30秒でわかるまとめ
- 保育士の21.3%が、いま辞めたいと考えています続けたいと答えた人は78.7%で多数派ですが、辞めたいと考える人も5人に1人はいます。
- 辞めたい理由と、実際に辞めた理由は違います辞めたい理由の1位は給料61.6%ですが、実際に辞めた人の1位は人間関係31.5%です。
- 満足度が低いのは、給与だけという結果でした職場の人間関係ややりがいは満足が約7割ある一方、給与・賞与等は約3割にとどまります。
- 保育士も、つらさを一人で抱える必要はありませんいじめや嫌がらせは総合労働相談コーナー、こころの不調はこころの耳へ相談できます。

まず、8割は「続けたい」と思っています
「保育士 辞めたい」と検索すると、離職率の高さや過酷さを強調する記事ばかりが並びます。しかし実際の数字は違います。
東京都が保育士登録者52,856人を対象に行った調査(有効回答18,239件)で、現在保育士として働いている11,277人に今後の意向を聞いた結果がこちらです。
| 今後の意向 | 割合 |
|---|---|
| 今後も保育士として働き続けたい | 78.7% |
| 今後は保育士を辞め、保育士以外の職種で働きたい | 19.4% |
| 今後は保育士を辞め、働かないつもりだ | 1.9% |
出典:東京都「令和4年度 東京都保育士実態調査結果」(調査期間:令和4年7月25日〜8月14日/有効回収数18,239件・有効回収率39.7%)
約8割が続けたいと答えています。いま「辞めたい」と感じているあなたは、少数派の側にいるように思えるかもしれません。しかし裏を返せば、辞めたいと考えている人も5人に1人はいるということです。珍しいことではありません。
大事なのは、この21.3%が「保育士という仕事そのものを見限った人たち」ではないことです。次の章を見てください。

「辞めたい理由」と「実際に辞めた理由」は、順位が入れ替わります
この記事でいちばん伝えたいのがこの部分です。
同じ調査は、2つの異なるグループに理由を聞いています。いま働いていて辞めたいと考えている人(2,399人)と、実際に保育士を辞めた人(2,241人)です。
| 理由 | 辞めたいと考えている人(n=2,399) | 実際に辞めた人(n=2,241) |
|---|---|---|
| 給料が安い | 61.6%(1位) | 22.1%(3位) |
| 仕事量が多い | 54.0%(2位) | 23.1%(2位) |
| 労働時間が長い | 35.4%(3位) | 18.6%(5位) |
| 職場の人間関係 | 30.1%(4位) | 31.5%(1位) |
| 健康上の理由(体力含む) | 21.8% | 20.6%(4位) |
| 他業種への興味 | 28.9% | 15.3% |
| 職業適性に対する不安 | 24.3% | 9.9% |
| 保護者対応の大変さ | 22.1% | 7.0% |
| 妊娠・出産 | 11.9% | 16.2% |
| 保育理念に共感できなかった | 8.8% | 13.4% |
出典:同調査(いずれも複数回答)
読み取れることは明確です。
- 「給料が安い」は、辞めたい気持ちを生む最大の要因(61.6%)。しかし実際に辞める決定打にはなりにくい(22.1%)。順位が1位から3位に落ち、割合は3分の1近くまで下がります。
- 「職場の人間関係」は逆です。辞めたい理由としては4位(30.1%)ですが、実際に辞めた人では1位(31.5%)。割合がほとんど変わらないまま、順位だけが上がります。
つまり——給料への不満は抱えたまま働き続けられる。しかし人間関係は、抱えたままでいられない。
これはあなたの状況を判断する物差しになります。いま辞めたい理由が給料や仕事量なら、それは多くの保育士が同じように抱えながら働いている不満です。一方、人間関係が理由なら、それは実際に人を退職に追い込んできた要因です。軽く見ない方がいい。
もうひとつ注目すべきは、「保護者対応の大変さ」(22.1%→7.0%)と「職業適性に対する不安」(24.3%→9.9%)が、実際に辞めた人では大きく下がることです。保護者対応がつらい、自分は向いていないかもしれない——そう感じていても、実際にはそれで辞めた人は多くありません。多くは乗り越えています。

保護者からの苦情は、受けた保育士が一人で抱えるものとしては書かれていません。児童福祉施設の基準 第14条の3は、苦情を受け付けるための窓口の設置等を施設に求めており、その仕組みは保育士の保護者対応とクレーム|苦情の窓口を置くことは、国の基準が施設に求めていますで扱っています。
満足度を分解すると、低いのは給与だけ
東京都の報告書は、現在の職場の満足度を9項目で聞いています。その結果について、報告書はこう記しています。
