30秒でわかるまとめ
- 自治体の保健師の採用は、競争試験が原則です人事委員会を置く地方公共団体では、職員の採用は競争試験による、と地方公務員法第17条の2にあります。
- 規則で定める場合は、選考による採用もできます選考は競争試験以外の能力の実証に基づく試験です。人事委員会を置かない団体では、競争試験又は選考と並べて書かれています。
- 試験を行う機関は、人事委員会か任命権者です人事委員会を置かない団体では任命権者が行います。他の地方公共団体の機関と共同で行うこともできます。
- 採用は全て条件付で、6月の勤務を経て正式になりますその間の職務を良好な成績で遂行したときに正式な採用となり、期間は1年を超えない範囲で延長できます。
※保健師の免許を受けるまでの道筋は保健師になるには、給与の統計は保健師の年収で扱っています。

まず前提:地方公務員法は「保健師」を名指ししていません
都道府県や市町村に職員として採用される保健師は、地方公務員です。採用のルールは地方公務員法に書かれています。
ただし、地方公務員法の条文に「保健師」という語は1度も出てきません。保健師だけの特別な採用ルールが法律にあるわけではなく、事務職や技術職と同じ「職員」の採用の条文が、そのまま保健師にも当てはまります。
出発点は第15条です。
「職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならない。」
出典:地方公務員法(昭和25年法律第261号。e-Gov法令API 法令ID 325AC0000000261)第15条(原文どおり)
「任用」には採用・昇任・降任・転任が含まれます(第15条の2第1項)。採用も「能力の実証」に基づいて行う、というのが法律の根本の考え方です。

ここが本題:採用は競争試験が原則、選考も書かれています
採用の方法は、第17条の2が定めています。第1項と第2項で、書き方が違います。
「人事委員会を置く地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験によるものとする。ただし、人事委員会規則(競争試験等を行う公平委員会を置く地方公共団体においては、公平委員会規則。以下この節において同じ。)で定める場合には、選考(競争試験以外の能力の実証に基づく試験をいう。以下同じ。)によることを妨げない。」
出典:地方公務員法 第17条の2第1項(原文どおり)
「人事委員会を置かない地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験又は選考によるものとする。」
出典:地方公務員法 第17条の2第2項(原文どおり)
| 団体 | 採用の方法 | 根拠 |
|---|---|---|
| 人事委員会を置く地方公共団体 | 競争試験が原則。人事委員会規則(または公平委員会規則)で定める場合は選考も妨げない | 第17条の2第1項 |
| 人事委員会を置かない地方公共団体 | 競争試験又は選考 | 第17条の2第2項 |
出典:地方公務員法 第17条の2第1項・第2項
第1項は「競争試験によるものとする」と書いたうえで、選考を「ただし」で置いています。第2項は、競争試験と選考を「又は」で並べています。同じ公務員の採用でも、人事委員会があるかどうかで、条文上の原則の書き方が変わります。
「選考」も試験の一種として定義されている点に注意が要ります。条文の言葉では「競争試験以外の能力の実証に基づく試験」です。

人事委員会があるかどうかは、団体の種類で決まります
人事委員会・公平委員会の置き方は、第7条が定めています。
| 団体 | 置く委員会 | 根拠 |
|---|---|---|
| 都道府県、指定都市 | 条例で人事委員会を置く | 第7条第1項 |
| 指定都市以外の市で人口15万以上のもの、特別区 | 条例で人事委員会又は公平委員会を置く | 第7条第2項 |
| 人口15万未満の市、町、村、地方公共団体の組合 | 条例で公平委員会を置く | 第7条第3項 |
出典:地方公務員法 第7条第1項〜第3項
人事委員会の仕事には、「職員の競争試験及び選考並びにこれらに関する事務を行うこと」が入っています(第8条第1項第6号)。
公平委員会を置く団体でも、条例で定めるところにより、公平委員会に競争試験と選考の事務を行わせることができます(第9条第1項)。この公平委員会を、法律は「競争試験等を行う公平委員会」と呼んでいます(同条第2項)。第17条の2第1項のかっこ書きに出てくるのは、この委員会です。
都道府県・指定都市は人事委員会を置く団体です。それ以外の市区町村は、人口の区分と条例の定め方によって変わります。受けたい自治体がどちらに当たるかは、その自治体の条例で確かめることになります。
試験を行うのは「人事委員会等」です
第17条の2第3項は、人事委員会を置かない団体では任命権者を当てはめ、両方を合わせて「人事委員会等」と呼ぶと定めています。そのうえで、第18条がこう書いています。
