30秒でわかるまとめ
- 委託の栄養士が担うのは、施設側の義務です健康増進法が栄養管理を義務づけている相手は、委託会社ではなく特定給食施設の設置者になります。
- 仕事の中身は省令の5項目で決まります食事の提供と評価、献立の作成、情報の提供、帳簿の作成と備付け、衛生管理の5つが並んでいます。
- 5つのうち2つは、努力義務にとどまります食事の提供と献立の作成は「努めること」で、残る3つは「こと」と書き分けられています。
- 施設から直接の指示は受けない建て付けです指揮命令を受けて働く形は労働者派遣にあたるため、請負としての委託とは分けられています。
※人数が契約で決まる仕組みと「きつい」の中身は給食委託がきついと感じるときで扱っています。学校給食の衛生管理は学校給食の衛生管理基準、病院・介護施設の現場は病院栄養士の1日の仕事内容、介護施設の栄養士の仕事内容をご覧ください。

先に整理:義務を負っているのは委託会社ではありません
健康増進法(平成14年法律第103号)第21条第3項は、こう定めています。
「特定給食施設の設置者は、前二項に定めるもののほか、厚生労働省令で定める基準に従って、適切な栄養管理を行わなければならない。」
名宛人は「特定給食施設の設置者」です。委託会社ではありません。
つまり委託の栄養士がしている仕事は、施設が負っている義務を、契約に基づいて代わりに回しているという構造になります。
だから「うちの会社のやり方」の前に、施設側にかかっている基準があります。それが次の5項目です。

ここが本題:省令が定める栄養管理の5項目
第21条第3項が委任している「厚生労働省令で定める基準」は、健康増進法施行規則 第9条です。5つの号があります。
| 号 | 内容 | 語尾 |
|---|---|---|
| 1 | 利用者の身体の状況、栄養状態、生活習慣等を定期的に把握し、これらに基づき、適当な熱量及び栄養素の量を満たす食事の提供及びその品質管理を行うとともに、これらの評価を行う | よう努めること |
| 2 | 食事の献立は、身体の状況等のほか、利用者の日常の食事の摂取量、嗜好等に配慮して作成する | よう努めること |
| 3 | 献立表の掲示並びに熱量及びたんぱく質、脂質、食塩等の主な栄養成分の表示等により、利用者に対して、栄養に関する情報の提供を行う | こと |
| 4 | 献立表その他必要な帳簿等を適正に作成し、当該施設に備え付ける | こと |
| 5 | 衛生の管理については、食品衛生法その他関係法令の定めるところによる | こと |
出典:健康増進法施行規則(平成15年厚生労働省令第86号)第9条第1号〜第5号(e-Gov法令API 法令ID 415M60000100086)。語尾の欄は条文の末尾を編集部が抜き出したもの
語尾が書き分けられています。第1号と第2号は「よう努めること」、第3号から第5号は「こと」。
つまり栄養価の設計と献立の配慮は努力義務、情報提供・帳簿・衛生管理は義務という並びになっています。

