介護事務の仕事内容|6種類の記録を2年保存することが請求の土台です

目次

30秒でわかるまとめ

  • 介護事務の仕事の中心は記録を整えることです介護報酬は基準に照らして審査した上で支払われるため、審査に耐える記録が土台になります
  • 介護事務という職種は法令に定めがありません介護保険法にも指定基準にも職種名がなく、資格要件も業務範囲も条文で定まっていません
  • 記録6種類を完結の日から2年間保存します指定基準第39条第2項が定める義務で、起算点は作成日ではなくサービス提供が完結した日です
  • 会計の記録には保存年数の定めがありません第39条第1項の「会計に関する諸記録」は6種類の記録とは別枠で、期限なく整備が求められています

※サービス提供責任者の業務範囲(省令が定める8業務、利用者40人に1人)はサービス提供責任者の仕事内容|省令が定める8業務と利用者40人に1人で扱っています。訪問介護の仕組みそのものはホームヘルパーとは|訪問介護員の50.0%が介護福祉士を参照してください。

事務所で電話対応(介護事務)

まず前提:法令に「介護事務」という職種はありません

介護保険法にも、指定居宅サービス等の人員・設備・運営に関する基準にも、「介護事務」という職種名は出てきません。

訪問介護なら訪問介護員とサービス提供責任者、居宅介護支援なら介護支援専門員というように、配置が義務づけられている職種には条文があります。介護事務にはそれがありません。

意味するところは2つです。

  • 資格要件がありません。民間の検定はありますが、法令上必須とされるものはありません
  • 業務範囲も法令で定まっていません。だから「介護事務の仕事内容」は事業所ごとに違い、求人票を読むだけでは分かりません

ただし、法令が定めていないのは「誰がやるか」であって「何をやらなければならないか」ではありません。事業所に課された義務は条文にあります。それを誰かが担う。その担い手が事務職なら、それが介護事務の仕事になります。

以下、条文の側から見ていきます。

カンファレンス

請求は「出せば入る」ものではありません

お金の流れを条文で追います。

介護保険法 第41条第6項は、利用者が指定居宅サービスを受けたとき、市町村は利用者に支給すべき額の限度で、利用者に代わって事業者に支払うことができると定めています。いわゆる法定代理受領です。第7項は「前項の規定による支払があったときは、居宅要介護被保険者に対し居宅介護サービス費の支給があったものとみなす」としています。

そして第9項です。

「市町村は、指定居宅サービス事業者から居宅介護サービス費の請求があったときは、第4項各号の厚生労働大臣が定める基準及び第74条第2項に規定する指定居宅サービスの事業の設備及び運営に関する基準(指定居宅サービスの取扱いに関する部分に限る。)に照らして審査した上、支払うものとする。」

「審査した上、支払う」です。請求を出せば自動的に入金される仕組みではありません。しかも審査の物差しが条文に書いてあります。厚生労働大臣が定める基準と、運営に関する基準です。

契約書に押印

審査するのは誰か

実務では、市町村が自分で審査するわけではありません。

第41条第10項「市町村は、前項の規定による審査及び支払に関する事務を連合会に委託することができる。」

この「連合会」は国民健康保険団体連合会です。第176条第1号が、連合会の業務として市町村から委託を受けて行う居宅介護サービス費等の「請求に関する審査及び支払」を挙げています。

登場人物役割根拠
事業者サービスを提供し、請求する第41条第6項ほか
市町村基準に照らして審査した上、支払う第41条第9項
国民健康保険団体連合会市町村から委託を受けて審査及び支払を行う第41条第10項、第176条第1号

出典:介護保険法(平成9年法律第123号)

請求先が連合会になるのは、この委託の仕組みがあるからです。制度の建て付けとしては、あくまで市町村が支払う主体で、連合会は委託を受けている立場です。

同じ居宅サービスでも、福祉用具貸与では保存する記録が1つ多く並んでいます。委託先の実施状況を定期的に確認した結果の記録が加わる理由は福祉用具貸与とは|借りたものが戻ってくる前提で、省令は書かれていますで扱っています。

だから仕事の中心は「記録」です

審査が「基準に照らして」行われる以上、事業所が備えておくべきものは記録です。ここは条文が具体的に定めています。

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第39条(記録の整備)

第1項「指定訪問介護事業者は、従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。」

第2項は、利用者に対するサービスの提供に関する記録として次の6つを挙げ、その完結の日から2年間保存することを義務づけています。

号保存が義務づけられた記録
1訪問介護計画
2提供した具体的なサービスの内容等の記録
3身体的拘束等の態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由の記録
4市町村への通知に係る記録
5苦情の内容等の記録
6事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録

