30秒でわかるまとめ
- 保育士1年目と2年目の差は賞与に集中しています厚生労働省の調査では、経験0年の月給差は38,600円ですが、年間賞与の差は740,500円あるのです。
- 1年を越えると増えるのは主に賞与のほうです経験0年から1〜4年になると年収は668,600円増えますが、その80.6%は賞与の増加が占めます。
- 新人が学ぶ機会を用意することは施設の義務になっています児童福祉施設の運営基準第7条の2第2項は、研修の機会確保を施設の義務としています。
- 有給休暇は入職6か月で発生する権利です労働基準法上、入職から6か月で10日の有給休暇が発生し、困ったときは総合労働相談コーナーに相談できます。
※「辞めたい」と思う理由の全体像(辞めたい理由と実際に辞めた理由で順位が入れ替わること)は「保育士を辞めたい」と思ったら|辞めたい理由の1位は給料61.6%。でも実際に辞めた人の1位は違いましたで扱っています。この記事は1年目に限った話だけを扱います。

1年目に足りないのは、月給ではありません
まず数字から確認します。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年調査、2026年3月24日公表)は、職種ごとの給与を経験年数階級別にも出しています。保育士はこうなっています。
| 経験年数 | 所定内給与額(月額) | 年間賞与その他特別給与額 | 労働者数 |
|---|---|---|---|
| 0年 | 240,600円 | 107,400円 | 16,080人 |
| 1〜4年 | 251,400円 | 646,400円 | 58,490人 |
| 5〜9年 | 268,900円 | 776,500円 | 64,640人 |
| 10〜14年 | 280,200円 | 849,800円 | 47,310人 |
| 15年以上 | 306,500円 | 1,116,700円 | 104,990人 |
| 経験年数計 | 279,200円 | 847,900円 | 291,510人 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第14表・企業規模計(10人以上)・男女計。労働者数は原表の「十人」単位を人数に換算(編集部)。所定内給与額には超過労働給与額(残業代)は含まれません
2つの列を、経験年数計と比べます。
| 比較 | 経験0年 | 経験年数計 | 差 |
|---|---|---|---|
| 所定内給与額(月額) | 240,600円 | 279,200円 | 38,600円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 107,400円 | 847,900円 | 740,500円 |
出典:同調査より編集部が算出
月給の差は38,600円ですが、賞与の差は740,500円あります。1年目に周囲との差が大きいのは、毎月の給料ではなく、年に1〜2回まとまって出るほうです。
なお、経験0年の労働者数は16,080人。保育士全体291,510人の5.5%にあたります。いま同じ年に保育士になった人が、全国に1万6千人います。
この賞与の差がなぜ生まれるのかは、調査の表に説明がありません。本記事では理由を推測せず、数字の形だけを示します。

賞与か、毎月の賃金か、という点には制度の側にも決まりがあります。改善見込額の2分の1以上を基本給や毎月の手当で改善することは保育士の処遇改善手当はいくらか|令和7年度から一本化されましたで扱っています。
最初の1年を越えると、増えるのは賞与のほうです
もう一段はっきりするのが、経験0年から経験1〜4年に移るときの動き方です。
| 項目 | 経験0年 | 経験1〜4年 | 増加 |
|---|---|---|---|
| 所定内給与額(月額) | 240,600円 | 251,400円 | +10,800円 |
| 同上を12か月に換算 | 2,887,200円 | 3,016,800円 | +129,600円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 107,400円 | 646,400円 | +539,000円 |
| 年間の合計 | 2,994,600円 | 3,663,200円 | +668,600円 |
出典:同調査より編集部が算出。所定内給与額×12+年間賞与で計算しています。所定内給与額には残業代が含まれないため、この合計は実際の年収より低く出ます。ここでは「差の内訳」を見るためだけに使っています
668,600円の増加のうち、539,000円が賞与です。割合にして80.6%。
つまり1年目と2年目以降の差は、毎月の手取りではなく賞与に集まっています。毎月の給与明細を見て「1年働いてもほとんど変わらない」と感じるのは、数字の上でもそのとおりです。変わるのは、月々の明細ではないところです。

