30秒でわかるまとめ
- 保育士の持ち帰り仕事が労働時間かは、指示で決まります国のガイドラインは、使用者の指揮命令下に置かれていた時間かどうかで客観的に定まると書いています。
- 就業規則にどう書いてあるかでは決まりません労働契約や就業規則等の定めのいかんによらず判断されると、ガイドラインが明記しています。
- 使用者には、始業と終業を記録する責務があります原則は自ら現認するか、タイムカード等の客観的な記録によることとされています。
- 自己申告で済ませてよい仕組みではありません自己申告による場合でも、実態調査と労働時間の補正を行うよう求められています。
※園の中の人間関係については保育士の人間関係に疲れたとき、1年目のつらさは保育士1年目がつらいときで扱っています。この記事は、持ち帰りが労働時間に当たるかどうかの考え方だけを読みます。

先に置いておきます:良し悪しを決める記事ではありません
持ち帰りをやめるべきか、続けるべきか。それを決める記事ではありません。
ここで並べるのは、国が示している「労働時間とは何か」の考え方だけです。判断の枠組みが分かると、誰に何を聞けばよいかがはっきりします。
数字は出しません。保育士の持ち帰り時間を測った国の統計を、本記事では確認できませんでした。

持ち帰りの対象になりうる書類のうち、指導案(指針の言葉では「指導計画」)に何を書くと定められているかは保育士の指導案の書き方|指針が設定を求めるのは「ねらい及び内容」。書式の定めはありませんで扱っています。
まず定義:労働時間は「指揮命令下」で決まります
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間をこう定義しています。
「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。」
| ガイドラインの言葉 | 意味するところ |
|---|---|
| 使用者の指揮命令下に置かれている時間 | これが労働時間の定義そのもの |
| 明示又は黙示の指示 | はっきり命じられた場合に限られない |
| 業務に従事する時間 | 作業の中身が業務であること |
出典:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン「3 労働時間の考え方」。右欄は編集部の整理
「黙示の指示」が入っているのが重要です。命じられた言葉がなくても、指示があったと評価される場合があります。

