訪問介護、移動コストを報酬に反映する案 戸建ては82.1%が自動車

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目次

30秒でわかるまとめ

  • 訪問介護の移動コストを、報酬で評価し直す案が出ました厚生労働省が10月19日の介護給付費分科会に示しました。いまの同一建物減算に代えて、報酬区分を見直す案です。
  • 戸建住宅の利用者は、82.1%が自動車で訪問されています集合住宅の利用者は、徒歩が46.4%、自動車が34.4%でした。国の調査研究事業の速報値で、2026年7月時点です。
  • 徒歩中心の事業所は、片道の移動時間の中央値が1.0分です徒歩の利用者が少ない事業所では10.0分でした。利用者1人の1か月の延べ訪問回数の中央値は、66.0回と9.0回です。
  • 72.2%の事業所が、介護職員が不足していると答えました「やや不足している」と「大幅に不足している」の合計で、別の調査研究事業の速報値です。回答は516事業所でした。

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厚生労働省は10月19日、社会保障審議会の介護給付費分科会に、2027年度の介護報酬改定に向けた訪問介護の論点と対応案を示した。柱の1つは、ヘルパーが利用者の家まで移動する手間やコストを、報酬でどう評価するかである。集合住宅にまとめて訪問する事業所と、戸建ての家を車で回る事業所とで、移動の実態が大きく違うことを示すデータも出た。訪問介護で働く人、これから働く人に向けて整理する。

減算に代わる報酬区分を検討する案

資料はまず、訪問介護には集合住宅などへの訪問のように1回あたりの移動のコストが少なく効率的に運営できる場合がある一方で、地域の事情でやむを得ず移動距離がかかり、運営が非効率にならざるを得ない場合もある、と課題を挙げた。

そのうえで対応案として、「移動等のコストを踏まえた適切な評価を行うとともに、事業所の規模、1回当たりの移動コストの低さ、サービス提供回数の多さに着目し、現行の減算による評価に代えて、移動コストやサービス提供の実態をより適切に反映した報酬区分の見直しを検討してはどうか」と示した。

いまの仕組みでは、事業所と同じ敷地や隣の敷地にある建物に住む利用者などへの訪問は、報酬が減らされる。いわゆる同一建物減算で、2024年度の改定後は、同一敷地内・隣接敷地内の建物の利用者が10%減算、そのうち1月あたり50人以上の場合が15%減算、それ以外の建物で1月あたり20人以上の場合が10%減算となっている。さらに、正当な理由なく前6月間の提供総数の90%以上が同一敷地内などの利用者向けだった場合は12%減算になる。今回の案は、この減算による評価の仕方そのものを見直す方向である。新しい区分の中身や単位数は、資料には書かれていない。

ちはる

移動の手間がかかる訪問の報酬が、上がるということですか。

熊先生

まだ案の段階で、新しい区分の単位数は示されていないよ。

ちはる

減算で調整していたやり方を、区分ごと組み直すかもしれないんですね。

戸建ては自動車、集合住宅は徒歩

根拠として示されたのは、2026年度の老人保健健康増進等事業「訪問介護サービスの提供形態に応じた評価のあり方に関する調査研究事業」の速報値である。2026年7月時点の利用者について、住まいの形と訪問の手段を集計している。

主な訪問手段戸建住宅集合住宅
自動車82.1%34.4%
徒歩1.3%46.4%
電動アシスト自転車10.2%10.4%
バイク・原付4.7%2.5%

出典:厚生労働省 第271回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1(2026年度老人保健健康増進等事業の速報値。利用者数の割合。主な手段のみ抜粋)

戸建住宅の利用者では、主な訪問手段の82.1%が自動車だった。集合住宅では徒歩が46.4%で、自動車の34.4%を上回る。資料は、居住形態によって移動手段が明確に分かれていたとしている。なお、この調査の集合住宅には、集合住宅のほか有料老人ホーム、ケアハウス・軽費老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅が含まれる。

住まいと事業所の位置関係も違う。集合住宅の利用者では、事業所と同一または隣接する敷地内に住む人の割合が43.2%で、戸建住宅の利用者(1.7%)を大きく上回った。独居の割合も、集合住宅では82.0%と、戸建住宅の51.4%より高い。

片道の移動は中央値1.0分と10.0分

同じ調査は、事業所ごとに「徒歩でサービスを提供する利用者の割合」を出し、その割合で事業所を3つに分けて比べている。徒歩の利用者が95%以上の事業所(大多数が徒歩)と、5%未満の事業所(徒歩が少ない)とで、数字は大きく分かれた。

事業所から利用者の家までの片道の移動時間は、徒歩が大多数の事業所では5分未満が81.8%で、中央値は1.0分だった。徒歩が少ない事業所の中央値は10.0分である。片道の移動距離では、徒歩が大多数の事業所は1km未満が93.0%で中央値0.1km、徒歩が少ない事業所は4km以上が43.2%で中央値3.1kmだった。

徒歩が大多数の事業所では、利用者の住まいは有料老人ホームが58.9%、サービス付き高齢者向け住宅が29.5%で、83.9%が事業所と同一・隣接の敷地内に住んでいた。

訪問回数の中央値は66.0回と9.0回

利用者1人あたりの1か月の延べ訪問回数の中央値は、徒歩が大多数の事業所で66.0回、徒歩が少ない事業所で9.0回だった。資料はこれを約7倍としている。1か月の延べ訪問時間の中央値は1,350分と480分で約2.8倍、1か月の請求単位数の中央値は15,027.0単位と3,339.0単位で約4.5倍だった。

