30秒でわかるまとめ
- 保健師の月給は、年齢では一直線に上がりません30代前半で9,300円下がる区間があり、経験年数で見ると10〜14年でもう一度下がります
- 統計の保健師に、行政で働く人はほとんどいないとみられます賃金統計に載る保健師は15,060人。実際に働く保健師63,536人の4分の1にも届きません
- 分布の真ん中は334,200円で、平均より低い水準です平均の所定内給与額340,400円より6,200円低く、平均は上振れした人に引っ張られています
- 看護師との給与差は、比べ方によって変わります平均どうしでは7,200円差ですが、真ん中どうしの中位数で比べると12,700円まで広がります
※この統計の「保健師」15,060人は、行政(市区町村・保健所・都道府県)で働く保健師をほとんど含まないと考えられます。その理由と、平均年収551.4万円という数字の読み方は保健師になるには|国家試験を2つ通す必要がありますで扱っています。この記事は平均ではなく、年齢・経験年数・分布を扱います。

行政で働く保健師が何をしているのかは、統計ではなく条文に書かれています。保健所と市町村保健センターで根拠条文がどう違うのかは保健師の仕事内容|地域保健法の14事業と、母子保健法の5か条ですで扱っています。
先に前提:この15,060人は「行政以外」が中心です
賃金構造基本統計調査(令和7年調査、2026年3月24日公表)の職種小分類には「保健師」があります。ただし、この調査に載っている保健師は15,060人です。
一方、令和6年衛生行政報告例による就業保健師は63,536人。そのうち市区町村が33,217人(52.3%)を占めます。賃金統計の15,060人は、就業保健師全体の4分の1にも届きません。
この差の意味(賃金統計が行政の保健師をほとんど拾っていないと考えられること)は保健師になるにはで扱いました。本記事の数字は、病院・診療所・事業所・介護保険施設など、行政以外で働く保健師の姿だと理解してください。行政の保健師を志望する場合は、自治体の給与条例・給料表が参照先になります。

ここが本題:年齢では一直線に上がりません
年齢階級別に並べます。
| 年齢階級 | 所定内給与額(月額) | 年間賞与その他特別給与額 | 労働者数 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 273,500円 | 309,700円 | 600人 |
| 25〜29歳 | 300,500円 | 976,400円 | 1,630人 |
| 30〜34歳 | 291,200円 | 1,003,600円 | 1,830人 |
| 35〜39歳 | 340,900円 | 1,275,400円 | 2,310人 |
| 40〜44歳 | 339,900円 | 1,145,500円 | 2,000人 |
| 45〜49歳 | 348,700円 | 1,206,200円 | 2,850人 |
| 50〜54歳 | 366,700円 | 1,154,000円 | 1,860人 |
| 55〜59歳 | 427,100円 | 1,718,400円 | 1,490人 |
| 60〜64歳 | 327,600円 | 1,666,800円 | 470人 |
| 65〜69歳 | 249,000円 | 655,500円 | 10人 |
| 年齢計 | 340,400円 | 1,181,800円 | 15,060人 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第5表/企業規模計(10人以上)/男女計/産業計。労働者数は原表の「十人」単位を人数に換算(編集部)。19歳以下と70歳以上は原表で「-」
下がっている場所が2か所あります。
| 区間 | 所定内給与額の動き |
|---|---|
| 25〜29歳 → 30〜34歳 | 300,500円 → 291,200円(9,300円の低下) |
| 35〜39歳 → 40〜44歳 | 340,900円 → 339,900円(1,000円の低下) |
| 55〜59歳 → 60〜64歳 | 427,100円 → 327,600円(99,500円の低下) |
出典:同調査より編集部が算出
60代の低下は定年後の再雇用が想定されるので、ここでは置いておきます。問題は30代前半です。20代後半にいったん300,500円まで上がったあと、30〜34歳で291,200円まで戻ります。
この理由は調査資料に書かれていません。本記事では推測しません。読み取れるのは、「年齢が上がれば自動的に金額が上がる職種ではない」という形だけです。