ここが本題:就業規則の書き方では決まりません
同じ箇所に、こう続きます。
「労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであること。」
「定めのいかんによらず」「客観的に定まる」——この2つが並んでいます。
では何で判断するのか。ガイドラインは判断の材料まで書いています。
「客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであること。」
| 判断の手がかり | ガイドラインの言葉 |
|---|---|
| 1 | 使用者から義務づけられていたか |
| 2 | これを余儀なくされていたか |
出典:同ガイドライン「3 労働時間の考え方」。番号は編集部が計数
「余儀なくされていた」が入っています。命じられていなくても、そうせざるを得ない状況だったかどうかが見られます。
ただし判断は「個別具体的に」とされています。本記事は個々のケースが労働時間に当たるかどうかを判断できません。そこは後述の窓口で相談できます。
ガイドラインが挙げている例は3つです
「労働時間として扱わなければならない」時間として、3つが挙がっています。
| 記号 | ガイドラインが挙げる時間 |
|---|---|
| ア | 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間 |
| イ | 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」) |
| ウ | 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間 |
出典:同ガイドライン「3 労働時間の考え方」ア〜ウ
アには「事業場内において」という限定が付いています。持ち帰りは事業場の外での作業なので、この例にそのまま当てはまるわけではありません。
ただしガイドラインは、3つの例のあとにこう書いています。
「ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこと。」
3つは例であって、限定ではありません。定義そのもの(指揮命令下)は場所で区切られていません。
訪問介護には、移動時間や待機時間が労働時間に当たる場合を示した業種別の通達もあります。訪問介護の移動時間に給料は出るか|通達は、条件つきで労働時間に当たるとしていますで扱っています。
記録する責務は、働く側ではなく使用者にあります
ガイドラインの「4 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」は、まず記録を求めています。
「使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。」
そして原則的な方法が2つ示されています。
| 記号 | 原則的な方法 |
|---|---|
| ア | 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること |
| イ | タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること |
出典:同ガイドライン「4(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法」
記録するのは使用者です。働く側が申告しなければ始まらない、という建て付けにはなっていません。
自己申告制のときは、追加の措置が求められます
原則の方法によれない場合の規定もあります。ガイドラインは、自己申告制による場合に使用者が講ずべき措置を4つ挙げています。
| 記号 | 講ずべき措置 |
|---|---|
| ア | 対象となる労働者に、労働時間の実態を正しく記録し適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行う |
| イ | 実際に労働時間を管理する者に、自己申告制の適正な運用を含め講ずべき措置について十分な説明を行う |
| ウ | 自己申告により把握した労働時間が実際と合致しているか、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をする |
| エ | 自己申告した時間を超えて事業場内にいる時間の理由を報告させる場合、その報告が適正に行われているかを確認する |
出典:同ガイドライン「4(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置」ア〜エ
ウにはさらに条件が付いています。入退場記録やパソコンの使用時間の記録など事業場内にいた時間が分かるデータがあり、自己申告との間に「著しい乖離」が生じているときは、実態調査と補正をすることとされています。
そしてエの最後に、こう書かれています。
「休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。」
「自主的」という言葉で処理されていても、実態で見るという規定です。
整理すると、こうなります
| 問い | ガイドラインの答え |
|---|---|
| 労働時間とは何か | 使用者の指揮命令下に置かれている時間 |
| 就業規則の定めで決まるか | 決まらない。定めのいかんによらず客観的に定まる |
| 何で判断するか | 義務づけられ、又は余儀なくされていた等の状況。個別具体的に |
| 記録するのは誰か | 使用者。原則は現認か客観的な記録 |
| 自己申告なら任せてよいか | 説明・実態調査・補正・確認の措置が求められる |
出典:本文中に挙げた各箇所
いま確かめられること
1. 何を持ち帰ったかを、日付とセットで書き留める
判断は「個別具体的に」とされています。いつ、何を、どれくらいの時間かけたのか。手元の記録は、相談するときの材料になります。
2. 園がどの方法で記録しているかを見る
現認か、客観的な記録か、自己申告か。どの方法かによって、園が講ずべき措置が変わります。
3. 「自主的」と整理されていないかを確かめる
ガイドラインは、自主的と報告されていても実態で見ると書いています。呼び方ではなく、義務づけられていたか、余儀なくされていたかが手がかりです。
4. 持ち帰らずに済む方法があるかを聞いてみる
時間内に終わらない量なのか、時間の取り方の問題なのか。切り分けが済むと、話す相手が変わります。
一人で判断しなくていい場所があります
個々のケースが労働時間に当たるかどうかは、本記事では判断できません。職場に聞きにくいことは、外の窓口で聞けます。
| 窓口 | 扱っていること |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(厚生労働省) | 労働時間・賃金をはじめ、あらゆる分野の労働問題の相談。予約不要・無料 |
| こころの耳(厚生労働省) | 働く人のメンタルヘルスに関する情報と相談窓口の案内 |
出典:厚生労働省の各案内ページ
眠れない、食べられないといった状態が続いているときは、相談より先に受診してください。
よくある質問
Q. 持ち帰りは労働時間になりますか。
A. ガイドラインは、使用者の指揮命令下に置かれていたかどうかで客観的に定まるとし、判断は個別具体的に行われるとしています。本記事では個々のケースを判断できません。窓口にご相談ください。
Q. 「自主的にやったこと」と言われました。
A. ガイドラインは、自主的な研修・学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際に指揮命令下に置かれていたと認められる時間は労働時間として扱わなければならないとしています。
Q. 就業規則に「持ち帰りは労働時間としない」と書いてあります。
A. ガイドラインは「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず」客観的に定まるとしています。
Q. タイムカードがありません。
A. 原則的な方法は、使用者が自ら現認するか、タイムカード等の客観的な記録によることとされています。自己申告制による場合は、説明・実態調査・補正などの措置が求められます。
Q. 記録は自分で取るべきですか。
A. 記録する責務は使用者にあります。ただし相談するときの材料として、手元に残しておくことはできます。
Q. 園長に言いにくいです。
A. 総合労働相談コーナーは予約不要・無料で、相談の進め方から聞けます。
迷ったらここ
記録の付け方を、面接で聞く
ガイドラインは使用者に始業・終業時刻の確認と記録を求めています。どう記録しているかは、面接の場でそのまま聞ける事実です。
- 始業と終業をどう記録しているか(自ら現認か、客観的な記録か)
- 自己申告制の場合、実態調査と補正の仕組みがあるか
- 持ち帰りを前提にした指示の出し方になっていないか
まとめ
持ち帰り仕事が労働時間に当たるかどうかは、「使用者の指揮命令下に置かれていたか」で決まります。
そして就業規則にどう書いてあるかでは決まりません。ガイドラインは「定めのいかんによらず」「客観的に定まる」と明記しています。
手がかりは2つ。義務づけられていたか、余儀なくされていたか。判断は個別具体的に行われます。
記録する責務は使用者にあり、原則は現認か客観的な記録。自己申告制なら、説明・実態調査・補正・確認という措置が求められます。
「自主的」という言葉で整理されていても、実態で見るとガイドラインは書いています。

