介護報酬の地域区分の見直し案 市町村の62.5%は割合変わらず

介護報酬の地域区分、2027年度から見直し案

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目次

30秒でわかるまとめ

  • 介護報酬の地域区分を、2027年度から見直す案が出ました厚生労働省が10月28日の分科会に示しました。公務員の地域手当の新しい区分に合わせることを原則にしています。
  • 地域区分で、介護報酬の1単位の単価が変わります単価は地域とサービスによって10円から11.40円までの幅があります。人件費の地域差を報酬に映す仕組みです。
  • 市町村の62.5%は、上乗せ割合が今と変わらないと答えました今より上がると答えたのは25.2%です。今と同じ割合を続けたいと希望した市町村も8.0%ありました。
  • 上乗せ割合は、2029年度末まで経過措置で調整できます市町村が希望すれば、これまでの上乗せ割合を保つこともできる案です。委員からは、介護職員の賃金への影響を心配する声が出ています。

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厚生労働省は10月28日の社会保障審議会介護給付費分科会(第272回)に、介護報酬の地域区分を2027年度から見直す案を示した。地域区分は、介護サービスの報酬に人件費の地域差を上乗せする仕組みで、施設や事業所に入るお金の額を左右する。案では、見直しが進む公務員の地域手当に合わせることを原則とし、単価が大きく変わるのを和らげる経過措置を2029年度末まで設ける。介護の仕事をする人にどう関わるかを整理する。

2027年度から公務員の地域手当に合わせる案

資料は「地域区分(改定の方向性)」。2027年度以降の地域区分について、「最新の民間賃金の状況を反映した国家公務員または地方公務員の地域手当に準拠して級地設定することを原則」とする対応案を示した。

あわせて、報酬の単価が大きく変わるのを和らげるため、市町村の意向を踏まえて従前の上乗せ割合を保つこともできる経過措置を設ける。隣り合う市町村との差が大きい場合の特例も見直す。案はこの特例の見直しを前提に、市町村の意向を再度確認したうえで2027年度以降の地域区分を決めるとしている。2027年度の介護報酬改定に向けた案で、まだ決まったものではない。

ちはる

地域区分って、介護の仕事とどう関係があるんですか。

熊先生

同じサービスでも、どの市町村にあるかで、施設に入る報酬の単価が変わるんだ。

ちはる

職員の給料の元になるお金が、場所によって違うということですね。

地域区分で1単位の単価が変わる

介護報酬は「単位」で決まっていて、サービスごとに算定した単位数に1単位の単価を掛けて計算する。資料によると、介護サービスの提供にかかる費用の主なものは人件費で、従業者の賃金には地域差がある。この差を報酬に映すため、1単位の単価をサービス別・地域別に決めている。

単価は、地域の級地ごとの上乗せ割合と、サービスごとの人件費の割合で決まる。いまの区分と単価は次のとおり。

級地上乗せ割合訪問介護など特養など
1級地20%11.40円10.90円
2級地16%11.12円10.72円
3級地15%11.05円10.68円
4級地12%10.84円10.54円
5級地10%10.70円10.45円
6級地6%10.42円10.27円
7級地3%10.21円10.14円
その他0%10円10円

出典:厚生労働省「地域区分(改定の方向性)」(第272回介護給付費分科会 資料3)をもとに編集部作成。「訪問介護など」は人件費割合70%のサービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、居宅介護支援など)、「特養など」は45%のサービス(通所介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、認知症対応型共同生活介護など)

人件費の割合が大きい訪問介護などのほうが、地域による単価の差が大きい。2024〜2026年度の区分では、1級地は23自治体、7級地は170自治体で、上乗せのない「その他」が1,292自治体だった。

地域区分が決めるのは、施設や事業所に入る報酬の単価だ。職員一人ひとりの給与額を直接決める仕組みではない。実際の給与は、事業所が報酬をどう配分するかで変わる。

公務員の地域手当は7区分から5区分に

地域区分は、公平性と客観性を保つため、地域の民間の賃金水準を反映して決まる公務員の地域手当に合わせることを原則にしてきた。その地域手当が、2024年の人事院勧告などを受けて変わりつつある。

資料によると、公務員の地域手当は2025年度から、区分を決める地域の単位を市町村単位から都道府県単位を基本に広げ、区分の段階を7区分から5区分にする見直しが段階的に進んでいる。地方公務員の新しい区分は、1級地20%、2級地16%、3級地12%、4級地8%、5級地4%だ。

介護報酬の地域区分を前回見直したのは2015年度の介護報酬改定で、2014年の人事院勧告で国家公務員の地域手当が見直されたのを受けたものだった。今回はそれ以来の見直しになる。

市町村の62.5%は上乗せ割合が変わらず

厚生労働省は2026年2月、全国の市町村に、2027年度以降の地域区分についての意向を聞いた。地域区分を示したうえでの調査ではなく、見直しを検討するための調査だ。

市町村の回答市町村数
地域手当に合わせる(上乗せ割合は今と変わらない)1,088(62.5%)
地域手当に合わせる(上乗せ割合が今より上がる)438(25.2%)
今と同じ上乗せ割合を希望(経過措置を希望)140(8.0%)
その他75(4.3%)

