30秒でわかるまとめ
- 看護助手の腰の負担には、国の指針が事業者の対策を書いています平成25年に改訂された腰痛予防対策指針は、医療機関などでの介護・看護作業に別の項を設けています。
- 全介助の人の抱上げは、原則として人力で行わせないとしています移乗・入浴・排泄の介助で、全介助の人にはリフト等を積極的に使い、座位や立位が取れる人には別の用具も検討します。
- 腰痛の健康診断は、配置の際と6月以内ごとに1回です介護・看護作業など腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する人が対象で、医師による健康診断とされています。
- 災害性腰痛は、保健衛生業が2,320件で最も多い業種です休業4日以上の件数で、令和7年の全業種6,613件のうち35.1%です。社会福祉施設や医療保健業を含む業種区分です。
※看護助手の仕事の範囲は看護助手の仕事内容、夜勤の制度は看護師の夜勤がきついときで扱っています。

先に断ります:この記事が扱うのは「体の負担」です
「看護助手がきつい」という言葉には、いろいろな中身が入ります。この記事は、そのうち体への負担、とくに腰の負担だけを扱います。
扱うのは、国がどんな対策を定め、事業者に何を求めているかです。続けるか辞めるかを決める記事ではありません。腰の痛みについて、診断や治療の助言もしません。
材料は厚生労働省の資料2つです。腰痛予防の通達と指針(平成25年6月18日)と、業務上疾病の統計(令和7年)です。

数字で見る:災害性腰痛は、保健衛生業が2,320件
厚生労働省の業務上疾病の統計は、休業4日以上の業務上の疾病を、業種別・疾病別に数えています。
| 業種 | 令和7年 | 令和6年 |
|---|---|---|
| 保健衛生業 | 2,320件 | 2,251件 |
| 商業・金融・広告業 | 1,316件 | 1,170件 |
| 製造業(小計) | 889件 | 854件 |
| 運輸交通業 | 783件 | 734件 |
| 全業種の合計 | 6,613件 | 6,291件 |
出典:厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査」令和7年 第1表・令和6年 第1表(業種別・疾病別)。「負傷に起因する疾病」のうち腰痛(災害性腰痛)の欄。休業4日以上。令和7年の数字は令和7年中に発生し、令和8年4月7日までに把握したもの
令和7年の災害性腰痛のうち、保健衛生業は2,320件で、表の業種の中で最も多くなっています。全業種6,613件に占める割合は35.1%です(2,320÷6,613、編集部算出)。
保健衛生業の中で見ると、業務上疾病は新型コロナウイルスのり患によるものを除いて3,238件で、そのうち2,320件、71.6%が災害性腰痛でした(2,320÷3,238、編集部算出)。表には「負傷によらない業務上の腰痛」という別の欄もあり、保健衛生業は7件です。
読むときの注意が2つあります。
- 業種の数字で、職種の数字ではありません。厚生労働省の腰痛予防のページは、保健衛生業を「社会福祉施設や医療保健業が含まれる保健衛生業」と説明しています。看護助手だけの件数は、この表からは分かりません。
- 休業4日以上の件数です。休業が4日に満たなかった腰痛は、この数に入っていません。
平成25年の通達も、改訂の理由に「社会福祉施設をはじめとする保健衛生業においては、最近の10年間で発生件数が2.7倍に増加している」ことを挙げ、「引き続き、腰痛予防対策の推進は重要な課題である」としています(基発0618第1号 本文、原文どおり)。腰の負担は、個人の体力の話としてではなく、業種の課題として通達に書かれています。

保健衛生業の災害性腰痛は、指針が改訂された平成25年の1,328件から令和7年の2,320件まで、約1.7倍になっています。介護の現場から見た指針の読み方と年ごとの推移は介護職が腰痛で続けられないとき|保健衛生業の災害性腰痛は、指針改訂の年から約1.7倍に増えていますで扱っています。
指針は、職種ではなく作業で対象を決めています
「職場における腰痛予防対策指針」は、平成25年6月18日付けの厚生労働省労働基準局長の通達(基発0618第1号)で改訂されたものです。一般的な対策を示したうえで、腰痛の発生が比較的多い5つの作業について、別紙で対策を示しています。その4つめが「福祉・医療分野等における介護・看護作業」です。
別紙のこの項は、こう始まります。
「高齢者介護施設・障害児者施設・保育所等の社会福祉施設、医療機関、訪問介護・看護、特別支援学校での教育等で介護・看護作業等を行う場合には、重量の負荷、姿勢の固定、前屈等の不自然な姿勢で行う作業等の繰り返しにより、労働者の腰部に過重な負担が持続的に、又は反復して加わることがあり、これが腰痛の大きな要因となっている。」
出典:職場における腰痛予防対策指針(平成25年6月18日 基発0618第1号 別添)別紙「作業態様別の対策」IV(原文どおり)
