30秒でわかるまとめ
- 保育士の指導案は、指針では「指導計画」と呼ばれています保育所保育指針は、長期的な指導計画と短期的な指導計画を作成しなければならないと定めています。
- 指針が設定を求めるのは、具体的なねらい及び内容ですあわせて、ねらいが達成されるよう適切な環境を構成し、子どもが主体的に活動できるようにすることを求めています。
- 「予想される子どもの活動」は、解説に出てくる言葉です解説は、ねらいと内容・環境・予想される子どもの活動・保育士等の援助などを考えて作成するとしています。
- 書式は決まっておらず、園の工夫に委ねられています解説は、個別やクラスなど必要な指導計画を、書式も含めて工夫して作成することを求めています。
※指導案を持ち帰って書く時間の扱いは保育士の持ち帰り仕事、1年目のつらさは保育士1年目がつらいときで扱っています。

まず根拠:保育の内容は「指針に従う」と省令にあります
保育所の保育の内容のよりどころは、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第35条です。
「保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とし、その内容については、内閣総理大臣が定める指針に従う。」
出典:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(e-Gov法令API 法令ID 323M40000100063)第35条(原文どおり)
この「指針」が保育所保育指針です。指針の第1章の冒頭は、自らの位置づけをこう書いています。
「この指針は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号。以下「設備運営基準」という。)第35条の規定に基づき、保育所における保育の内容に関する事項及びこれに関連する運営に関する事項を定めるものである。」
出典:保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)第1章(原文どおり)
現行の指針は平成29年3月31日に公示され、平成30年4月1日から適用されています。
編集部が指針と、国の「保育所保育指針解説」のPDFの全文を機械的に検索したかぎり、「指導案」という語は出てきませんでした。指針の言葉は「指導計画」です。ここから先は、指針の言葉にそろえます。

計画は2段:全体的な計画と、長期・短期の指導計画
指針 第1章3「保育の計画及び評価」は、まず保育所に全体的な計画の作成を求め、これに基づく指導計画、保健計画、食育計画等を通じて保育できるよう作成するとしています(第1章3(1)ア・ウ)。その下に置かれるのが指導計画です。
「保育所は、全体的な計画に基づき、具体的な保育が適切に展開されるよう、子どもの生活や発達を見通した長期的な指導計画と、それに関連しながら、より具体的な子どもの日々の生活に即した短期的な指導計画を作成しなければならない。」
出典:保育所保育指針 第1章3(2)ア(原文どおり)
週や月といった区切り方は、指針の本文には書かれていません。解説が、指導計画は「年・数か月単位の期・月など長期的な見通しを示すもの」と「週・日などの短期的な予測を示すもの」とを、保育所の実情に合わせて作成し、それらを組み合わせて用いるとしています。
出典:保育所保育指針解説(平成30年2月 厚生労働省)第1章3(2)アの解説
解説は、全体的な計画を「指導計画やその他の計画の上位に位置付けられる」ものとしています。指導計画は、この全体的な計画に基づいて作るものです。

全体的な計画に基づく計画には食育計画もあり、指針の解説は、食育計画を指導計画とも関連付けながら作成するとしています。食育計画の立て方は保育園の食育計画の立て方|全体的な計画に基づいて作り、指導計画と関連付け、評価して改善しますで扱っています。
ここが本題:指針が設定を求めるのは「ねらい及び内容」です
指導計画に何を書くか。指針の本体で中身を指定しているのは、第1章3(2)ウです。
「指導計画においては、保育所の生活における子どもの発達過程を見通し、生活の連続性、季節の変化などを考慮し、子どもの実態に即した具体的なねらい及び内容を設定すること。また、具体的なねらいが達成されるよう、子どもの生活する姿や発想を大切にして適切な環境を構成し、子どもが主体的に活動できるようにすること。」
出典:保育所保育指針 第1章3(2)ウ(原文どおり)
柱は3つです。ねらい及び内容を設定する。適切な環境を構成する。子どもが主体的に活動できるようにする。解説は、指導計画は「保育士等が一方的にある活動を子どもに与えてさせるためのものではなく」としています。
「ねらい」と「内容」の意味は、指針 第2章の冒頭が定めています。
「この章に示す「ねらい」は、第1章の1の⑵に示された保育の目標をより具体化したものであり、子どもが保育所において、安定した生活を送り、充実した活動ができるように、保育を通じて育みたい資質・能力を、子どもの生活する姿から捉えたものである。また、「内容」は、「ねらい」を達成するために、子どもの生活やその状況に応じて保育士等が適切に行う事項と、保育士等が援助して子どもが環境に関わって経験する事項を示したものである。」
