30秒でわかるまとめ
- 企業主導型保育の基本単価は乳児月27万5,280円です令和8年度助成要領の基本分単価で、定員13〜19人・保育士比率100%の場合の子ども1人あたり月額です
- 保育士比率が下がると、単価は月4万5,970円下がります同じ乳児でも保育士比率100%は275,280円、50%は229,310円。この差が運営費の総額を左右します
- 年齢が低いほど、比率による単価差は広がります定員13〜19人で比べると4歳以上児の差は9,750円ですが、乳児では45,970円と4.7倍に開きます
- この単価は施設への助成で、個人の給与ではありません人件費への充当割合の定めは基本分単価にはなく、賃金への充当が決まっているのは処遇改善等加算だけです
※制度の枠組み・助成決定施設数・定員充足率は企業主導型保育のメリットとデメリット|保育士比率100%が99.2%、充足率は69.4%で扱っています。この記事は、そこで扱わなかった「お金の決まり方」だけを扱います。

先に前提:賃金統計に「企業主導型保育」の区分はありません
賃金構造基本統計調査の職種小分類に「保育士」はありますが、認可・認可外の別や、企業主導型保育かどうかで分けた区分は置かれていません。だから「企業主導型保育の平均年収は◯◯万円」という数字は、公的統計からは出てきません。
統計に区分がない職種をどう見るかという問題は、保育補助の年収は、国の統計に存在しませんでも扱いました。本記事は、統計を探す代わりに、この事業に固有の資料を見ます。企業主導型保育には、認可保育所の公定価格に当たるものとして助成要領の単価表があり、金額まで公開されているからです。

助成の単価は、5つの条件で決まります
使うのは、公益財団法人児童育成協会が公表している令和8年度 企業主導型保育事業助成要領(令和8年7月3日掲載)です。この要領は、こども家庭庁の「企業主導型保育事業等の実施について」の別紙「企業主導型保育事業費補助金実施要綱」第5の7に基づいて定められています。
運営費の基本分は、別紙1の「基本分単価」で算定します。単価表の見出しに並んでいる条件は5つです。
| 条件 | 区分 |
|---|---|
| 地域区分 | 20/100地域〜3/100地域、およびその他地域 |
| 定員区分 | 6〜12人/13〜19人/20〜25人/26〜30人/31〜35人/36〜40人/41〜45人/46〜50人/51〜55人/56〜60人/61人〜 |
| 年齢区分 | 4歳以上児/3歳児/1、2歳児/乳児 |
| 開所の形 | 1日11時間開所/1日13時間開所 × 週6日開所/週7日開所。さらに中小企業事業主が設置する事業所かどうかで表が分かれる |
| 保育士比率 | 100%/75%/50% |
出典:令和8年度 企業主導型保育事業助成要領 別紙1「①基本分単価」の表頭
単価は子ども1人あたりの月額です。要領の本文(2.(2)④)は、この保育士比率を「実施要綱第3の2.(4)によって算出される保育従事者数に対する保育士の割合」と定義しています。

ここが本題:同じ子どもでも、保育士比率で単価が変わります
条件を1つに固定して比べます。その他地域・1日11時間開所・週6日開所・中小企業事業主が設置する事業所の場合です。
| 定員 | 年齢区分 | 保育士比率100% | 保育士比率75% | 保育士比率50% | 100%と50%の差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 6〜12人 | 4歳以上児 | 158,510円 | 150,180円 | 147,730円 | 10,780円 |
| 3歳児 | 167,230円 | 157,990円 | 154,530円 | 12,700円 | |
| 1、2歳児 | 237,870円 | 221,440円 | 210,930円 | 26,940円 | |
| 乳児 | 326,300円 | 299,700円 | 279,310円 | 46,990円 | |
| 13〜19人 | 4歳以上児 | 107,490円 | 101,590円 | 97,740円 | 9,750円 |
| 3歳児 | 116,210円 | 109,400円 | 104,540円 | 11,670円 | |
| 1、2歳児 | 186,850円 | 172,850円 | 160,940円 | 25,910円 | |
| 乳児 | 275,280円 | 251,110円 | 229,310円 | 45,970円 | |
| 20〜25人 | 4歳以上児 | 102,170円 | 99,720円 | 96,150円 | 6,020円 |
| 3歳児 | 110,880円 | 107,530円 | 102,950円 | 7,930円 | |
| 1、2歳児 | 181,530円 | 170,980円 | 159,350円 | 22,180円 |
出典:令和8年度 企業主導型保育事業助成要領 別紙1「①基本分単価」(1日11時間開所の事業所(中小企業事業主が設置する事業所)の場合)のうち「その他地域」の区分。差額は編集部が算出
読み取れることが2つあります。
1つめ。年齢が低いほど、比率による差が大きくなります。定員13〜19人で見ると、4歳以上児の差は9,750円ですが、乳児では45,970円。4.7倍の開きです。乳児は配置基準上いちばん多くの職員が必要な年齢で、単価も比率による差も、そこにいちばん大きく設定されています。
