30秒でわかるまとめ
- 給食施設の栄養士の献立作成は、目標の設定から始まります通知は、利用者の状況を把握し、その情報に基づき給与栄養量の目標を設定して計画を作る順番を示しています。
- 献立で配慮する事項は、通知に5つ並んでいます身体の状況、日常の食事の摂取量に占める給食の割合、嗜好等、料理の組合せ、食品の組合せです。
- 推定エネルギー必要量は、給食管理で参照する値です食事摂取基準はそう位置づけたうえで、摂取状況と体格の変化を定期的に把握するよう求めています。
- 目標と提供量のずれだけで、過不足とは判断しません行政の評価の留意点として、給与栄養目標量の設定が適切かを併せて確かめることが重要とされています。
※管理栄養士がどの給食施設に置かれるかは管理栄養士の仕事内容、乳児向けの献立は離乳食の献立の作り方で扱っています。

まず前提:献立の書き方は、通知の別添2に書かれています
特定給食施設の設置者は、健康増進法施行規則 第9条の基準に従って栄養管理を行います(各号の中身は給食委託の栄養士の仕事内容で扱っています)。その運用上の留意点をまとめたのが、厚生労働省の通知「特定給食施設における栄養管理に関する指導・支援等について」(令和2年3月31日 健健発0331第2号)の別添2「特定給食施設が行う栄養管理に係る留意事項について」です。
通知の本文は、この通知が地方自治法の技術的助言であると付け加えています。法令の条文そのものではありません。厚生労働省の法令等データベースで、本記事の作成時点で改正の記載がないことを確かめています。
この記事は、別添2と、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書から、献立を作る前と後に何をするかを原文で拾います。コツは、この2つの資料に書かれている事柄だけで組みます。

ここが本題:献立の前に「給与栄養量の目標」を決めます
別添2の第2の1は、献立より先に、次の2つを置いています。
「利用者の性、年齢、身体の状況、食事の摂取状況、生活状況等を定期的に把握すること。」
出典:厚生労働省「特定給食施設が行う栄養管理に係る留意事項について」(令和2年3月31日付け健健発0331第2号別添2)第2の1⑴(原文どおり)
「⑴で把握した情報に基づき給与栄養量の目標を設定し、食事の提供に関する計画を作成すること。」
出典:同 第2の1⑵(原文どおり)
順番は把握 → 目標の設定 → 計画です。そのあとに第2の1⑶が、計画に基づき「食材料の調達、調理及び提供を行うこと」と続きます。
把握のしかたについて、⑴のなお書きは「可能な限り、給食以外の食事の状況も把握するよう努めること」としています。給食の中だけを見て目標を決める書き方ではありません。
利用者の差が大きいときは、献立ごとに目標を置きます
「なお、利用者間で必要な栄養量に差が大きい場合には、複数献立の提供や量の調整を行う等、各利用者に対して適切な選択肢が提供できるよう、工夫すること。複数献立とする場合には、各献立に対して給与栄養量の目標を設定すること。」
出典:同 第2の1⑵なお書き(原文どおり)
献立を2つにするなら、目標も2つです。1つの目標を平均して置く書き方にはなっていません。

目標の値:推定エネルギー必要量は「給食管理」で参照する値です
給与栄養量の目標をどの値で置くかについて、食事摂取基準(2025年版)のエネルギーの章は、活用上の注意のまとめでこう書いています。
「推定エネルギー必要量は、主として給食管理において参照すべき値である。この場合でも、給食の目的は推定エネルギー必要量を提供することに終わるものではない。摂取状況と体格の変化を定期的に把握し、適切なエネルギーを摂取できるように努めなければならない。」
出典:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 エネルギー 4-5 活用上の注意(まとめ)(原文どおり)
同じ節の直前は、エネルギーの過不足の判定と管理には推定エネルギー必要量は用いず、体重の変化を用いることが望ましいとしています。目標を置くときの参照値と、過不足を判定する物差しが、別のものとして書かれています。
推定エネルギー必要量の年齢別の値は、同じ報告書の参考表にあります。本記事では数値を転載していません。
献立で配慮する事項は、5つ書かれています
別添2の第2の2は、献立そのものについての項です。
「給食の献立は、利用者の身体の状況、日常の食事の摂取量に占める給食の割合、嗜好等に配慮するとともに、料理の組合せや食品の組合せにも配慮して作成するよう努めること。」