出典:保育所保育指針 第2章(原文どおり)
「内容」には2つの側面があります。保育士等が適切に行う事項と、子どもが環境に関わって経験する事項です。「内容」の欄で迷ったら、この定義に戻ると整理できます。
児童発達支援や放課後等デイサービスで使う個別支援計画は、保育所保育指針ではなく別の省令とガイドラインに基づく計画です。書き方は個別支援計画の書き方|5領域は欄を分けなくてよく、全部との関連を書きますで扱っています。
「予想される子どもの活動」「援助」は、解説が挙げる項目です
「予想される子どもの活動」という言葉は、指針の本体にはありません。出てくるのは解説です。
「指導計画は、全体的な計画に基づいて保育を実施する際のより具体的な方向性を示すものであり、実際の子どもの姿に基づいて、ある時期における保育のねらいと内容・環境・そこで予想される子どもの活動や、それに応じた保育士等の援助・配慮すべき事項・家庭との連携等を考え、作成するものである。」
出典:保育所保育指針解説 第1章3(2)アの解説(原文どおり)
| 解説が挙げる項目 | 指針の本体にある対応する言葉 |
|---|---|
| 保育のねらいと内容 | 具体的なねらい及び内容を設定すること(第1章3(2)ウ) |
| 環境 | 適切な環境を構成し(同) |
| 予想される子どもの活動 | この言い方はない。子どもが主体的に活動できるようにすること(同) |
| 保育士等の援助 | 必要な援助を行うこと(第1章3(3)イ) |
| 配慮すべき事項 | 3歳以上児、異年齢の組やグループについて「配慮すること」(第1章3(2)イ) |
| 家庭との連携等 | 長時間にわたる保育について、家庭との連携などを指導計画に位置付けること(第1章3(2)カ) |
出典:保育所保育指針 第1章3(2)・(3)、同解説をもとに編集部が整理
援助について、解説は「一緒に遊ぶ・共感する・助言する・提案する・見守る・環境を構成するなど、多岐にわたる」としています。そのうえで、書式についてはこう書いています。
「子どもの発達の状態などに応じて、個別の指導計画、あるいはクラスやグループの指導計画など、必要なものを書式も含めて工夫して作成することが求められる。」
出典:保育所保育指針解説 第1章3(2)アの解説(原文どおり)
指針の本文には「書式」「様式」「欄」という言葉が1箇所もありません。時刻を書く欄を設けるかどうかも含めて、欄の立て方は指針が決めているものではなく、園の工夫の範囲にあります。
年齢や子どもの状況で、指針が加える留意事項
| 対象 | 指針の定め(要約) |
|---|---|
| 3歳未満児 | 生育歴、心身の発達、活動の実態等に即して、個別的な計画を作成する |
| 3歳以上児 | 個の成長と、子ども相互の関係や協同的な活動が促されるよう配慮する |
| 異年齢の組やグループ | 適切な援助や環境構成ができるよう配慮する |
| 在園時間の違い | 活動と休息、緊張感と解放感等の調和を図るよう配慮する |
| 午睡 | 安全な睡眠環境を確保し、一律とならないよう配慮する |
| 長時間にわたる保育 | 職員の協力体制、家庭との連携などを指導計画に位置付ける |
| 障害のある子ども | 指導計画の中に位置付ける。支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図る |
出典:保育所保育指針 第1章3(2)イ〜キ
3歳未満児について、解説は「月ごとに個別の計画を立てることを基本としつつ」、見通しに幅をもたせるとしています。特別な配慮を必要とする子どもの個別の指導計画では、具体的な目標を「1週間から2週間程度を目安に」少しずつ達成していけるよう細やかに設定するとしています。
出典:保育所保育指針解説 第1章3(2)イ・キの解説
書いた後:記録し、見直し、自己評価につなげます
指針は、指導計画に基づく保育の実施についても留意事項を置いています。その最後が記録です。
「保育士等は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化などに即して保育の過程を記録するとともに、これらを踏まえ、指導計画に基づく保育の内容の見直しを行い、改善を図ること。」
出典:保育所保育指針 第1章3(3)エ(原文どおり)
計画どおりに進まない日もあります。解説は、予想とは異なる姿が見られたときに「必ずしも計画通りの展開に戻すことを優先するのではなく」、子どもの気付きや感動を尊重することが重要としています。
記録の先には、保育士等の自己評価があります。
「保育士等は、保育の計画や保育の記録を通して、自らの保育実践を振り返り、自己評価することを通して、その専門性の向上や保育実践の改善に努めなければならない。」
出典:保育所保育指針 第1章3(4)ア(ア)(原文どおり)