もう1つ、年齢とともに動く幅も見ておきます。20〜24歳の273,500円から55〜59歳の427,100円まで、差は153,600円。同じ調査で准看護師の年齢階級別の動きを扱った記事もあります。准看護師の年収は427.5万円|看護師との差97.2万円は「年齢のせい」ではありませんを参照してください。

経験年数で見ると、10〜14年でもう一度下がります
同じ調査は経験年数階級別の表も出しています。ここでも同じことが起きます。
| 経験年数 | 所定内給与額(月額) | 年間賞与その他特別給与額 | 労働者数 |
|---|---|---|---|
| 0年 | 269,900円 | 106,200円 | 720人 |
| 1〜4年 | 303,000円 | 1,119,800円 | 2,200人 |
| 5〜9年 | 333,800円 | 1,226,200円 | 3,550人 |
| 10〜14年 | 317,200円 | 1,023,900円 | 3,100人 |
| 15年以上 | 382,000円 | 1,407,800円 | 5,490人 |
| 経験年数計 | 340,400円 | 1,181,800円 | 15,060人 |
出典:同調査(職種)第14表/企業規模計(10人以上)/男女計。経験年数は勤続年数ではなく、その職種の経験年数です
経験5〜9年から10〜14年にかけて、こう動きます。
- 所定内給与額:333,800円 → 317,200円(16,600円の低下)
- 年間賞与:1,226,200円 → 1,023,900円(202,300円の低下)
- 月給の低下を12か月ぶんに換算すると199,200円。賞与の低下と合わせると年401,500円ぶんの差になります
年齢でも経験年数でも、途中で下がる区間があります。そして下がり方は賞与のほうが大きい。この職種の年収を読むときに、いちばん注意すべき点です。
ただし、これは同じ人を追いかけた数字ではありません。ある一時点で、経験10〜14年の人たちの平均がこうだった、というだけです。個人の給与が10年目に下がるという意味ではありません。
分布で見る:中位数は334,200円
平均は、高い人に引っ張られます。分布特性値を見ると位置がはっきりします。
| 指標 | 所定内給与額 | 意味 |
|---|---|---|
| 第1・十分位数 | 257,800円 | 下から10%の位置 |
| 第1・四分位数 | 287,300円 | 下から25%の位置 |
| 中位数 | 334,200円 | ちょうど真ん中 |
| 第3・四分位数 | 378,900円 | 上から25%の位置 |
| 第9・十分位数 | 439,200円 | 上から10%の位置 |
| (参考)平均の所定内給与額 | 340,400円 | 第1表・第5表の平均値 |
出典:同調査(職種)第17表/企業規模計(10人以上)/男女計。平均値は同調査 第1表
中位数334,200円は、平均340,400円より6,200円低い位置にあります。平均を上回っている人は、半数より少ないということです。
階級別の人数も、そのことを示しています。いちばん人数が多いのは280,000〜299,900円の階級で2,330人。中位数が入る320,000〜339,900円の階級(1,830人)より多くなっています。
求人票の金額を評価するときは、この5つの数字と突き合わせるのがいちばん早い方法です。287,300円を下回れば下位4分の1、378,900円を上回れば上位4分の1です。
看護師との差は、平均で見るか中位数で見るかで変わります
同じ調査の看護師・准看護師と、2つの指標で並べます。
| 職種 | 平均の所定内給与額 | 中位数 |
|---|---|---|
| 保健師 | 340,400円 | 334,200円 |
| 看護師 | 333,200円 | 321,500円 |
| 准看護師 | — | 269,900円 |
出典:平均は同調査 第1表、中位数は同 第17表。いずれも企業規模計(10人以上)・男女計。准看護師の平均は准看護師の年収は427.5万円で扱っているため、ここでは中位数のみ掲載しています
差を計算します。
- 平均の所定内給与額:340,400円 − 333,200円 = 7,200円
- 中位数:334,200円 − 321,500円 = 12,700円
真ん中どうしで比べたほうが、差は5,500円ぶん大きく出ます。平均だけを見て「保健師と看護師はほとんど変わらない」と判断すると、実態より差を小さく見積もることになります。