なお、人間関係のつらさそのものについては、相談体制の整備が法律上の事業主の義務だという別の切り口があります。詳しくは保育士の人間関係に疲れたら|それは法律上、事業主が対処すべきことですをご覧ください。
- 勤務日数、自宅からの通勤時間(片道)、職場の人間関係、保育士としての仕事全体の「やりがい」度は、『満足』の割合が約7割から7割台半ばと高い
- 給与・賞与等が約3割と最も低い
そして「現在の職場で働き続けるために充実を希望する項目」はこうなっています。
| 充実を希望する項目 | 割合 |
|---|---|
| 給与 | 79.4% |
| 職場の人間関係 | 58.0% |
| 休暇 | 52.7% |
| 勤務時間・交代制の融通がきく | 43.1% |
| 福利厚生 | 39.9% |
| 職員の数 | 35.8% |
| やりがい | 35.0% |
出典:同調査(複数回答、n=11,277)
職場に改善してほしい項目も、「給与・賞与等の改善」62.7%、「職員数の増員」48.6%、「事務・雑務の軽減」40.1%と続きます。
やりがいも人間関係も悪くない。足りないのはお金と人手。これが保育の現場の平均像です。あなたが「仕事は好きなのに続けられない」と感じているなら、その感覚はデータと一致しています。あなたの問題ではありません。
園の中で役職が上がると給与がどう変わるかも、判断の材料になります。私立保育所の施設長の給与月額は保育士の1.70倍で、その比較は 保育園の園長の年収|私立の施設長は賞与込み月額580,354円、12か月分で696.4万円ですで扱っています。
「辞める」と決める前に切り分けたい5つのこと
1. 辞めたい理由が「給料」なのか「人間関係」なのかを切り分ける
前章の通り、この2つはまったく重みが違います。紙に書き出してみてください。
- 給料・仕事量・労働時間が理由なら——それは条件の問題です。同じ資格で条件の違う園に移ることで解決しうる範囲です。辞めるかどうかより、どこに移るかを考える段階です。
- 人間関係が理由なら——実際に人を辞めさせてきた要因です。我慢で解決しようとしない方がいい。
2. 「園を変える」と「保育士を辞める」を混同していないか
辞めたいと考えている人のうち、19.4%は「保育士以外の職種で働きたい」と答えています。しかし理由の上位は給料・仕事量・労働時間——いずれも園によって違う条件です。
保育士資格は、認可保育園だけのものではありません。小規模保育、企業主導型保育、認定こども園、病児保育、児童発達支援・放課後等デイサービス、ベビーシッターと、働く場所によって仕事量も保護者対応も給与体系も変わります。
3. 職場を選ぶときに何を見るかを決めておく
実際に保育士が職場選択時に重視した項目は次の通りです。
| 職場選択時に重視した項目 | 割合 |
|---|---|
| 勤務地(自宅から近い等) | 72.3% |
| 職場の人間関係 | 51.9% |
| 給与が高いこと | 38.5% |
| 休暇が多い・とりやすい | 36.9% |
| 勤務時間・交代制の融通がきく | 36.5% |
| 保育理念への共感 | 35.9% |
| 福利厚生の充実度 | 35.3% |
| やりがい | 34.7% |
出典:同調査(複数回答、n=11,277)
注目したいのは「職場の人間関係」が2位(51.9%)に入っていることです。入職前に人間関係を見極めるのは難しい。だからこそ園見学は必須です。職員同士の会話のトーン、子どもへの声のかけ方、休憩が実際に取れているか。求人票には書かれていない情報が、そこにあります。
4. 役職を断ることは、後ろめたいことではない
上位の役職への就任について、「就任したくない」が67.1%でした。理由は「責任の重い仕事をしたくない」42.7%、「役職に見合った昇給が見込めない」38.2%、「今の仕事やポジションに満足している」37.0%です。
7割近くが役職を望んでいません。昇進を断ることは、あなただけの選択ではありません。
5. 一人で抱えていないか
これが最後で、いちばん大事です。
職場でのいじめ・嫌がらせやハラスメントを受けている場合、当事者同士での解決は困難です。公的な相談窓口は無料で使えます。
- 総合労働相談コーナー(厚生労働省)… 全国の労働局・労働基準監督署内に設置。解雇、いじめ・嫌がらせなど労働問題全般の相談を無料で受け付けています。
- こころの耳(厚生労働省)… 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト。電話・SNS相談の窓口があります。
実際に辞めた人の理由の4位は「健康上の理由(体力含む)」20.6%でした。心身に不調が出ている場合は、転職を考える前に医療機関の受診を優先してください。
