30秒でわかるまとめ
- 訪問看護師がまず見るのは、要介護認定があるかどうかです健康保険法 第55条第3項は、介護保険法で相当する給付を受けられる場合、訪問看護療養費を支給しないと定めています。
- 要介護者でも医療保険になる場合が、告示に3つ並んでいます特別訪問看護指示書に係るもの、別表第七の疾病等の人へのもの、精神科訪問看護基本療養費が算定されるものの3つです。
- 別表第七には、末期の悪性腫瘍など20項目が並びます多発性硬化症、パーキンソン病関連疾患、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態などが、告示に原文で列挙されています。
- 特別訪問看護指示書は、指示の日から14日が限度です主治医が急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護が必要と認めたときの指示書で、原則は1月に1回です。
※2つの制度で事業所が従う省令の違いは訪問看護の仕事内容と1日、計画書の書き方は訪問看護計画書の書き方で扱っています。この記事は、利用者ごとにどちらの保険が使われるかを決めるルールを扱います。

まず条文:介護保険で受けられるなら、医療保険からは出ません
ルールの出発点は、医療保険の側の法律にあります。健康保険法 第55条第3項です。
「被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給は、同一の疾病又は負傷について、介護保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。」
出典:健康保険法(e-Gov法令API 法令ID 211AC0000000070)第55条第3項(原文どおり)
条文の中に「訪問看護療養費」が名指しされています。医療保険の訪問看護は、介護保険法で相当する給付を受けられる場合には支給されない、という順番です。
国民健康保険法 第56条第1項と高齢者の医療の確保に関する法律 第57条第1項にも、訪問看護療養費などの支給は「介護保険法の規定によつて、それぞれの給付に相当する給付を受けることができる場合」には行わない、という同じ趣旨の規定があります(法令ID 333AC0000000192/357AC0000000080)。
一方、介護保険法 第20条(他の法令による給付との調整)が例に挙げているのは、労働者災害補償保険法の療養補償給付などです。医療保険と介護保険の順番を決めているのは、医療保険の側の法律です。

夜間・休日の連絡に備える体制の報酬も、医療保険は24時間対応体制加算、介護保険は緊急時訪問看護加算と名前が分かれます。2つの区分と負担軽減の取組は訪問看護のオンコール手当|国に相場はなく、報酬は「負担軽減の取組」の有無で2区分ですで扱っています。
2つの訪問看護は、定義の書き方から違います
医療保険と介護保険では、訪問看護を受けられる人の書き方が違います。まず介護保険法 第8条第4項です。
「この法律において「訪問看護」とは、居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。」
出典:介護保険法(法令ID 409AC0000000123)第8条第4項(原文どおり)
医療保険の側は、健康保険法 第88条第1項が訪問看護の対象を次のように書いています。
「疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)」
出典:健康保険法 第88条第1項(該当部分のみ抜き出し。抜き出した範囲は原文どおり)
どちらも「主治の医師が…基準に適合していると認めたもの」に限っています。その基準を定めた省令の文言を並べると、違いが見えます。
| 制度 | 省令の条 | 基準の文言 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 介護保険法施行規則 第6条 | 法第八条第四項の厚生労働省令で定める基準は、病状が安定期にあり、居宅において看護師又は次条に規定する者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助を要することとする。 |
| 医療保険 | 健康保険法施行規則 第67条 | 法第八十八条第一項の厚生労働省令で定める基準は、病状が安定し、又はこれに準ずる状態にあり、かつ、居宅において看護師等(看護師その他次条に規定する者をいう。第七十四条第一項第九号及び第七十七条において同じ。)が行う療養上の世話及び必要な診療の補助を要することとする。 |
出典:介護保険法施行規則(法令ID 411M50000100036)第6条/健康保険法施行規則(法令ID 215M10000008036)第67条(いずれも原文どおり)
介護保険は「病状が安定期にあり」、医療保険は「病状が安定し、又はこれに準ずる状態にあり」です。介護保険の訪問看護の対象は、条文の上では「居宅要介護者」に限られています。

ここが本題:要介護者でも医療保険になる3つの場合