徒歩が大多数の事業所では、夜間・早朝加算(47.8%)や深夜加算(24.1%)の算定割合も、ほかの区分より大幅に高い。集合住宅にまとまって住む利用者に、短い移動で何度も訪問している姿が数字から見える。

訪問回数・訪問時間・請求単位数は利用者1人あたりの中央値で、事業所1か所あたりの数字ではない。また、いずれも調査研究事業の速報値である。

ちはる

同じ訪問介護でも、働き方がまるで違いそうですね。

熊先生

片道の移動の中央値は、1.0分と10.0分に分かれていたね。

熊先生

戸建住宅の利用者は、82.1%が自動車で訪問されていたよ。

ちはる

車で回る職場か、建物の中を回る職場かは、応募前に知っておきたいです。

減算ありの収支差率は11.5%

資料には、同一建物減算の算定の有無別に、2024年度決算の収支差率を比べた表も載っている。介護事業経営調査委員会(2025年11月26日)の資料を手直ししたものである。訪問介護の全体は9.6%で、10%減算を算定している事業所は11.5%(回答109)、減算なしは10.0%(回答453)、12%減算は7.7%(回答62)だった。

委員の意見としては、収支差率9.6%という全国平均だけを見て経営が安定していると判断すべきではない、という声や、同一建物・集合住宅の利用者割合が高い事業所は収支が良い傾向が見られるため、訪問の手間などを踏まえた公平な評価の在り方を検討すべきだ、という声が整理されている。ヘルパーの移動時間の評価が非常に重要なポイントだとする意見もあった。

中山間・人口減少地域で戸別に訪問する事業所の移動コストや、利用者の事情による突然のキャンセルへの対応は、別の論点として示された。人口減少・サービス需要の変化に応じた提供体制を扱う回で、説明と議論をする予定とされている。

サービス提供責任者の訪問も評価する案

人手の面では、2026年度の老人保健健康増進等事業「中山間・人口減少地域における訪問介護のサービス提供体制確保のあり方に関する調査研究事業」の速報値も示された。介護職員の採用充足度は、「やや不足している」が48.8%、「大幅に不足している」が23.4%で、合わせて72.2%だった(n=516事業所)。サービスに関連して発生する業務では、「利用者宅を訪問した際に不在だった場合の安否確認」が44.6%、「訪問や送迎時の長距離・悪路・雪道の運転」が38.6%だった。

サービス提供責任者(サ責)の負担を軽くする対応案も出た。いまの初回加算は、サ責が初回の訪問やその月のサービス提供をした場合などに算定でき、算定率は52.0%である。対応案は、新たに訪問介護計画を作るためにサ責が利用者を訪問してアセスメントをした場合も評価の対象にすることを検討するとした。訪問介護員が利用者の家にいる間に、サ責がオンラインで利用者と面談や状況確認をした場合も評価できる仕組みを検討する。同一法人以外の定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所と連携して、日中の随時訪問をする場合の評価も検討するとしている。

ちはる

移動の評価がどう決まるかで、事業所の働き方も変わっていきそうです。

ちはる

まずは応募先の移動の手段と、移動時間の扱いを確かめてみます。

迷ったらここ

移動の扱いを聞く

訪問介護の働き方は、戸建ての家を回るのか、集合住宅の中を回るのかで大きく変わります。応募先では次の点を聞いておくと比べやすくなります。

  • 主な移動手段は車・自転車・徒歩のどれか
  • 移動時間が勤務時間や賃金にどう含まれるか
  • 1日に何件くらい訪問するか
  • 利用者は戸建てと集合住宅のどちらが多いか
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編集部の見方:移動は仕事の一部

ここからは編集部の見方である。今回のデータは、同じ「訪問介護」という名前の仕事でも、集合住宅の中を短い移動で何度も回る働き方と、戸建ての家を車で回る働き方の2つがはっきり分かれていることを示している。移動の手間を報酬にどう映すかは、事業所の経営だけでなく、ヘルパーの1日の組み立てにもかかわる。

ただし、今回示されたのは見直しの方向で、新しい報酬区分の形や単位数はまだ分からない。中山間地域の移動コストも別の回で議論される。報酬が固まるまでの間、働く側が確かめられるのは、応募先の移動の実態と、移動時間がどう扱われているかである。ヘルパーが受けるハラスメントの実態は訪問介護のハラスメントの記事で、改定に向けた賃上げの議論は介護17団体の調査の記事で整理している。

出典

一次資料

編集部メモ

  • 移動コストを踏まえた報酬区分の見直しは、分科会の資料に示された対応案です。新しい区分の形や単位数は資料に書かれていません。分科会での議論の中身は、この記事に反映していません。
  • 訪問手段・移動時間・訪問回数などのデータは、2026年度の老人保健健康増進等事業の速報値です(2026年7月時点・7月サービス提供分)。訪問回数・訪問時間・請求単位数は利用者1人あたりの中央値です。
  • 「徒歩が大多数の事業所」「徒歩が少ない事業所」は、徒歩でサービスを提供する利用者の割合が95%以上の事業所と5%未満の事業所です。
  • 収支差率の表は2024年度決算で、減算の算定状況は2025年4月の給付実績によるものです。回答数が10未満の区分は表に載っていません。
  • 同一建物減算の区分は2024年度改定後のもので、6月29日の分科会(第259回)の資料を今回の資料に再び載せたものです。
  • 採用充足度と関連業務の調査は、訪問手段の調査とは別の調査研究事業です。
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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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