家に持ち帰った作業も、同じように園の側の責務から考えられます。国のガイドラインが使用者に始業と終業の記録を求めていることは保育士の持ち帰り仕事|労働時間かどうかは指示で決まりますで扱っています。
「教わっていない」は、園の側に義務がある話です
ここからは、お金以外の話をします。
1年目のつらさの多くは「できない」の形をとります。段取りが分からない、行事の準備が読めない、保護者への言い方が分からない。これを自分の適性の問題として受け取ってしまう人が多いのですが、制度はそう組み立てられていません。
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第7条の2は、2つの項に分かれています。
| 項 | 誰に向けられているか | 条文 | 強さ |
|---|---|---|---|
| 第1項 | 職員 | 常に自己研鑽に励み、必要な知識及び技能の修得、維持及び向上に努めなければならない | 努力義務 |
| 第2項 | 施設 | 職員に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保しなければならない | 義務 |
出典:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第7条の2
職員の側は「努めなければならない」、施設の側は「確保しなければならない」。語尾が違います。
研修の中身や回数までは省令に書かれていないので、「研修がないから違法だ」と言い切ることはできません。ただし研修の機会を用意することが施設の義務として置かれていることは、条文からそのまま読めます。
この記事で言いたいのは、努力が要らないということではありません。「まだ教わっていないこと」と「自分が身につけていないこと」は別で、前者は制度上あなただけの課題ではない、ということです。
雇入れ時の教育には、8つの中身が決まっています
入職直後については、もう1つ具体的な条文があります。
労働安全衛生法 第59条第1項「事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。」
その「厚生労働省令で定めるところ」が、労働安全衛生規則 第35条第1項です。遅滞なく教育を行うこととし、内容を8つ挙げています。
| 号 | 教育の内容 |
|---|---|
| 第1号 | 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法 |
| 第2号 | 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法 |
| 第3号 | 作業手順に関すること |
| 第4号 | 作業開始時の点検に関すること |
| 第5号 | 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防 |
| 第6号 | 整理、整頓及び清潔の保持に関すること |
| 第7号 | 事故時等における応急措置及び退避に関すること |
| 第8号 | 前各号のほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項 |
出典:労働安全衛生規則 第35条第1項
第3号の「作業手順」、第5号の「疾病の原因及び予防」、第7号の「事故時等における応急措置」。1年目がいちばん不安に感じるところが、そのまま並んでいます。
ただし同条第2項に例外があります。「前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。」
新卒1年目がこの例外にあたる場面は多くないはずです。入職時にこの8項目がどこまで説明されたかは、思い出しておく価値があります。
保育の仕事そのものの手順として、指導計画に何を書くよう保育所保育指針が定めているかは保育士の指導案の書き方|指針が設定を求めるのは「ねらい及び内容」。書式の定めはありませんで扱っています。
6か月が過ぎると、制度の上で変わることがあります
1年目のつらさは、いつでも同じ濃さで続くわけではありません。制度の側にも、時期で切り替わるものがあります。
労働基準法 第39条第1項が、その代表です。
「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」
| 時期 | 制度の上で起きること | 根拠 |
|---|---|---|
| 入職時 | 雇入れ時の安全衛生教育(8項目) | 労働安全衛生法 第59条第1項/労働安全衛生規則 第35条第1項 |
| 6か月経過 | 全労働日の8割以上出勤していれば年次有給休暇10日が発生 | 労働基準法 第39条第1項 |
| 1年6か月経過 | 継続勤務年数1年ごとに日数が加算される | 同 第39条第2項 |
| 在職中いつでも | 研修の機会の確保は施設の義務 | 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第7条の2第2項 |