ただし忘れないでください。これは行政以外で働く保健師の数字です。行政保健師を目指すなら、比べる相手はこの表ではなく、志望する自治体の給料表です。
金額のほかに、その職場が何をしているのかも確かめられます。事業場の取組がどこまで進んでいるかを聞く意味と、指針が挙げる外部機関は産業看護師のやりがい|指針が期待する役割は書いてありますで扱っています。
この数字を求人選びにどう使うか
1. 提示額を5つの分位と突き合わせる
257,800円/287,300円/334,200円/378,900円/439,200円。この5つを覚えておけば、提示された金額が全体のどのあたりかがすぐ分かります。平均340,400円だけを基準にすると、実際より厳しく評価してしまいます。
2. 年齢の階級ではなく、金額そのもので比べる
30代前半で下がる区間がある以上、「自分の年齢の平均」を基準にすると判断がぶれます。分位のほうが安定した物差しになります。
3. 賞与が何か月分かを確認する
経験5〜9年から10〜14年で、月給より賞与のほうが大きく減っていました(202,300円)。賞与は職場と年によって動く部分です。月給だけでなく、賞与の実績を年数分たずねてください。
4. 行政か民間かを先に決める
この記事の数字は民間側です。行政保健師は自治体の給与条例で決まり、採用も競争試験です。制度の違いは保健師になるには|国家試験を2つ通す必要がありますで扱っています。
5. 産業保健を考えるなら、看護師との立場の違いも見ておく
事業所で働く保健師は5,045人。労働安全衛生法が保健指導の担い手として名指ししているのは「医師又は保健師」で、看護師は入っていません(同法 第66条の7第1項)。同じ職場に看護師がいても、法令上の位置づけは別です。その違いは産業看護師の仕事内容|看護師を名指しした条文は省令の2か所だけですで扱っています。
よくある質問
Q. 保健師の平均年収はいくらですか。
A. 本記事では年収の平均値を扱っていません。賃金構造基本統計調査から試算した551.4万円という数字は保健師になるにはで扱っており、そこでも「行政の保健師をほとんど含まないと考えられる」という前提を付けています。本記事は月額の所定内給与額と分布だけを扱いました。年収で比べたい場合は、賞与の実績を職場ごとに確認する必要があります。
Q. 30代前半で下がるのはなぜですか。
A. 調査資料に理由の記載がないため、本記事では書きません。この統計は同じ人を追跡したものではなく、一時点での年齢階級別の平均です。年齢構成、勤務先の種類、勤務形態などが階級ごとに違う可能性がありますが、この調査からは切り分けられません。
Q. 男女で差はありますか。
A. 本記事では男女別の数値を扱っていません。本記事が使った第5表・第14表・第17表はいずれも男女計で読んでいます。男女別を扱う場合は同じ表の男・女の欄を取り直す必要があり、労働者数が少ない階級では数値が出ない(原表で「-」となる)ことにも注意が必要です。
迷ったらここ
提示額は平均ではなく、5つの分位と突き合わせる
平均340,400円を基準にすると、実際より厳しく評価してしまいます。中位数は334,200円で、平均より6,200円低い位置にあります。287,300円を下回れば下位4分の1、378,900円を上回れば上位4分の1です。
- 提示された所定内給与額は中位数334,200円を上回るか
- 賞与は何か月分か(経験5〜9年から10〜14年で202,300円減っている階級がある)
- 行政か民間か(この統計の15,060人は行政の保健師をほとんど含まないと考えられる)
まとめ
- 年齢では一直線に上がらない。25〜29歳300,500円 → 30〜34歳291,200円で9,300円の低下。35〜39歳 → 40〜44歳でも1,000円下がる
- 経験年数でも同じ。5〜9年333,800円 → 10〜14年317,200円で16,600円の低下。賞与は202,300円減る
- 中位数は334,200円で、平均340,400円より6,200円低い。第1・四分位287,300円、第3・四分位378,900円
- 看護師との差は平均で7,200円、中位数で12,700円。指標によって5,500円ぶん見え方が変わる
- この統計の保健師15,060人は行政以外が中心。行政志望なら自治体の給料表を見る
覚えておく数字を1つに絞るなら、平均ではなく中位数334,200円にしてください。平均は、上に引っ張られた数字です。