出典:厚生労働省「地域区分(改定の方向性)」(第272回介護給付費分科会 資料3)「介護報酬の地域区分の見直しに係る意向の確認結果について」

資料は、公務員の地域手当に合わせることについて約9割の市町村が特に意向はない(今と変わらないか、今より上がる)と答えたとまとめている。「その他」には、地域手当と違う割合を希望する市町村や、まだ決めていない市町村があった。

ちはる

上がるところもあるんですね。下がるところはないんですか。

熊先生

今と同じ割合を続けたい、つまり経過措置を希望した市町村が140あったよ。

熊先生

ただ、どの市町村がどの区分になるかは、まだ示されていないんだ。

ちはる

自分の住んでいる市がどうなるかは、これからなんですね。

2029年度末まで経過措置を設ける案

案では、市町村が希望すれば、従前の上乗せ割合と公務員の地域手当の範囲内で級地や上乗せ割合を決められる経過措置を設ける。資料は、割合が上がる場合の例として、上乗せ割合を10%から12%の範囲で決められるケースを示している。期間は2029年度末までとし、2030年度以降は2030年度の介護報酬改定のときに市町村の意見を確かめる。いまの経過措置は2026年度末まで延長されている。

隣り合う市町村との差を調整する特例も見直す。区分の段階が5つになると、いまの「5級地差ルール」に当てはまる自治体がなくなるためだ。案では、3級地以上の差がある地域と隣り合う場合に、2級地差になるまで引き上げや引き下げを認める「3級地差ルール」に改め、いまの4級地差ルールもこれで対応する。周りをすべて高い(低い)区分に囲まれた場合のルールなどは続ける。

委員からは賃金への影響を心配する声

これまでの分科会では、委員から次のような意見が出ていた(厚生労働省が資料にまとめたもの)。

  • 「支給割合が下がる地域では、介護従事者の賃金も下がることが予想される」として、賃金が下がらない工夫を求める意見
  • 見直しで級地が上がる場合は人材確保の面で歓迎される一方、保険料の上昇につながることが想定されるという意見
  • 物価高や人件費の上昇で経営が厳しいなか、大きく見直すことは現場に不安と混乱を生むとして、拙速な変更を避けるべきだという意見
  • これまでどおり公務員の地域手当に合わせることを原則としつつ、一定の範囲で市町村が級地を選べる仕組みにすべきだという意見

関係団体からも、上乗せ割合が急に下がることへの配慮を求める要望が出ていた。全国介護事業者連盟は、区分が引き下げられる地域では、物価高で厳しい経営環境にある事業者に深刻な影響が出ると訴えた。介護人材政策研究会は、現行の水準を大きく下回る場合には、3年ごとの改定の枠組みにとらわれない新たな経過措置の仕組みなど、激変緩和の配慮を求めている。

ちはる

同じ仕事でも、市の境目をまたぐと事業所の収入が変わるかもしれないんですね。

熊先生

だから転職先を比べるときは、地域の名前より、求人ごとの給与の中身を見てほしいんだ。

迷ったらここ

隣の市の求人と給与を比べる

報酬の単価が地域で違っても、実際の給与は事業所の配り方で変わります。通える範囲で職場を探すときは、次の点を比べておくと判断しやすくなります。

  • 基本給と、処遇改善の手当の内訳
  • 賞与の月数と、ここ数年の昇給の実績
  • 夜勤手当や資格手当の金額
  • 通勤時間と、交通費の支給の条件
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編集部の見方:報酬の単価と給与は別に見る

ここからは編集部の見方である。案は、公務員の地域手当に合わせる原則を保ちつつ、単価の大きな変動には2029年度末までの経過措置で備える形だ。市町村の約9割は合わせることに特に意向がないと答えたが、今と同じ割合を続けたいと希望した市町村も140ある。どの市町村の区分が上がり、どこが下がるのかは、まだ示されていない。

もう1つ押さえておきたいのは、地域区分は事業所に入る報酬の単価だという点だ。単価が上がっても、そのまま職員の給与に回るとは限らない。逆に単価が下がる地域でも、事業所の配分で給与を保つことはありうる。市の境目の近くで職場を探すときは、地域の名前より、求人ごとの給与の内訳を比べたい。保育所の公定価格の地域区分の見直しは、保育の地域区分の記事で整理している。

出典

一次資料

編集部メモ

  • 地域区分の見直しは分科会に示された対応案で、決まったものではありません。どの市町村がどの級地になるかは、資料に示されていません。市町村の意向を再度確認したうえで決めるとされています。
  • 市町村の意向の確認結果(2026年2月)は、資料に書かれた数と割合をそのまま使っています。どの市町村の割合が上がり、どこが下がるかは、この調査結果からはわかりません。
  • 委員と関係団体の意見は、厚生労働省が資料にまとめたものを使っています。分科会当日の議論の中身は反映していません。
  • 地域区分は報酬の単価の仕組みで、職員の給与額を直接決めるものではありません。
  • 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて原典から取っています。
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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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