献立を作る前に給与栄養量の目標をどう置くか、献立で何に配慮するかは、厚生労働省の通知の別添が運用上の留意点として示しています。献立作成のコツ|通知は、献立より先に「給与栄養量の目標」を置いていますで扱っています。
この書き分けが、仕事の優先順位を作ります
意外に感じるかもしれません。栄養士の仕事の中心に見える「献立を作ること」のほうが、条文上は努力義務です。
| 区分 | 号 | 中身 |
|---|---|---|
| 努力義務(努めること) | 1 | 身体の状況等の把握/熱量・栄養素/品質管理/評価 |
| 2 | 摂取量・嗜好への配慮 | |
| 義務(こと) | 3 | 献立表の掲示と栄養成分の表示による情報提供 |
| 4 | 献立表その他必要な帳簿等の作成と備付け | |
| 5 | 衛生管理(食品衛生法その他関係法令による) |
出典:健康増進法施行規則 第9条。区分は編集部が語尾で分けたもの
掲示・表示・帳簿・衛生の4つは、抜けると基準に反します。献立の中身の良し悪しより先に、ここが見られます。
第4号の「備え付ける」にも注目しておきたいところです。作るだけでは足りず、その施設に置いておくことまでが条文に書かれています。委託の場合、帳簿が会社側にあって施設に無い、という状態は条文の求めるところと違います。
保育所のアレルギー対応も、栄養管理の省令とは別の文書に置かれています。ガイドラインが挙げる4つの基本原則と、組織で動くという前提は保育園の食物アレルギー対応|原則は完全除去、量は減らしませんで扱っています。
衛生管理は、この省令の外に投げられています
第5号は中身を書いていません。「食品衛生法その他関係法令の定めるところによること」とだけあります。
つまり衛生の基準は、施設の種類ごとに別の法令で決まります。
| 施設 | 衛生の根拠になるもの |
|---|---|
| すべての特定給食施設 | 食品衛生法その他関係法令(健康増進法施行規則 第9条第5号) |
| 義務教育諸学校・共同調理場 | 学校給食衛生管理基準(学校給食法 第9条第1項に基づく告示) |
出典:健康増進法施行規則 第9条第5号、学校給食法(昭和29年法律第160号)第9条第1項
同じ「給食」でも、勤務先で見るべき文書が変わります。学校給食の内容は学校給食の衛生管理基準で扱っています。
指揮命令を受けない、という建て付け
委託でよく問題になるのが「誰の指示で動くのか」です。
労働者派遣法(昭和60年法律第88号)第2条第1号は、労働者派遣をこう定義しています。
「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」
ここに「他人の指揮命令を受けて」という要素が入っています。
委託(請負)は、これとは別の形です。受託した会社が自分の労働者を指揮命令して、契約した業務を仕上げるという建て付けになります。
だから条文の建て付け上、施設の職員が委託会社の栄養士に直接の業務指示を出すことは想定されていません。
ただし実際の線引きは条文だけでは決まりません。厚生労働省の告示による区分の基準がありますが、本記事では原本を確認していないため踏み込みません。疑問がある場合は、契約書と、勤務先の会社に確認してください。
医療の現場には、労働者派遣そのものが政令で禁じられている業務もあります。准看護師の例は准看護師の派遣と時給|病院への派遣は政令で禁止。8時間換算の賃金は14,921円ですで扱っています。
特定給食施設に当たるかどうかで、話が変わります
ここまでの5項目は「特定給食施設」の話です。当てはまらない施設もあります。
| 区分 | 条文 |
|---|---|
| 管理栄養士を置かなければならない施設 | 都道府県知事が指定するもの(健康増進法 第21条第1項) |
| 栄養士又は管理栄養士を置くよう努める施設 | 上記以外の特定給食施設(同 第21条第2項) |
| 栄養管理の基準に従う義務 | すべての特定給食施設の設置者(同 第21条第3項) |
出典:健康増進法 第21条第1項〜第3項(e-Gov法令API 法令ID 414AC0000000103)
配置の義務と、栄養管理の義務は別々に書かれています。栄養士を置く義務が努力義務の施設でも、第3項の栄養管理は義務です。
特定給食施設に当たるかどうかの食数の線引きと、配置の義務がどこにかかるかは給食委託がきついと感じるときで扱っています。
同じ厨房で働く調理の職種の金額も、公的な統計から確かめられます。年間賞与が所定内給与額の1.34か月分にとどまることは調理師の年収379.1万円|統計の区分は「飲食物調理従事者」ですで扱っています。
働くときに確認できること
1. 勤務先が特定給食施設かどうかを聞く
第9条の5項目は特定給食施設にかかる基準です。当てはまるかどうかで、施設側が負っている義務の範囲が変わります。
2. 帳簿がどこに置かれているかを見る
第4号は「当該施設に備え付けること」です。委託会社の事務所ではなく、その施設に置かれている状態が条文の求めるところです。
3. 掲示と表示が実際に行われているかを見る
第3号は義務です。献立表の掲示と、熱量・たんぱく質・脂質・食塩等の表示。ここは努力義務ではありません。
4. 衛生の根拠になる文書を確認する
第5号は「関係法令による」としか書いていません。その施設で何を基準にしているのかは、施設ごとに確認する必要があります。
5. 指示系統を契約書で確認する
誰から業務の指示を受けるのか。委託と派遣では建て付けが違います。実際の運用に疑問があるときは、まず自分の会社に確認するのが筋になります。
よくある質問
Q. 委託の栄養士の仕事は、直営の栄養士と違うのですか。
A. 施設側が負う栄養管理の基準(健康増進法施行規則 第9条)は同じです。違うのは雇用関係と指示系統です。
Q. 献立を作るのは義務ではないのですか。
A. 第2号は「作成するよう努めること」と書かれています。ただし第4号で献立表の作成と備付けが義務とされており、第3号で掲示も義務です。「作らなくてよい」という意味ではありません。
Q. 施設の職員から直接指示を受けています。問題ですか。
A. 判断は個別の事情によります。本記事は条文の建て付けを示すだけで、個別の適否は扱えません。契約書の内容とあわせて、勤務先の会社にご確認ください。
Q. 大量調理施設衛生管理マニュアルには従うのですか。
A. 第5号が「関係法令の定めるところによる」としているため、施設ごとに適用される文書が変わります。本記事はその中身に踏み込んでいません。
Q. 人数が足りないのは違反ですか。
A. 受託者側の人数の下限を定めた規定については給食委託がきついと感じるときで扱っています。
Q. 学校給食も同じ基準ですか。
A. 別です。学校給食は学校給食法 第9条に基づく告示(学校給食衛生管理基準)があります。学校給食の衛生管理基準をご覧ください。
迷ったらここ
見学のときは、帳簿がどこに置かれているかを見る
省令の5項目のうち情報の提供・帳簿の作成と備付け・衛生管理は義務です。とくに帳簿は「当該施設に備え付けること」と条文にあります。
- 献立表の掲示と栄養成分の表示が実際に行われているか(第3号・義務)
- 帳簿が委託会社ではなく、その施設に置かれているか(第4号・義務)
- 業務の指示が誰から出る運用になっているか(契約書で確認できる)
まとめ
委託の栄養士の仕事は、施設が負っている義務を代わりに回すことです。健康増進法 第21条第3項の名宛人は、委託会社ではなく特定給食施設の設置者だからです。
その中身は、健康増進法施行規則 第9条の5項目。そして語尾が書き分けられています。
努力義務は第1号と第2号(食事の提供・品質管理・評価と、献立の配慮)。義務は第3号から第5号(情報の提供、帳簿の作成と備付け、衛生管理)。
そして指揮命令を受ける形は労働者派遣の定義に当たります。委託は、受託した会社が自分の労働者を指揮命令する建て付けです。
「何をする仕事か」を条文から見ると、いちばん外せないのは掲示・表示・帳簿・衛生の4つになります。