この文は「看護師」「看護助手」といった職種名を使っていません。医療機関で介護・看護作業等を行う場合という、作業の書き方です。病棟で移乗や入浴、排泄の介助をしているかどうかが、この項を読むときの入口になります。
この文のすぐ後には「このため、事業者は、次の対策を講じること。」と続きます。対策を講じる主語は事業者です。
なお、指針は法律の条文ではなく、通達で示されたものです。通達は「周知・指導に当たっては、この通達の解説部分(参考を除く。)は、本文と一体のものとして取り扱われたい。」としています(同通達 本文、原文どおり)。
ここが本題:人力による人の抱上げは、原則として行わせない
別紙IVは、作業姿勢・動作の見直しの最初に「抱上げ」を置いています。
「移乗介助、入浴介助及び排泄介助における対象者の抱上げは、労働者の腰部に著しく負担がかかることから、全介助の必要な対象者には、リフト等を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱上げは行わせないこと。また、対象者が座位保持できる場合にはスライディングボード等の使用、立位保持できる場合にはスタンディングマシーン等の使用を含めて検討し、対象者に適した方法で移乗介助を行わせること。」
出典:同指針 別紙IVの3の(3)のイ(原文どおり)
場面は、移乗介助、入浴介助、排泄介助と名指しされています。
福祉用具を使えずに、人力で抱え上げざるを得ない場合についても書かれています。対象者の状態や体重等を考慮し、「できるだけ適切な姿勢にて身長差の少ない2名以上で作業すること」。さらに、労働者の数を必要数確保して適正に配置し、「負担の大きい業務が特定の労働者に集中しないよう十分配慮すること」とされています(同 別紙IVの3の(4))。
指針の順番は、まず福祉用具、使えない場合は2名以上です。一人で抱え上げる形は、この組み立ての中には出てきません。
福祉用具・ベッド・作業標準:職場の側で整えるもの
抱上げ以外にも、別紙IVは事業者が整えるものを並べています。
| 項目 | 指針の内容(要約) |
|---|---|
| 福祉用具の利用 | 福祉用具(機器・道具)を積極的に使用すること |
| 不自然な姿勢 | ベッドの高さ調節、位置や向きの変更、作業空間の確保、スライディングシート等の活用により、前屈やひねり等の姿勢を取らせないようにすること |
| 作業標準 | 対象者ごとに、かつ、移乗、入浴、排泄、おむつ交換、食事、移動等の介助の種類ごとに策定し、定期的及び対象者の状態が変わるたびに見直すこと |
出典:同指針 別紙IVの3の(2)・(3)のロ・(5)
ベッドについては、とくに具体的に書かれています。
「特に、ベッドサイドの介護・看護作業では、労働者が立位で前屈にならない高さまで電動で上がるベッドを使用し、各自で作業高を調整させること。」
出典:同指針 別紙IVの3の(3)のロ(原文どおり)
リフト、スライディングシート、電動で上がるベッド。どれも、働く人の我慢ではなく職場の設備と手順の話として書かれています。
腰痛の健康診断は、配置の際と6月以内ごとに1回です
指針の本文は、健康管理の最初に健康診断を置いています。
「重量物取扱い作業、介護・看護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、次のとおり医師による腰痛の健康診断を実施すること。」
出典:同指針 4の(1)(原文どおり)
| 時期 | 主な項目(要約) |
|---|---|
| 配置前 | 既往歴(腰痛に関する病歴及びその経過)及び業務歴の調査、自覚症状の有無の検査、脊柱の検査、神経学的検査、脊柱機能検査 |
| 定期 | 既往歴及び業務歴の調査、自覚症状の有無の検査。医師が必要と認める者には、脊柱の検査・神経学的検査を追加 |
出典:同指針 4の(1)のイ・ロ
健康診断の後についても書かれています。事業者は結果について医師から意見を聴取し、必要があると認めるときは、作業方法等の改善、作業時間の短縮等、就労上必要な措置を講ずることとされています(同 4の(1)のハ)。
腰痛で休んだ人が戻るときも同じです。指針は「腰痛は再発する可能性が高いため」として、事業者は産業医等の意見を十分に尊重し、作業方法、作業時間等について就労上必要な措置を講じ、休業者等が復帰時に抱く不安を十分に解消することとしています(同 4の(3))。
教育は、配置の際と、その後必要に応じて
「重量物取扱い作業、同一姿勢での長時間作業、不自然な姿勢を伴う作業、介護・看護作業、車両運転作業等に従事する労働者については、当該作業に配置する際及びその後必要に応じ、腰痛予防のための労働衛生教育を実施すること。」
出典:同指針 5の(1)(原文どおり)
教育の項目は、腰痛の発生状況及び原因、腰痛発生要因の特定及びリスクの見積り方法、腰痛発生要因の低減措置、腰痛予防体操の4つです(同 5の(1))。
解説部分は、さらに「重量物取扱い作業と介護・看護作業については、腰部に著しく負担のかかる作業のため、定期的に教育を実施していく。」としています(同指針 解説「5 労働衛生教育等」について、原文どおり)。