「採用のための競争試験(以下「採用試験」という。)又は選考は、人事委員会等が行うものとする。ただし、人事委員会等は、他の地方公共団体の機関との協定によりこれと共同して、又は国若しくは他の地方公共団体の機関との協定によりこれらの機関に委託して、採用試験又は選考を行うことができる。」
出典:地方公務員法 第18条(原文どおり)
| 団体 | 採用試験・選考を行う機関 |
|---|---|
| 人事委員会を置く団体 | 人事委員会 |
| 人事委員会を置かない団体 | 任命権者 |
| 協定を結んだ場合 | 他の地方公共団体の機関と共同して行う、または国・他の地方公共団体の機関に委託して行うこともできる |
出典:地方公務員法 第17条の2第3項、第18条
任命権者の例として、第6条第1項は地方公共団体の長、議会の議長、教育委員会などを挙げています。
採用試験の公開については、第18条の2に一文があります。
「採用試験は、人事委員会等の定める受験の資格を有する全ての国民に対して平等の条件で公開されなければならない。」
出典:地方公務員法 第18条の2(原文どおり)
第18条の3は、試験機関に属する者その他職員が、受験を阻害し、又は受験に不当な影響を与える目的で特別若しくは秘密の情報を提供してはならないとしています。
受験資格は「最少かつ適当な限度」の要件です
受験資格の決め方は、第19条の一文だけです。
「人事委員会等は、受験者に必要な資格として職務の遂行上必要であつて最少かつ適当な限度の客観的かつ画一的な要件を定めるものとする。」
出典:地方公務員法 第19条(原文どおり)
受験資格を定めるのは人事委員会等で、法律が書いているのは要件の性質です。「職務の遂行上必要」「最少かつ適当な限度」「客観的かつ画一的」の3つの条件が並んでいます。年齢や免許などを受験資格としてどう書くかは、法律ではなく、試験を行う側が定めます。
これとは別に、法律が直接定めている欠格条項があります。第16条は、次のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができないとしています。
| 号 | 欠格条項 |
|---|---|
| 第1号 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者 |
| 第2号 | 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者 |
| 第3号 | 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第60条から第63条までに規定する罪を犯し、刑に処せられた者 |
| 第4号 | 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者 |
出典:地方公務員法 第16条第1号〜第4号
採用試験と選考は、同じものを判定します
採用試験の目的は第20条第1項、選考の目的は第21条の2第1項にあり、判定するものは同じ言葉で書かれています。その職の職制上の段階の標準的な職に係る「標準職務遂行能力」と、その職についての「適性」を有するかどうかを、正確に判定することです。
| 比べる点 | 採用試験(競争試験) | 選考 |
|---|---|---|
| 判定するもの | 標準職務遂行能力と適性(第20条第1項) | 標準職務遂行能力と適性(第21条の2第1項) |
| 方法 | 筆記試験その他の人事委員会等が定める方法(第20条第2項) | — |
| 合格した後 | 人事委員会を置く団体では、試験ごとに採用候補者名簿を作り、合格点以上を得た者の氏名及び得点を記載する。任命権者は、提示された名簿に記載された者の中から採用する(第21条第1項〜第3項) | 任命権者が、人事委員会等の行う選考に合格した者の中から採用する(第21条の2第2項) |
出典:地方公務員法 第20条、第21条第1項〜第3項、第21条の2第1項・第2項
第21条の2第3項には、もう1つ定めがあります。人事委員会等は、その職に採用候補者名簿がなく、人事行政の運営上必要であると認める場合、国又は他の地方公共団体の採用試験又は選考に合格した者を、その職の選考に合格した者とみなすことができます。
「合格」と「採用」は、条文の上で別の段階です。合格した人の中から、任命権者が採用するという順番になっています。
採用は全て条件付です
採用された後にも、条文上の段階があります。第22条です。
「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。」
出典:地方公務員法 第22条(前段、原文どおり)
同じ条の後段で、人事委員会等は、規則で定めるところにより、条件付採用の期間を1年を超えない範囲内で延長することができるとされています。