出典:各法令。年次有給休暇の日数は所定労働日数が少ない場合に比例付与となる定めがあります(労働基準法 第39条第3項)
「1年間は休めない」と思い込んでいる人がいますが、条文上は6か月です。入職が4月なら10月には10日が発生している計算になります。取れるかどうかは職場の状況によりますが、権利として発生している事実は変わりません。
1年目のうちに、外の窓口を知っておいてください
ここまでは制度の話です。ただ、制度を知っていても状況が動かないことはあります。そのときのために、園の外に無料で使える公的な窓口があります。
- 総合労働相談コーナー(都道府県労働局) — 労働時間、休憩、賃金、休暇、退職など職場のトラブル全般。予約不要・無料。https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト/厚生労働省) — 電話・SNS・メールの相談窓口が案内されています。https://kokoro.mhlw.go.jp/
使うときのために、1つだけ準備しておくと違います。日付と、その日にあったことを1行だけ書き残しておくことです。「つらい」だけでは相談が進みませんが、「◯月◯日、◯◯と言われた」があれば、話が具体的になります。
職員どうしの関係そのものについては、法律が事業主に措置義務を課している部分があります。その条文は保育士の人間関係に疲れたら|それは法律上、事業主が対処すべきことですで扱っています。
よくある質問
Q. 1年で辞めたら、次の就職に不利になりますか。
A. 本記事では、勤続年数と採用結果の関係を示す公的なデータを確認できませんでした。したがって有利・不利のどちらとも書きません。確認できることとして、保育士が実際に辞めた理由の順位は「辞めたい理由」の順位と入れ替わることが調査に出ています。詳しくは「保育士を辞めたい」と思ったらで扱っています。
Q. 1年目は有給休暇を取れないと言われました。
A. 労働基準法 第39条第1項は、雇入れの日から6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日の年次有給休暇を与えなければならないと定めています。「1年目は取れない」という制度上の定めは条文にありません。ただし、実際に取得できるかは職場の運用の問題です。取り扱いに疑問があるときは、上の総合労働相談コーナーで相談できます。
Q. 研修がまったくないのですが、これは違反ですか。
A. 本記事では「違反である」とは書きません。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第7条の2第2項は「研修の機会を確保しなければならない」と定めていますが、回数や内容までは書かれていないため、個別の状況が基準を満たすかどうかは本記事では判断できません。一方、労働安全衛生法 第59条第1項の雇入れ時教育は「行なわなければならない」と明記され、規則第35条第1項に8つの内容が列挙されています。この8項目について説明を受けたかどうかは、確認する価値があります。
迷ったらここ
園に用意する義務があるものを、先に数えてみる
1年目の「できない」は、制度上あなただけの課題ではありません。研修の機会の確保は施設の義務(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第7条の2第2項)、雇入れ時の教育も8項目が省令に列挙されています。まず、どこまで用意されているかを確かめてください。
- 入職時に雇入れ時教育の8項目(作業手順・疾病の予防・事故時の応急措置ほか)の説明があったか
- 研修の機会は年に何回あるか(回数と内容は省令に定めがないので、園ごとに違う)
- 6か月経過後の年次有給休暇10日はどう扱われているか(労働基準法 第39条第1項)
まとめ
- 経験0年の所定内給与額は240,600円。経験年数計との差は38,600円だが、年間賞与の差は740,500円
- 経験0年から1〜4年への増加668,600円のうち、539,000円(80.6%)が賞与。月給の増加は年に換算して129,600円
- 同じ年に保育士になった人は16,080人。保育士全体の5.5%
- 研修の機会の確保は施設の義務(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第7条の2第2項)。職員側の第1項は努力義務で、語尾が違う
- 雇入れ時の教育は義務(労働安全衛生法 第59条第1項)。作業手順・疾病の予防・事故時の応急措置を含む8項目が省令に列挙されている
- 年次有給休暇は6か月で10日(労働基準法 第39条第1項)。「1年目は取れない」という条文はない
1年目がつらいのは、たいてい自分の適性の問題として片づけられます。けれど数字の上で他と違うのは賞与で、制度の上では教える義務が園の側に置かれています。いま自分にできないことのうち、どれが「まだ教わっていないこと」なのか。それを数えるところまでで、1年目の仕事としては十分です。