出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第39条。訪問介護の例

6種類のうち、請求の金額に直接つながるのは1と2です。残りの4つは、事故や苦情、身体的拘束といった、起きたときにしか発生しない記録です。起きたときに残っていないと、後から作れません。

「完結の日から2年間」という起算点にも注意が必要です。作成日からではありません。

第1項の「従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録」も見落とされがちです。会計に関する記録は第2項の6種類とは別枠で、期限の定めなく整備が求められています。

利用者に渡すものも定められています

第41条第8項「指定居宅サービス事業者は、指定居宅サービスその他のサービスの提供に要した費用につき、その支払を受ける際、当該支払をした居宅要介護被保険者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、領収証を交付しなければならない。」

利用者負担分を受け取ったときの領収証の交付は、事業者の義務です。窓口で現金を扱う事業所では、これが日々の業務に直結します。

訪問介護では、利用者からの申出があった場合に、提供したサービスの記録の情報を文書の交付その他適切な方法で提供することも、同じ省令の第19条第2項に書かれています。訪問介護の記録の書き方|国の通知は「提供日・具体的なサービスの内容・心身の状況」を挙げていますで扱っています。

求人を見るときに確認できること

法令が職種を定めていない以上、確認は事業所単位でするしかありません。聞ける項目を整理します。

  • 請求業務をどこまで担当するか。実績の入力までか、請求データの作成・送信までか、返戻・過誤の対応までか
  • 記録の管理を担当するか。第39条第2項の6種類のうち、どれを事務が扱うか。とくに事故・苦情の記録は事務が受けることが多い部分です
  • 会計に関する記録を扱うか。第39条第1項に「会計に関する諸記録」があります
  • 領収証の発行と現金の取り扱いがあるか。第41条第8項の義務に関わります
  • 利用者・家族への電話対応が入るか。苦情の一次受けになる可能性があります
  • 介護の実務(送迎・記録の代筆・シフトの穴埋め)を頼まれることがあるか。法令が職種を定めていないぶん、ここは事業所の運用次第です

記録と報告が業務の土台になる点は、福祉用具専門相談員も同じです。計画の作成からモニタリングの報告までを条文が決めている構造は福祉用具専門相談員とは|なれる道は9通り、うち8つは別の資格ですで扱っています。

よくある質問

Q. 介護事務に資格は必要ですか。
介護保険法にも指定基準にも「介護事務」という職種の定めがなく、法令上必須とされる資格はありません。民間の検定はありますが、それを持っていないと就けないという法令上の根拠はありません。ただし事業所が独自に応募要件を設けることは自由なので、募集要項を確認してください。

Q. 請求は毎月何をするのですか。
具体的な請求事務の手順(提出期限、様式、返戻対応など)は本記事では扱っていません。省令・通知の一次資料を確認していないためです。条文から言えるのは、市町村が基準に照らして審査した上で支払うこと(第41条第9項)、その事務が連合会に委託されうること(同 第10項、第176条第1号)までです。

Q. 記録は何年保存すればいいですか。
指定居宅サービス等基準 第39条第2項が定める6種類の記録は、その完結の日から2年間です。作成日からではなく「完結の日」からである点に注意してください。なお同条第1項の「従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録」については、第2項のような保存年数の定めが置かれていません。自治体の条例で保存年数が上乗せされている場合があるため、指定を受けている自治体の基準条例を確認してください。

迷ったらここ

「請求業務」の一語に、どこまでの記録管理が入るかを聞く

介護報酬は基準に照らして審査した上で支払われます(介護保険法 第41条第9項)。だから中心は記録で、指定基準は6種類の記録を「完結の日から2年間」保存することを求めています。

  • 請求はどこまで担当するか(実績入力/請求データ作成/返戻・過誤対応)
  • 第39条第2項の6種類の記録のうち、事務が扱うのはどれか(とくに事故・苦情)
  • 領収証の発行と現金の取り扱いがあるか(第41条第8項の交付義務)
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まとめ

  • 法令に「介護事務」という職種はない。資格要件も業務範囲も条文にないので、仕事の中身は事業所ごとに違う
  • 介護報酬は「基準に照らして審査した上、支払う」(介護保険法 第41条第9項)。出せば入るものではない
  • 審査と支払の事務は市町村から国民健康保険団体連合会に委託できる(同 第10項、第176条第1号)
  • だから中心は記録。6種類の記録を「完結の日から2年間」保存する義務がある(指定基準 第39条第2項)
  • 第39条第1項には「会計に関する諸記録」も別枠で置かれている
  • 利用者負担分を受け取る際の領収証の交付も事業者の義務(第41条第8項)

介護事務は「請求書を作る仕事」と説明されがちですが、条文の順序は逆です。審査があるから記録が要り、記録があるから請求が通る。求人票の「請求業務」という一語の下に、どこまでの記録管理が入っているか。面接で聞くべきはそこです。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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