出典:同 別添2 第2の2⑴(原文どおり)
| 配慮する事項 | 読み方 |
|---|---|
| 利用者の身体の状況 | 第2の1⑴で定期的に把握したもの |
| 日常の食事の摂取量に占める給食の割合 | 1日の食事のうち、給食がどれだけを占めるか |
| 嗜好等 | 「等」がついており、嗜好に限らない書き方 |
| 料理の組合せ | 「にも配慮して」と、上の3つに加えて書かれている |
| 食品の組合せ | 同上 |
出典:同 第2の2⑴。読み方の欄は編集部が条文の書き方を整理したもの
語尾は「作成するよう努めること」です。
選べる献立では「モデル的な組合せ」を示します
「複数献立や選択食(カフェテリア方式)のように、利用者の自主性により料理の選択が行われる場合には、モデル的な料理の組合せを提示するよう努めること。」
出典:同 第2の2⑵(原文どおり)
利用者が選ぶ形式では、献立を作る側の仕事に組合せの見本を見せることが加わります。
栄養素は、満たしにくいものに合わせて組んでよいとされています
食事摂取基準(2025年版)の総論は、複数の栄養素を一度に扱う食事の計画について、こう書いています。
「食事摂取基準では複数の栄養素に対して基準が策定されているため、最も満たすことが難しい基準に合わせて食事を計画する(食品を組み合わせる)場合、比較的基準を満たしやすい他の栄養素の摂取量が推奨量を大きく上回る可能性がある。このような場合、摂取量が耐容上限量に近いほどの多さでない限り、そのまま食事を提供して問題ない。」
出典:同報告書 総論 4-3 指標別に見た活用上の留意点(原文どおり)
同じ節は、活用の狙いを「エネルギー摂取の過不足を防ぐこと、栄養素の摂取不足を防ぐことを基本とし、生活習慣病等の発症・重症化予防を目指すことになる」としています。目標量については「短期間に強く管理するものではなく、長期間(例えば、生涯)を見据えた管理が重要である」とあります。
総論の結びの概要は、食事摂取基準で示される摂取量を習慣的な摂取量としたうえで、「原則として、1皿、1食、1日、数日間等の短期間での管理を前提としたものではないため、これらに用いる場合には注意を要する。」としています。
出典:同報告書 総論 4-3、総論〈概要〉(原文どおり)
1食ごと・1日ごとに全部の栄養素をそろえる前提ではない、というのが報告書の書き方です。優先の順番は、エネルギーの過不足、栄養素の不足、生活習慣病等の予防です。
栄養計算の注意:食品成分表の版で結果がずれます
総論 4-2-6 は、献立からエネルギー及び栄養素の給与量を推定する際には、食品成分表を用いて栄養計算を行うと書き、我が国の唯一の公的な食品成分表を日本食品標準成分表2020年版(八訂)としています。
そのうえで、総論 5-2 活用上の課題がこう注意しています。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)で示された基準値と、日本食品標準成分表(八訂)を用いて栄養計算を行った結果を比較する際には、測定法の違いによる誤差が発生することがあり、注意が必要である。」
出典:同報告書 総論 5-2 活用上の課題(原文どおり)
理由として報告書は、策定の根拠とした研究論文の多くが、旧来の測定法(日本食品標準成分表(七訂)以前に採用されていた測定法)による値で栄養計算をしていると考えられることを挙げています。計算結果が基準値にぴったり合うかどうかだけで判断しない、という注意です。
作った後:食べた量と体の変化で、計画を直します
別添2の第2の1⑷は、提供した後の手順です。
「⑶で提供した食事の摂取状況を定期的に把握するとともに、身体状況の変化を把握するなどし、これらの総合的な評価を行い、その結果に基づき、食事計画の改善を図ること。」
出典:同 別添2 第2の1⑷(原文どおり)
続く⑸は、提供エネルギー量の評価には「個々人の体重、体格の変化並びに肥満及びやせに該当する者の割合の変化を参考にすること」としています。食事摂取基準の総論 4-1 も、食事改善への活用はPDCAサイクルに基づく活用を基本とするとしています。
集団で体重を見るときの計画について、総論 4-4-3-3 は、BMIが目標とする範囲内に留まっている者の割合を増やすことを目的として計画を立て、数か月間(少なくとも1年以内)に2回以上体重を測定し、その変化を指標として用いる計画を立てる、としています。
行政が施設を見るときの留意点にも、献立が出てきます
