で定めるところにより都道府県知事が指定するものの設置者は、当該特定給食施設に管理栄養士を置かなければならない。」
第21条第2項「前項に規定する特定給食施設以外の特定給食施設の設置者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定給食施設に栄養士又は管理栄養士を置くように努めなければならない。」
ここで押さえるのは名宛人です。義務を負っているのは「設置者」、つまり病院や施設の側であって、給食を受託している会社ではありません。
「管理栄養士を置く」という法律上の義務は、施設に1人置かれていれば満たされます。その1人が施設の職員なのか委託会社の社員なのか、委託会社が何人配置するのかについて、この条文は何も定めていません。
第1項は義務(置かなければならない)、第2項は努力義務(置くように努めなければならない)で、強さも違います。

衛生管理のほうでも、食数で線が引かれている文書があります。同一メニュー1回300食以上か1日750食以上を対象にしたマニュアルの中身は大量調理施設衛生管理マニュアル|対象は同一メニュー1回300食以上か1日750食以上ですで扱っています。
食数で線が引かれています
どの施設がどちらに当たるかは、食数で決まります。
| 区分 | 食数 | 栄養士・管理栄養士の扱い |
|---|---|---|
| 特定給食施設 (施行規則 第5条) | 継続的に1回100食以上または1日250食以上 | 都道府県知事への届出が必要(法 第20条) |
| 知事が指定する施設① (施行規則 第7条第1号) | 医学的な管理を必要とする者に食事を供給し、1回300食以上または1日750食以上 | 管理栄養士を置かなければならない |
| 知事が指定する施設② (施行規則 第7条第2号) | ①以外で1回500食以上または1日1,500食以上 | 同上 |
| 上記以外の特定給食施設 (施行規則 第8条) | うち1回300食または1日750食以上 | 置く者のうち少なくとも1人は管理栄養士であるように努める |
出典:健康増進法(平成14年法律第103号)第20条・第21条、健康増進法施行規則(平成15年厚生労働省令第86号)第5条・第7条・第8条
特定給食施設を設置した者は、事業の開始の日から1月以内に、施設の所在地の都道府県知事に届け出なければなりません(法 第20条第1項)。
ここで分かるのは、法律が見ているのは「食数」と「施設に管理栄養士がいるかどうか」だけだということです。あなたの職場の食数がどの線を越えているかは、施設の性格を知る手がかりになりますが、それが人員の多さを保証するものではありません。
学校給食の場合は、根拠になる文書が別です。文部科学省の告示である学校給食衛生管理基準と、そこで校長に課されている改善措置の定めは学校給食の衛生管理基準|「望ましい基準」に数字が並んでいますで扱っています。
受託者の基準は13項目。人数の下限は入っていません
病院給食を受託する会社については、別に基準があります。医療法施行規則 第9条の10が、患者等給食の業務を適正に行う能力のある者の基準を13項目並べています。栄養士に関わる主なものを挙げます。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 調理業務を受託する場合、受託業務の責任者として相当の知識及び経験を有する者が受託業務を行う場所に置かれていること |
| 第2号 | 指導及び助言を行う者を有すること。そのひとつが病院における患者等給食の業務に5年以上の経験を有する管理栄養士 |
| 第3号 | 栄養士又は管理栄養士が受託業務を行う場所に置かれていること(献立表の作成業務を受託する場合は、治療食に関する知識及び技能を有する栄養士又は管理栄養士) |
| 第9号 | 業務案内書に次の事項を記載していること イ 人員の配置/ロ 適時適温の給食の実施方法等/ハ 業務の管理体制 |
| 第10号 | 受託業務を継続的かつ安定的に遂行できる能力を有すること |
| 第13号 | 従事者に対して、適切な研修を実施していること |
出典:医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第9条の10
13項目を最初から最後まで読んでも、「◯人以上」という人数の下限は1つも出てきません。第3号が求めているのは「栄養士又は管理栄養士が置かれていること」であって、人数ではありません。1人でも条文の要件は満たします。
人数に触れているのは第9号イの「人員の配置」を業務案内書に記載することだけです。記載を求めているのであって、水準を定めているのではありません。
だから、人数は契約で決まります
ここまでを整理すると、こうなります。
- 施設に管理栄養士を置く義務 → 施設の設置者にかかる(健康増進法 第21条)
- 受託会社が満たすべき基準 → 13項目あるが人数の下限はない(医療法施行規則 第9条の10)
- 実際に何人配置するか → 法令の外。施設と会社の契約で決まる
「法律で決まっているから仕方ない」という説明は、人数については成り立ちません。逆にいえば、人数は交渉と契約の対象であって、変えられる可能性がある領域だということです。
ただし本記事は個別の契約内容を判断するものではありません。契約は施設と会社のあいだのもので、そこで働く栄養士が当事者になっているとは限りません。契約書そのものを見られる立場かどうかも職場によって違います。