では、要介護者の訪問看護はすべて介護保険か、というとそうではありません。厚生労働大臣の告示が、要介護者等でも医療保険の訪問看護療養費を算定できる場合を定めています。
「要介護被保険者等である利用者について指定訪問看護の費用に要する額を算定できる場合」
| 号 | 告示の文言 |
|---|---|
| (1) | 特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を行う場合 |
| (2) | 特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者に対する指定訪問看護を行う場合 |
| (3) | 精神科訪問看護基本療養費が算定される指定訪問看護を行う場合 |
出典:訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等(平成18年厚生労働省告示第103号)第四の一(原文どおり。厚生労働省法令等データベースで閲覧できる令和8年改正後の版)
この3つを、厚生労働省の通知は次のように説明しています。
「訪問看護療養費は、要介護被保険者等である患者については、原則として算定できない」
出典:「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(令和8年3月27日 老老発0327第2号・保医発0327第4号)別添 第4の8(1)(冒頭部分。原文どおり)
そのあとに、上の3つと入院中(外泊日を含む。)に退院に向けた指定訪問看護を行う場合が、算定できる場合として続きます。通知は令和8年6月1日から適用されています。
「原則は介護保険、例外として医療保険」という組み立てです。例外の入口になるのは、主治医の指示書の種類、利用者の疾病等、精神科の訪問看護かどうか、の3つです。
別表第七の疾病等は、原文ではこう並んでいます
(2)の「別表第七」は、特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)の表です。令和8年の改正で全部改正されています。並びは次の20項目です。
| 別表第七に掲げる疾病等 |
|---|
| 末期の悪性腫瘍 |
| 多発性硬化症 |
| 重症筋無力症 |
| スモン |
| 筋萎縮性側索硬化症 |
| 脊髄小脳変性症 |
| ハンチントン病 |
| 進行性筋ジストロフィー症 |
| パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)) |
| 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群) |
| プリオン病 |
| 亜急性硬化性全脳炎 |
| ライソゾーム病 |
| 副腎白質ジストロフィー |
| 脊髄性筋萎縮症 |
| 球脊髄性筋萎縮症 |
| 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 |
| 後天性免疫不全症候群 |
| 頸髄損傷 |
| 人工呼吸器を使用している状態 |
出典:特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)別表第七(原文どおり。1行が告示の1項目。データベース上の括弧は半角、ふりがなは省いた)
パーキンソン病は条件付きです。ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上で、生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る、と括弧の中に書かれています。最後の項目は病名ではなく「人工呼吸器を使用している状態」です。
なお、告示第四の一に挙がっているのは別表第七で、同じ告示に出てくる別表第八(特別な管理を要する状態等)は、第四の一には挙がっていません。
特別訪問看護指示書は「急性増悪等」のときの指示書です
(1)の特別訪問看護指示書は、訪問看護療養費の算定方法を定めた告示の中で定義されています。
「指定訪問看護を受けようとする者の主治医(介護老人保健施設又は介護医療院の医師を除く。)から当該者の急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護の必要がある旨の訪問看護指示書(以下「特別訪問看護指示書」という。)の交付を受け」
出典:訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(平成20年厚生労働省告示第67号)別表 01 訪問看護基本療養費 注6(該当部分のみ抜き出し。抜き出した範囲は原文どおり)
期間と回数は、同じ注6の後半に書かれています。
「1月に1回(別に厚生労働大臣が定める者については、月2回)に限り、当該指示があった日から起算して14日を限度として算定する。」
出典:同 注6(末尾部分。原文どおり)
ポイントは「一時的に」と「14日を限度」です。要介護者の訪問看護が、特別訪問看護指示書によって医療保険に切り替わるのは、指示の日から起算して14日までの期間です。
精神科の訪問看護は、認知症でない患者に限られます
(3)の精神科訪問看護基本療養費については、通知が条件を付けています。