2つめ。定員が小さいほど、単価そのものが高くなります。乳児1人あたりで比べると、定員6〜12人の326,300円に対して定員13〜19人は275,280円。51,020円の差です。小規模ほど1人あたりの固定費が重いという設計が、そのまま単価に出ています。
この構造を踏まえると、助成決定施設のうち保育士比率100%の施設が99.2%を占めているという事実の意味が見えてきます(この数字の出典と内訳は企業主導型保育のメリットとデメリットで扱っています)。比率を下げると単価が下がる仕組みなので、下げる誘因がありません。
延長保育加算も、保育士比率で分かれます
基本分だけではありません。延長保育加算は、1事業当たりの年額でこう定められています。
| 延長時間区分 | 定員20人以上・保育士比率100% | 定員20人以上・保育士比率100%未満 | 定員19人以下 | 比率による差 |
|---|---|---|---|---|
| 30分 | 552,000円 | 552,000円 | 552,000円 | 0円 |
| 1時間 | 1,619,000円 | 1,308,000円 | 1,308,000円 | 311,000円 |
| 2〜3時間 | 2,540,000円 | 1,619,000円 | 1,619,000円 | 921,000円 |
| 4〜5時間 | 5,340,000円 | 4,138,000円 | 4,138,000円 | 1,202,000円 |
| 6時間以上 | 6,288,000円 | 4,805,000円 | 4,805,000円 | 1,483,000円 |
出典:同要領 別紙1「③延長保育加算(1事業当たり年額)」。差は編集部が算出
30分の区分だけ、3つの列が同額です。そこから先は保育士比率で分かれ、延長時間が長くなるほど差が広がります。6時間以上では年1,483,000円です。
認可の施設に適用される加算は、令和7年度に一本化されました。区分1・区分2・区分3という現在の枠組みと、その要件は保育士の処遇改善手当はいくらか|令和7年度から一本化されましたで扱っています。
処遇改善等加算は、使い道が決められています
賃金に直接ひもづく加算が、別紙2・別紙3の処遇改善等加算です。要領は目的を「職員の昇給に要する費用(区分1)、職員の賃金の改善に要する費用(区分2)、職員の技能・経験の向上に応じた追加的な賃金改善に要する費用(区分3)を確保すること」と書いています。対象は企業主導型保育事業を実施する全ての施設です。
| 区分 | 名称 | 算定の形 |
|---|---|---|
| 区分1 | 基礎分 | 定員別加算額(別紙3)×利用子ども数×月数。キャリアパス要件を満たすこと |
| 区分2 | 賃金改善分 | 同上の算式。賃金改善の要件を満たすこと |
| 区分3-① | 質の向上分(副主任保育士等) | 49,060円×人数A×賃金改善実施期間の月数。人数A=基礎職員数×3分の1 |
| 区分3-② | 質の向上分(職務分野別リーダー等) | 6,130円×人数B×同月数。人数B=基礎職員数×5分の1 |
出典:同要領 別紙2「処遇改善等加算について」第1、第4の3・4
個々の職員に対する賃金の改善額にも上限と下限が置かれています。
- 区分3-①(副主任保育士等):月額4万円を超えないものとする
- 区分3-②(職務分野別リーダー等):原則として月額5千円。ただし副主任保育士等の改善額のうち最も低い額を上回らない範囲で、月額5千円以上4万円未満とすることができる
出典:同要領 別紙2 第2の3(3)
そして、この記事でいちばん実務に効くのが次の2点です。
1つめ。区分2と区分3を併せた加算による改善見込額は、2分の1以上を基本給・決まって毎月支払われる手当により改善しなければなりません(別紙2 第2の2(2))。一時金だけで配ることはできない設計です。
2つめ。加算による改善等実績総額が加算額を下回った場合は、その差額を全額返還します(同 第2の2(1))。さらに、加算の影響を除いた賃金総額が基準年度を下回った場合も、差額を全額返還します(同(3))。受け取った加算を賃金に回さないという選択肢が、制度上ふさがれています。
区分1・区分2の定員別加算額も、基本分と同じ構造です。その他地域・1日11時間開所・週6日開所の区分1で、定員13〜19人の乳児は保育士比率100%で4,830円、50%で4,000円(子ども1人あたり月額)。ここでも比率で金額が分かれます。
ただし「単価=給与」ではありません
ここまでの数字は助成の基準額であって、職員に支払われる給与そのものではありません。この点は誤解のないように書いておきます。
基本分単価のうち、いくらを人件費に充てるべきかという定めは、この要領にありません。本記事が確認した範囲では、令和8年度助成要領の全132ページのうち「人件費」という語が現れるのは別紙14の保育体制強化加算の1か所だけで、そこも「保育支援者の配置に要する費用として実際に支出した額(人件費を想定)」という書き方です。
つまり構造はこうなっています。
| お金の種類 | 賃金への充当 |
|---|---|
| 基本分単価 | 人件費に充てるべき割合の定めは要領にない |