人数ではなく「何をする仕事か」の側は、別の条文に書かれています。健康増進法施行規則が定める栄養管理の5項目と、そのうち2つが努力義務であることは給食委託の栄養士の仕事内容|5項目のうち2つは努力義務ですで扱っています。
契約と法律を分けたうえで、確認できること
いま働いている職場でも、次の職場を見るときでも、聞けることがあります。
- この施設の食数はいくつか。1回300食/1日750食、1回500食/1日1,500食のどちらの線を越えているかで、施設側の管理栄養士配置が義務なのか努力義務なのかが変わります
- 業務案内書の「人員の配置」に何と書かれているか。医療法施行規則 第9条の10第9号イが記載を求めている項目です。会社が持っているはずのものです
- 献立表の作成業務まで受託しているか。受託している場合、第3号は治療食に関する知識及び技能を有する栄養士または管理栄養士を求めています。業務の重さが変わります
- 受託業務の責任者は誰か。第1号は責任者を受託業務を行う場所に置くことを求めています。名目だけ本社にいる状態は条文の想定と違います
- 研修は実施されているか。第13号が求めています
- 労働時間・休憩は労働法の話です。ここは契約でも受託基準でもなく、労働基準法の問題として分けて扱ってください
なお、保育所の給食は施設内調理が原則で、外部搬入が認められるのは満3歳以上だけです。そのときの5つの要件は保育園栄養士の仕事内容と1日|6施設に栄養士がいて、保育所にだけいませんで扱っています。
契約と法律を分けて考えるという意味では、退職の場面も同じです。民法と労働基準法が用意している4つの定めは栄養士を辞めたいとき|法律が用意しているのは4つですで扱っています。
一人で抱えないための窓口
会社の中で解決しないときに使える、公的な窓口です。
- 総合労働相談コーナー(都道府県労働局) — 労働時間、休憩、賃金、退職など職場のトラブル全般。無料・予約不要。https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- こころの耳(厚生労働省) — 働く人のメンタルヘルス。電話・SNS・メールの相談窓口があります。https://kokoro.mhlw.go.jp/
- 都道府県の健康増進担当課 — 特定給食施設の届出と指導・助言を所管しています。健康増進法 第22条は、都道府県知事が設置者に対し栄養管理の実施に関し必要な指導及び助言をすることができると定めています
3つ目は「施設側の栄養管理」に対する窓口であって、委託会社の労働条件を扱うものではありません。用途が違うので、混同しないでください。
よくある質問
Q. 栄養士が1人しかいないのは違法ではないのですか。
医療法施行規則 第9条の10第3号は「栄養士又は管理栄養士が受託業務を行う場所に置かれていること」を求めており、人数の下限を定めていません。健康増進法 第21条の配置義務は施設の設置者にかかるもので、受託会社の人員を定めるものではありません。したがって、人数そのものを根拠に法令違反だと言うことはできません。ただし労働時間や休憩については労働基準法の問題として別に扱われます。
Q. 食数が多い職場のほうがきついですか。
食数は法律上の線引きに使われています。1回300食以上または1日750食以上(医学的な管理を必要とする者に供給する場合)で、施設の設置者に管理栄養士の配置義務が生じます。ただしこれは施設側に何人いるかの話で、委託会社が何人配置するかとは別です。食数と人員の関係は契約によります。
Q. 会社に人を増やしてほしいと言うとき、根拠になるものはありますか。
法令には人数の下限がないため、条文を根拠にすることはできません。確認できるのは業務案内書の「人員の配置」です。医療法施行規則 第9条の10第9号イが記載を求めている項目で、実際の配置がそこに書かれた内容と合っているかは確かめる意味があります。また第10号は受託業務を「継続的かつ安定的に遂行できる能力」を求めています。
迷ったらここ
業務案内書の「人員の配置」に何と書かれているかを確認する
医療法施行規則 第9条の10の13項目に人数の下限はありません。記載を求めているのは業務案内書の「人員の配置」だけです。人数は法令ではなく契約で決まります。
- 業務案内書の「人員の配置」と、実際の配置が合っているか
- 施設の食数はいくつか(1回300食/1日750食、1回500食/1日1,500食のどちらの線を越えるか)
- 献立表の作成業務まで受託しているか(第3号は治療食の知識・技能を求めている)
まとめ
- 「きつい」の中身を法律で決まる部分と契約で決まる部分に分ける
- 管理栄養士の配置義務は施設の設置者にかかる(健康増進法 第21条)。委託会社の人員を定めるものではない
- 線引きは食数。1回300食/1日750食以上(医学的管理を要する場合)または1回500食/1日1,500食以上で義務、それ以外は努力義務
- 受託会社の基準は医療法施行規則 第9条の10に13項目。人数の下限は1つも入っていない
- 人数に触れるのは「業務案内書に人員の配置を記載すること」のみ。記載を求めているだけで水準は定めていない
- したがって人数は契約で決まる。法令を調べても答えは出てこない
「きつい」を法律のせいにすると、動かせるものまで動かせなくなります。法律が決めているのは食数の線と、施設に管理栄養士がいるかどうかまで。あなたの職場の人数は、その外側にあります。まずどちらの話なのかを分けてから、会社に持っていくのか、労働局に相談するのか、別の施設を見るのかを決めてください。