別紙IVには、腰痛を有する労働者や、腰痛による休業から職場復帰する労働者を組織的に支援できる協力体制を整えること、職場ごとに腰痛予防のための指針やマニュアル等を作成することも挙がっています(同 別紙IVの3の(9))。
職場の外にある窓口
指針は事業者に向けて書かれたものです。職場で相談しても動かないときに使える公的な窓口があります。
- 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内など)。あらゆる分野の労働問題を対象とし、予約不要・無料です。総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
腰の痛みやしびれが続くときは、医療機関を受診してください。この記事は診断や治療の助言をしません。
この記事が扱っていないこと
- 看護助手の業務の範囲や、配置の基準、賃金。関連記事で扱っており、本記事では繰り返していません。
- 夜勤の負担や、人間関係などの「きつさ」。本記事は体の負担(腰)に絞っています。
- 腰痛が労災保険の対象になるかどうかの基準。認定の基準は別の通達の領域で、本記事は取得していません。
- 職種別の腰痛の件数。統計は業種別で、看護助手だけの件数は取得していません。
- 個々の病院がリフト等をどれだけ備えているか。全国の整備状況の統計は取得していません。
- 腰痛の診断・治療・セルフケアの方法。医学的な助言は扱っていません。
看護助手として職場で確認できること
- 病棟にリフト等があり、全介助の移乗で使われているか。指針は全介助の必要な対象者にリフト等を積極的に使用するとしています。
- スライディングボード等、スライディングシート等、電動で上がるベッドがあるか。座位保持ができる人の移乗、前屈やひねりを避ける工夫、ベッドサイドの作業について、指針が挙げているものです。
- 人力で抱え上げる場面は2名以上になっているか。負担の大きい業務が特定の人に集中していないかも、指針が挙げる点です。
- 腰痛の健康診断を、配置の際と6月以内ごとに1回受けているか。
- 配置の際に腰痛予防の教育を受けたか。移乗、入浴、排泄など介助の種類ごとに作業標準が決められているかも確かめられます。
よくある質問
Q. 看護助手も腰痛予防対策指針の対象ですか。
A. 指針の別紙IVは、職種名ではなく「医療機関」などで「介護・看護作業等を行う場合」と、作業で対象を書いています。移乗、入浴、排泄の介助などを行っているかどうかが目安になります。個々の職場の判断は本記事ではしていません。
Q. 人を一人で抱え上げるように言われます。指針はどう書いていますか。
A. 全介助の必要な対象者にはリフト等を積極的に使用し、原則として人力による人の抱上げは行わせないこととしています。福祉用具の使用が困難で人力で抱え上げざるを得ない場合も、できるだけ適切な姿勢にて身長差の少ない2名以上で作業すること、とされています(別紙IVの3の(3)のイ・(4))。
Q. 腰痛の健康診断はいつ受けるものですか。
A. 介護・看護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者について、当該作業に配置する際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、医師による腰痛の健康診断を実施することとされています(指針 4の(1))。
Q. 指針は法律ですか。守られていないときはどうすればいいですか。
A. 法律の条文ではなく、平成25年6月18日付けの厚生労働省労働基準局長の通達(基発0618第1号)で示された指針です。職場で相談しても改善しないときは、総合労働相談コーナーに相談できます。
迷ったらここ
看護助手の腰の負担は指針で確かめる
国の腰痛予防対策指針は、全介助の人にはリフト等を積極的に使用し、原則として人力による人の抱上げは行わせないとしています。設備と手順があるかどうかは、職場選びの段階から確かめられます。
- 移乗の介助にリフト等やスライディングボード等があり、実際に使われているか
- 腰痛の健康診断が、配置の際と6月以内ごとに1回行われているか
- 配置の際に腰痛予防の教育があり、介助の種類ごとに作業標準が決められているか
まとめ
看護助手の「きつい」のうち腰の負担について、国は平成25年改訂の職場における腰痛予防対策指針で、医療機関などでの介護・看護作業に別の項を設け、事業者が講じる対策を並べています。
中心は、全介助の必要な対象者にはリフト等を積極的に使用し、原則として人力による人の抱上げは行わせないことです。人力しかない場面でも2名以上とされています。腰痛の健康診断は配置の際と6月以内ごとに1回、教育は配置の際とその後必要に応じて行うこととされています。
令和7年の休業4日以上の災害性腰痛は、保健衛生業が2,320件で、全業種6,613件のうち35.1%でした。腰の負担は、我慢で乗り切るものとしてではなく、職場の設備と手順で減らすものとして指針に書かれています。