| 処遇改善等加算 区分1 | 職員の賃金の勤続年数等を基準として行う昇給等に適切に充てること |
| 処遇改善等加算 区分2・区分3 | その全額を職員の賃金の改善に確実に充てること |
| 保育体制強化加算(月額100,000円) | 実際に支出した額が加算額に満たない場合は残額を返還 |
出典:同要領 別紙2 第5の1、別紙14の5
賃金への充当が要領で担保されているのは、加算の部分だけです。だから同じ企業主導型保育でも、施設によって給与水準が変わります。求人を比べるときに見るべきなのは、事業の名前ではなくその施設が処遇改善等加算のどの区分を取っているかです。
応募前に確認できること
1. 保育士比率が何%の区分で運営しているかを聞く
単価表が100%/75%/50%で分かれている以上、施設がどの区分にあるかは運営費の総額に直結します。比率100%の施設が大半を占めますが、そうでない施設もあります。助成決定を受けた施設の比率別の内訳は企業主導型保育のメリットとデメリットで扱っています。
2. 処遇改善等加算の区分を聞く
区分1・区分2・区分3のどれを取っているかで、賃金に回ることが担保されている金額が変わります。とくに区分3は、副主任保育士等・職務分野別リーダー等という役職と結びついています。その役職が自分の職場にあるかどうかは、昇給の道筋そのものです。
3. 区分3の研修修了者がいるかを聞く
要領は区分3の要件として、研修修了者が少なくとも合計1人以上いることを求めています。研修修了者が人数Aや人数Bに達しない場合は、その人数で算定することとされています。つまり研修を受けた人が少なければ、加算額もそのぶん小さくなります。
4. 定員と年齢構成を聞く
単価は定員区分と年齢区分で決まります。乳児が多い小規模な施設ほど、1人あたりの単価は高くなります。逆に定員が大きく4歳以上児が中心の施設は、1人あたりでは低くなります。
5. 延長保育の実施時間を聞く
延長保育加算は30分の区分だけ比率で差がつきません。1時間以上の延長を実施しているかどうかで、年間の加算額が最大1,483,000円変わります。勤務時間の実態を知るうえでも確認する価値があります。
よくある質問
Q. 企業主導型保育の平均年収はいくらですか。
A. 本記事では平均年収を示していません。賃金構造基本統計調査に企業主導型保育の職種区分がなく、この事業に限定した給与の全国調査を本記事では確認できなかったためです。示せるのは、給与の原資となる助成の単価と、その使い道に関する要領の定めまでです。金額を知りたい場合は、応募先の施設に処遇改善等加算の区分と賃金体系を確認するのが確実です。
Q. 認可保育所と比べて給料は低いのですか。
A. 本記事では比較していません。認可保育所の公定価格と本記事が扱った助成要領の単価は、算定の枠組みが別の制度に属しており、単価表どうしを並べても同じ意味にはならないためです。認可側の公定価格は本記事では確認していません。比較を書く場合は、内閣府令・こども家庭庁の公定価格の資料を一次資料として確認する必要があります。
Q. 保育士比率が低い施設は避けたほうがいいですか。
A. 本記事はその判断材料を提供していません。単価表から言えるのは、比率が下がると助成の単価も下がるという事実だけです。比率と職場環境や給与水準との関係については、本記事では確認していません。ただし単価が下がる以上、同じ定員・同じ年齢構成なら運営費の総額は小さくなります。その前提で条件を確かめてください。
迷ったらここ
求人を見るときは「処遇改善等加算はどの区分か」を先に聞く
基本分単価には人件費に充てるべき割合の定めがありませんが、区分2と区分3は全額を職員の賃金の改善に充てることが要領で決まっています。年収の話は、ここから始めるのがいちばん早い方法です。
- 処遇改善等加算は区分1・区分2・区分3のどれを取っているか
- 保育士比率は何%の区分で運営しているか(定員13〜19人の乳児で月45,970円の差がつく)
- 区分3の研修修了者は何人いるか(人数が足りなければ加算額もそのぶん小さくなる)
まとめ
- 企業主導型保育の給与の原資は助成要領 別紙1の基本分単価で決まる。条件は地域区分・定員区分・年齢区分・開所の形・保育士比率(100%/75%/50%)の5つ
- その他地域・11時間・週6日・中小企業事業主設置の場合、定員13〜19人の乳児は比率100%で275,280円、50%で229,310円。差は45,970円(子ども1人あたり月額)
- 年齢が低いほど比率による差が大きい。定員13〜19人で4歳以上児9,750円に対し乳児45,970円で4.7倍
- 延長保育加算も比率で分かれる。定員20人以上・1時間で年311,000円、6時間以上で年1,483,000円の差。30分の区分だけ差がない
- 処遇改善等加算は区分2・区分3を併せた改善見込額の2分の1以上を基本給・毎月の手当で改善し、実績が加算額を下回れば差額を全額返還。区分3-①の単価は月49,060円(改善額は月額4万円を超えない)
- 基本分単価には人件費に充てるべき割合の定めがない。賃金への充当が担保されているのは加算の部分だけ
求人を見るときに聞くことを1つに絞るなら、「処遇改善等加算はどの区分を取っていますか」です。基本分は使い道が縛られていませんが、区分2と区分3は全額を賃金の改善に充てることが要領で決まっています。年収の話は、そこから始めるのがいちばん早い方法です。