同じ通知の別添1は、保健所などが施設を指導・評価するときの留意点です。そこに次のなお書きがあります。
「なお、提供栄養量の評価に当たっては、身体状況等の変化から給与栄養目標量の設定が適切であるかの確認を併せて行うことが重要であり、単に施設が設定した目標量と提供量が乖離していることをもって不足又は過剰と判断することは適切ではないこと。」
出典:同通知 別添1 第2の2⑷なお書き(原文どおり)
続く⑸のただし書きは、利用者の多くに栄養管理上の課題が見受けられる場合には「基本となる献立(個別対応用に展開する前の献立)に課題がある可能性が高い」としています。
目標と提供量のずれより先に、目標そのものが合っているかを見る。多くの人に課題があれば、基本の献立に戻る。行政向けの留意点ですが、献立を作る側の見直しの順番としても読めます。
この記事が扱っていないこと
- 推定エネルギー必要量や各栄養素の年齢別の値。報告書の数値表は転載していません。
- 栄養管理の基準の各号の文言。給食委託の栄養士の仕事内容で扱っています。
- 特定給食施設に当たる食数や、管理栄養士の配置の線。管理栄養士の仕事内容で扱っています。
- 衛生管理と食物アレルギーの対応。大量調理施設衛生管理マニュアル、保育園の食物アレルギー対応をご覧ください。
- 児童福祉施設・学校・病院の献立に固有の通知や基準。本記事は取得していません。
献立を作る栄養士が確認できること
- 給与栄養量の目標が書面で置かれているか。別添2は、把握した情報に基づき目標を設定し、計画を作るとしています。
- 複数献立なら、献立ごとに目標があるか。第2の1⑵のなお書きの定めです。
- 給食以外の食事の状況をつかむ手段があるか。可能な限り把握するよう努める、とされています。
- 体重や体格の変化を記録しているか。提供エネルギー量の評価に参考にするものとして挙げられています。
- 栄養計算に使う食品成分表の版は何か。八訂で計算した結果と基準値の比較には、誤差への注意が書かれています。
よくある質問
Q. 献立を作る前に、何を決めればよいですか。
A. 別添2は、利用者の性、年齢、身体の状況、食事の摂取状況、生活状況等を把握し、その情報に基づき給与栄養量の目標を設定して、食事の提供に関する計画を作成するとしています。
Q. 目標のエネルギー量は、推定エネルギー必要量をそのまま使えばよいですか。
A. 食事摂取基準(2025年版)は、推定エネルギー必要量を主として給食管理において参照すべき値としつつ、給食の目的はそれを提供することに終わるものではなく、摂取状況と体格の変化を定期的に把握するよう求めています。
Q. すべての栄養素を毎食そろえる必要がありますか。
A. 報告書は、摂取量の基準が原則として1皿、1食、1日、数日間等の短期間での管理を前提としたものではないとしています。最も満たすことが難しい基準に合わせて計画し、他の栄養素が推奨量を大きく上回っても、耐容上限量に近いほどでなければそのまま提供して問題ない、とも書いています。
Q. 選択食の献立では何をしますか。
A. 別添2は、利用者の自主性により料理の選択が行われる場合には、モデル的な料理の組合せを提示するよう努めることとしています。
Q. 計算上の提供量が目標とずれていたら、不足ですか。
A. 通知の別添1は、目標量と提供量が乖離していることだけをもって不足又は過剰と判断することは適切ではなく、目標量の設定が適切かを併せて確認することが重要としています。
迷ったらここ
献立の決め方を職場で確かめる
厚生労働省の通知は、利用者の状況を把握し、その情報に基づき給与栄養量の目標を設定してから食事の提供に関する計画を作る順番を示しています。
- 給与栄養量の目標が書面で置かれているか
- 複数献立なら、献立ごとに目標があるか
- 体重や体格の変化を記録し、計画の見直しに使っているか
まとめ
厚生労働省の通知の別添2は、献立の前に利用者の把握と給与栄養量の目標の設定を置いています。複数献立なら、目標も献立ごとです。
献立では、身体の状況、日常の食事の摂取量に占める給食の割合、嗜好等、料理の組合せ、食品の組合せに配慮するよう努めることとされ、選択食ではモデル的な組合せを示します。
食事摂取基準(2025年版)は、推定エネルギー必要量を給食管理で参照する値とし、過不足は体重の変化で見るとしています。栄養素は満たしにくいものに合わせて組んでよく、1食・1日単位の管理は前提としていません。提供した後は、摂取状況と身体状況の変化から計画を直します。