第29条の2第1項は、条件附採用期間中の職員(第1号)とこれに対する処分について、第27条第2項、第28条第1項から第3項まで、第49条第1項及び第2項並びに行政不服審査法の規定を適用しないと定めています。これらの職員の分限については、条例で必要な事項を定めることができます(同条第2項)。
会計年度任用職員は、別の定めです。一会計年度を超えない範囲内で置かれる非常勤の職を占める職員の採用も、競争試験又は選考によるとされています(第22条の2第1項)。この職員には、第22条の「六月」を「一月」と読み替えます(同条第7項)。
この記事が扱っていないこと
- 個々の自治体の試験科目、倍率、日程、年齢などの受験資格。自治体ごとに人事委員会等が定めるもので、国の資料にまとまっていません。本記事は取得していません。
- 各自治体の人事委員会規則・条例の中身。どの場合に選考によるか、条件付採用期間の延長の手続などは、規則・条例の領域です。本記事は取得していません。
- 自治体で働く保健師だけの人数。総務省「地方公共団体定員管理調査結果」(令和7年4月1日現在)の職種別職員数は、「保健師・助産師」を1つの区分で集計しています。保健師だけの人数は載っていないため、数字は書いていません。
- 国家公務員として働く保健師の採用。国家公務員法の領域で、本記事は取得していません。
- 給与の額と、自治体での仕事の中身。給与の統計は保健師の年収、仕事の根拠条文は保健師の仕事内容で扱っています。
- 民間の予備校などが出している試験対策の情報。一次資料ではないため使っていません。
行政保健師を目指すときに確認できること
- 受けたい自治体に人事委員会があるか。都道府県・指定都市は人事委員会を置きます。それ以外は第7条の区分と条例によります。
- 募集が「採用試験」か「選考」か。どちらも能力の実証に基づく試験で、判定するものは標準職務遂行能力と適性です。
- 受験資格として何が定められているか。定めるのは人事委員会等です(第19条)。募集要項で確認します。
- 常勤の募集か、会計年度任用職員の募集か。条件付採用の期間が6月と1月で違います。
- 欠格条項に当たらないか。第16条の4つの号と、条例で定める場合の扱いです。
よくある質問
Q. 保健師の公務員試験は、法律でどう決まっていますか。
A. 地方公務員法 第17条の2第1項により、人事委員会を置く地方公共団体では職員の採用は競争試験によるものとされ、人事委員会規則で定める場合は選考によることも妨げないとされています。人事委員会を置かない団体では、競争試験又は選考によります(同条第2項)。保健師だけを対象にした条文はありません。
Q. 「選考」は試験ではないのですか。
A. 第17条の2第1項は、選考を「競争試験以外の能力の実証に基づく試験」と定義しています。判定するのは、採用試験と同じく標準職務遂行能力と適性です(第21条の2第1項)。
Q. 採用試験は誰が行いますか。
A. 第18条により人事委員会等が行います。人事委員会を置かない団体では任命権者です。協定により、他の地方公共団体の機関と共同して、又は国・他の地方公共団体の機関に委託して行うこともできます。
Q. 受験できる年齢や試験科目は、法律に書いてありますか。
A. 書かれていません。第19条は、人事委員会等が「職務の遂行上必要であつて最少かつ適当な限度の客観的かつ画一的な要件」を定めるとしています。試験の方法も、筆記試験その他の人事委員会等が定める方法です(第20条第2項)。具体的な内容は、受けたい自治体の募集要項で確認してください。
Q. 採用されたら、すぐに正式な採用になりますか。
A. 第22条により、採用は全て条件付です。6月の期間を勤務し、その間の職務を良好な成績で遂行したときに正式なものとなります。期間は1年を超えない範囲内で延長することができます。会計年度任用職員は1月です(第22条の2第7項)。
迷ったらここ
保健師の採用は地方公務員法で決まる
自治体の保健師の採用は、人事委員会を置く団体では競争試験が原則で、人事委員会規則で定める場合は選考によることもできます。採用は全て条件付で、6月の勤務を経て正式なものになります。
- 募集が採用試験か選考か(第17条の2)
- 受験資格として定められた要件(第19条)
- 常勤か会計年度任用職員か、条件付採用の期間(第22条・第22条の2)
まとめ
自治体の保健師の採用は、地方公務員法の「職員」の採用の条文で決まります。人事委員会を置く団体では競争試験が原則で、人事委員会規則で定める場合は選考によることもできます。人事委員会を置かない団体では、競争試験又は選考です(第17条の2)。
試験を行うのは人事委員会等(人事委員会、または置かない団体では任命権者)で、共同や委託も認められています(第18条)。受験資格も人事委員会等が定め、法律は「最少かつ適当な限度」の要件であることを求めています(第19条)。
採用は全て条件付で、6月の勤務を経て正式なものになります(第22条)。個々の自治体の試験の中身は、その自治体の募集要項で確かめることになります。