「精神科訪問看護基本療養費が算定される指定訪問看護を行う場合(認知症でない患者に指定訪問看護を行う場合に限る。)及び入院中(外泊日を含む。)に退院に向けた指定訪問看護を行う場合には、算定できる。」
出典:令和8年3月27日 老老発0327第2号・保医発0327第4号 別添 第4の8(1)(該当部分のみ抜き出し。抜き出した範囲は原文どおり)
認知症の利用者への訪問看護は、この例外には入りません。要介護者で認知症の人は、特別訪問看護指示書や別表第七など、ほかの例外に当たるかどうかで判断することになります。
月の途中で要介護認定を受けたら、その日から切り替わります
通知は、医療保険の利用者が途中で要介護被保険者等になった場合についても書いています。
「要介護被保険者等となった日から、同一の傷害又は疾病等についての給付が医療保険から介護保険へ変更されることとなる」
出典:令和8年3月27日 老老発0327第2号・保医発0327第4号 別添 第4の2(文の前半のみ。抜き出した範囲は原文どおり)
切り替わりの基準は「月の初め」ではなく「要介護被保険者等となった日」です。認定を受けた月は、1か月の中に医療保険の期間と介護保険の期間が並ぶことがあります。
この記事が扱っていないこと
- 訪問看護療養費や介護報酬の金額・単位数・加算。どちらの保険になるかのルールに絞り、報酬の中身は扱っていません。
- 特別訪問看護指示書が月2回になる「別に厚生労働大臣が定める者」の中身。本記事では取得していません。
- 別表第八(特別な管理を要する状態等)の全文。要介護者の例外(告示第四の一)には挙がっていないため、列挙していません。
- 介護予防訪問看護(要支援者)の定義。本記事は要介護者の訪問看護の条文を中心にしています。
- 病院・診療所が行う訪問看護(在宅患者訪問看護・指導料など)の細かな取扱い。本記事は訪問看護ステーションの訪問看護療養費を中心にしています。
訪問看護師が確認できること
- 利用者が要介護認定を受けているか。健康保険法 第55条第3項により、受けていれば原則は介護保険です。
- 主治医の指示書が、特別訪問看護指示書かどうか。そうであれば、指示の日から起算して14日を限度に医療保険になります。
- 利用者の疾病等が別表第七に当たるか。パーキンソン病はステージと生活機能障害度の条件付きです。
- 精神科の訪問看護か、認知症の利用者か。精神科訪問看護基本療養費の例外は、認知症でない患者に限られます。
- 職場の利用者に、医療保険と介護保険がどう混ざっているか。別表第七の疾病等の利用者がいる事業所では、要介護者でも医療保険で訪問する場面があります。
よくある質問
Q. 要介護認定を受けた人の訪問看護は、すべて介護保険ですか。
A. 原則は介護保険です(健康保険法 第55条第3項)。ただし、特別訪問看護指示書に係るもの、別表第七の疾病等の人へのもの、精神科訪問看護基本療養費が算定されるものは、医療保険の訪問看護療養費を算定できると告示が定めています(平成18年厚生労働省告示第103号 第四の一)。
Q. 末期がんの要介護者は、どちらの保険ですか。
A. 別表第七の最初の項目が「末期の悪性腫瘍」です。告示第四の一(2)により、別表第七に掲げる疾病等の者への訪問看護は、要介護者でも医療保険で算定できる場合に当たります。
Q. 特別訪問看護指示書は、何日間ですか。
A. 「当該指示があった日から起算して14日を限度」です。回数は1月に1回(別に厚生労働大臣が定める者については、月2回)とされています。
Q. 認知症の要介護者への精神科訪問看護は、医療保険になりますか。
A. 通知は、精神科訪問看護基本療養費が算定される訪問看護について「認知症でない患者に指定訪問看護を行う場合に限る。」としています。認知症の要介護者は、この例外に当たりません。
迷ったらここ
医療か介護か、決まりを知る
要介護者の訪問看護は、健康保険法 第55条第3項により原則として介護保険です。医療保険になるのは、特別訪問看護指示書・別表第七の疾病等・精神科訪問看護の3つの場合と告示が定めています。
- 利用者のうち、別表第七の疾病等に当たる人がどのくらいいるか
- 特別訪問看護指示書(指示の日から14日が限度)の受け方と、保険の切り替えを誰が確認するか
- 精神科訪問看護を行っているか、認知症の利用者の扱いをどう決めているか
まとめ
訪問看護で医療保険と介護保険のどちらを使うかは、医療保険の側の法律が決めています。健康保険法 第55条第3項は、介護保険法で相当する給付を受けられる場合、訪問看護療養費を支給しないと定めています。
そのうえで、要介護者でも医療保険になる場合を、平成18年厚生労働省告示第103号 第四の一が3つ挙げています。特別訪問看護指示書(急性増悪等、指示の日から14日が限度)、別表第七の疾病等(末期の悪性腫瘍など20項目)、精神科訪問看護基本療養費(認知症でない患者に限る)です。
要介護認定を受けた日からは、同じ疾病等の給付が医療保険から介護保険に替わります。訪問看護師にとっては、認定の有無・指示書の種類・疾病等・精神科かどうかの4つを見ることが、保険の区別の入口になります。