自己評価に当たっては、子どもの活動内容やその結果だけでなく、子どもの心の育ちや意欲、取り組む過程などにも十分配慮するよう留意するとされています(同(イ))。解説は、自己評価は「到達度として評定することを目的とするものではない」としています。できたかどうかだけを振り返る書き方では、この留意事項に届きません。
保育所としての評価の定めは保育園の監査で見られることで扱っています。
指針の項目に沿った架空の記入イメージ
ここまでの項目を並べた架空の記入イメージです。実在の園の指導案ではなく、国が示した様式でもありません。時刻の欄は置いていません。
| 欄 | 指針・解説の言葉 | 架空の記入イメージ(3歳以上児のクラス、秋のある週) |
|---|---|---|
| 子どもの姿 | 実際の子どもの姿(解説) | 園庭で落ち葉を集め、色や形を友達と見比べている |
| ねらい | 具体的なねらい(指針) | 秋の自然物に親しみ、気付いたことを友達に伝えようとする |
| 内容 | 子どもが環境に関わって経験する事項(指針) | 落ち葉や木の実を集め、色や形の違いに気付く |
| 環境 | 適切な環境を構成(指針) | 集めた物を並べて見比べられる台と入れ物を用意する |
| 予想される子どもの活動 | 解説 | 集めた物で遊び始める子どもと、集めること自体を楽しむ子どもがいる |
| 保育士等の援助 | 共感する・見守るなど(解説) | 気付きに共感し、言葉にしようとする姿を見守る |
| 家庭との連携 | 解説 | 家で見付けた物を持ってきたい子どもがいれば、保護者に様子を伝える |
| 記録・自己評価 | 心の育ちや意欲、取り組む過程(指針) | ねらいに照らして、気付きや意欲、取り組む過程を振り返る |
出典:欄と「指針・解説の言葉」は本文中の各箇所。記入イメージは編集部が作成した架空の例
欄の数や順番は、園の書式によって変わります。確かめたいのは、指針の本体にある「ねらい及び内容」と「環境」が入っているかと、記録から見直しにつながる流れがあるかです。
この記事が扱っていないこと
- 市町村・園・養成校が定めている指導案の書式。それぞれの運用で、本記事は取得していません。
- 第2章の年齢ごとの「ねらい及び内容」の一つひとつ。本記事は定義だけを扱いました。
- 幼稚園や認定こども園の場合。幼稚園教育要領と幼保連携型認定こども園教育・保育要領は、本記事では取得していません。
- 指針の改定の動き。本記事は、こども家庭庁が「平成30年度~」として掲載している現行の指針だけを読んでいます。
指導案を書くときに確認できること
- 園の全体的な計画はどこにあるか。指導計画は、全体的な計画に基づいて作ります。
- 園の書式の欄と、指針の言葉の対応。ねらい・内容・環境は指針の本体、予想される子どもの活動・保育士等の援助は解説の言葉です。
- 3歳未満児の個別的な計画を、どの単位で作っているか。解説は月ごとを基本としています。
- 記録から見直し、自己評価までの流れ。指針は職員相互の話し合い等も挙げています。
よくある質問
Q. 指導案に書く項目は、国が決めていますか。
A. 保育所保育指針が設定を求めているのは「具体的なねらい及び内容」で、あわせて適切な環境の構成を求めています(第1章3(2)ウ)。欄の名前や書式を定めた箇所は、指針の本文にはありません。
Q. 「時間」の欄は必要ですか。
A. 指針の本文に、書式や時刻の欄を定めた箇所は見当たりませんでした。解説は、書式も含めて工夫して作成することを求めています。勤務先の書式を確認してください。
Q. 3歳未満児のクラスでは何が違いますか。
A. 指針は、一人一人の子どもの生育歴、心身の発達、活動の実態等に即して個別的な計画を作成することとしています。解説は、月ごとに個別の計画を立てることを基本としています。
Q. 計画どおりに進まなかったら、失敗ですか。
A. 解説は、必ずしも計画通りの展開に戻すことを優先するのではないとしています。指針は、保育の過程を記録し、それを踏まえて見直しと改善を図ることを求めています。
迷ったらここ
園の書式を指針の言葉と見比べる
保育所保育指針が指導計画で設定を求めるのは具体的なねらい及び内容です。書式について、解説は「書式も含めて工夫して作成する」としています。
- 園の全体的な計画がどこにあり、指導計画とどうつながっているか
- 指導計画の書式に、ねらい・内容・環境の欄があるか
- 3歳未満児の個別的な計画を、どの単位で作っているか
まとめ
保育所の保育の内容は、設備運営基準 第35条により保育所保育指針に従います。指針に「指導案」という語はなく、使われているのは「指導計画」です。指針は長期的な指導計画と短期的な指導計画の作成を求めています。
指針の本体が設定を求めているのは具体的なねらい及び内容で、あわせて適切な環境の構成を求めています。「予想される子どもの活動」「保育士等の援助」は解説が挙げる項目で、書式は園ごとの工夫に委ねられています。書いた後は、記録し、見直し、自己評価につなげる流れが指針に書かれています。