1年目に限った話であれば、見るべき数字が変わります。経験0年と1〜4年で何がどれだけ違うのか、そして「まだ教わっていないこと」が制度上どちら側の話なのかは保育士1年目がつらいとき|経験0年と1〜4年の差は8割が賞与ですで扱っています。
資格を手放すかどうかを考えるとき、条文の上で何が変わるのかを見ておけます。名称を使えるかどうかと、配置基準の人数に入るかどうかの2点は保育補助にできないこと|法令が禁じているのは2つだけですで扱っています。
離れる決断をするときに、知っておいてほしいこと
上の5つを確認しても状況が変わらない、あるいは確認する余力すら残っていない。そういう状態であれば、離れる判断は正しい判断です。
知っておいてほしいのは、保育士の求人は圧倒的な売り手市場だということです。
保育士の有効求人倍率は2.42倍(令和6年4月)。全職種平均の1.18倍と比べて2倍以上の水準です。1人の保育士に対して2件以上の求人がある計算になります。
出典:こども家庭庁「保育人材の確保のための総合的な対策」(2025年10月27日 保育人材確保に関する検討会資料)/原典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
また、一度保育士を辞めた人のうち59.0%が「雇用の条件さえ合えば、働きたい又は保育の仕事に転職したい」と答えています。辞めることは、保育士を永久にやめることを意味しません。
復職する場合の希望条件は「勤務時間(1日)」73.8%、「給与等(年収)」69.0%、「通勤時間(片道)」61.6%、「勤務日数(週)」57.3%の順でした。条件を決めてから探せば、選べる立場にあります。
在職中に情報収集を始めておけば、収入を途切れさせずに動くことができます。
よくある質問
Q. 年度途中で辞めるのは無責任でしょうか?
A. 保育の現場には「年度末まで」という慣行があり、実際に多くの人がそれに合わせて動きます。ただし、心身に不調が出ている場合は別です。実際に辞めた人の20.6%が「健康上の理由(体力含む)」を挙げています。無理をして体を壊せば、次の職場を選ぶ体力も失われます。退職の申し出時期は就業規則で確認し、難しければ労働基準監督署などの窓口に相談してください。
Q. 人間関係が理由だと、面接で不利になりますか?
A. 実際に辞めた人の1位が人間関係(31.5%)である以上、珍しい話ではありません。ただし前職の批判に聞こえる伝え方は避け、「どういう環境なら力を発揮できるか」に言い換えるのが定石です。なお保育士が職場選択時に重視する項目の2位も「職場の人間関係」(51.9%)なので、面接で職場の雰囲気について質問すること自体は自然です。
Q. 給料の安さだけで辞めるのは甘えでしょうか?
A. 甘えではありません。働き続けるために充実を希望する項目の1位は「給与」で79.4%、職場に改善を希望する項目の1位も「給与・賞与等の改善」62.7%です。8割近くが同じことを望んでいます。ただしデータ上、給料を理由に実際に辞めた人は22.1%にとどまります。多くは園を変えることで対応しています。まず「辞める」より「移る」を検討してください。
迷ったらここ
「給料が安い」と「人間関係」を分けて、どちらで動くかを決める
辞めたい理由の1位は給料61.6%。ところが実際に辞めた人の理由の1位は人間関係31.5%で、給料は3位に下がります。不満を生むものと、人を辞めさせるものは別でした。
- 給料が理由なら、いまの給与明細の内訳(基本給と各手当)を把握しているか
- 人間関係が理由なら、園長・主任が代わる可能性はあるか
- 次の園で、職員の直近1年の入れ替わりを聞けるか
まとめ
- 保育士として働く人の78.7%は今後も続けたいと答えている。辞めたいと考えるのは21.3%
- 辞めたい理由の1位は「給料が安い」61.6%、2位「仕事量が多い」54.0%
- しかし実際に辞めた人の1位は「職場の人間関係」31.5%。給料は22.1%で3位に落ちる
- 給料への不満は抱えたまま働ける。人間関係は抱えたままでいられない——自分の理由がどちらかを切り分ける
- 満足度が低いのは給与だけ。人間関係・やりがいは約7割〜7割台半ばが満足。「仕事は好きなのに続けられない」はデータと一致する
- 保育士の有効求人倍率は2.42倍(全職種1.18倍)。辞めた人の59.0%が条件次第で復職したいと答えている
- ハラスメントは一人で抱えず、総合労働相談コーナーなどの公的窓口へ
あなたの理由が給料なら「移る」で、人間関係なら「離れる」で解決する可能性があります。データはその2つをはっきり区別しています。まず、自分がどちらなのかを決めるところから始めてください。

